1社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(以下この編において「出資の払戻し」という。)を請求することができる。この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。
2持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる。
3社員の持分の差押えは、出資の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
この条文の過去問 3問
誤り。違うのは「定款の定めを設けることはできない」の部分である。持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる(624条2項)。
会社法624条1項前段は、社員は持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(出資の払戻し)を請求することができると定める。そのうえで同条2項は、持分会社は出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができるとし、定款の内容に特段の制限を置いていない。持分会社の内部関係は社員の合意で柔軟に規律することが認められており、出資の払戻しも基本的には社員の間の利害調整の問題だからである。したがって、出資の払戻しを請求するには他の社員の過半数の同意を要する旨の定款の定めを設けることもでき、これを設けることはできないとする本肢は誤りである。なお、社員の全部が有限責任社員である合同会社では会社財産だけが債権者の引当てになるため、社員は定款を変更して出資の価額を減少する場合を除き出資の払戻しを請求できず(632条1項)、払戻しの額も剰余金額と出資価額の減少額のいずれか少ない額を超えられない(同条2項)という債権者保護の制限が別にある。

持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる。
- 会計帳簿・計算書類の作成と10年保存(615条・617条): すべての持分会社。貸借対照表の公告義務は無い
- 計算書類の閲覧: 社員はいつでも(618条)。債権者は合同会社のみ、5年以内のもの(625条)
- 利益の配当: 社員は請求できる(621条)。合同会社は利益額を超える配当不可(628条)
- 出資の払戻し: 合名・合資の社員は請求できる。方法は定款で定められる(624条)。合同会社は定款変更で出資の価額を減少する場合だけ、剰余金額の範囲内(632条)
- 持分の払戻し(退社時): 全持分会社(611条)。合同会社は剰余金額を超えると債権者異議手続(635条)
- 資本金の額の減少: 損失てん補のため(620条)。合同会社は払戻しのためにも可(626条)、債権者異議手続が必要(627条)。合名・合資には異議手続なし
正しい。匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(商法536条1項)、合資会社は法人であるから有限責任社員が出資した財産は合資会社に属する。
商法536条1項は、匿名組合員の出資は営業者の財産に属すると定める。匿名組合は組合という名を持つが、民法上の組合(民法667条以下)と違って組合財産の共有関係を生じさせず、対外的には営業者の単独の営業であって、出資された財産の所有権その他の権利は営業者に帰属する。したがって匿名組合員は営業者の債権者に対して自分の出資分を主張できず、営業者が破産すれば出資財産は営業者の破産財団を構成する。その一方で匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利義務を持たないので(同条4項)、営業上の債務について責任を負うこともない。合資会社については、会社は法人であり(会社法3条)、持分会社も独立の法人格を持つから、社員が出資した財産は当然に会社自体の財産に帰属し、社員は持分を持つだけである。有限責任社員が出資を履行した限度で責任を免れる(580条2項)のも、拠出した財産が会社に帰属して会社債権者の引当てになることを前提にしている。いずれについても出資財産は営業者又は合資会社に属し、本肢は正しい。

匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
正しい。設立の登記までに出資の全額を履行しなければならないのは合同会社だけであり(会社法578条)、合資会社の社員は成立後に出資を履行してもよく、既にした出資の払戻しも請求できる(624条1項)。
会社法578条本文は、設立しようとする持分会社が合同会社である場合に限って、社員になろうとする者は定款の作成後、設立の登記をする時までに出資に係る金銭の全額を払い込み、又は金銭以外の財産の全部を給付しなければならないと定める。合名会社と合資会社にはこのような規定が無く、出資の履行の時期と程度は定款や社員の合意で自由に定めることができる。合名会社と合資会社には会社債権者に対して直接無限責任を負う社員がおり、会社に財産が拠出されていなくても債権者はその社員の個人財産から弁済を受けられるので、会社財産を設立時に確保させる必要が無いからである。同じ理由で、624条1項は、社員は持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻しを請求することができると定めており、合名会社と合資会社の社員はこれを自由に請求できる。合同会社では、出資の払戻しには出資の価額を減少する定款変更が必要であり、剰余金額を超える払戻しはできない(632条)。したがって肢は正しい。

社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(以下この編において「出資の払戻し」という。)を請求することができる。この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。
| 項目 | 合名会社・合資会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資の目的 | 無限責任社員は財産・労務・信用のいずれも可。合資会社の有限責任社員は金銭等に限る(576条1項6号) | 金銭等に限る(576条1項6号) |
| 履行の時期 | 成立までに全部履行する必要なし | 設立登記までに全額(578条) |
| 出資の払戻し | 社員は請求できる(624条1項) | 出資の価額を減少する定款変更が必要。剰余金額が限度(632条) |
| 現物出資の検査役調査 | なし | なし |