第470条併存的債務引受の要件及び効果過去問 12
1併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
2併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
4前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。
この条文の過去問 12問
本件債務の引受けが併存的債務引受である場合において、AとCとの間に更改があったときは、α債務は、消滅する。
解説
本肢は正しい。併存的債務引受がされると、引受人は債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する(470条1項)。したがって、本件ではBとCがα債務について連帯債務者の関係に立つ。
連帯債務においては、原則として一人について生じた事由は他の連帯債務者に影響しない(相対的効力の原則、441条本文)が、更改・相殺・混同については絶対的効力が明文で認められている。すなわち、連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する(438条)。更改は、従前の債務に代えて新たな債務を発生させる契約であり、その効果として旧債務が消滅する(513条)。旧債務そのものが消滅する以上、これを他の連帯債務者との関係でのみ存続させる理由はないからである。
よって、連帯債務者の一方であるCと債権者Aとの間に更改があった場合、α債務はBとの関係でも消滅する。本肢の記述は正しい。なお、この場合のB・C間の清算は、更改後の債務を負担することになったCが負担部分に応じて求償等により処理すべき問題にとどまる。
本件債務の引受けが、AとCがBの意思に反してした併存的債務引受であるときは、その効力を生じない。
解説
本肢は誤り。併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができ(470条2項)、この場合に債務者の同意は要件とされていない。条文上、債務者の意思に反しないことを効力要件とする文言は置かれていない。
その理由は、併存的債務引受が債務者の債務を消滅・変更させるものではなく、同一内容の債務を負担する者が新たに加わって責任財産が増加するにすぎず、債務者に法律上の不利益が生じないことにある。旧法下の判例も、第三者が債務者の意思に反して債権者との間で重畳的(併存的)債務引受をした場合につきこれを有効としていた(大判大正15年3月25日)。この点は、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済することができないとする第三者弁済の規律(474条2項本文)と対比して押さえておくべきである。債務引受では債務者の意思による制限が課されていない。
したがって、AとCがBの意思に反してした併存的債務引受も有効に効力を生ずるから、効力を生じないとする本肢は誤りである。なお、債務者と引受人となる者との契約による併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生ずる(470条3項)。
債務者と引受人となる者との契約でされた併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
解説
本肢は正しい。併存的債務引受は、債務者が負担する債務と同一の内容の債務を引受人が併せて負担するもので(470条1項)、その成立方法は二通りある。第一に、債権者と引受人となる者との契約によることができ、この場合は債務者の意思に反していても差し支えない(同条2項)。第二に、債務者と引受人となる者との契約によることもでき、この場合には、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生ずる(同条3項)。本肢はこの3項後段の規律をそのまま述べたものである。
後者の構成は、契約当事者ではない債権者に引受人に対する直接の権利を取得させるものであるから、第三者のためにする契約に関する規定に従うものとされている(470条4項)。すなわち、債権者の承諾は受益の意思表示に相当し、第三者の権利はその意思表示の時に発生する(537条3項)という規律に対応する。したがって、契約時に遡って効力が生ずるのではなく、承諾の時が効力発生時点となる。
対比として、免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約でする場合は債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生じ(472条2項)、債務者と引受人となる者との契約でする場合は債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによって効力を生ずる(同条3項)。
併存的債務引受は,債務者の意思に反する場合であっても,債権者と引受人となる者との契約により有効に成立する。
解説
