1生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
2親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「甲にはAに対する脅迫罪は成立しない」の部分である。脅迫罪は害悪の告知が相手方に認識されれば成立し、相手方が現実に畏怖したことを要しない(大判明43.11.15)。
222条1項の「脅迫」は、一般に人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知をいう。判例は、脅迫罪は害悪を通告することによって成立し、通告を受けた者が現実に畏怖の念を起こしたことは必要でないとしている(大判明43.11.15)。脅迫罪は人の意思決定の自由を保護する罪であるが、条文は害を加える旨を告知して脅迫する行為そのものを処罰の対象としており、畏怖という結果の発生を要件としていない。相手方が畏怖したかどうかはその人の性格によって左右される事柄であり、これによって犯罪の成否を分けることは相当でないからである。甲がAに告げた「お前の家に火をつけてやる。」という言葉は、Aの財産、さらには生命・身体に害を加える旨の告知であり、一般に人を畏怖させるに足りる。この告知はAに認識されているから、Aが畏怖しなかったとしても、甲には脅迫罪が成立する。これに対し、告知が相手方に認識されなかった場合には、脅迫罪は成立しない。

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲にはAに対する脅迫罪が成立する」の部分である。脅迫罪の加害の対象は相手方本人とその親族に限られ(222条1項、2項)、親友に対する加害の告知は当たらない。
222条1項は、相手方本人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知する場合を処罰し、同条2項は、相手方の「親族」のこれらの法益に対し害を加える旨を告知する場合を処罰する。加害の対象として条文が挙げるのはこの二つだけである。本人以外の者への加害の告知によっても相手方の意思決定の自由は脅かされ得るが、刑法は、その範囲を親族に限ることで処罰の範囲を明確にしている。ここにいう親族は民法上の親族をいい、配偶者の兄弟のような姻族は含まれるが、親友、恋人、内縁の配偶者は含まれない。罪刑法定主義の下で、「親族」を親しい関係にある者一般にまで広げて読むことはできないからである。甲がAに告げたのは、Aの親友であるBを殺すという内容であり、A本人に対する加害でも、Aの親族に対する加害でもない。したがって、Aがこれによって畏怖したとしても、甲にAに対する脅迫罪は成立しない。

親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
- ["本人(222条1項)", "相手方本人の生命、身体、自由、名誉又は財産"]
- ["親族(222条2項)", "相手方の親族の生命、身体、自由、名誉又は財産。妻の実兄は含まれ、親友・内縁の妻は含まれない"]
- ["法人", "会社の営業に対する加害を告げても、会社に対する脅迫罪は成立しないと解されている"]
正しい。脅迫罪の客体は「人」であり、Aを脅迫する意図で害悪を告知した結果Bが畏怖した場合も、人を脅迫する点で認識と事実が構成要件の範囲内で符合するから、Bに対する脅迫罪の故意が認められる。
甲はAに宛てて害悪の告知をしたのに、手紙が誤って配達されたためにBがこれを読んで畏怖しており、狙った客体と結果の生じた客体が食い違う方法の錯誤である。判例は、犯罪の故意があるとするには行為者が認識した罪となるべき事実と現に発生した事実とが具体的に一致することを要せず、両者が法定の範囲内で一致すれば足りるとする法定的符合説に立ち、人を殺す意思で発砲した弾丸が予期しない別人に当たった事案で、その別人に対する殺人罪の故意を認めている(最判昭53.7.28)。脅迫罪(222条1項)の客体は「人」であり、甲が認識したAも現に畏怖したBもこの「人」に当たるから、およそ人を脅迫するという点で甲の認識と発生した事実は構成要件の範囲内で一致している。甲の手紙は家に放火するという生命・身体・財産に対する害悪の告知であり、読んだ者を畏怖させるに足りる。したがって甲にはBに対する脅迫罪が成立する。本肢は正しい。

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲に脅迫罪が成立する」の部分である。飼い主の過失による犬の攻撃は乙による急迫不正の侵害であり、侵害を止めさせるために乙を脅した行為は、身体を守るための相当な防衛行為として正当防衛が成立する。
乙に対して「お前を殺すぞ」と怒鳴る行為は、生命に対して害を加える旨の告知であり、脅迫罪(222条1項)の構成要件に該当する。しかし、甲が足首付近をかみつかれそうになっている状況は、飼い主乙の不注意によって逃げ出した犬による侵害であり、乙の過失という人の行為に基づくものであるから、乙との関係で急迫不正の侵害に当たる。乙は近くで事態を傍観しており、犬をおとなしくさせることによって侵害を止めることができる立場にある。甲が乙を脅して犬をおとなしくさせようとした行為は、侵害の原因を作り出し、かつこれを止める力を持つ乙に向けられた防衛行為である。逃げ場がない状況で、身体の安全という重要な法益を守るために、乙の意思決定の自由を一時的に害するにとどまる脅迫をすることは、防衛手段として相当な範囲内にあり、「やむを得ずにした行為」に当たる。殺すと告知しただけで現実に危害を加えたわけではないから、手段が過剰ともいえない。したがって甲の行為は正当防衛として違法性が阻却され、脅迫罪は成立しない。本肢は誤りである。

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
