1募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。
2募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。
3募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
4出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利の譲渡は、株式会社に対抗することができない。
5募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。
この条文の過去問 3問
正しい。募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない(会社法208条3項)。
会社法208条3項は、募集株式の引受人は、払込み又は給付(出資の履行)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができないと定める。引受人の側から一方的に相殺の意思表示をして払込みに代えることは許されない。現実の財産の拠出によって会社財産を確保するためであり、また、引受人が会社に対して持つ債権の実質的な価値が額面どおりとは限らないので、これを額面のまま払込みに充てることを認めると会社債権者や他の株主の利益を害するおそれがあるからである。禁じられるのは引受人からの相殺であり、会社の側からする相殺まで禁じる趣旨ではないと解されている。また、引受人が会社に対して持つ金銭債権を現物出資の目的とすること(199条1項3号)は可能であり、弁済期が到来した金銭債権について負債の帳簿価額を超えない価額を定めるときは検査役の調査も要らない(207条9項5号)。本肢は208条3項の内容をそのまま述べており、正しい。

募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
正しい。募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と会社に対する債権とを相殺することができない(会社法208条3項)。
会社法208条3項は、募集株式の引受人は、払込み又は現物出資財産の給付をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができないと定める。株式の発行は会社に新たな財産を現実に流入させる取引であり、引受人が会社に対する既存の債権と出資の履行義務を相殺することを認めれば、会社には財産が入らないまま株式だけが発行され、資本の充実が害される。そこで引受人の側からの相殺を禁じたのである。禁じられているのは引受人の側からの一方的な相殺であり、会社の側から相殺することや、引受人と会社が合意して相殺することまで禁じる趣旨ではないと解されている。また、会社に対する金銭債権を現物出資の目的として給付し、株式を取得する方法(いわゆるデット・エクイティ・スワップ)は、相殺ではなく現物出資として検査役の調査などの規制(207条)の下で認められており、弁済期が到来した債権で価額が負債の帳簿価額を超えないときは検査役の調査も要らない(同条9項5号)。肢は引受人側からの相殺の禁止を述べており正しい。

募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
誤り。違うのは「募集株式の株主となる権利を法律上当然に失うものではない」の部分である。募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、それをすることによって株主となる権利を当然に失う(会社法208条5項)。
会社法208条5項は、募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失うと定める。払込期日が定められている場合に引受人がその期日に払込みをしなければ、会社が催告や失権の通知をするまでもなく、法律上当然に失権する。会社の設立の場面では、発起人が出資を履行しないときは他の発起人が期日を定めて履行を催告し、その期日までに履行しないと失権するという手続が置かれているが(36条)、これは発起人が設立の仲間として互いに催告しあう関係にあるからである。募集株式の引受人は設立時募集株式の引受人(63条3項)と同じく、会社との関係では募集に応じた外部の者にすぎず、払込期日に遅れた引受人をいちいち催告して待つ必要はない。失権した株式は発行されなかったことになり、会社は残りの株式だけを発行すればよい。払込期間が定められている場合には期間内に履行しなければ同じく失権する。肢は募集株式の引受人に発起人と同じ催告の手続があるかのように述べており誤りである。

募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。
| 発起人(36条) | 設立時募集株式の引受人(63条3項) | 募集株式の引受人(208条5項) | |
|---|---|---|---|
| 催告 | 他の発起人が期日を定めて催告 | 不要 | 不要 |
| 失権の時期 | 催告した期日までに履行しないとき | 払込期日・期間内に履行しないとき | 払込期日・期間内に履行しないとき |
| 性質 | 催告を経て失権 | 当然に失権 | 当然に失権 |