1次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。会社の設立会社の成立の日から二年以内株式会社の成立後における株式の発行株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)自己株式の処分自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)株式会社における資本金の額の減少資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内会社の組織変更組織変更の効力が生じた日から六箇月以内会社の吸収合併吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内会社の新設合併新設合併の効力が生じた日から六箇月以内会社の吸収分割吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内会社の新設分割新設分割の効力が生じた日から六箇月以内株式会社の株式交換株式交換の効力が生じた日から六箇月以内株式会社の株式移転株式移転の効力が生じた日から六箇月以内株式会社の株式交付株式交付の効力が生じた日から六箇月以内
1 会社の設立会社の成立の日から二年以内
2 株式会社の成立後における株式の発行株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
3 自己株式の処分自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
4 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)
5 株式会社における資本金の額の減少資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内
6 会社の組織変更組織変更の効力が生じた日から六箇月以内
7 会社の吸収合併吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
8 会社の新設合併新設合併の効力が生じた日から六箇月以内
9 会社の吸収分割吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
10 会社の新設分割新設分割の効力が生じた日から六箇月以内
11 株式会社の株式交換株式交換の効力が生じた日から六箇月以内
12 株式会社の株式移転株式移転の効力が生じた日から六箇月以内
13 株式会社の株式交付株式交付の効力が生じた日から六箇月以内
2次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。前項第一号に掲げる行為設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)前項第二号に掲げる行為当該株式会社の株主等前項第三号に掲げる行為当該株式会社の株主等前項第四号に掲げる行為当該株式会社の株主等又は新株予約権者前項第五号に掲げる行為当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者前項第六号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者前項第七号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者前項第八号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者前項第九号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者前項第十号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者前項第十一号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者前項第十二号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等、破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者前項第十三号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者、株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等、破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者
1 前項第一号に掲げる行為設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
2 前項第二号に掲げる行為当該株式会社の株主等
3 前項第三号に掲げる行為当該株式会社の株主等
4 前項第四号に掲げる行為当該株式会社の株主等又は新株予約権者
5 前項第五号に掲げる行為当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者
6 前項第六号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者
7 前項第七号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者
8 前項第八号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者
9 前項第九号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
10 前項第十号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者
11 前項第十一号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者
12 前項第十二号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等、破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者
13 前項第十三号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者、株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等、破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者
この条文の過去問 22問
誤り。違うのは「当該株主総会の決議の取消しの訴えを提起することができる」の部分である。判例は、議案を否決する株主総会の決議の取消しを請求する訴えは不適法とする(最判平28.3.4)。
最判平28.3.4は、会社法が組織に関する訴えについて諸規定を置き、瑕疵のある株主総会等の決議についても決議の日から3か月以内に限り訴えをもって取消しを請求できるとして法律関係の早期安定を図り、併せて被告、認容判決の効力が及ぶ者の範囲、判決の効力などを定めていることから、これらの規定は株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることを前提とするものであるとした。そのうえで、一般に、ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはなく、その決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから、ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると判示し、このことは議案が役員を解任する旨のものであった場合でも異ならないとした。否決の決議を取り消しても解任の効果が生じるわけではなく、改めて解任の議案を審議するほかないからである。したがって、解任の議案が否決された場合に賛成した株主が決議の取消しの訴えを提起できるとする本肢は誤っている。

ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし、当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから、ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当
正しい。会社の吸収合併の無効は、吸収合併の効力が生じた日から6か月以内に訴えをもってのみ主張することができる(828条1項7号)。
会社法828条1項は、会社の組織に関する一定の行為の無効は各号に定める期間内に訴えをもってのみ主張できると定め、その7号に会社の吸収合併を掲げて、期間を吸収合併の効力が生じた日から6か月以内とする。吸収合併の効力が生じると、消滅会社の権利義務は存続会社に包括的に承継され(750条1項)、合併を前提にした取引や株式の流通が積み重なっていくから、誰でもいつでも無効を主張できるとすると法律関係が著しく不安定になる。そこで提訴期間を6か月に限り、原告も各当事会社の株主等・破産管財人・合併を承認しなかった債権者に限定し(828条2項7号)、被告を存続会社として(834条7号)、認容判決に対世効を与え(838条)、効力は将来に向かってのみ失わせる(839条)という形成訴訟の枠に閉じ込めたのである。新設合併(8号)や会社分割・株式交換・株式移転(9号〜12号)も同じく効力発生日から6か月以内とされている。本肢は828条1項7号のとおりであり、正しい。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
- 無効の訴え: 効力発生日から6か月以内、訴えによってのみ(828条1項7号〜13号)。事業譲渡には無い
- 提訴権者: 株主等・破産管財人・承認をしなかった債権者(828条2項)。買取請求をした反対株主も可
- 被告: 吸収合併は存続会社、新設合併は設立会社、吸収分割は分割会社と承継会社、株式交換は両当事会社(834条)
- 判決の効力: 認容判決は対世効(838条)、棄却判決には無い。将来に向かって効力を失う(839条)
- 差止請求: 法令・定款違反+株主の不利益のおそれ(784条の2・796条の2・805条の2)。略式では対価の著しい不当も理由になる。簡易手続の側の株主にはできない
誤り。「自己株式の処分の無効」は会社法上の非訟事件の手続によるものに該当しない。自己株式の処分の無効は会社の組織に関する訴え(828条1項3号)によってのみ主張でき、訴訟手続によるものである。
株式会社の成立後における自己株式の処分の無効は、会社法828条1項3号により、処分の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない会社では1年以内)に訴えをもってのみ主張することができる。原告は当該会社の株主等に限られ(同条2項3号)、被告は当該会社であり(834条3号)、請求を認容する確定判決は第三者に対しても効力を有し(838条)、将来に向かってのみ効力を失わせる(839条)。このように出訴期間・原告・被告・判決の効力を法定して法律関係の画一的な確定と取引の安全を図る形成訴訟であり、処分に無効原因があるかどうかという権利関係の存否を争う以上、裁判所の後見的な裁量で決定を出す非訟事件の手続にはなじまない。自己株式の処分は既存の株式の移転にすぎず新たな出資を伴わないが、会社の支配関係に影響を及ぼす点で募集株式の発行と共通するので、新株発行無効の訴え(828条1項2号)と並ぶ無効の訴えの類型として規定されている。本肢は非訟事件の手続によるものに該当しない。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
- 訴訟手続: 会社の組織に関する訴え(設立・新株発行・自己株式の処分・新株予約権の発行・組織再編の無効、決議の取消し・無効確認・不存在確認、解散の訴え)、役員の解任の訴え(854条)、株式発行の差止め(210条。仮処分と組み合わせる)、違法行為の差止め(360条)、責任追及等の訴え(847条)
- 非訟事件の手続: 株式買取請求の価格の決定(117条2項・786条2項・798条2項など)、譲渡制限株式の売買価格の決定(144条2項)、検査役の選任(306条・358条)、一時役員の選任(346条2項)、少数株主による株主総会の招集の許可(297条4項)、会計帳簿等の閲覧の許可、清算人の選任・解任(478条2項・479条2項)、裁判所の認可を要する社債権者集会の決議(732条)
誤り。違うのは「提起することができない」の部分である。新株予約権の発行の無効の訴えは、会社の株主等のほか新株予約権者も提起できる(会社法828条2項4号)。
会社法828条1項4号は、新株予約権の発行の無効は、発行の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない会社では1年以内)に訴えをもってのみ主張できると定め、同条2項4号は、この訴えを提起できる者を、当該株式会社の株主等又は新株予約権者とする。株主等とは株主、取締役、清算人(監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む)をいう(同項1号)。新株予約権の発行が無効とされれば、発行された新株予約権そのものが将来に向かって効力を失う(839条)ので、新株予約権者は株主と並んで発行の効力に直接の利害を持つ。そこで会社法は、株式の発行の無効の訴え(828条2項2号)では株主等に限られる原告適格を、新株予約権の発行については新株予約権者にも広げた。これに対し、発行の差止め(247条)を請求できるのは不利益を受けるおそれのある株主だけであり、新株予約権者は請求できない。本肢は、新株予約権者が無効の訴えを提起できないとする点で、828条2項4号に反しており誤っている。

次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。(略)四 前項第四号に掲げる行為 当該株式会社の株主等又は新株予約権者
| 手段 | 誰が | 相手・期間 |
|---|---|---|
| 発行の差止め(247条) | 不利益を受けるおそれのある株主。新株予約権者は請求できない | 会社に対し、発行前に請求する |
| 発行の無効の訴え(828条1項4号) | 株主等又は新株予約権者(828条2項4号) | 効力発生日から6か月以内(公開会社でない会社は1年以内) |
誤り。違うのは「事業譲渡の無効」も訴えをもってのみ主張できるとする部分である。訴えをもってのみ無効を主張できるのは会社法828条1項に列挙された吸収分割などであり(同項9号)、事業譲渡は列挙されていないので一般原則により無効を主張できる。
会社法828条1項は、無効の訴えによらなければ無効を主張できない行為を各号に限定して列挙し、吸収分割はその9号に掲げられている。したがって吸収分割の無効は、効力発生日から6か月以内に、株主等・破産管財人・吸収分割について承認をしなかった債権者などの提訴権者(同条2項9号)が訴えをもってのみ主張することができ、無効判決には第三者に対する効力(838条)と将来効(839条)が認められる。これに対し事業譲渡は828条1項の各号に掲げられておらず、無効を主張する方法について特別の規定は無い。一般原則に従い、誰でもいつでも無効を主張できる。判例も、株主総会の特別決議(467条1項)を経ないでされた事業譲渡は無効であり、譲渡会社やその株主・債権者などの利害関係人だけでなく譲受会社も無効を主張でき、譲受会社の無効の主張が信義則に反すると認められる特段の事情が無い限り妨げられないとしている(最判昭61.9.11)。事業譲渡の無効についても訴えをもってのみ主張できるとする本肢は誤りである。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
| 項目 | 吸収分割 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 性質 | 組織法上の行為。部分的包括承継 | 取引行為。個別の移転行為が要る |
| 債務の免責的承継 | 債権者の個別の承諾不要。債権者異議手続で保護(789条1項2号・799条1項2号) | 債権者の承諾が要る。債権者異議手続なし |
| 新株予約権者 | 承継会社の新株予約権を交付でき、買取請求がある(758条5号・787条1項2号) | 規定なし |
| 競業避止義務 | 規定なし | 譲渡会社は20年間(21条1項)。別段の意思表示で免除可 |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えによってのみ(828条1項9号) | 一般原則。誰でもいつでも主張できる(最判昭61.9.11) |
| 残存債権者の直接請求 | あり(759条4項) | あり(23条の2) |
| 事後開示の書面 | 共同で作成し6か月備置き(791条) | 規定なし |
誤り。違うのは「株式の発行の効力が生じた後に株式を取得した株主は」提起「することができない」の部分である。新株発行無効の訴えの原告は当該株式会社の株主等とされ(会社法828条2項2号)、株式をいつ取得したかによる限定はない。
新株発行の効力が生じた後は、その瑕疵は新株発行無効の訴えによってのみ主張でき(会社法828条1項2号。提訴期間は効力発生日から公開会社では6か月、公開会社でない会社では1年)、原告となれるのは当該株式会社の株主等に限られる(同条2項2号)。株主等とは株主、取締役又は清算人(監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む)をいい(同項1号かっこ書)、条文は株主がいつ株式を取得したかで区別していない。したがって、その新株発行で株主となった者はもちろん、効力発生後に株式を譲り受けて株主となった者も、提訴期間内であれば無効の訴えを提起できる。この訴えは会社の資本構成をめぐる法律関係を画一的に確定し(838条の対世効・839条の将来効)、法的安定を図る制度であって、発行時に株主であった者の個別の救済だけを目的とするものではない。持株比率の希釈化という不利益も、株式を取得した者に会社の株主として同じように帰属する。効力発生後に株式を取得した株主の提訴を一律に否定する本肢は誤りである。

