1債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
3債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
この条文の過去問 22問
誤り。違うのは「判決が確定した時から、履行遅滞に陥る」の部分である。
金銭の返還を求める詐害行為取消請求では、取消債権者は受益者に自分への支払を求めることができ、認める判決が確定すると、受益者は取消債権者に受け取った額の支払義務を負う。最判平30.12.14は、詐害行為取消しの効果は過去にさかのぼって生ずるので、受益者の取消債権者に対する受領金支払債務は取消判決の確定により受領時にさかのぼって生ずるとし、この債務は期限の定めのない債務であって発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、取消判決の確定より前にされた履行の請求も412条3項の履行の請求に当たるとした。したがって、受益者は履行の請求を受けた時、典型的には訴訟で支払を求められた時から遅滞となる。判決の確定まで遅滞にならないとすると、受益者は争えば争うほど遅延損害金を免れることになり不当だからである。本肢は判決確定時から遅滞とする点で判例とずれている。

上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たる
- 判決の効力:債務者とそのすべての債権者に及ぶ(425条)。受益者と転得者の間の行為は取り消されない
- 受益者の反対給付:財産処分が取り消されたとき、受益者は債務者に反対給付の返還を請求できる(425条の2)
- 受益者の債権の回復:債務消滅行為が取り消されたとき、受益者が給付を返還した時に受益者の債権が原状に復する(425条の3)
- 転得者の権利:受益者なら行使できた反対給付の返還請求権などを、自分が前者にした反対給付の価額を限度に行使できる(425条の4)
誤り。違うのは「債権者が取立行為をしないときであっても、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」の部分である。
412条1項は、確定期限があるときは債務者は期限の到来した時から遅滞の責任を負うと定めるが、これは債務者が自分だけで給付を完了できることを前提にしている。取立債務は、債権者が債務者のもとに来て受け取ることで履行が完了する債務であり、給付の実現には債権者の取立てが欠かせない。493条ただし書は、債務の履行について債権者の行為を要するときは、債務者は弁済の準備をしたことを通知して受領の催告をすれば足りるとする。債務者が期限までに準備を整えて通知した以上、履行が実現しないのは債権者が取りに来ないからであり、債務者は弁済の提供の時から債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる(492条)。したがって、債権者が取立てをしないときは、確定期限が来ても債務者は遅滞の責任を負わず、かえって債権者が受領遅滞の責任を負うことになる。

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
正しい。412条2項により、不確定期限のある債務は、期限到来後に請求を受けた時か期限の到来を知った時の早い方から遅滞となる。
不確定期限とは、到来することは確実であるが、いつ到来するかが決まっていない期限をいう。412条2項は、債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うと定める。期限の到来を知らない債務者に遅滞の責任を負わせるのは酷である一方、期限到来後に債権者から請求を受けたなら、債務者はもう期限が来ていないことを理由に履行を遅らせることはできないので、二つのうち早い時を基準にしたのである。改正前の同項は期限の到来を知った時からとだけ定めていたが、期限到来後の請求で遅滞になることは改正前から解釈で認められており、平成29年改正でそれが条文に表れた。本肢は現行412条2項のとおりである。

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
正しい。返還時期の定めのない消費貸借で相当の期間を定めない催告も有効であり、借主は催告から相当の期間を経過した時から遅滞となる(大判昭5.1.29)。
591条1項は、当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができると定める。期限の定めのない債務は請求を受けた時から遅滞になるという412条3項の特則であり、借主に返すお金を用意する猶予を与える趣旨である。そうであれば、貸主が期間を示さずに催告しても、その催告を無効として遅滞の効果をまったく生じさせないと考える必要はない。判例は、相当の期間を定めない催告でも、催告の時から返還の準備をするのに相当な期間を経過した後は、借主は遅滞の責任を負うとしている(大判昭5.1.29)。猶予を与えるという目的は、実際に相当の期間が過ぎるのを待って遅滞の効果を生じさせれば達成されるからである。解除の前提となる催告で、期間を定めない催告でも相当の期間が過ぎれば解除できるとされるのと同じ考え方である。