本肢は正しい。併存的債務引受は、引受人が債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担するものであり(470条1項)、その成立方式として、①債権者と引受人となる者との契約による方法(同条2項)と、②債務者と引受人となる者との契約により、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生ずる方法(同条3項)とが定められている。
このうち②の方式は第三者のためにする契約に関する規定に従うものとされる(470条4項)のに対し、①の方式については債務者の関与を要求する文言が置かれていない。併存的債務引受は既存の債務者の債務をそのまま存続させたうえで責任財産を追加するものにすぎず、債務者は債務を免れこそすれ新たな不利益を受けるものではないから、債務者の意思に反することを理由に効力を否定する必要がないのである。したがって、債務者の意思に反する場合であっても、債権者と引受人となる者との契約のみによって併存的債務引受は有効に成立する。
この点は第三者弁済と対比して理解しておくとよい。弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、原則として債務者の意思に反して弁済をすることができない(474条2項本文)が、併存的債務引受にはこのような制限はない。もっとも、引受人が実際に弁済をする段階では、引受人自身が債務者となっている以上、474条2項の適用場面ではなくなる。よって本肢は正しい。
併存的債務引受において,引受人は,引き受けた債務を弁済した場合,債務者に対し,弁済額のうち債務者の負担部分に応じた額を求償することができる。
解説
本肢は正しい。併存的債務引受がされると、引受人は債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する(470条1項)。すなわち債務者と引受人との関係は連帯債務となる。改正前民法下でも、判例は併存的債務引受(重畳的債務引受)における債務者と引受人との関係を原則として連帯債務と解しており(最判昭和41年12月20日民集20巻10号2139頁)、現行法はこれを条文上明確にしたものである。
連帯債務者の一人が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた額の求償権を有する(442条1項)。したがって、引受人が引き受けた債務を弁済して共同の免責を得た場合には、債務者に対し、弁済額のうち債務者の負担部分に応じた額を求償することができる。
もっとも、負担部分は債務者と引受人との間の内部的な合意によって定まり、合意がなければ引受けに至った事情等から判断される。実際上は、引受人が債務者のために債務を引き受けたにすぎず引受人の負担部分をゼロとする合意がされている例が多く、その場合には弁済額全額を求償することができる。本肢は負担部分に応じた求償という442条1項の原則を述べたものであって、正しい。
債務者と引受人との間の契約でする併存的債務引受は,債権者が引受けによる利益を享受する意思を表示しなくても,その効力が生ずる。
解説
本肢は誤り。併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができるが、この場合には、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時にその効力を生ずる(民法470条3項)。さらに、この方式による併存的債務引受については第三者のためにする契約に関する規定に従うものとされ(同条4項)、第三者たる債権者の権利は、その契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(537条3項)。すなわち、債権者は当然に引受人に対する債権を取得するのではなく、引受けによる利益を享受する旨の意思表示(承諾)が効力発生要件となる。これは、債権者と引受人となる者との契約による併存的債務引受が、債務者の意思に反する場合であっても効力を生ずるとされること(470条2項)と対照的であり、債務者側だけの合意によって債権者に一方的に利益を押し付けない趣旨に基づく。よって、債権者の意思表示がなくても効力が生ずるとする本肢は誤りである。なお、出題当時は明文の規定がなかったが、判例・通説は債務者・引受人間の併存的債務引受を第三者のためにする契約と解し、債権者の受益の意思表示を要すると解しており、結論は現行法と異ならない。
債権者Aが,債務者Bの意思に反して,引受人Cとの間で併存的債務引受の契約をした場合,その効力は生じない。
解説
本肢は誤り。併存的債務引受とは、引受人が債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担するものである(470条1項)。原債務者の債務はそのまま存続し、債務者が新たな不利益を受けるわけではなく、むしろ責任財産が引受人の分だけ加わって債権の担保力が増すにすぎない。そこで470条2項は「併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる」と定め、債務者の同意や関与を効力要件としていない。したがって、債権者Aが債務者Bの意思に反して引受人Cとの間で併存的債務引受契約をした場合でも、その効力は生ずる。旧法下でも、併存的債務引受は債務者の意思に反しても成立しうるとするのが判例であった(大判大正15年3月25日)。この点は、債務者の意思に反しても保証契約を締結できることと同様の発想に基づく。なお、債務者と引受人となる者との契約による併存的債務引受も可能であるが、この場合は第三者のためにする契約の性質を有し、債権者が引受人に対して承諾をした時に効力を生ずる(470条3項・4項)。本肢は効力が生じないとする点で誤っている。
