1設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第三十一条第二項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。
2設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。
3設立時募集株式の引受人は、第六十三条第一項の規定による払込みを仮装した場合には、次条第一項又は第百三条第二項の規定による支払がされた後でなければ、払込みを仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができない。
4前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
5民法第九十三条第一項ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第六十一条の契約に係る意思表示については、適用しない。
6設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
この条文の過去問 5問
誤り。違うのは「善意でかつ重大な過失がないときであっても」「株主の権利を行使することができない」の部分である。会社法52条の2第5項により、譲受人は悪意又は重大な過失がない限り株主の権利を行使できる。
発起人が引き受けた設立時発行株式について払込みを仮装した場合、その発起人は会社に対し払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払義務を負い(会社法52条の2第1項1号)、この義務は総株主の同意がなければ免除できない(55条)。仮装払込みをした発起人は、この義務の履行がされた後でなければ、その設立時発行株式について設立時株主及び株主の権利を行使できない(52条の2第4項)。ここまでは本肢の前提として正しい。しかし同条5項本文は、その設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、その株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができると定め、同項ただし書で、その者に悪意又は重大な過失があるときはこの限りでないとする。譲受人が善意かつ無重過失であれば株主の権利を行使できるのであり、株式の流通に対する信頼を守り、仮装払込みの事実を知り得ない取得者に不測の損害を与えないための規律である。本肢は、善意で重大な過失がない譲受人でも権利を行使できないとする点で、5項本文の帰結と逆であり誤っている。

前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
- ["仮装した発起人・引受人本人", "全額の支払義務。無過失の証明による免責はない。総株主の同意で免除できる(52条の2第1項・55条、102条の2)"]
- ["関与した発起人・設立時取締役(取締役)", "連帯して支払義務。注意を怠らなかったことを証明すれば免責(52条の2第2項・103条2項・213条の3)"]
- ["仮装した本人の権利行使", "支払がされるまで設立時株主・株主の権利を行使できない(52条の2第4項・102条3項・209条2項)"]
- ["株式の譲受人", "悪意・重過失がなければ権利を行使できる(52条の2第5項・102条4項・209条3項)"]
誤り。違うのは「創立総会においてその議決権を行使した後であっても,株式会社の成立前であれば…取消しをすることができる」の部分である。設立時募集株式の引受人は、成立後だけでなく創立総会で議決権を行使した後も、錯誤・詐欺・強迫を理由とする引受けの取消しができない(会社法102条6項)。
会社法102条6項は、設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができないと定める。株式の引受けは多数の関係者が関わる団体法上の行為であり、民法の意思表示の規定をそのまま及ぼして後から引受けが覆ると、設立手続と成立後の法律関係が不安定になる。そこで会社の成立後は取消しを封じるとともに、成立前であっても、引受人が創立総会で議決権を行使して設立中の会社の意思決定に加わった以上は、引受けの効力を争うことを許さないことにしたのである。本肢は成立前であれば取り消せるとするが、創立総会で議決権を行使した後である以上、成立の前後を問わず取消しはできないので、誤りである。発起人については創立総会の議決権行使の要件が無く、成立後に取消しができなくなるだけであり(51条2項)、議決権行使による制限は募集設立の引受人に特有のものである。

設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
- 発起人:成立後は錯誤・詐欺・強迫による取消しができない(51条2項)
- 設立時募集株式の引受人:成立後、又は創立総会・種類創立総会で議決権を行使した後は取消しができない(102条6項)
- 心裡留保・虚偽表示の規定(民法93条1項ただし書・94条1項)は、引受けの申込み・割当て・総数引受契約の意思表示に適用しない(51条1項・102条5項)
誤り。違うのは「全額の支払がされる前であっても,…設立時株主及び株主の権利を行使することができる」の部分である。払込みを仮装した引受人は、仮装した払込金額の全額の支払がされた後でなければ、その株式について設立時株主及び株主の権利を行使できない(会社法102条3項)。
設立時募集株式の引受人は、払込期日又は払込期間内に払込金額の全額を払い込まなければならない(会社法63条1項)。払込みを仮装した引受人は、会社に対し、仮装した払込金額の全額の支払をする義務を負い(102条の2第1項)、仮装に関与した発起人・設立時取締役も、注意を怠らなかったことを証明しない限り連帯して支払義務を負う(103条2項)。そして102条3項は、払込みを仮装した引受人は、これらの支払がされた後でなければ、払込みを仮装した設立時発行株式について設立時株主及び株主の権利を行使することができないと定める。払込みを仮装した者が実際には出資をしていないのに株主として議決権や配当を受ける権利を行使できるとすれば、出資をした他の株主との間で不公平であり、資本の充実も害されるからである。したがって、全額の支払がされる前であっても権利を行使できるとする本肢は誤りである。この株式を譲り受けた者は、悪意又は重大な過失が無い限り権利を行使できる(102条4項)。

