第25条過去問 5
1株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
1 次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
2 次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
2各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
この条文の過去問 5問
発起人は、設立時取締役になるか否かにかかわらず、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
解説
本肢は正しい。会社法25条2項は、各発起人が株式会社の設立に際して設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない旨を定める。これは発起設立(同条1項1号)・募集設立(同項2号)のいずれにも共通する規律であり、発起人となる以上は必ず設立時の株主となることを要求する趣旨である。発起人は定款を作成して署名等をした者(26条1項)であり、会社設立の企画者として設立事務を遂行し、財産引受け等の変態設立事項の当事者となるほか、出資の履行の仮装に係る責任(52条の2)や任務懈怠責任(53条)、会社不成立の場合の責任(56条)といった重い責任を負う立場にある。そのような立場にある者が一切出資をしないまま設立に関与することを認めれば、責任の裏付けを欠き、また設立中の会社の実質的構成員でない者が設立を主導する結果となって不当である。そこで会社法は、最低1株の引受けを義務づけ、発起人と設立時株主の地位を結び付けている。
この義務は、当該発起人が設立時取締役に就任するか否かとは無関係である。設立時取締役の選任は発起設立においては発起人の議決権の過半数によって決せられ(38条1項、40条1項)、発起人以外の者を設立時取締役に選任することも、発起人が設立時取締役を兼ねることも差し支えない。すなわち機関としての地位と出資者としての地位は別個の問題であり、設立時取締役にならない発起人であっても1株以上の引受義務を免れない。本肢の記述はこの点を正確に述べており、正しい。
各発起人は,設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
解説
本肢は正しい。会社法25条2項は、各発起人は株式会社の設立に際し設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないと定める。これは発起設立(同条1項1号)か募集設立(同項2号)かを問わず妥当する規律である。趣旨は、設立事務を主宰し会社の基礎を形成する発起人に対し、自ら株主として出資の危険を負担させることで、設立行為の慎重さと会社債権者・他の引受人の保護を図る点にある。したがって、定款に発起人として署名又は記名押印(電磁的記録の場合は電子署名。26条1項・2項)をしながら1株も引き受けない者を発起人とすることはできない。
引受けの方法は、発起設立では発起人全員の同意により引き受ける設立時発行株式の数等を定め(32条1項1号)、募集設立でも発起人はまず自ら株式を引き受けた上で残部について引受人を募集する(57条以下)。そして引受け後は、発起人は遅滞なく引き受けた設立時発行株式につき全額の払込み又は現物出資財産全部の給付をしなければならない(34条1項)。この履行を怠った場合には、36条の催告手続を経て失権する。
以上のとおり、本肢は25条2項の内容をそのまま述べたものであり、正しい。
発起人のうちの一人が設立時発行株式の株主となる権利を全て失った場合であっても,他の発起人がその引き受けた設立時発行株式について出資の履行をした財産の価額が定款に記載された設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を満たしているときは,株式会社の設立の無効事由とはならない。
解説
本肢は誤り。会社法25条2項は、各発起人は株式会社の設立に際し設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないと定めており、この規律は発起設立・募集設立のいずれにも及ぶ。発起人が出資の履行をしない場合、期日を定めた通知を受けてもなおその期日までに履行しないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う(36条1項ないし3項。失権)。
設立の無効は設立無効の訴えによってのみ主張でき(828条1項1号)、その無効原因について明文の規定はないが、設立手続に客観的かつ重大な法令違反がある場合に限られると解されている。発起人の一人が権利を全て失い、結果として設立時発行株式を1株も引き受けない発起人が存在することになる状態は、25条2項という設立手続の基本的な要件に反するものであり、重大な瑕疵として設立無効事由になると解されている。
この瑕疵は、他の発起人による出資の履行額が定款所定の「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(27条4号)を満たしていることによって治癒されるものではない。当該定款記載事項は会社の財産的基礎の確保を目的とするものであり、発起人全員が株式を引き受けるべきことを要求する25条2項の趣旨とは別個の要請だからである。したがって、設立無効事由とならないとする本肢は誤りである。
発起人が2名以上ある場合,そのうちの発起人1名が設立時発行株式の全てを引き受け,他の発起人は,設立時発行株式を引き受けないことができる。
解説
本肢は誤り。会社法25条2項は「各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない」と定めており、この規律は発起設立(25条1項1号)か募集設立(同項2号)かを問わず、すべての発起人に及ぶ。したがって、発起人が2名以上いる場合に、そのうちの1名が設立時発行株式の全部を引き受け、他の発起人は1株も引き受けないという取扱いは認められない。趣旨は、発起人が設立中の会社の実質的な運営主体として設立事務を遂行し、出資された財産の価額が不足する場合の填補責任(52条、52条の2)や任務懈怠責任(53条)、擬似発起人の責任(103条4項)など重い責任を負う立場にあることに求められる。すなわち、自らも株式を引き受けて成立後の会社の株主となり、設立の成否について経済的な利害を持たせることで、慎重かつ誠実な設立事務の遂行を担保する趣旨である。定款の絶対的記載事項として発起人の氏名または名称および住所が要求され(27条5号)、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数等は発起人全員の同意で定めるものとされている(32条1項1号)ことも、発起人=出資者であることを前提とする。もっとも要求されるのは1株以上であるから、引受株式数が発起人間で著しく偏ること自体は差し支えなく、ゼロが許されない点に本肢の誤りがある。
発起人が2名以上ある場合,そのうちの発起人1名が設立時発行株式の全てを引き受け,他の発起人は,設立時発行株式を引き受けないことができる。
解説
本肢は誤り。会社法25条2項は「各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない」と定める。この規律は、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける発起設立(25条1項1号)か、一部を引き受けて残りにつき株主を募集する募集設立(同項2号)かを問わず適用される強行規定である。したがって、発起人が2名以上ある場合に、そのうちの1名が設立時発行株式の全部を引き受け、他の発起人が全く引き受けないという構成をとることは認められない。その趣旨は、発起人は定款を作成して設立事務を主宰し、設立中の会社の機関として現物出資財産等の価額不足額填補責任(52条)や出資の履行の仮装に関する責任(52条の2)など重い責任を負う地位にあることから、少なくとも1株の出資を通じて設立の成否につき自ら経済的利害を負担させる点にある。なお、株式を引き受けた発起人が払込み・給付をしないときは、期日を定めた催告を経て株主となる権利を失うが(36条)、これは引受け後の履行の問題であって、1株以上を引き受けるべき義務そのものを免除する規定ではない。