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
誤り。違うのは「その請求を認容する判決の確定時に遅滞に陥る」の部分である。
詐害行為取消請求で、債権者は受益者に逸出した財産の返還を求めることができ、それが金銭であれば自分への支払を求めることができる(424条の6第1項・424条の9第1項)。最判平30.12.14は、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時にさかのぼって生ずるものであり、期限の定めのない債務であって発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、取消判決の確定より前にされた履行の請求も412条3項の履行の請求に当たるとした。したがって、受益者は訴訟で返還を請求された時から遅滞となり、遅延損害金もその時から生じる。判決の確定まで遅滞にならないとすると、受益者は争えば争うほど遅延損害金を免れることになり、相当でないからである。本肢は遅滞の始まりを判決確定時とする点で判例とずれている。

上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たる
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
誤り。違うのは「債権者が取立行為をしないときであっても、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」の部分である。
412条1項は、確定期限があるときは債務者は期限の到来した時から遅滞の責任を負うと定めるが、これは債務者が自分だけで給付を完了できることを前提にしている。取立債務は、債権者が債務者のもとに来て受け取ることで履行が完了する債務であり、給付の実現には債権者の取立てが欠かせない。493条ただし書は、債務の履行について債権者の行為を要するときは、債務者は弁済の準備をしたことを通知して受領の催告をすれば足りるとする。債務者が期限までに準備を整えて通知した以上、履行が実現しないのは債権者が取りに来ないからであり、債務者は弁済の提供の時から債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる(492条)。したがって、債権者が取立てをしないときは、確定期限が来ても債務者は遅滞の責任を負わず、かえって債権者が受領遅滞の責任を負うことになる。

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
正しい。412条2項により、不確定期限のある債務は、期限到来後に請求を受けた時か期限の到来を知った時の早い方から遅滞となる。
不確定期限とは、到来することは確実であるが、いつ到来するかが決まっていない期限をいう。412条2項は、債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うと定める。期限の到来を知らない債務者に遅滞の責任を負わせるのは酷である一方、期限到来後に債権者から請求を受けたなら、債務者はもう期限が来ていないことを理由に履行を遅らせることはできないので、二つのうち早い時を基準にしたのである。改正前の同項は期限の到来を知った時からとだけ定めていたが、期限到来後の請求で遅滞になることは改正前から解釈で認められており、平成29年改正でそれが条文に表れた。本肢は現行412条2項のとおりである。

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
正しい。返還時期の定めのない消費貸借で相当の期間を定めない催告も有効であり、借主は催告から相当の期間を経過した時から遅滞となる(大判昭5.1.29)。
591条1項は、当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができると定める。期限の定めのない債務は請求を受けた時から遅滞になるという412条3項の特則であり、借主に返すお金を用意する猶予を与える趣旨である。そうであれば、貸主が期間を示さずに催告しても、その催告を無効として遅滞の効果をまったく生じさせないと考える必要はない。判例は、相当の期間を定めない催告でも、催告の時から返還の準備をするのに相当な期間を経過した後は、借主は遅滞の責任を負うとしている(大判昭5.1.29)。猶予を与えるという目的は、実際に相当の期間が過ぎるのを待って遅滞の効果を生じさせれば達成されるからである。解除の前提となる催告で、期間を定めない催告でも相当の期間が過ぎれば解除できるとされるのと同じ考え方である。

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
誤り。違うのは「その請求を認容する判決の確定時に遅滞に陥る」の部分である。
詐害行為取消請求で、債権者は受益者に逸出した財産の返還を求めることができ、それが金銭であれば自分への支払を求めることができる(424条の6第1項・424条の9第1項)。最判平30.12.14は、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時にさかのぼって生ずるものであり、期限の定めのない債務であって発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、取消判決の確定より前にされた履行の請求も412条3項の履行の請求に当たるとした。したがって、受益者は訴訟で返還を請求された時から遅滞となり、遅延損害金もその時から生じる。判決の確定まで遅滞にならないとすると、受益者は争えば争うほど遅延損害金を免れることになり、相当でないからである。本肢は遅滞の始まりを判決確定時とする点で判例とずれている。

