1社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
この条文の過去問 3問
正しい。持分会社の社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行し(会社法590条1項)、合名会社と合同会社はいずれも持分会社である(575条1項)。
会社法590条1項は、社員は定款に別段の定めがある場合を除き持分会社の業務を執行すると定め、持分会社とは合名会社、合資会社及び合同会社をいう(575条1項)。合名会社でも合同会社でもこの原則が当てはまる。持分会社は社員相互の人的な信頼関係を基礎とする組織であり、所有と経営が一致しているので、株式会社が株主とは別に取締役という機関を必ず置くのと異なり、社員が当然に業務執行の権限を持ち、業務を執行する社員は原則として会社を代表する(599条1項)。業務の決定は社員の過半数で行い(590条2項)、常務は各社員が単独で行える(同条3項)。もっとも590条1項は任意規定であり、定款で業務執行社員を一部の社員に限ることができる(591条1項)。本肢は「定款に別段の定めがある場合を除き」と留保しており、590条1項の原則をそのまま述べている。合同会社は有限責任社員のみで構成されるが(576条4項)、責任の有限・無限と業務執行権限の有無は別の問題であり、合同会社の社員も原則として業務を執行する。本肢は正しい。

社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
| 項目 | 合名会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 社員の責任(576条・580条) | 全員が無限責任社員。会社財産で完済できないときなどに連帯して弁済する直接無限責任(補充的) | 全員が有限責任社員。出資は設立の登記までに全額履行する(578条)ので、実質は間接有限責任 |
| 業務執行(590条) | 定款に別段の定めが無ければ各社員が執行。決定は社員の過半数 | 同じ |
| 社債の発行(2条1号・23号・676条) | できる | できる |
| 株式交換完全親会社(2条31号・767条) | なれない | なれる |
| 合名・合資・合同の間の変更(638条) | 定款の変更。組織変更計画は不要 | 同じ。株式会社との間の変更だけが組織変更(2条26号・743条) |
誤り。違うのは「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員は、営業者又は合資会社の業務を執行することができる」のうち匿名組合員の部分である。匿名組合員は営業者の業務を執行できない(商法536条3項)。
商法536条3項は、匿名組合員は営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができないと明示する。匿名組合は当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約であり(535条)、営業はあくまで営業者の単独の営業で、匿名組合員は営業の外に立つ出資者にとどまる。業務執行権と代表権を持たないことは、匿名組合員が営業者の行為について第三者に対し権利義務を持たないこと(536条4項)と表裏をなす匿名組合の本質的な要素である。これに対し合資会社の有限責任社員は持分会社の社員であるから、会社法590条1項により定款に別段の定めがある場合を除き当然に会社の業務を執行する権限を持つ。持分会社の業務執行について有限責任社員と無限責任社員を区別する規定はなく、有限責任社員が業務執行社員となり代表権を持つこと(599条1項・2項)も妨げられない。合資会社の有限責任社員の部分は正しいが、匿名組合員の部分が誤っているので、両者を通じた記述として本肢は誤りである。

匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。
誤り。違うのは「株式会社,合同会社及び民法上の組合のいずれにも当てはまらない」の部分である。常務を各構成員が単独で行い完了前の異議で止まるという規律は、合同会社(会社法590条3項)と民法上の組合(民法670条5項)には当てはまる。
会社法590条3項は、持分会社の常務は各社員が単独で行うことができ、ただしその完了前に他の社員が異議を述べた場合はこの限りでないと定める。合同会社は持分会社であるから、定款に別段の定めがなければ各社員が業務を執行し(同条1項)、日常的に反復される常務については社員の過半数による決定(同条2項)を待たずに各社員が単独で処理できる。民法670条5項も、組合の常務は各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができ、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときはこの限りでないと定めており、同じ規律である。いずれも構成員が自ら事業を運営する人的な団体であることから、機動的な処理を認めつつ、他の構成員の異議で止められるようにしたものである。これに対して株式会社では所有と経営が分離しており、株主は株主の地位において会社の業務を執行せず、業務執行は取締役(取締役会設置会社では代表取締役・業務執行取締役)が行う。したがって肢の説明は株式会社には当てはまらないが、合同会社と民法上の組合には当てはまり、いずれにも当てはまらないとする肢は誤りである。

前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
- 業務執行権: 定款に別段の定めが無ければ各社員(590条1項)。定款で業務執行社員を定められる(591条)
- 意思決定: 社員(業務執行社員)の過半数(590条2項・591条1項)。常務は単独、完了前の異議で止まる(590条3項)
- 調査権: 業務を執行しない社員も業務・財産の状況を調査できる。裁判所の許可は不要(592条)
- 競業: 他の社員全員の承認(594条1項)。利益相反取引: 他の社員の過半数の承認(595条1項)
