正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
この条文の過去問 23問
誤り。違うのは「人の住居若しくは邸宅又は人の看守する建造物若しくは艦船」の部分である。130条の客体は「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」であり、邸宅にも人の看守が必要である。
130条前段は、客体を「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」と定める。「人の看守する」は邸宅、建造物、艦船の三つにかかり、住居にはかからない。住居は人が起臥寝食に使用している場所であり、現に人の生活が営まれていること自体から保護に値するので、看守を要件としていない。これに対し、邸宅は居住用の建物で住居以外のもの、すなわち空き家や閉鎖中の別荘などをいい、建造物は住居と邸宅以外の建物をいう。これらは人の生活の場ではないから、人が事実上管理支配していること、すなわち看守があって初めて、だれを立ち入らせるかを決める利益が保護の対象になる。したがって、だれも管理していない空き家に立ち入っても邸宅侵入罪は成立しない。本肢は、邸宅を住居と並べて看守の要件から外し、看守を建造物と艦船だけの要件としている点で、条文の定める客体と異なる。看守は、施錠して鍵を保管する方法でも足りる。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
- ["住居", "人が起臥寝食に使用している場所である。法律上正当な権限に基づく居住であることは要しない"]
- ["邸宅", "居住用の建物で住居以外のものである。空き家や、集合住宅の共用部分がこれに当たる。人の看守が必要である"]
- ["建造物", "住居・邸宅以外の建物である。人の看守が必要である"]
- ["看守", "人が事実上管理支配していることである。施錠して鍵を保管することでも足りる"]
本肢は誤り。憲法21条1項が保障する表現の自由は、民主政の過程を支える優越的地位を有する重要な権利であるが、無制約ではなく、他者の権利・利益を侵害する態様での行使まで保障するものではない。ビラの配布自体は思想を他人に伝達する手段であり、判例(最判平成20年4月11日。立川反戦ビラ事件)も、政治的意見等を記載したビラの配布はそれ自体としては表現の自由の行使に当たることを正面から認めている。もっとも、同判例が問題としたのは手段方法である。被告人らが立ち入ったのは、職員及びその家族が私的生活を営む集合住宅の共用部分及びその敷地であって、管理者がそのような場所として管理し、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではなかった。判例は、「たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない」とし、当該立入り行為を刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反しないと判示した。分譲マンションの共用部分に管理組合の意思に反して立ち入った事案である最判平成21年11月30日(葛飾政党ビラ配布事件)も、同様の枠組みで同じ結論を採っている。ここでの規制は、ビラの内容という表現内容に着目したものではなく、住居等への無断立入りという行為態様を捉えたものであり、保護法益たる管理権及び私生活の平穏の重要性に照らして合理的な制約といえる。したがって、ビラの内容が政治的意見を記載したものであるか否かによって結論が左右されるものではなく、政治的表現であることを理由に無断立入りが正当化されることもない。よって、当該立入り行為の処罰が憲法21条1項に違反し許されないとする本肢は誤りである。
誤り。違うのは「ビラの内容が政治的意見を記載したものであれば、表現の自由の行使として尊重されるべきであるから、当該立入り行為を刑法第130条前段の罪に問うことは憲法第21条第1項に違反し、許されない」の部分である。
最判平20.4.11(立川反戦ビラ事件)は、政治的意見を記載したビラの配布がそれ自体としては表現の自由の行使に当たることを認めつつ、21条1項も表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、他人の権利を不当に害するような表現の自由の行使は許されないとした。同判決が処罰の対象としたのは表現そのものではなく、その手段である立入り行為である。立ち入った場所は職員とその家族が私的生活を営む集合住宅の共用部分と敷地であり、管理者がそのような場所として管理し、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではなかったから、表現の自由の行使のためであっても管理権者の意思に反して立ち入ることは管理権を侵害するのみならず私生活の平穏を侵害するとして、刑法130条前段の罪に問うことは21条1項に違反しないと判示した。分譲マンションの共用部分に立ち入った最判平21.11.30も同じ枠組みで同じ結論を採る。処罰は行為態様を捉えたものであり、ビラの内容が政治的意見であるかどうかで結論は左右されない。

たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。
誤り。違うのは「立入りの外観が一般の利用客のそれと異なることがなければ、甲に建造物侵入罪は成立しない」の部分である。盗撮目的の立入りは管理権者の意思に反することが明らかであり、外観が一般の利用客と異ならなくても建造物侵入罪が成立する(最決平19.7.2)。
130条前段の「侵入」とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいう(最判昭58.4.8)。銀行の店舗のように一般の人の立入りが包括的に許されている場所であっても、その許諾は通常の利用目的による立入りに向けられたものであり、犯罪の目的で立ち入ることまで許しているわけではない。判例は、現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で、現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った事案で、そのような立入りが管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立するとした(最決平19.7.2)。侵入に当たるかどうかは管理権者の意思に反するかで決まり、立入りの態様が平穏であるかどうかで決まるのではない。したがって、甲の立入りの外観が一般の利用客と異ならなくても、甲に建造物侵入罪が成立する。

そのような立入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立する
誤り。違うのは「建造物侵入未遂罪が成立するにとどまる」の部分である。塀は建造物の一部であり、その上部に上がった時点で建造物侵入罪は既遂となる(最決平21.7.13)。
判例は、警察署の塀について、庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、まさに庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして建造物侵入罪の客体に当たるとした。そのうえで、外部から見ることのできない敷地に駐車された捜査車両を確認する目的で塀の上部に上がった行為について、建造物侵入罪の成立を認めている(最決平21.7.13)。塀そのものが建造物の一部である以上、管理権者の意思に反してその上に上がれば、その時点で建造物への侵入があり、同罪は既遂に達する。塀から敷地内に降り立つことは既遂の要件ではなく、敷地内に降りる意思がなかったとしても結論は変わらない。本肢の塀も、外部から敷地内への交通を制限するために設置され、内部をのぞき見ることができない構造のものであるから、甲がその上に立った時点で建造物侵入罪の既遂が成立する。

本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、刑法130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たると解するのが相当であり、外部から見ることのできない敷地に駐車された捜査車両を確認する目的で本件塀の上部へ上がった行為について、建造物侵入罪の成立を認めた原判断は正当である。
正しい。空き家は「邸宅」に当たり、所有者が施錠して管理していれば「人の看守する」ものといえるから、窃盗の目的で立ち入れば邸宅侵入罪が成立する。
130条前段は、「人の住居」のほか、「人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」を客体としている。「邸宅」とは、居住用に作られた建物で、現に人の起臥寝食に使用されていないものをいい、空き家や閉鎖中の別荘がこれに当たる。住居と異なり、邸宅は「人の看守する」ものであることを要する。「看守」とは、人が事実上管理支配していることをいい、常に人が見張っていることまでは要せず、施錠して鍵を保管することでも足りる。本肢の空き家は、乙が扉や窓に施錠して管理していたのであるから、人の看守する邸宅に当たる。また、「侵入」とは、住居権者又は管理権者の意思に反して立ち入ることをいう。窃盗の目的での立入りを乙が許すはずはなく、甲の立入りは乙の意思に反する。したがって、甲には邸宅侵入罪が成立する。現に人が住んでいない以上「住居」ではなく、居住用の建物である以上「建造物」でもないという客体の区別が、本肢の前提である。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
- 住居:人が起臥寝食に使用している場所。法律上正当な権限に基づく居住であることは要しない
- 邸宅:居住用の建物で住居以外のもの。空き家や、集合住宅の共用部分がこれに当たる。人の看守が必要である
- 建造物:住居・邸宅以外の建物。人の看守が必要である
- 看守:人が事実上管理支配していること。施錠して鍵を保管することでも足りる
誤り。違うのは「建造物侵入未遂罪が成立するにとどまる」の部分である。本肢の敷地部分は囲繞地として建造物に含まれ、そこに立ち入った時点で建造物侵入罪は既遂となる(最判昭51.3.4)。
判例は、「人の看守する建造物」とは、単に建物を指すばかりでなく、その囲繞地を含むとしている(最大判昭25.9.27)。そして、囲繞地であるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足りるとした(最判昭51.3.4)。囲障で区切られた敷地に立ち入られれば、建物を管理する者がだれを立ち入らせるかを決める自由は、建物に入られる前の段階ですでに害されるからである。本肢の敷地部分は、乙会社のビルに接しており、同社が設置した門扉及び金網フェンスによって、ビルの利用のために供されるものであることが明示され、部外者の出入りが制限されているから、囲繞地に当たる。甲が窃盗の目的でこの敷地部分に立ち入った時点で、建造物への侵入があり、同罪は既遂に達する。ビルに立ち入る前に取り押さえられたことは、既遂の成立に影響しない。