上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たる
| 債務 | 遅滞の時期 |
|---|---|
| 確定期限あり | 期限の到来した時(412条1項)。取立債務は債権者の取立てがなければ遅滞しない |
| 不確定期限あり | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方(412条2項) |
| 期限の定めなし | 履行の請求を受けた時(412条3項) |
| 返還時期の定めのない消費貸借 | 催告から相当の期間を経過した時(591条1項・大判昭5.1.29) |
| 詐害行為取消しによる受領金支払債務 | 履行の請求を受けた時(最判平30.12.14) |
| 不法行為による損害賠償債務 | 損害の発生と同時(最判昭37.9.4) |
正しい。不確定期限があるときは、期限の到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う(412条2項)。
412条2項は、債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うと定めており、肢はこの条文のとおりである。確定期限なら期限の到来だけで遅滞になるが(同条1項)、不確定期限では債務者がいつ期限が来たのか分からないことがあるので、到来の事実だけで遅滞の責任を負わせるのは酷である。他方、期限が来たと知りながら履行しない債務者や、請求を受けて期限の到来を知らされた債務者まで保護する必要はないので、請求を受けた時と知った時の早いほうを基準にしている。出題当時の旧412条2項は知った時からとだけ定めていたが、期限到来後の請求で債務者は到来を知ることになると解されており、結論は同じである。

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 確定期限:期限の到来した時(412条1項)
- 不確定期限:期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
- 期限の定めなし:履行の請求を受けた時(412条3項)
- 返還時期の定めのない消費貸借:催告から相当の期間を経過した時(591条1項)
- 不法行為の損害賠償債務:損害の発生と同時に催告なしで遅滞する
正しい。不確定期限があるときは、期限の到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う(412条2項)。
412条2項は、債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うと定めており、肢はこの条文のとおりである。確定期限なら期限の到来だけで遅滞になるが(同条1項)、不確定期限では債務者がいつ期限が来たのか分からないことがあるので、到来の事実だけで遅滞の責任を負わせるのは酷である。他方、期限が来たと知りながら履行しない債務者や、請求を受けて期限の到来を知らされた債務者まで保護する必要はないので、請求を受けた時と知った時の早いほうを基準にしている。出題当時の旧412条2項は知った時からとだけ定めていたが、期限到来後の請求で債務者は到来を知ることになると解されており、結論は同じである。

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 確定期限:期限の到来した時(412条1項)
- 不確定期限:期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
- 期限の定めなし:履行の請求を受けた時(412条3項)
- 返還時期の定めのない消費貸借:催告から相当の期間を経過した時(591条1項)
- 不法行為の損害賠償債務:損害の発生と同時に催告なしで遅滞する
正しい。自働債権は弁済期にあることが必要であるが、受働債権については期限の利益を放棄して弁済期を到来させれば相殺できる(136条2項)。
相殺をするには、双方の債務が弁済期にあること(505条1項)が必要であるが、自働債権と受働債権では意味が違う。自働債権が弁済期になければ、相殺によって相手方の期限の利益を一方的に奪うことになるから、自働債権は現実に弁済期にあることが必要である。これに対し、受働債権の期限は相殺をしようとする者自身のためにあるから、その利益は放棄することができ(136条2項本文)、放棄すれば受働債権の弁済期が到来して相殺に適する状態になる。判例も、受働債権の弁済期が現実に到来していることが必要であり、期限の利益を放棄して初めて相殺に適する状態になるとしている。本肢の自働債権は弁済期の定めのない貸金債権であり、返還の催告をして相当の期間を経過すれば弁済期が来るから(591条1項)自働債権として用いることができ、受働債権の売買代金債務は期限の利益を放棄すれば弁済期が到来する。したがって、本肢は正しい。

