指名委員会等設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、指名委員会等設置会社の業務を執行することができない。
1指名委員会等設置会社の取締役会は、第三百六十二条の規定にかかわらず、次に掲げる職務を行う。次に掲げる事項その他指名委員会等設置会社の業務執行の決定経営の基本方針監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備執行役等の職務の執行の監督
1 次に掲げる事項その他指名委員会等設置会社の業務執行の決定経営の基本方針監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
ア 経営の基本方針
ィ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
イ 執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項
ゥ 次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役
ウ 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
2 執行役等の職務の執行の監督
2指名委員会等設置会社の取締役会は、前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3指名委員会等設置会社の取締役会は、第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。
4指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定第三百四十八条の二第二項の規定による委託第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定第四百条第二項の規定による委員の選定及び第四百一条第一項の規定による委員の解職第四百二条第二項の規定による執行役の選任及び第四百三条第一項の規定による執行役の解任第四百八条第一項第一号の規定による指名委員会等設置会社を代表する者の決定第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除補償契約の内容の決定役員等賠償責任保険契約の内容の決定第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定吸収分割契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定新設分割計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定株式移転計画の内容の決定株式交付計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
1 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定
2 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定
3 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定
4 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定
5 株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
6 第三百四十八条の二第二項の規定による委託
7 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認
8 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
9 第四百条第二項の規定による委員の選定及び第四百一条第一項の規定による委員の解職
10 第四百二条第二項の規定による執行役の選任及び第四百三条第一項の規定による執行役の解任
11 第四百八条第一項第一号の規定による指名委員会等設置会社を代表する者の決定
12 第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職
13 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
14 補償契約の内容の決定
15 役員等賠償責任保険契約の内容の決定
16 第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認
17 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
18 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
19 合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
20 吸収分割契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
21 新設分割計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
22 株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
23 株式移転計画の内容の決定
24 株式交付計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
この条文の過去問 9問
正しい。指名委員会等設置会社の取締役会は、416条4項各号に掲げる事項を除いて業務執行の決定を執行役に委任でき、募集株式の発行、多額の借財、重要な使用人の選任・解任はいずれも同項各号に掲げられていない。
指名委員会等設置会社では、取締役会は経営の基本方針の決定と執行役等の職務の執行の監督を担い(会社法416条1項)、業務執行の決定は広く執行役に委ねることが予定されている。416条4項本文は、取締役会はその決議によって業務執行の決定を執行役に委任することができると定め、委任が禁じられるのは同項各号に限定して列挙された事項だけである。各号には株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容、計算書類の承認、譲渡制限株式の譲渡承認、競業・利益相反取引の承認、合併契約等の内容の決定などが掲げられているが、募集株式の発行、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任はいずれも掲げられていない。監査役会設置会社では多額の借財や重要な使用人の選任・解任は取締役会の専決事項で委任が禁じられる(362条4項2号・3号)のに対し、指名委員会等設置会社はこれらを執行役に委任できる。公開会社では募集株式の発行は取締役会の決定事項であり(201条1項)、これも委任できる。したがって本肢は正しい。

