会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
1支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「取締役会の決定がなくとも,支配人以外の重要な使用人を選任することができる」の部分である。取締役会設置会社では支配人その他の重要な使用人の選任・解任は取締役会の専決事項であり(会社法362条4項3号)、支配人の使用人選任権(11条2項)は重要な使用人には及ばない。
支配人は会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し(会社法11条1項)、他の使用人を選任し又は解任することができる(同条2項)。しかしこの使用人の選任・解任権は無限定ではない。監査役会設置会社は取締役会を置かなければならない会社であり(327条1項2号)、取締役会設置会社では支配人その他の重要な使用人の選任及び解任は取締役会の決議によらなければならず、取締役に委任することができない(362条4項3号)。重要な使用人の人事は会社の業務執行の適正に直結する事項であるから、業務執行の決定を合議体である取締役会に留保して監督の実効性を確保する趣旨である。取締役にすら委任できない事項を、取締役会の決定を経ずに会社の使用人にすぎない支配人の判断で決めることはできない。したがって11条2項の選任・解任権は重要な使用人に当たらない使用人についてだけ及ぶと解される。本店の支配人であっても、取締役会の決定なしに支配人以外の重要な使用人を選任することはできない。本肢は誤っている。

取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。(略)
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 選任: 商人(会社)が選任し営業所(本店・支店)で営業を行わせる。取締役会設置会社では取締役会の決議(会社法362条4項3号)。選任・代理権の消滅は登記(商法22条・会社法918条)
- 権限: 営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為(商法21条1項・会社法11条1項)。他の使用人の選任・解任(2項)。重要な使用人は取締役会の専決。制限は善意の第三者に対抗不可(3項)
- 登記の効力(商法9条1項・会社法908条1項): 登記前は善意の第三者に対抗できない。登記後は対抗できるが、正当な事由で知らなかった第三者には対抗できない
- 表見支配人(商法24条・会社法13条): 営業所の営業の主任者を示す名称を付した使用人は、その営業所の営業に関し一切の裁判外の行為の権限があるとみなす。営業所の実質を欠く場所(最判昭37.5.1)や名称を付された営業所以外の営業には適用されない
- 営業避止義務(商法23条・会社法12条): 許可なく自ら営業・競業取引・他の商人の使用人・会社の取締役等になれない
誤り。違うのは「訴訟の当事者となることができる」の部分である。支配人は会社の法令上の訴訟代理人であり、当事者は会社である。
会社法11条1項は、支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すると定める。「会社に代わって」とあるとおり、これは支配人に会社の代理人として訴訟行為をする権限を与えた規定であり、支配人は54条1項の「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」、すなわち法令上の訴訟代理人に当たる。そのため支配人は弁護士でなくても会社の訴訟代理人となれるが、訴訟は会社の名で追行され、当事者は会社である。訴訟担当であれば担当者自身が当事者となって自己の名で訴訟を追行し、判決の効力が本人に及ぶ(115条1項2号)という形をとるが、支配人はそうではない。この違いは、支配人が辞任しても会社という当事者は変わらないので訴訟手続は中断しないのに対し、職務上の当事者である破産管財人が資格を失えば中断する、という形でも現れる。肢は代理人を当事者と取り違えている。

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
- 担当者のための法定訴訟担当:債権者代位訴訟の債権者、取立訴訟の差押債権者(民事執行法155条1項・157条)、株主代表訴訟の株主
- 職務上の当事者:破産管財人、遺言執行者、被告とすべき者が死亡した後の人事訴訟の検察官(人事訴訟法12条3項・42条1項)
- 法律に定めのある任意的訴訟担当:選定当事者(30条)
- 明文のない任意的訴訟担当:業務執行組合員(最大判昭45.11.11)。弁護士代理の原則と訴訟信託の禁止を回避・潜脱するおそれがなく、合理的必要がある場合に許される
- 訴訟担当ではないもの:支配人は法令上の訴訟代理人であり、会社が当事者である(会社法11条1項)
- 判決効:担当者が受けた判決の効力は本人に及ぶ(115条1項2号)
誤り。違うのは「会社の他の使用人を選任することができない」の部分である。支配人は他の使用人を選任し、又は解任することができる(会社法11条2項)。
会社法11条2項は、支配人は他の使用人を選任し、又は解任することができると明文で定める。支配人は本店又は支店の事業を統括する立場にあり、その事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする包括的な代理権を持つ(同条1項)から、事業の運営に必要な人員を採用し解雇する権限もそこに含まれる。2項はこの代理権の内容を確認的に示した規定であり、支配人が使用人を選任するのに取締役会の決議などは要らない。もっとも、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任は取締役会が取締役に委任できない事項である(362条4項3号)から、支配人が自ら選任・解任できるのは、支配人や重要な使用人に当たらない使用人に限られる。その限度の制約はあっても、およそ他の使用人を選任することができないとする本肢は誤りである。