期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
正しい。返還時期の定めのない消費貸借で貸主が相当の期間を定めずに催告しても、催告から返還の準備に相当な期間が経過した時から借主は履行遅滞となる(591条1項・大判昭5.1.29)。
期限の定めのない債務は、履行の請求を受けた時から遅滞となるのが原則である(412条3項)。しかし591条1項は、消費貸借で返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができると定める。借主は借りた物を使ってしまい、同じ種類・品質・数量の物を用意して返すことになるので、返す準備のための猶予を与える必要があるからである。貸主が相当の期間を定めずに催告した場合について、判例は、その催告も無効になるわけではなく、催告の時から返還の準備をするのに相当な期間が経過した時に借主は履行遅滞の責任を負うとしている(大判昭5.1.29)。期間を書かなかったというだけで催告の効力を全部否定する必要はなく、相当の期間を置けば借主の利益は守られるからである。肢は正しい。

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
- 確定期限:期限の到来した時(412条1項)
- 不確定期限:期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
- 期限の定めなし:履行の請求を受けた時(412条3項)
- 返還時期の定めのない消費貸借:相当の期間を定めない催告でも、催告から相当の期間を経過した時(591条1項)
正しい。返還時期の定めのない消費貸借で貸主が相当の期間を定めずに催告しても、催告から返還の準備に相当な期間が経過した時から借主は履行遅滞となる(591条1項・大判昭5.1.29)。
期限の定めのない債務は、履行の請求を受けた時から遅滞となるのが原則である(412条3項)。しかし591条1項は、消費貸借で返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができると定める。借主は借りた物を使ってしまい、同じ種類・品質・数量の物を用意して返すことになるので、返す準備のための猶予を与える必要があるからである。貸主が相当の期間を定めずに催告した場合について、判例は、その催告も無効になるわけではなく、催告の時から返還の準備をするのに相当な期間が経過した時に借主は履行遅滞の責任を負うとしている(大判昭5.1.29)。期間を書かなかったというだけで催告の効力を全部否定する必要はなく、相当の期間を置けば借主の利益は守られるからである。肢は正しい。

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
- 確定期限:期限の到来した時(412条1項)
- 不確定期限:期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
- 期限の定めなし:履行の請求を受けた時(412条3項)
- 返還時期の定めのない消費貸借:相当の期間を定めない催告でも、催告から相当の期間を経過した時(591条1項)
誤り。違うのは「その義務の違反により損害が発生した時から遅滞に陥る」の部分である。安全配慮義務違反による債務不履行の損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時から遅滞に陥る(最判昭55.12.18)。
最判昭55.12.18は、雇用契約上の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務について、これは期限の定めのない債務であり、412条3項により、債務者は債権者から履行の請求を受けた時に初めて遅滞に陥るとした。義務違反によって損害が生じた時点では、まだ遅延損害金は生じないのである。債務不履行による損害賠償債務は契約関係から生じる債務であるが、その履行期について新たな期限が定められていない以上、期限の定めのない債務の原則に戻るからである。これに対し、不法行為に基づく損害賠償債務は、催告を要せず損害の発生と同時に遅滞に陥る(最判昭37.9.4)。同じ事故について不法行為と債務不履行のどちらでも請求できる場合があるが、遅延損害金の起算点は構成によって違う。本肢は不法行為の扱いを債務不履行に持ち込んでいる点で誤りである。

債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきである
誤り。違うのは「Aが口頭の提供をしていないときは,Aは債務不履行責任を免れない」の部分である。取立債務では債権者の取立てがあって初めて履行できるから、債権者が取り立てなかったときは、債務者は口頭の提供をしていなくても履行遅滞の責任を負わない。
確定期限のある債務では、債務者は期限が到来した時から遅滞の責任を負うのが原則である(412条1項)。しかし取立債務は、債権者が債務者のもとへ取立てに来るという協力があって初めて、債務者が給付を完了できる債務である。債務者がいつでも引き渡せるように準備をしていても、債権者が取立てに来なければ履行のしようがなく、履行がされないのは債権者の側の不協力による。そのため、履行期に債権者が取立てをしなかった場合には、債務者が口頭の提供をしていなくても、債務者は履行遅滞に陥らず、債務不履行の責任を負わないと解されている。遅滞の責任は、債務者の側で履行できるのにしないことに対して問われるものであり、債権者の協力がないために履行できない状態を債務者の不履行と評価することはできないのである。したがって、口頭の提供をしていなければ責任を免れないとする肢は誤っている。