次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。(中略)二 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
正しい。設立無効の訴えの認容判決は第三者にも効力を有し(会社法838条)、当事者が訴訟物を自由に処分できる関係にないので、被告は請求を認諾することができない。
会社の設立の無効は訴えをもってのみ主張できる会社の組織に関する行為の無効の訴えであり(会社法828条1項1号)、その請求を認容する確定判決は第三者に対してもその効力を有し(838条)、将来に向かってのみ効力を生じる(839条)。他方、請求の認諾は被告が原告の請求に理由があることを認める訴訟行為で、調書に記載されると確定判決と同一の効力を持つが、それが認められるには、当事者が訴訟物である権利関係を実体法上自由に処分できることが要る。設立無効の訴えでは、会社をめぐる法律関係を画一的に確定し、株主や債権者など多数の第三者の利害を保護する必要があるので、判決の効力が当事者以外にも及ぶ反面、当事者が紛争を自主的に処分する権能は制限され、処分権主義と弁論主義は後退する。認諾を許せば、当事者の合意だけで第三者を巻き込む対世効のある結果が作れることになるからである。したがって被告会社は請求を認諾できず、裁判上の自白も裁判所を拘束しない。裁判例も、吸収合併無効の訴えについて、認容判決に対世効がある以上被告は請求の認諾をなし得ないとしている。本肢は正しい。

会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
- 原告は訴えごとに法定(828条2項など)。被告も訴えごとに法定(834条)
- 管轄は被告となる会社の本店所在地の地方裁判所に専属(835条1項)
- 認容判決は第三者に対しても効力を有する(838条)。棄却判決は当事者間だけ
- 無効・取消しの判決は将来に向かってのみ効力を失う(839条)。決議の取消し・無効確認・不存在確認は対象外
- 対世効があるので、被告は請求の認諾ができず、裁判上の自白も裁判所を拘束しない
誤り。違うのは「当該訴えの利益は失われない」の部分である。決議取消訴訟の係属中に新株予約権が発行されれば、決議取消しの訴えの利益は失われる(最判昭37.1.19参照)。
株主総会決議の取消しの訴えは形成の訴えであり、法定の要件を備えて提起する限り原則として訴えの利益が認められるが、その後の事情の変化で取消判決を得ても実益がなくなれば、訴えの利益は失われる。最判昭37.1.19は、株主以外の者に新株引受権を与える株主総会決議の取消訴訟の係属中に新株が発行された場合、決議取消しの訴えの利益は失われるとした。いったん発行された新株は、決議を取り消す判決が確定しても当然に無効になるわけではなく、その効力を争うには新株発行無効の訴えによらなければならないから、決議だけを取り消しても発行の効力に影響しないからである。新株予約権についても、会社法828条1項4号が新株予約権発行無効の訴えを用意しており、発行された新株予約権の効力はこの訴えで争うことになるから、同じく募集事項を決定した決議の取消しを求める利益は失われる。肢は誤っている。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。…四 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行 新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 後婚の取消訴訟中に後婚が離婚で解消 | 最判昭57.9.28 | 特段の事情がない限り利益を失う |
| 役員選任決議の取消訴訟中に役員が全員退任 | 最判昭45.4.2 | 特別の事情がない限り利益を失う |
| 新株発行の決議取消訴訟中に新株を発行 | 最判昭37.1.19 | 利益を失い、発行無効の訴えで争う |
| 計算書類承認決議の取消訴訟中に次期以降の承認 | 最判昭58.6.7 | 利益を失わない |
正しい。判例は、新株発行無効の訴えの出訴期間を制限した趣旨は新株発行に伴う複雑な法律関係を早期に確定することにあるので、出訴期間の経過後に新たな無効事由を追加して主張することは許されないとしている(最判平6.7.18)。
新株発行(募集株式の発行等)の無効は訴えをもってのみ主張でき、その出訴期間は株式の発行の効力が生じた日から、公開会社では6か月以内、公開会社でない株式会社では1年以内に制限されている(会社法828条1項2号)。判例は、出訴期間の経過後に新たな無効の事由を追加して主張することは許されないとする(最判平6.7.18)。出訴期間を制限した趣旨は新株発行に伴う複雑な法律関係を早期に確定させることにあるところ、期間経過後も新たな無効事由の主張を認めれば法律関係が不安定な状態に置かれ、この趣旨が失われるので、同規定は訴えの提起自体だけでなく無効事由の主張をも制限したものと解すべきである、というのが理由である。訴えの提起が期間内であっても、期間後の追加主張は許されない点に意義がある。この判例は改正前商法の規定に関するものであるが、出訴期間の制限の趣旨は現行の828条1項2号にも同じく当てはまり、結論は変わらない。株主総会決議取消しの訴えについて提訴期間後の取消事由の追加を許さない判例と同じ考え方である。本肢は正しい。