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。
| 会社 | 委任 |
|---|---|
| 監査役(会)設置会社の取締役会 | 重要な財産の処分・多額の借財・重要な使用人の選任・内部統制システムなど重要な業務執行の決定は取締役に委任できない(362条4項) |
| 監査等委員会設置会社 | 原則は同じ(399条の13第4項)。取締役の過半数が社外取締役なら決議で、定款の定めがあれば過半数でなくても委任できる(5項・6項) |
| 指名委員会等設置会社 | 業務執行の決定は原則として執行役に委任できる(416条4項)。多額の借財・重要な財産の処分・重要な使用人の選任・募集株式の発行も委任できる。株主総会の招集事項・議案の内容・計算書類の承認・合併契約等は委任できない(4項各号) |
誤り。違うのは「指名委員会等設置会社の取締役会は、当該決定を執行役に委任することができる」の部分である。指名委員会等設置会社でも、業務の適正を確保するための体制の整備は取締役会が決定しなければならず(416条1項1号ホ・2項)、執行役に委任できない。
取締役会設置会社では、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制、いわゆる内部統制システムの整備は取締役会の専決事項であり、取締役に委任できない(会社法362条4項6号)。監査等委員会設置会社でも、399条の13第1項1号ハ・2項が同じ事項を取締役会が決定しなければならないと定めるから取締役に委任できず、本肢の前段は正しい。誤りは後段である。指名委員会等設置会社においても、416条1項1号ホが内部統制システムの整備を取締役会の職務とし、同条2項がこれを取締役会が決定しなければならないと定め、同条3項は1項各号の職務の執行を取締役に委任できないとする。したがって同条4項本文により業務執行の決定を広く執行役に委任できるとしても、内部統制システムの整備の決定はその対象から除かれ、執行役に委任することはできない。業務執行の決定を大幅に執行役へ委ねる制度だからこそ、監督の枠組みである内部統制システムの構築は取締役会が自ら決めるべきものとされている。本肢は誤りである。

指名委員会等設置会社の取締役会は、第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。
| 会社 | 委任 |
|---|---|
| 監査役(会)設置会社の取締役会 | 重要な財産の処分・多額の借財・重要な使用人の選任・内部統制システムなど重要な業務執行の決定は取締役に委任できない(362条4項) |
| 監査等委員会設置会社 | 原則は同じ(399条の13第4項)。取締役の過半数が社外取締役なら決議で、定款の定めがあれば過半数でなくても委任できる(5項・6項)。株主総会の招集事項・内部統制システムなどは委任できない |
| 指名委員会等設置会社 | 業務執行の決定は原則として執行役に委任できる(416条4項)。多額の借財・重要な財産の処分も委任できる。内部統制システムの整備は取締役会が決定(416条1項1号ホ・2項) |
正しい。指名委員会等設置会社の取締役会は、重要な財産の処分の決定を執行役に委任できる(会社法416条4項)。
会社法416条4項本文は、指名委員会等設置会社(出題当時の名称は委員会設置会社)の取締役会は、その決議によって業務執行の決定を執行役に委任することができると定め、ただし書の各号で委任できない事項を列挙する。監査役会設置会社では重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財は取締役に委任できない専決事項だが(362条4項1号・2号)、416条4項ただし書の各号に重要な財産の処分は掲げられていない。指名委員会等設置会社は、社外取締役が過半数を占める三委員会と取締役会が監督に専念し、業務執行の決定と執行は執行役に委ねることで迅速な経営を可能にする機関設計であり、監督と執行を分離した以上、重要な財産の処分のような経営判断は執行役に任せてよいと考えられたからである。したがって、重要な財産の処分の決定は執行役に委任でき、本肢は委任できる事項に当たる。なお、416条1項1号の経営の基本方針や内部統制システムの整備などは取締役会が自ら決定しなければならない(同条2項・3項)。

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。(略)
| 区分 | 事項 |
|---|---|
| 委任できる | 重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない(簡易・略式の)合併契約等の内容 |
| 委任できない(株主総会関係) | 株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容(役員・会計監査人の選任等を除く)、計算書類等の承認、譲渡制限株式の譲渡承認、自己株式の取得事項 |
| 委任できない(監督の根幹) | 招集権者の決定、委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、競業・利益相反取引の承認、責任の一部免除、補償契約・役員等賠償責任保険契約 |
| 委任できない(会社の基礎) | 株主総会の承認を要する事業譲渡等・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の契約や計画の内容 |
| 委員会が決める | 取締役の報酬は報酬委員会(404条3項)、会計監査人の選任・解任議案は監査委員会(404条2項2号)、取締役の選任・解任議案は指名委員会(404条1項) |
正しい。公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項の決定は取締役会の権限であり、416条4項ただし書の各号に掲げられていないので執行役に委任できる。
公開会社では、募集株式の払込金額が引受人に特に有利な金額である場合を除き、募集事項の決定は株主総会ではなく取締役会の決議による(会社法201条1項・199条2項)。授権資本の範囲内で機動的に資金を調達させるために、取締役会に権限を与えたものである。指名委員会等設置会社の取締役会はこの権限を持つが、416条4項ただし書の各号には、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項の決定は掲げられていない。したがって取締役会はその決議によってこの決定を執行役に委任することができ、委任を受けた執行役が募集株式の数や払込金額などを決めることができる。これに対し、払込金額が特に有利な金額である場合は、公開会社でも株主総会の特別決議が要り(199条3項・309条2項5号)、株主総会に提出する議案の内容の決定は416条4項5号により委任できないので、執行役に委ねる余地はない。本肢は有利発行でない場合に限っており、委任できる事項に当たる。