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
誤り。違うのは「Aが口頭の提供をしていないときは,Aは債務不履行責任を免れない」の部分である。取立債務では債権者の取立てがあって初めて履行できるから、債権者が取り立てなかったときは、債務者は口頭の提供をしていなくても履行遅滞の責任を負わない。
確定期限のある債務では、債務者は期限が到来した時から遅滞の責任を負うのが原則である(412条1項)。しかし取立債務は、債権者が債務者のもとへ取立てに来るという協力があって初めて、債務者が給付を完了できる債務である。債務者がいつでも引き渡せるように準備をしていても、債権者が取立てに来なければ履行のしようがなく、履行がされないのは債権者の側の不協力による。そのため、履行期に債権者が取立てをしなかった場合には、債務者が口頭の提供をしていなくても、債務者は履行遅滞に陥らず、債務不履行の責任を負わないと解されている。遅滞の責任は、債務者の側で履行できるのにしないことに対して問われるものであり、債権者の協力がないために履行できない状態を債務者の不履行と評価することはできないのである。したがって、口頭の提供をしていなければ責任を免れないとする肢は誤っている。

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
誤り。違うのは「あらかじめ履行の請求をすることによって当該債務を履行遅滞に陥れた後,改めてその履行の催告をする必要がある」の部分である。期限の定めのない債務では、1回の催告で債務者を遅滞に陥れると同時に解除の要件としての催告にもなる(大判大6.6.27)。
期限の定めのない債務は、履行の請求を受けた時から遅滞となり(412条3項)、催告による解除(541条)は、債務者がその債務を履行しない場合に相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときにできる。この文言からは、遅滞に陥れるための請求と解除のための催告が別々に要るようにも読める。しかし判例(大判大6.6.27)は、債権者が契約解除の前提として相当の期間を定めて履行を催告したときは、債務者を遅滞に付する意思も明らかであるから、二重に催告をする必要はなく、その催告は債務者を遅滞に付する効力を持つと同時に解除の要件も満たすとした。遅滞は解除権が発生するための要件であって、催告をするための前提ではないから、1回の催告で両方の役割を果たせるのである。同じ内容の催告を2度求めても、債務者に新たな利益はない。本肢は改めて催告をする必要があるとしている点が誤りである。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 期限の定めのない債務の遅滞 | 大判大6.6.27 | 1回の催告で遅滞と解除の要件を兼ねる |
| 同時履行関係にある債務 | 大審院判例 | 催告の際に1度提供すれば、提供を継続しなくても解除できる |
| 催告の期間が不相当 | 最判昭44.4.15 | 催告の時から相当の期間が経過すれば解除できる |
| 期間内の不履行を停止条件とする解除 | 大判明43.12.9 | 催告と同時にした解除の意思表示も有効 |
誤り。違うのは「債務者は、共同相続人全員に対して履行遅滞の責任を負う」の部分である。貸金債権は相続によって相続分に応じて当然に分割されるから、相続人の一人の請求は他の相続人の債権について効力を生じない。
判例は、相続人が数人ある場合に、相続財産中の金銭その他の可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとしている。427条は、数人の債権者がある場合において別段の意思表示がないときは、各債権者はそれぞれ等しい割合で権利を有すると定めており、分割された各債権は互いに独立した別個の債権になる。期限の定めのない債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うが(412条3項)、相続人の一人が全額の弁済を請求しても、その者が権利を持つのは自己の相続分に当たる部分だけであり、他の相続人の債権について履行を請求したことにはならない。分割債権では、一人の債権者について生じた事由は他の債権者に影響しないからである。したがって、債務者は請求をした相続人の分についてだけ遅滞に陥り、共同相続人全員に対して履行遅滞の責任を負うとする肢は誤りである。預貯金債権は当然には分割されず遺産分割の対象となる点で、貸金債権とは扱いが異なる。

