1事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
2譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
この条文の過去問 3問
正しい。判例は、事業の譲渡とは有機的一体として機能する財産の譲渡によって営業的活動を受け継がせ競業避止義務を負う結果を伴うものをいうとし、単なる営業用財産の譲渡は事業の譲渡に当たらないとした(最大判昭40.9.22)。
最大判昭40.9.22は、株主総会の特別決議を要する営業(事業)の譲渡の意義について、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)の全部又は重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいうとした。株主総会の特別決議(会社法467条1項・309条2項11号)を要するかどうかの基準を、取引の相手方から見て外形的・客観的に明確なものとし、取引の安全を図る趣旨である。この基準によれば、譲渡の対象が土地・建物・機械器具一式のような単なる事業用財産にとどまり、組織的一体性を備えた財産の移転と営業的活動の承継を伴わない場合には、それが譲渡会社の経営に重大な影響を及ぼすものであっても事業の譲渡には当たらず、株主総会の特別決議を要しない。同判例の事案もまさに個々の営業用財産の譲渡について事業譲渡への該当を否定したものである。本肢は正しい。

一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に…(現行:会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう
誤り。違うのは「譲渡人と譲受人との間の合意によってもこれを免除することはできない」の部分である。競業避止義務は「当事者の別段の意思表示がない限り」生ずる任意規定上の義務であり(会社法21条1項・商法16条1項)、合意で免除できる。
会社法21条1項は、事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、事業を譲渡した日から20年間は同一の事業を行ってはならないと定め、商人の営業譲渡についても商法16条1項が同旨を定める。当事者の別段の意思表示がない限りという文言から明らかなとおり、これらは任意規定であり、譲渡人と譲受人の合意によって競業避止義務の内容を加重することも、軽減し、あるいは全面的に免除することもできる。競業避止義務は、譲受人が対価を支払って取得した得意先関係などの経済的価値を実質的に確保させるための当事者間の利益調整の規定にすぎず、当事者の意思を排してまで維持すべき公益的な規律ではないからである。もっとも、特約で延長する場合でも譲渡の日から30年を超えることはできず(会社法21条2項・商法16条2項)、譲渡人が不正の競争の目的をもって同一の事業を行うことは特約の有無を問わず禁じられる(会社法21条3項・商法16条3項)。合意による免除は認められているから、これを否定する本肢は誤りである。

事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
- 原則:当事者の別段の意思表示がない限り、同一・隣接の市町村の区域内で譲渡の日から20年間、同一の営業・事業をしてはならない(1項)
- 免除・軽減:任意規定なので合意で免除・軽減できる
- 加重:特約で延長しても譲渡の日から30年を超えることはできない(2項)
- 不正競争の目的:特約の有無を問わず、不正の競争の目的で同一の営業・事業をすることは常に禁じられる(3項)
- 会社分割には競業避止義務の明文がない
誤り。違うのは「吸収分割会社」についても競業避止義務が規定されているとする部分である。競業避止義務を定めるのは事業譲渡の譲渡会社についての会社法21条1項だけで、吸収分割会社について同様の規定は無い。
事業譲渡については、会社法21条1項が、事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内とこれに隣接する市町村の区域内では、事業を譲渡した日から20年間は同一の事業を行ってはならないと定め、譲渡会社に競業避止義務を課している。譲渡された事業の得意先や営業上の秘訣を含む有機的一体としての財産の価値を譲受会社に現実に移転させるための規定である。これに対し吸収分割については、吸収分割会社が競業避止義務を負う旨を定めた規定は会社法に無い。吸収分割は権利義務の包括承継を生じさせる組織法上の行為であり、対価として承継会社の株式が交付されて分割会社が承継会社の株主になる場合も多く、当事者の利害の状況が事業の売買である事業譲渡とは異なるからである。したがって、譲渡会社と吸収分割会社の「いずれについても」競業避止義務が規定されているとする本肢は誤りである。

事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
| 項目 | 吸収分割 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 性質 | 組織法上の行為。部分的包括承継 | 取引行為。個別の移転行為が要る |
| 債務の免責的承継 | 債権者の個別の承諾不要。債権者異議手続で保護(789条1項2号・799条1項2号) | 債権者の承諾が要る。債権者異議手続なし |
| 新株予約権者 | 承継会社の新株予約権を交付でき、買取請求がある(758条5号・787条1項2号) | 規定なし |
| 競業避止義務 | 規定なし | 譲渡会社は20年間(21条1項)。別段の意思表示で免除可 |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えによってのみ(828条1項9号) | 一般原則。誰でもいつでも主張できる(最判昭61.9.11) |
| 残存債権者の直接請求 | あり(759条4項) | あり(23条の2) |
| 事後開示の書面 | 共同で作成し6か月備置き(791条) | 規定なし |