新株発行の無効の訴えにおいて、商法二八〇条ノ一五第一項の出訴期間経過後に新たな無効の事由を追加して主張することは許されない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 他人名義で株式を引き受けた | 最判昭42.11.17 | 実質上の引受人(名義借用者)が株主になる |
| 株券の文書を作成したが株主に交付していない | 最判昭40.11.16 | 株主に交付した時に初めて株券になる(交付時説) |
| 会社の承認を得ない譲渡制限株式の譲渡・譲渡担保 | 最判昭48.6.15 | 会社に対しては効力を生じないが、当事者間では有効 |
| 従業員持株制度で退職時に指定する者へ譲渡する合意 | 最判平7.4.25 | 127条に違反せず公序良俗にも反しないので有効 |
| 新株発行無効の訴えで出訴期間後に無効事由を追加 | 最判平6.7.18 | 許されない |
正しい。判例は、新株発行無効の訴えの出訴期間を制限した趣旨は新株発行に伴う複雑な法律関係を早期に確定することにあるので、出訴期間の経過後に新たな無効事由を追加して主張することは許されないとしている(最判平6.7.18)。
新株発行(募集株式の発行等)の無効は訴えをもってのみ主張でき、その出訴期間は株式の発行の効力が生じた日から、公開会社では6か月以内、公開会社でない株式会社では1年以内に制限されている(会社法828条1項2号)。判例は、出訴期間の経過後に新たな無効の事由を追加して主張することは許されないとする(最判平6.7.18)。出訴期間を制限した趣旨は新株発行に伴う複雑な法律関係を早期に確定させることにあるところ、期間経過後も新たな無効事由の主張を認めれば法律関係が不安定な状態に置かれ、この趣旨が失われるので、同規定は訴えの提起自体だけでなく無効事由の主張をも制限したものと解すべきである、というのが理由である。訴えの提起が期間内であっても、期間後の追加主張は許されない点に意義がある。この判例は改正前商法の規定に関するものであるが、出訴期間の制限の趣旨は現行の828条1項2号にも同じく当てはまり、結論は変わらない。株主総会決議取消しの訴えについて提訴期間後の取消事由の追加を許さない判例と同じ考え方である。本肢は正しい。

新株発行の無効の訴えにおいて、商法二八〇条ノ一五第一項の出訴期間経過後に新たな無効の事由を追加して主張することは許されない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 他人名義で株式を引き受けた | 最判昭42.11.17 | 実質上の引受人(名義借用者)が株主になる |
| 株券の文書を作成したが株主に交付していない | 最判昭40.11.16 | 株主に交付した時に初めて株券になる(交付時説) |
| 会社の承認を得ない譲渡制限株式の譲渡・譲渡担保 | 最判昭48.6.15 | 会社に対しては効力を生じないが、当事者間では有効 |
| 従業員持株制度で退職時に指定する者へ譲渡する合意 | 最判平7.4.25 | 127条に違反せず公序良俗にも反しないので有効 |
| 新株発行無効の訴えで出訴期間後に無効事由を追加 | 最判平6.7.18 | 許されない |
正しい。株主総会の決議の取消しの訴えを提起できる株主等には監査役が含まれ(会社法831条1項・828条2項1号)、この提訴権は各監査役の固有の権限なので、監査役会の同意は要らない。
株主総会の決議の取消しの訴えを提起できるのは株主等である(会社法831条1項柱書前段)。株主等とは828条2項1号のかっこ書が定義する概念であり、監査役設置会社では株主・取締役・監査役・清算人を指す。したがって監査役は自ら決議の取消しの訴えを提起することができる。この提訴権は、監査役が適法性監査を全うするために各監査役に個別に与えられた固有の権限であり、監査役会の権限(390条2項)とはされていない。監査役会は監査の方針や監査役の職務の執行に関する事項を決定できるが(同項3号)、その決定は監査役の権限の行使を妨げることはできない(同項ただし書)。監査役は独任制の機関だからである。よって監査役が決議の取消しの訴えを提起するにあたって監査役会の同意を得る必要はない。他の監査役が反対しても提訴は妨げられず、監査役会の多数決で特定の監査役の提訴を封じることもできない点に、独任制の実質的な意味がある。肢はこのとおりである。

ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。
| 事項 | 誰が決めるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 監査の方針・調査の方法の決定、監査報告の作成、常勤監査役の選定・解職 | 監査役会 | 390条2項 |
| 監査役の選任議案の提出への同意、選任の請求 | 監査役会 | 343条1項〜3項 |
| 子会社調査、報告徴収、違法行為の差止め、決議の取消しの訴え | 各監査役(監査役会の同意は不要) | 381条・385条・831条、390条2項ただし書 |
| 会社が代表訴訟で被告取締役を補助参加するときの同意 | 各監査役(全員) | 849条3項1号 |
正しい。株主総会の決議の取消しの訴えを提起できる株主等には監査役が含まれ(会社法831条1項・828条2項1号)、この提訴権は各監査役の固有の権限なので、監査役会の同意は要らない。
株主総会の決議の取消しの訴えを提起できるのは株主等である(会社法831条1項柱書前段)。株主等とは828条2項1号のかっこ書が定義する概念であり、監査役設置会社では株主・取締役・監査役・清算人を指す。したがって監査役は自ら決議の取消しの訴えを提起することができる。この提訴権は、監査役が適法性監査を全うするために各監査役に個別に与えられた固有の権限であり、監査役会の権限(390条2項)とはされていない。監査役会は監査の方針や監査役の職務の執行に関する事項を決定できるが(同項3号)、その決定は監査役の権限の行使を妨げることはできない(同項ただし書)。監査役は独任制の機関だからである。よって監査役が決議の取消しの訴えを提起するにあたって監査役会の同意を得る必要はない。他の監査役が反対しても提訴は妨げられず、監査役会の多数決で特定の監査役の提訴を封じることもできない点に、独任制の実質的な意味がある。肢はこのとおりである。

ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。
| 事項 | 誰が決めるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 監査の方針・調査の方法の決定、監査報告の作成、常勤監査役の選定・解職 | 監査役会 | 390条2項 |
| 監査役の選任議案の提出への同意、選任の請求 | 監査役会 | 343条1項〜3項 |
| 子会社調査、報告徴収、違法行為の差止め、決議の取消しの訴え | 各監査役(監査役会の同意は不要) | 381条・385条・831条、390条2項ただし書 |
| 会社が代表訴訟で被告取締役を補助参加するときの同意 | 各監査役(全員) | 849条3項1号 |
誤り。違うのは「当初から存在しなかったことになる」の部分である。設立無効の判決には遡及効がなく、設立は将来に向かって効力を失い、会社は清算に入る(会社法839条・475条2号)。
会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に訴えをもってのみ主張でき(828条1項1号)、原告は株主・取締役などの株主等に限られ(同条2項1号)、認容判決は第三者に対しても効力を持つ(838条)。そして839条は、この訴えの請求を認容する判決が確定したときは、無効とされた行為は将来に向かってその効力を失うと定め、会社の設立が無効とされた場合も設立を含めてこの扱いになることを括弧書きで明記する。会社は成立後、取引や株式の発行を重ねて多数の法律関係を積み上げているので、無効を遡らせて一挙に覆せば取引の安全を害し収拾がつかない。そこで判決の確定までは会社は有効に存在したものと扱い、それ以後の処理を清算に委ねたのである。設立無効の判決の確定は解散事由に準じ(475条2号)、会社は清算の目的の範囲内で清算の結了まで存続するものとみなされる(476条)。当初から存在しなかったことになるとする本肢は、この将来効の規律に反する。