債権者Aに対する債務者Bの債務について,Cを引受人とする併存的債務引受の効力が生じた場合において,Bの債務が時効により消滅したとしても,AはCに対して債務の全額を請求することができる。
解説
本肢は誤り。まず、併存的債務引受の効力が生じると、引受人Cは債務者Bと連帯債務の関係に立つ(470条1項。旧法下でも、最判昭和41年12月20日は特段の事情のない限り連帯債務関係が生ずるとしていた)。問題は、連帯債務者の一人であるBの債務が時効消滅した場合に、その効果が他の連帯債務者Cに及ぶかである。出題当時の旧439条は、連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については他の連帯債務者も義務を免れると規定し、時効の完成を絶対的効力事由としていた。この規律を前提とすれば、Bの債務が時効により消滅すると、CはBの負担部分の限度で責任を免れるから、AはCに対して債務の「全額」を請求することはできない。したがって本肢は誤りとされる。もっとも、平成29年改正後の現行441条は、438条(更改)・439条1項(相殺)・440条(混同)に掲げる場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は他の連帯債務者に対して効力を生じないとし、時効の完成を絶対的効力事由から除外した。そのため現行法の下では、Bの債務が時効消滅してもその効果はCに及ばず、AはCに対して債務の全額を請求することができるから、本肢の記述は正しいことになる。法改正により結論が逆転した肢であり、現行法ベースで学習する際は441条の相対的効力の原則を押さえるべきである。
債務者と引受人との間の契約でする併存的債務引受は,債権者が引受けによる利益を享受する意思を表示しなくても,その効力が生ずる。
解説
本肢は誤り。併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができるが、この場合には、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時にその効力を生ずる(民法470条3項)。さらに、この方式による併存的債務引受については第三者のためにする契約に関する規定に従うものとされ(同条4項)、第三者たる債権者の権利は、その契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(537条3項)。すなわち、債権者は当然に引受人に対する債権を取得するのではなく、引受けによる利益を享受する旨の意思表示(承諾)が効力発生要件となる。これは、債権者と引受人となる者との契約による併存的債務引受が、債務者の意思に反する場合であっても効力を生ずるとされること(470条2項)と対照的であり、債務者側だけの合意によって債権者に一方的に利益を押し付けない趣旨に基づく。よって、債権者の意思表示がなくても効力が生ずるとする本肢は誤りである。なお、出題当時は明文の規定がなかったが、判例・通説は債務者・引受人間の併存的債務引受を第三者のためにする契約と解し、債権者の受益の意思表示を要すると解しており、結論は現行法と異ならない。
債務者が所有する不動産に抵当権が設定されている場合,その被担保債権に係る債務について他の者により併存的債務引受がされたときは,当該債務引受によって生じた債権も,その抵当権の被担保債権となる。
解説
解説は準備中です。
債務者が所有する不動産に抵当権が設定されている場合,その被担保債権に係る債務について他の者により併存的債務引受がされたときは,当該債務引受によって生じた債権も,その抵当権の被担保債権となる。
解説
解説は準備中です。
債務引受がされた場合には,原債務者及び引受人は分割債務を負う。
解説
本肢は誤り。債務引受には併存的債務引受と免責的債務引受があるが、いずれの場合も原債務者と引受人が債務額を頭割りした分割債務を負うことにはならない。まず併存的債務引受については、引受人は「債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する」と定められており(470条1項)、原債務者と引受人は連帯債務の関係に立つ。したがって債権者は両者のいずれに対しても全額を請求することができ、分割債務にはならない。次に免責的債務引受については、引受人が原債務者の負担する債務と同一内容の債務を負担し、原債務者は自己の債務を免れる(472条1項)。この場合は債務者が引受人に交替するのであるから、そもそも原債務者は債務を負わず、分割の問題は生じない。平成29年改正前は債務引受に関する明文規定がなく解釈に委ねられていたが、併存的債務引受につき原債務者と引受人が連帯債務(不真正連帯債務)関係に立つと解されていた点は同様であり、結論に変わりはない。以上のとおり、いずれの類型でも「原債務者及び引受人が分割債務を負う」とはいえないから、本肢は誤りである。