このような囲繞地であるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足りる
正しい。判例は、問われているのは表現そのものの処罰ではなく立入り行為の処罰だとし、管理権者の意思に反する集合住宅への立入りは管理権と私生活の平穏を侵害するから、邸宅侵入罪で処罰しても憲法21条1項に違反しないとした(最判平20.4.11)。
最判平20.4.11は、集合住宅である宿舎の共用部分と敷地に管理権者の承諾なく立ち入り、集合郵便受けや各室玄関ドアの郵便受けに政治的意見を記載したビラを投かんした事案で、まず政治的意見のビラ配布が表現の自由の行使に当たり、表現の自由が民主主義社会において特に重要な権利であることを認めた。そのうえで、本件で問われているのはビラの内容の処罰の可否ではなく、表現の手段としてされた立入り行為の処罰の可否であると整理し、立ち入った場所が一般に人が自由に出入りできる場所ではない点を重視して、表現の自由の行使のためでも管理権者の意思に反してそのような場所に立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するとして、刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反しないとした。表現内容ではなく私的領域への立入りを規律する一般的な刑罰法規の適用にとどまるから、この制限は必要かつ合理的なものといえる。本肢はこの判示をそのまま述べている。

たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 私鉄の駅構内で許諾なくビラ配布と演説をし、退去要求を無視して滞留 | 最判昭59.12.18(吉祥寺駅構内ビラ配布事件) | 手段が他人の財産権・管理権を不当に害するものは許されず、鉄道営業法35条・不退去罪で処罰しても21条1項に違反しない |
| 集合住宅の共用部分に立ち入り政治ビラを投かん | 最判平20.4.11(立川反戦ビラ事件) | 問われるのは表現ではなく立入りの処罰であり、管理権と私生活の平穏を侵害するから邸宅侵入罪で処罰しても21条1項に違反しない |
| 街路樹の支柱に政党の演説会告知のポスターをくくりつけ | 最判昭62.3.3(大分県屋外広告物条例事件) | 美観風致の維持と危害防止のための場所・方法の規制は必要かつ合理的な制限で、処罰しても21条1項に違反しない |
| 電柱などへのはり札を禁止する条例 | 最大判昭43.12.18(大阪市屋外広告物条例事件) | 美観風致の維持・危害防止のための規制は公共の福祉のため許された必要かつ合理的な制限である |
誤り。違うのは「甲には建造物侵入罪は成立し得ない」の部分である。建物の利用のために供されている塀は130条の「建造物」の一部であり、正当な理由なくその上部に立った甲に建造物侵入罪が成立し得る。
最決平21.7.13は、本肢とほぼ同じ事案で、警察署の庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに外部からの干渉を排除する作用を果たし、まさに庁舎建物の利用のために供されている工作物である塀は、130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして建造物侵入罪の客体に当たるとし、その上部に上がる行為について同罪の成立を認めた。130条の建造物には、門塀などの囲障により建物の附属地であることが明示された囲繞地が含まれる(最大判昭25.9.27)が、この決定は、囲繞地を画する外郭にすぎないと見えた塀そのものを建造物の一部と評価した点に意味があり、敷地内に降り立っていなくても、塀の上部に立った時点で建造物への立入りがある。本肢の塀は、高さ約2.5メートルのコンクリート製で、外部からの立入りを制限し内部をのぞき見ることができない構造として作用し、建物の利用のために供されているから、建造物の一部に当たる。甲は管理権者の意思に反する目的で正当な理由なくこれによじ登っており、侵入に当たるから、建造物侵入罪が成立し得る。