第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
| 区分 | 事項 |
|---|---|
| 委任できる | 重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない(簡易・略式の)合併契約等の内容 |
| 委任できない(株主総会関係) | 株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容(役員・会計監査人の選任等を除く)、計算書類等の承認、譲渡制限株式の譲渡承認、自己株式の取得事項 |
| 委任できない(監督の根幹) | 招集権者の決定、委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、競業・利益相反取引の承認、責任の一部免除、補償契約・役員等賠償責任保険契約 |
| 委任できない(会社の基礎) | 株主総会の承認を要する事業譲渡等・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の契約や計画の内容 |
| 委員会が決める | 取締役の報酬は報酬委員会(404条3項)、会計監査人の選任・解任議案は監査委員会(404条2項2号)、取締役の選任・解任議案は指名委員会(404条1項) |
誤り。違うのは執行役も「多額の借財の決定について、取締役会から委任を受けることができない」とする部分である。指名委員会等設置会社の取締役会が執行役に委任できない事項に多額の借財は含まれていない(会社法416条4項)。
監査役会設置会社の取締役会は、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任などの重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない(会社法362条4項)。多額の借財は同項2号に明記されているので、取締役がその決定の委任を受けることはできず、本肢の前段は正しい。しかし指名委員会等設置会社では、取締役会はその決議によって業務執行の決定を執行役に委任することができ(416条4項本文)、委任できない事項は同項ただし書に限定列挙されている。そこに挙がるのは、譲渡制限株式の譲渡の承認、株主総会の招集の決定、株主総会に提出する議案の内容、代表執行役の選定・解職、委員の選定・解職、計算書類の承認、内部統制システムの整備などであり、多額の借財や重要な財産の処分は含まれていない。指名委員会等設置会社は取締役会を監督に専念させ、業務執行の決定を執行役に広く委ねて迅速な経営を可能にする仕組みだからである。したがって執行役は多額の借財の決定の委任を受けることができ、いずれも委任を受けられないとする本肢は誤りである。

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。(略)
| 項目 | 代表取締役・取締役(監査役会設置会社) | 代表執行役・執行役(指名委員会等設置会社) |
|---|---|---|
| 代表者の選定 | 取締役会が取締役の中から(362条3項) | 取締役会が執行役の中から(420条1項)。取締役でなくてもよい(402条6項) |
| 代表権 | 業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為(349条4項)。制限は善意の第三者に対抗できない(5項) | 同じ(420条3項で349条4項・5項を準用) |
| 多額の借財・重要な財産の処分の決定 | 取締役に委任できない(362条4項1号・2号) | 執行役に委任できる(416条4項ただし書に無い) |
| 使用人の兼任 | できる(禁止規定なし)。指名委員会等設置会社の取締役はできない(331条4項) | できる(404条3項後段が兼任を前提) |
| 忠実義務 | 355条 | 419条2項で355条を準用 |
正しい。指名委員会等設置会社の取締役会は、株主総会の決議による承認を要しない株式交換契約の内容の決定を執行役に委任できる(会社法416条4項22号括弧書)。
指名委員会等設置会社(出題当時の委員会設置会社)では、業務執行の決定を大幅に執行役に委任して機動的な経営を可能にする一方、会社の基礎に重大な変更をもたらす事項は取締役会に留保する建て付けがとられている。会社法416条4項本文は、取締役会は同項各号の事項を除き、決議によって業務執行の決定を執行役に委任できると定める。そして組織再編の契約や計画の内容の決定を掲げる各号には、株主総会の決議による承認を要しないものを除くという括弧書が付されており、22号は「株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定」とする。株主総会の承認を要する株式交換は会社の基礎に大きく影響するので取締役会自らが決めるべきであるのに対し、略式株式交換(796条1項)や簡易株式交換(796条2項)のように株主総会の承認すら要しない株式交換は株主への影響が相対的に小さく、業務執行の一環として執行役に委ねてよいという趣旨である。本肢は正しい。