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
- 当然に分割される:貸金債権などの可分債権、金銭債務(連帯債務も相続分に応じて分割承継)
- 遺産分割の対象:預貯金債権、相続開始時の金銭
- 各相続人が全部を負う:不動産の引渡義務のような不可分債務
- 遺産とは別の財産:相続開始後の賃料債権
誤り。違うのは「債務者は、共同相続人全員に対して履行遅滞の責任を負う」の部分である。貸金債権は相続によって相続分に応じて当然に分割されるから、相続人の一人の請求は他の相続人の債権について効力を生じない。
判例は、相続人が数人ある場合に、相続財産中の金銭その他の可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとしている。427条は、数人の債権者がある場合において別段の意思表示がないときは、各債権者はそれぞれ等しい割合で権利を有すると定めており、分割された各債権は互いに独立した別個の債権になる。期限の定めのない債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うが(412条3項)、相続人の一人が全額の弁済を請求しても、その者が権利を持つのは自己の相続分に当たる部分だけであり、他の相続人の債権について履行を請求したことにはならない。分割債権では、一人の債権者について生じた事由は他の債権者に影響しないからである。したがって、債務者は請求をした相続人の分についてだけ遅滞に陥り、共同相続人全員に対して履行遅滞の責任を負うとする肢は誤りである。預貯金債権は当然には分割されず遺産分割の対象となる点で、貸金債権とは扱いが異なる。

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
- 当然に分割される:貸金債権などの可分債権、金銭債務(連帯債務も相続分に応じて分割承継)
- 遺産分割の対象:預貯金債権、相続開始時の金銭
- 各相続人が全部を負う:不動産の引渡義務のような不可分債務
- 遺産とは別の財産:相続開始後の賃料債権
正しい。判例は、債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、412条3項により、債務者は債権者から履行の請求を受けた時に初めて遅滞に陥るとした(最判昭55.12.18)。
412条3項は、債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うと定める。最判昭55.12.18は、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求について、債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時に初めて遅滞に陥るとした。債務不履行による損害賠償債務は、本来の債務が姿を変えたものであるが、いつまでに支払うかの期限は定められていないので、期限の定めのない債務の一般原則に従うのである。そのため、遅延損害金は請求を受けた日の翌日から生じ、請求を受けた日が経過した時から遅滞に陥るとする本肢は正しい。これに対し、不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく遅滞に陥るとされている(最判昭37.9.4)。

債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 義務の内容と違反事実の主張立証 | 最判昭56.2.16 | 請求する原告が負う |
| 損害賠償債務の遅滞の時期 | 最判昭55.12.18 | 履行の請求を受けた時から遅滞 |
| 運転者の道路交通法上の注意義務 | 最判昭58.5.27 | 安全配慮義務の内容に含まれない |
| 宿直中の従業員を侵入した第三者が殺害 | 最判昭59.4.10 | 使用者の安全配慮義務違反を認めた |
| 元請企業と下請企業の労働者 | 最判平3.4.11 | 特別な社会的接触の関係に入れば負う |
正しい。善意の不当利得者の返還債務は期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時から遅滞に陥る(412条3項)ので、遅延損害金は請求を受けた日の翌日から生じる。
703条は、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度においてこれを返還する義務を負うと定める。この返還債務は、法律の規定によって当然に生じる債務であり、いつまでに返すという期限は定められていないので、期限の定めのない債務として412条3項に従い、債務者は履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。判例も、善意の不当利得者の返還債務は期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時から遅滞に陥るとしている。善意の受益者は自分が利得を返すべき立場にあることを知らないので、請求を受けるまでは遅滞の責任を負わせるべきではないからである。遅滞に陥る時点は請求を受けた時であるが、遅延損害金は初日を算入せずその翌日から生じるので、請求を受けた日が経過した時から遅滞に陥るとする本肢は正しい。

債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 確定期限:期限の到来した時(412条1項)
- 不確定期限:期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
- 期限の定めなし:履行の請求を受けた時(412条3項)。善意の不当利得者の返還債務も同じ
- 返還時期の定めのない消費貸借:相当の期間を定めない催告でも、催告から相当の期間を経過した時(591条1項)
- 債務不履行による損害賠償債務:履行の請求を受けた時
- 不法行為による損害賠償債務:損害の発生と同時に催告なしで。弁護士費用も不法行為の時
























































