会社の組織に関する訴え(中略)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。
- 提訴期間: 会社の成立の日から2年以内(828条1項1号)
- 原告: 株主・取締役・清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も(828条2項1号)。会社債権者は提起できない
- 被告: 設立した会社(834条1号)。認容判決は第三者にも及ぶ(838条)
- 判決の効力: 遡及せず将来に向かって効力を失う(839条)。会社は清算に入り、清算の目的の範囲内で存続するものとみなされる(475条2号・476条)
誤り。違うのは事業譲渡も「訴えによらなければその無効を主張することができない」とする部分である。吸収合併の無効は訴えをもってのみ主張できるが(会社法828条1項7号)、事業譲渡には無効の訴えの制度が無い。
吸収合併については、法律関係を画一的に確定し法的安定を保つために、無効の主張の方法・期間・主張権者が制限されている。合併の無効は効力発生日から6か月以内に訴えをもってのみ主張でき(会社法828条1項7号)、提訴権者は当事会社の株主、取締役、破産管財人、承認をしなかった債権者などに限られる(同条2項7号)。認容判決は第三者にも効力が及び(838条)、遡及しない(839条)。本肢の前段は正しい。しかし事業譲渡は組織法上の行為ではなく取引法上の契約なので、これに対応する無効の訴えは会社法に用意されていない。事業譲渡の効力を争う者は、民法の一般原則に従い、意思表示の瑕疵や、株主総会の特別決議(467条1項1号・2号)を欠くことなどを理由に、訴えによらなくても給付訴訟の抗弁や前提問題としていつでも無効を主張できる。判例も、株主総会の承認決議を欠く事業譲渡は絶対的に無効であり、何人との関係でも無効であるとする(最大判昭61.9.11)。事業譲渡についても訴えによる必要があるとする本肢は誤りである。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。(略)
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
| 項目 | 吸収合併 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 相手方 | 会社に限る(2条27号) | 会社でなくてよい。個人商人でもよい(24条参照) |
| 承継の仕方 | 効力発生日に権利義務の全部を包括承継(750条1項) | 取引法上の契約。登記・通知・承諾など個別の移転行為が要る |
| 債務 | 債権者の個別の同意なしに移る。債権者異議手続で保護(789条・799条) | 免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条) |
| 対価 | 株式・社債・金銭など何でもよい(749条1項2号) | 制限なし。金銭に限られない |
| 消滅会社・譲渡会社 | 消滅会社は当然に解散し、清算なしに消滅(471条4号・475条1号括弧書) | 全部を譲渡しても当然には解散しない |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えのみ(828条1項7号) | 訴えによらず誰でもいつでも主張できる(最大判昭61.9.11) |
誤り。違うのは「当初から存在しなかったことになる」の部分である。設立無効の判決には遡及効がなく、設立は将来に向かって効力を失い、会社は清算に入る(会社法839条・475条2号)。
会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に訴えをもってのみ主張でき(828条1項1号)、原告は株主・取締役などの株主等に限られ(同条2項1号)、認容判決は第三者に対しても効力を持つ(838条)。そして839条は、この訴えの請求を認容する判決が確定したときは、無効とされた行為は将来に向かってその効力を失うと定め、会社の設立が無効とされた場合も設立を含めてこの扱いになることを括弧書きで明記する。会社は成立後、取引や株式の発行を重ねて多数の法律関係を積み上げているので、無効を遡らせて一挙に覆せば取引の安全を害し収拾がつかない。そこで判決の確定までは会社は有効に存在したものと扱い、それ以後の処理を清算に委ねたのである。設立無効の判決の確定は解散事由に準じ(475条2号)、会社は清算の目的の範囲内で清算の結了まで存続するものとみなされる(476条)。当初から存在しなかったことになるとする本肢は、この将来効の規律に反する。

会社の組織に関する訴え(中略)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。
- 提訴期間: 会社の成立の日から2年以内(828条1項1号)
- 原告: 株主・取締役・清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も(828条2項1号)。会社債権者は提起できない
- 被告: 設立した会社(834条1号)。認容判決は第三者にも及ぶ(838条)
- 判決の効力: 遡及せず将来に向かって効力を失う(839条)。会社は清算に入り、清算の目的の範囲内で存続するものとみなされる(475条2号・476条)
誤り。違うのは事業譲渡も「訴えによらなければその無効を主張することができない」とする部分である。吸収合併の無効は訴えをもってのみ主張できるが(会社法828条1項7号)、事業譲渡には無効の訴えの制度が無い。
吸収合併については、法律関係を画一的に確定し法的安定を保つために、無効の主張の方法・期間・主張権者が制限されている。合併の無効は効力発生日から6か月以内に訴えをもってのみ主張でき(会社法828条1項7号)、提訴権者は当事会社の株主、取締役、破産管財人、承認をしなかった債権者などに限られる(同条2項7号)。認容判決は第三者にも効力が及び(838条)、遡及しない(839条)。本肢の前段は正しい。しかし事業譲渡は組織法上の行為ではなく取引法上の契約なので、これに対応する無効の訴えは会社法に用意されていない。事業譲渡の効力を争う者は、民法の一般原則に従い、意思表示の瑕疵や、株主総会の特別決議(467条1項1号・2号)を欠くことなどを理由に、訴えによらなくても給付訴訟の抗弁や前提問題としていつでも無効を主張できる。判例も、株主総会の承認決議を欠く事業譲渡は絶対的に無効であり、何人との関係でも無効であるとする(最大判昭61.9.11)。事業譲渡についても訴えによる必要があるとする本肢は誤りである。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。(略)
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
| 項目 | 吸収合併 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 相手方 | 会社に限る(2条27号) | 会社でなくてよい。個人商人でもよい(24条参照) |
| 承継の仕方 | 効力発生日に権利義務の全部を包括承継(750条1項) | 取引法上の契約。登記・通知・承諾など個別の移転行為が要る |
| 債務 | 債権者の個別の同意なしに移る。債権者異議手続で保護(789条・799条) | 免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条) |
| 対価 | 株式・社債・金銭など何でもよい(749条1項2号) | 制限なし。金銭に限られない |
| 消滅会社・譲渡会社 | 消滅会社は当然に解散し、清算なしに消滅(471条4号・475条1号括弧書) | 全部を譲渡しても当然には解散しない |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えのみ(828条1項7号) | 訴えによらず誰でもいつでも主張できる(最大判昭61.9.11) |
誤り。違うのは「吸収分割の無効の訴えを提起することはできない」の部分である。反対株主は株式買取請求ができるとともに(会社法785条1項)、株主として吸収分割の無効の訴えも提起できる(828条2項9号)。
吸収分割株式会社の反対株主は、分割会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法785条1項)。分割に反対する株主に投下資本を回収して会社から離脱する道を保障する制度である。他方、吸収分割の無効の訴えは、効力発生日において分割会社又は承継会社の株主等であった者、分割会社又は承継会社の株主等・破産管財人・分割を承認しなかった債権者が提起できる(828条2項9号)。反対株主も株主である以上、この原告適格を持つ。買取請求は分割そのものは有効であることを前提に株主が去る手段であり、無効の訴えは分割の手続や内容の瑕疵を正して分割自体を覆す手段であって、目的も要件も異なる別の制度であるから、一方があるからといって他方が排除される関係にはない。買取請求をした株主について無効の訴えの原告適格を否定する規定も無い。したがって、反対株主は無効の訴えを提起できないとする肢は誤っている。

