1株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
2特別支配株主は、前項の規定による請求(以下この章及び第八百四十六条の二第二項第一号において「株式売渡請求」という。)をするときは、併せて、その株式売渡請求に係る株式を発行している株式会社(以下「対象会社」という。)の新株予約権の新株予約権者(対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
3特別支配株主は、新株予約権付社債に付された新株予約権について前項の規定による請求(以下「新株予約権売渡請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。
この条文の過去問 3問
誤り。違うのは「いずれの手法を用いる場合も、A社において株主総会の特別決議が必要である」の部分である。特別支配株主の株式等売渡請求では対象会社の承認で足り、取締役会設置会社では取締役会の決議による(179条の3第1項・3項)。
株式の併合をするときは、その都度、併合の割合・効力発生日などを株主総会の決議で定めなければならず(会社法180条2項)、この決議は特別決議である(309条2項4号)。全部取得条項付種類株式の全部を取得する場合も、取得対価などを株主総会で定める必要があり(171条1項)、特別決議による(309条2項3号)。これに対し、特別支配株主の株式等売渡請求は、対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配株主が、対象会社を介さずに少数株主の全員に対して直接その株式の売渡しを請求する制度である(179条1項)。対象会社に求められるのは通知を受けたうえでの承認にとどまり(179条の3第1項)、取締役会設置会社ではその承認は取締役会の決議によれば足りる(同条3項)。議決権の10分の9以上を持つ株主からの請求であれば株主総会を開いても結果は決まっているからであり、少数株主の保護は差止請求(179条の7)や売買価格決定の申立て(179条の8)などで図られる。したがって、いずれの手法でも特別決議が必要とする本肢は誤りである。

特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第一項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。
3 取締役会設置会社が第一項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。
| 項目 | 株式の併合 | 全部取得条項付種類株式の取得 | 特別支配株主の株式等売渡請求 |
|---|---|---|---|
| 株主総会の特別決議 | 要る(180条2項・309条2項4号) | 要る(171条1項・309条2項3号)。取締役が理由を説明(171条3項) | 要らない。対象会社の承認=取締役会設置会社では取締役会の決議(179条の3) |
| 端数の処理 | 競売か、裁判所の許可を得た売却。申立ては取締役全員の同意(235条2項・234条2項) | 同じ(173条1項・234条1項2号・2項) | 端数は生じない |
| 新株予約権 | 取得条項がなければ当然には取得できない | 同じ | 併せて売渡しを請求できる(179条2項) |
正しい。特別支配株主は株式売渡請求と併せて新株予約権の全部の売渡しを請求できる(179条2項)が、株式の併合と全部取得条項付種類株式の取得は株式を対象とする制度で、新株予約権を当然に取得できる規定はない。
特別支配株主は、株式売渡請求(会社法179条1項)をするときは、これと併せて、対象会社の新株予約権者の全員に対し、その有する新株予約権の全部を自己に売り渡すことを請求することができる(179条2項)。新株予約権付社債に付された新株予約権については社債も併せて請求しなければならない(同条3項)。新株予約権が残ると将来の権利行使によって完全子会社の関係が崩れてしまうため、株式と一緒に整理できるようにしたものである。これに対し、株式の併合(180条以下)と全部取得条項付種類株式の取得(171条以下)は、いずれも既に発行された株式を対象とする制度であり、これに伴って新株予約権を会社が当然に取得できるとする規定は置かれていない。したがって新株予約権を消すには、新株予約権の内容として一定の事由が生じたことを条件に会社が取得できる旨の取得条項(236条1項7号)が定められている必要があり、それがなければ新株予約権者との個別の合意による取得などによるほかない。両手法の違いを述べた本肢は正しい。

特別支配株主は、前項の規定による請求(以下この章及び第八百四十六条の二第二項第一号において「株式売渡請求」という。)をするときは、併せて、その株式売渡請求に係る株式を発行している株式会社(以下「対象会社」という。)の新株予約権の新株予約権者(対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
| 項目 | 株式の併合 | 全部取得条項付種類株式の取得 | 特別支配株主の株式等売渡請求 |
|---|---|---|---|
| 株主総会の特別決議 | 要る(180条2項・309条2項4号) | 要る(171条1項・309条2項3号)。取締役が理由を説明(171条3項) | 要らない。対象会社の承認=取締役会設置会社では取締役会の決議(179条の3) |
| 端数の処理 | 競売か、裁判所の許可を得た売却。申立ては取締役全員の同意(235条2項・234条2項) | 同じ(173条1項・234条1項2号・2項) | 端数は生じない |
| 新株予約権 | 取得条項がなければ当然には取得できない | 同じ | 併せて売渡しを請求できる(179条2項) |
誤り。違うのは「B社は、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いることができる」の部分である。合算できるのは発行済株式の全部を有する特別支配株主完全子法人の分だけであり(179条1項)、議決権の3分の2しか持たないD社の分は足せないから、B社は10分の9に達しない。
株式等売渡請求ができる特別支配株主とは、対象会社の総株主の議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を、その者及び特別支配株主完全子法人が有している場合におけるその者をいう(会社法179条1項)。特別支配株主完全子法人とは、その者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人であり、完全子会社に限られる。本肢ではB社自身が有するA社の議決権は10分の7にすぎない。D社はA社の議決権の10分の2を有するが、B社はD社の総株主の議決権の3分の2を有するにとどまり、D社の株式の全部を保有しているわけではないから、D社はB社の特別支配株主完全子法人に当たらない。したがってD社の保有分をB社の持分に合算することはできず、B社は10分の9以上の議決権を有する者とはいえない。10分の9という高い水準は、株主総会の決議も少数株主の承諾も経ずに強制的に株式を取得する制度である以上、反対株主が実質的に存在し得ない程度の支配を求める趣旨である。よってB社はこの手法を用いることができず、本肢は誤りである。

株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
- 特別支配株主(議決権の10分の9以上。完全子法人の分を合算)が対価・取得日などを定めて対象会社に通知し、承認を受ける(179条の2・179条の3)。取締役会設置会社では取締役会の決議
- 対象会社が取得日の20日前までに売渡株主等に通知(又は公告)すると、売渡請求がされたものとみなす(179条の4)
- 売渡株主は差止めの請求(179条の7)、取得日の20日前から前日までに売買価格の決定の申立て(179条の8)ができる
- 特別支配株主は取得日に売渡株式等の全部を取得する(179条の9)。取得後は売渡株式等の取得の無効の訴え(846条の2)