株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
正しい。指名委員会等設置会社の取締役会は業務執行の決定を執行役に委任できるが、株主総会の承認を要する合併契約の内容の決定は委任できない(会社法416条4項19号)。
肢の「委員会設置会社」は出題当時の名称であり、現行法の指名委員会等設置会社に読み替える。指名委員会等設置会社の取締役会は、経営の基本方針の決定と執行役の監督に専念する機関として設計されており、その決議によって業務執行の決定を広く執行役に委任することができる(会社法416条4項本文)。重要な財産の処分や多額の借財のように、監査役設置会社では取締役会が自ら決めなければならない事項(362条4項)も委任できる。しかし同項ただし書は、委任できない事項を列挙しており、その19号に、株主総会の決議による承認を要しないものを除く合併契約の内容の決定が挙げられている。合併契約は株主総会に承認を求める議案そのものであり、株主総会に提出する議案の内容を執行役に委ねることは、取締役会が株主に対して負う責任を空洞化させるからである。簡易合併や略式合併のように株主総会の承認を要しない合併契約は、この趣旨が当てはまらないので除かれ、執行役に委任できる。したがって肢は条文のとおりであり、正しい。

合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
- 委任できる:重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない(簡易・略式の)合併契約・分割契約・株式交換契約・株式交付計画の内容
- 委任できない(株主総会関係):株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容、計算書類等の承認、株主総会の承認を要する合併契約等の内容
- 委任できない(監督の根幹):委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、競業・利益相反取引の承認、責任の一部免除
正しい。指名委員会等設置会社は特別取締役の制度の対象から除かれており(会社法373条1項かっこ書)、取締役会は重要な財産の処分の決定を執行役に委任できる(416条4項)。
肢の「委員会設置会社」は出題当時の名称であり、現行法の指名委員会等設置会社に読み替える。特別取締役による議決の定めができるのは取締役会設置会社のうち指名委員会等設置会社を除いたものである(会社法373条1項かっこ書)。特別取締役の制度は、重要な財産の処分及び譲受けと多額の借財を取締役会が自ら決めなければならない会社(362条4項1号・2号)について、機動的な決定を可能にするための仕組みである。これに対して指名委員会等設置会社の取締役会は、業務執行の決定を広く執行役に委任することができ(416条4項本文)、委任できない事項を列挙する同項ただし書に重要な財産の処分や多額の借財は含まれていない。執行役に委任すれば足りる会社には、特別取締役による決議の仕組みを置く必要が無いのである。したがって肢は正しい。なお監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外取締役である場合などに重要な業務執行の決定を取締役に委任でき(399条の13第5項・6項)、その場合も特別取締役の制度は使えない。