前項第九号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
- 提訴期間:効力発生日から6か月以内、訴えによってのみ(828条1項7号〜13号)
- 提訴権者:効力発生日の株主等・当事会社の株主等・破産管財人・承認をしなかった債権者(828条2項)。買取請求をした反対株主も可
- 被告:吸収合併は存続会社、新設合併は設立会社、吸収分割は分割会社と承継会社、株式交換は両当事会社(834条)
- 判決の効力:認容判決は対世効(838条)。将来に向かって効力を失い遡及しない(839条)
正しい。吸収分割の無効は、効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張することができる(会社法828条1項9号)。
吸収分割は、効力発生日に分割契約の定めに従って権利義務が承継され(会社法759条1項)、その上に承継会社の取引や株主の変動など多数の法律関係が積み重なっていく。手続や内容に瑕疵があるからといって誰でもいつでも無効を主張できるとすれば、これらの法律関係が不安定になる。そこで828条1項は、会社の組織に関する行為の無効は訴えをもってのみ主張できるとし、吸収分割についてはその効力が生じた日から6か月以内に提起しなければならないと定める(同項9号)。提訴期間を限り、主張方法を訴えに限定することで、無効の主張を早期にまとめて処理し、法律関係を画一的に確定させる趣旨である。認容判決は第三者に対しても効力を有し(838条)、将来に向かって効力を失わせる(839条)。提訴できるのは分割会社・承継会社の株主等や承認をしなかった債権者などであり(828条2項9号)、被告は分割契約をした両会社である(834条9号)。したがって肢は条文のとおりであり、正しい。

会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
- 提訴期間:効力発生日から6か月以内、訴えによってのみ(828条1項7号〜13号)
- 提訴権者:効力発生日の株主等・当事会社の株主等・破産管財人・承認をしなかった債権者(828条2項)。買取請求をした反対株主も可
- 被告:吸収合併は存続会社、新設合併は設立会社、吸収分割は分割会社と承継会社、株式交換は両当事会社(834条)
- 判決の効力:認容判決は対世効(838条)。将来に向かって効力を失い遡及しない(839条)
誤り。違うのは「会社債権者」が提起でき、「会社の成立の日から1年以内」とする部分である。設立無効の訴えは会社の成立の日から2年以内に提起しなければならず(会社法828条1項1号)、会社債権者は原告になれない(同条2項1号)。
肢の「委員会設置会社」は出題当時の名称であり、現行法の指名委員会等設置会社に読み替える。会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張することができる(会社法828条1項1号)。設立無効の訴えを提起できるのは、設立する会社の株主、取締役、清算人であり、監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も加わる(同条2項1号)。会社債権者は原告適格を持たない。設立の無効は会社の内部の手続の瑕疵を争うものであり、認容判決が確定しても将来に向かって効力を失うだけで(839条)、会社は清算に入り(475条2号)、債権者は清算手続で弁済を受けられるので、債権者に訴えを認める必要が無いからである。肢は、提訴期間を1年とし、会社債権者を原告に加えている点で二重に誤っている。指名委員会等設置会社でない会社という限定は、執行役が原告に入らないことを示すだけで、期間や債権者の扱いには関係しない。したがって肢は誤っている。

