第585条過去問 2
1社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
この条文の過去問 2問
持分会社の無限責任社員は,定款に別段の定めがある場合を除き,他の社員の全員の承諾がなければ,その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
解説
本肢は正しい。会社法585条1項は「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。」と定める。持分会社は社員相互の人的信頼関係を存立基盤とする人的会社であり、社員の交替を自由に認めれば他の社員の利益を害するため、原則として総社員の承諾を要求したものである。無限責任社員は業務執行と会社債務に対する直接責任の中核を担う地位にあるから、この原則がそのまま妥当する。もっとも、同条2項は、業務を執行しない有限責任社員については業務執行社員全員の承諾で足りるとして要件を緩和している。会社の経営に関与せず、退社後も原則として直接責任を負わない社員については、人的信頼関係の要請が相対的に弱いからである。そして同条4項は、これら1項から3項までの規定について定款で別段の定めをすることを妨げないとしており、持分会社の内部関係については広く定款自治が認められている(577条参照)。したがって、「定款に別段の定めがある場合を除き」という留保を付したうえで、無限責任社員の持分譲渡に他の社員全員の承諾を要するとする本肢は、585条1項・4項に合致し正しい。なお、承諾を得た持分譲渡に伴う定款変更は、総社員の同意(637条)によらず、承諾をした社員全員の同意で足りる(585条3項)。
業務を執行しない無限責任社員は,業務を執行する社員の全員の承諾があれば,その持分の全部を他人に譲渡することができる。
解説
本肢は誤り。持分会社の持分譲渡については、会社法585条1項が「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない」と定め、他の社員全員の承諾を要するのを原則とする。持分会社は社員相互の人的信頼関係を基礎とする会社であり、社員の交替は他の社員全員の利害に直結するからである。
この原則に対する例外が同条2項であるが、その適用対象は「業務を執行しない有限責任社員」に限られており、この者は業務を執行する社員全員の承諾があれば持分の全部又は一部を譲渡できる。業務執行権を持たず、かつ出資の価額を限度とする間接有限責任(580条2項)しか負わない社員であれば、誰がその地位に就いても他の社員や会社債権者に与える影響が限定的だからである。
これに対し無限責任社員は、会社財産をもって会社債務を完済できない場合等に直接連帯無限の責任を負う(580条1項)から、その人的信用こそが会社および会社債権者にとっての信用の基礎である。加えて無限責任社員は定款に別段の定めがない限り業務執行権を有するのが原則である(590条1項)。したがって、現に業務を執行していない無限責任社員であっても2項の例外には当たらず、原則どおり他の社員全員の承諾がなければ持分を譲渡することができない。業務を執行する社員全員の承諾で足りるとする本肢は誤りである。