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。(略)
- 委任できる:重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない合併契約等の内容
- 委任できない(株主総会関係):株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容、計算書類等の承認、株主総会の承認を要する合併契約等の内容
- 委任できない(監督の根幹):委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、競業・利益相反取引の承認、責任の一部免除
正しい。指名委員会等設置会社の取締役会は業務執行の決定を執行役に委任でき(会社法416条4項本文)、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項の決定は委任できない事項に挙げられていない。
肢の「委員会設置会社」は出題当時の名称であり、現行法の指名委員会等設置会社に読み替える。監査役設置会社では、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項の決定は取締役会が自ら行わなければならず、取締役に委任できない(会社法362条4項5号)。これに対して指名委員会等設置会社の取締役会は、経営の基本方針の決定と執行役の監督に専念する機関として設計され、その決議によって業務執行の決定を広く執行役に委任することができる(416条4項本文)。委任できない事項は同項ただし書に列挙されているが、募集社債の募集事項の決定はそこに含まれていない。社債の発行は会社の借入れであり、株主の持株比率に影響しないので、株主総会に関係する事項や監督の根幹に関わる事項とは異なり、業務執行として執行役に委ねてよいと考えられたのである。同じ理由で、公開会社における有利発行でない募集株式の募集事項の決定も委任できる。したがって肢は正しい。

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。(略)
- 委任できる:重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない合併契約等の内容
- 委任できない(株主総会関係):株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容、計算書類等の承認、株主総会の承認を要する合併契約等の内容
- 委任できない(監督の根幹):委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、競業・利益相反取引の承認、責任の一部免除
1指名委員会等設置会社においては、招集権者の定めがある場合であっても、指名委員会等がその委員の中から選定する者は、取締役会を招集することができる。
2執行役は、前条第一項第一号ニの取締役に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。この場合において、当該請求があった日から五日以内に、当該請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられないときは、当該執行役は、取締役会を招集することができる。
3指名委員会等がその委員の中から選定する者は、遅滞なく、当該指名委員会等の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。
4執行役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。この場合において、執行役は、代理人(他の執行役に限る。)により当該報告をすることができる。
5執行役は、取締役会の要求があったときは、取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければならない。
この条文の過去問 1問
正しい。招集権者の定めがある場合でも、監査等委員会が選定する監査等委員(399条の14)と、指名委員会等がその委員の中から選定する者(417条1項)は取締役会を招集することができる。
取締役会は各取締役が招集するのが原則であるが、招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときはその取締役が招集する(会社法366条1項)。もっとも、この招集権者の限定は監査機関の招集権までは奪わない。監査等委員会設置会社については、399条の14が、招集権者の定めがある場合であっても監査等委員会が選定する監査等委員は取締役会を招集することができると定める。指名委員会等設置会社については、417条1項が、招集権者の定めがある場合であっても指名委員会等がその委員の中から選定する者は取締役会を招集することができると定め、指名委員会等には監査委員会が含まれる(2条12号)から、監査委員会が選定する監査委員も取締役会を招集できる。監査・監督を担う機関が問題を把握したときに、業務執行側が握る招集権に阻まれずに直ちに取締役会に議題を上程できるようにし、監督の実効性を確保する趣旨である。監査役会設置会社の監査役には招集権者への招集の請求と、通知が発せられない場合の招集権があるにとどまる(383条2項・3項)。本肢は正しい。

(399条の14)監査等委員会設置会社においては、招集権者の定めがある場合であっても、監査等委員会が選定する監査等委員は、取締役会を招集することができる。
(417条1項)指名委員会等設置会社においては、招集権者の定めがある場合であっても、指名委員会等がその委員の中から選定する者は、取締役会を招集することができる。
- 各取締役(366条1項本文)。招集権者を定款又は取締役会で定めたときはその取締役(同項ただし書)
- 招集権者以外の取締役:目的事項を示して請求し、5日以内に2週間以内の日を会日とする通知がなければ自ら招集(366条2項・3項)
- 監査役:383条1項の報告の必要があるとき、同じ手順で請求・招集(383条2項・3項)
- 株主:監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でない会社に限り、取締役の法令・定款違反(のおそれ)があるとき(367条)
- 監査等委員会が選定する監査等委員・指名委員会等が選定する委員:招集権者の定めがあっても招集できる(399条の14・417条1項)