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。/支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
誤り。違うのは「会社の他の使用人を選任することができない」の部分である。支配人は他の使用人を選任し、又は解任することができる(会社法11条2項)。
会社法11条2項は、支配人は他の使用人を選任し、又は解任することができると明文で定める。支配人は本店又は支店の事業を統括する立場にあり、その事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする包括的な代理権を持つ(同条1項)から、事業の運営に必要な人員を採用し解雇する権限もそこに含まれる。2項はこの代理権の内容を確認的に示した規定であり、支配人が使用人を選任するのに取締役会の決議などは要らない。もっとも、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任は取締役会が取締役に委任できない事項である(362条4項3号)から、支配人が自ら選任・解任できるのは、支配人や重要な使用人に当たらない使用人に限られる。その限度の制約はあっても、およそ他の使用人を選任することができないとする本肢は誤りである。

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。/支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
1支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。自ら営業を行うこと。自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
1 自ら営業を行うこと。
2 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
3 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。
4 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
この条文の過去問 2問
誤り。違うのは「会社の許可を受けなくても、他の会社の取締役となることができる」の部分である。支配人は会社の許可がなければ他の会社の取締役になれない(会社法12条1項4号)。
会社法12条1項は、支配人が会社の許可を受けなければしてはならない行為として、自ら営業を行うこと(1号)、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること(2号)、他の会社又は商人の使用人となること(3号)、他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること(4号)を掲げる。他の会社の取締役への就任は4号に当たるから、会社の許可なしにはできない。2号が取締役の競業避止義務(356条1項1号)と同じく会社の取引の横取りを防ぐ規定であるのに対し、1号・3号・4号は競業関係にあるか否かを問わず一律に禁じており、包括的な代理権を預けられ会社の機密に広く接する支配人に、会社の事業へ専念させる趣旨である。したがって他の会社の事業が競業しない場合でも許可は要る。許可なく4号の行為をしても私法上の効力は否定されず、会社は解任や損害賠償請求で対応するにとどまり、2号違反のときだけ利益額を損害額と推定する(12条2項)。許可を受けなくても他の会社の取締役になれるとする本肢は誤りである。

支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。一 自ら営業を行うこと。二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。三 他の会社又は商人の使用人となること。四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
誤り。違うのは「会社の許可を受けなくても、他の会社の取締役となることができる」の部分である。支配人は会社の許可がなければ他の会社の取締役になれない(会社法12条1項4号)。
会社法12条1項は、支配人が会社の許可を受けなければしてはならない行為として、自ら営業を行うこと(1号)、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること(2号)、他の会社又は商人の使用人となること(3号)、他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること(4号)を掲げる。他の会社の取締役への就任は4号に当たるから、会社の許可なしにはできない。2号が取締役の競業避止義務(356条1項1号)と同じく会社の取引の横取りを防ぐ規定であるのに対し、1号・3号・4号は競業関係にあるか否かを問わず一律に禁じており、包括的な代理権を預けられ会社の機密に広く接する支配人に、会社の事業へ専念させる趣旨である。したがって他の会社の事業が競業しない場合でも許可は要る。許可なく4号の行為をしても私法上の効力は否定されず、会社は解任や損害賠償請求で対応するにとどまり、2号違反のときだけ利益額を損害額と推定する(12条2項)。許可を受けなくても他の会社の取締役になれるとする本肢は誤りである。

支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。一 自ら営業を行うこと。二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。三 他の会社又は商人の使用人となること。四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
この条文の過去問 1問
正しい。判例は、表見支配人の規定にいう本店又は支店とは商法上の営業所としての実質を備えているもののみを指し、実質を欠き外観だけ営業所らしい場所の使用人に支配人類似の名称を付しても適用はないとしている(最判昭37.5.1)。
会社法13条は、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、その本店又は支店の事業に関し一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなすと定める(相手方が悪意のときを除く。個人商人については商法24条)。支配人らしい名称を信頼して取引した相手方を保護する外観法理の規定であり、代理権という実体を欠いても権限を法律上擬制する点に特色がある。もっとも、条文は権限の擬制を本店又は支店の事業に関する行為に限っている。最判昭37.5.1は、ここにいう本店又は支店とは商法上の営業所としての実質を備えているもののみを指すとし、その実質を欠き、名称や設備の点から営業所らしい外観を呈するにすぎない場所の使用人に支配人類似の名称を付したからといって、この規定の適用はないとした。営業所としての実質を欠く場所にはそもそも支配人を置くことが観念できず、包括的な代理権を擬制する基礎を欠くからである。したがって、権限が擬制されるのは支店が営業所としての実質を備えている場合に限られる。本肢は判例の趣旨に合致しており、正しい。

商法四二条にいう「本店又ハ支店」とは商法上の営業所としての実質を備えているもののみを指称すると解するのを相当とするから、右のような実質を欠き、ただ単に名称・設備などの点から営業所らしい外観を呈するにすぎない場所の使用人に対し支配人類似の名称を付したからといつて、同条の適用があるものと解することはできない
1事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。