設立時募集株式の引受人は、第六十三条第一項の規定による払込みを仮装した場合には、次条第一項又は第百三条第二項の規定による支払がされた後でなければ、払込みを仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができない。
- 仮装した発起人・引受人本人: 全額の支払義務。無過失の証明による免責はない。総株主の同意で免除できる(52条の2第1項・55条、102条の2)
- 関与した発起人・設立時取締役(取締役): 連帯して支払義務。注意を怠らなかったことを証明すれば免責(52条の2第2項・103条2項・213条の3)
- 仮装した本人の権利行使: 支払がされるまで設立時株主・株主の権利を行使できない(52条の2第4項・102条3項・209条2項)
- 株式の譲受人: 悪意・重過失がなければ権利を行使できる(52条の2第5項・102条4項・209条3項)
正しい。設立時募集株式の引受人は、会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会で議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として引受けの取消しをすることができない(会社法102条6項)。
会社法102条6項は、設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができないと定める。株式の引受けは会社の設立という団体法上の行為の一部をなしており、会社が成立して株式が流通し始めた後や、引受人が創立総会で議決権を行使して設立に関与した後に、個々の引受けが意思表示の瑕疵を理由に覆されると、設立手続全体の効力が不安定になり、会社債権者や他の株主の信頼を害する。そこで、成立後又は議決権行使後は引受けの効力を確定させることとしたのである。発起人についても同様に、会社の成立後は錯誤、詐欺又は強迫を理由とする引受けの取消しが制限される(51条2項)。平成29年民法改正により錯誤の効果が無効から取消しに改められたため、肢の「無効を主張する」は現行法では「取消しをする」に読み替えるが、成立後又は議決権行使後に錯誤を理由として引受けの効力を争えないという結論は変わらない。肢は102条6項のとおりであり正しい。

設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
| 発起人(51条2項) | 設立時募集株式の引受人(102条6項) | |
|---|---|---|
| 制限される時期 | 会社の成立後 | 会社の成立後、又は創立総会・種類創立総会で議決権を行使した後 |
| 制限される主張 | 錯誤、詐欺又は強迫を理由とする引受けの取消し | 同左 |
| 趣旨 | 設立手続の安定・会社債権者と他の株主の信頼保護 | 同左 |
誤り。違うのは「それらの者が株主となるのは,その払込みをした時である」の部分である。発起人も設立時募集株式の引受人も、株主となるのは株式会社の成立の時である(会社法50条1項・102条2項)。
会社法50条1項は、発起人は株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となると定め、102条2項は、設立時募集株式の引受人は株式会社の成立の時に、63条1項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となると定める。株式会社はその本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)から、発起人も引受人も、払込みをした時ではなく設立の登記の時に株主になる。払込みは株主になるための要件であって、株主となる時期を決めるものではない。会社が成立するまでは株主となるべき地位があるだけであり、この権利株の譲渡は成立後の会社に対抗できない(50条2項・63条2項)。出資を履行しない発起人は催告を経て失権し(36条)、払込みをしない引受人は当然に失権する(63条3項)ので、成立の時に株主となるのは出資を履行した者に限られる。肢は発起人と引受人の区別を問わず株主となる時期を払込みの時としている点で誤りである。

(50条1項)発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となる。
(102条2項)設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。