前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
- 提訴期間:会社の成立の日から2年以内(828条1項1号)
- 原告:株主・取締役・清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も(828条2項1号)。会社債権者は不可
- 被告:設立する会社(834条1号)
- 判決の効力:認容判決は第三者にも及ぶ(838条)。遡及せず将来に向かって効力を失う(839条)。会社は清算に入る(475条2号)
誤り。違うのは「会社法が定める会社の組織に関する行為の無効の訴えをもってのみ,主張することができる」の部分である。無効の訴えが用意されているのは資本金の額の減少であり(会社法828条1項5号)、準備金の額の減少にはこの制度がない。
会社法828条1項は、会社の組織に関する行為のうち同項各号に掲げるものの無効は、各号に定める期間内に訴えをもってのみ主張できるとし、5号に株式会社における資本金の額の減少を挙げて、効力発生日から6か月以内の無効の訴えに限っている。資本金の額は登記事項であり(911条3項5号)、その減少は債権者異議手続を経て多数の利害関係人に影響を及ぼすから、無効の主張を訴えに集中させ、認容判決に対世効と将来効を持たせて法律関係を画一的に処理する必要がある。これに対し、資本準備金の額の減少は828条1項の各号に掲げられておらず、無効の訴えの制度はない。準備金の額は登記事項ではなく、定時株主総会で欠損の額の範囲内で減少する場合には債権者異議手続も要らないから(449条1項ただし書)、提訴期間を区切って無効の主張を制限するまでの必要がないと考えられたのである。したがって、資本準備金の額の減少の手続に瑕疵があるときは、一般原則に従い、剰余金の配当に関する支払請求訴訟などの中で無効を主張することができる。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内
| 資本金の額の減少 | 準備金の額の減少 | |
|---|---|---|
| 決議 | 株主総会の特別決議(309条2項9号)。定時総会で欠損の範囲内なら普通決議 | 株主総会の普通決議(448条1項) |
| 債権者異議手続 | 常に要る(449条1項) | 原則要る。全部を資本金にするとき、定時総会で欠損の額の範囲内のときは不要 |
| 登記 | 資本金の額は登記事項(911条3項5号) | 準備金の額は登記事項でない |
| 無効の主張 | 無効の訴えのみ(828条1項5号。6か月以内) | 訴えの制度なし。一般原則で主張できる |
誤り。違うのは「会社は不存在となり,誰でもいつでも会社が存在しないことを主張することができる」の部分である。定款の絶対的記載事項の欠缺や認証の欠如は設立無効原因にとどまり、設立の無効は成立の日から2年以内の設立無効の訴えによってのみ主張できる(会社法828条1項1号)。
会社法828条1項1号は、会社の設立の無効は会社の成立の日から2年以内に訴えをもってのみ主張することができると定め、原告は株主・取締役などに限られる(同条2項1号)。設立の登記によって会社が成立し、その後に取引や株式の流通が積み重なる以上、設立手続の瑕疵があっても、無効の主張を一定の期間と訴えに集中させて法律関係を画一的に処理する必要があるからである。定款の絶対的記載事項(27条)が欠けている場合や、公証人の認証(30条1項)がない場合は、設立手続の重大な瑕疵であり設立無効原因に当たるが、設立の実体がおよそ存在しないわけではないので、設立無効の訴えによって争うべき場合であり、訴えによらずに誰でもいつでも無効を主張できるものではない。これに対して、設立手続を全く欠くのに設立の登記だけがされているような場合は会社の不存在であり、設立無効の訴えによらずに誰でもいつでも不存在を主張できると解されているが、本肢の場合はこれに当たらない。肢は無効原因と不存在を取り違えており誤りである。

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。一 会社の設立 会社の成立の日から二年以内
- 提訴期間:会社の成立の日から2年以内(828条1項1号)
- 原告:株主・取締役・清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も(828条2項1号)。会社債権者は不可
- 被告:設立する会社(834条1号)
- 判決の効力:認容判決は第三者にも及ぶ(838条)。遡及せず将来に向かって効力を失う(839条)。会社は清算に入る(475条2号)
- 会社の不存在:設立手続を全く欠くのに登記だけがある場合。訴えによらず誰でもいつでも主張できる
正しい。新株発行不存在確認の訴え(会社法829条1号)には出訴期間の定めがなく、判例も新株発行無効の訴えの出訴期間の規定は類推適用されないとする(最判平15.3.27)。
会社法829条1号は、株式会社の成立後における株式の発行について、その行為が存在しないことの確認を訴えをもって請求することができると定めるが、828条1項2号の新株発行無効の訴えと異なり、出訴期間を定めていない。新株発行無効の訴えは、発行された株式を前提に取引が積み重なることを考えて、公開会社では6か月、公開会社でない会社では1年という短い出訴期間で効力を早期に確定させる仕組みである。これに対して新株発行の不存在は、新株発行の登記はあるがその実体がおよそ存在しない場合であり、不存在は不存在確認の訴えによらなくても、それを前提とする他の訴訟の中でいつでも主張できる。そのため、不存在確認の訴えだけに出訴期間を設けても、期間の経過によって新株発行の存否が終局的に確定するわけではなく、効力の早期確定という出訴期間の目的を達することができない。最判平15.3.27は、この理由から新株発行無効の訴えの出訴期間に関する規定を不存在確認の訴えに類推適用すべきではないとした。会社法829条が出訴期間を置いていないのもこの判例の考え方に沿う。肢は正しい。

新株発行不存在確認の訴えは、新株発行に瑕疵があるためにこれを無効とすることを求める新株発行無効の訴えと異なり、外観にかかわらず新株発行の実体が存しない場合にその不存在の確認を求めるものであるが、新株発行の不存在はこれを前提とする訴訟においていつでも主張することができるから、新株発行不存在確認の訴えの出訴期間を制限しても、同期間の経過により新株発行の存否が終局的に確定することにはならないのであり、新株発行の効力を早期に確定させるために設けられた出訴期間に関する規定を類推適用する合理的な根拠を欠くというべきだからである。
| 新株発行無効の訴え(828条1項2号) | 新株発行不存在確認の訴え(829条1号) | |
|---|---|---|
| 対象 | 発行の実体はあるが瑕疵がある | 発行の実体がない(登記だけがあるなど) |
| 出訴期間 | 効力発生日から6か月(公開会社でない会社は1年) | 制限なし |
| 原告 | 株主等(828条2項2号) | 制限なし(確認の利益があれば) |
| 認容判決の効力 | 対世効(838条)・将来効(839条) | 対世効(838条) |



