本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、刑法130条にいう『建造物』の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たる
- ["住居", "人が起臥寝食に使用している場所である。法律上正当な権限に基づく居住であることは要らない"]
- ["邸宅", "居住用の建物で住居以外のものである。空き家や集合住宅の共用部分がこれに当たり、人の看守が必要である"]
- ["建造物", "住居・邸宅以外の建物である。人の看守が必要であり、囲繞地と、建物の利用のために供されている塀も含まれる"]
- ["看守", "人が事実上管理支配していることである。施錠して鍵を保管することでも足りる"]
誤り。違うのは「甲には建造物侵入罪は成立し得ない」の部分である。建物の利用のために供されている塀は130条の「建造物」の一部であり、正当な理由なくその上部に立った甲に建造物侵入罪が成立し得る。
最決平21.7.13は、本肢とほぼ同じ事案で、警察署の庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに外部からの干渉を排除する作用を果たし、まさに庁舎建物の利用のために供されている工作物である塀は、130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして建造物侵入罪の客体に当たるとし、その上部に上がる行為について同罪の成立を認めた。130条の建造物には、門塀などの囲障により建物の附属地であることが明示された囲繞地が含まれる(最大判昭25.9.27)が、この決定は、囲繞地を画する外郭にすぎないと見えた塀そのものを建造物の一部と評価した点に意味があり、敷地内に降り立っていなくても、塀の上部に立った時点で建造物への立入りがある。本肢の塀は、高さ約2.5メートルのコンクリート製で、外部からの立入りを制限し内部をのぞき見ることができない構造として作用し、建物の利用のために供されているから、建造物の一部に当たる。甲は管理権者の意思に反する目的で正当な理由なくこれによじ登っており、侵入に当たるから、建造物侵入罪が成立し得る。

本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、刑法130条にいう『建造物』の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たる
- ["住居", "人が起臥寝食に使用している場所である。法律上正当な権限に基づく居住であることは要らない"]
- ["邸宅", "居住用の建物で住居以外のものである。空き家や集合住宅の共用部分がこれに当たり、人の看守が必要である"]
- ["建造物", "住居・邸宅以外の建物である。人の看守が必要であり、囲繞地と、建物の利用のために供されている塀も含まれる"]
- ["看守", "人が事実上管理支配していることである。施錠して鍵を保管することでも足りる"]
正しい。居住者Aの承諾を得た平穏な立入りは住居侵入罪の構成要件に該当せず違法でもないので、【見解】によれば、正犯の行為が構成要件該当性と違法性を欠く以上、甲に住居侵入罪の教唆犯は成立し得ない。
住居侵入罪(130条前段)の「侵入」は、住居権者の意思に反する立入りをいう。一人で居住するAが承諾した上での平穏な立入りは、Aの意思に反する立入りではないから、「侵入」に当たらず、住居侵入罪の構成要件に該当しない。承諾を違法性阻却の問題と捉える立場に立っても、Aの有効な承諾がある以上、違法性は阻却される。いずれにしても、正犯である乙の行為は、構成要件該当性又は違法性を欠き、住居侵入罪にはならない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするから、正犯の行為がそのどちらかを欠く場合には、これを唆した者に教唆犯は成立しない。甲は乙に侵入するよう唆したが、乙が現に行ったのはAの承諾を得た適法な立入りであり、甲の教唆が従属すべき構成要件に該当する違法な正犯行為が存在しない。したがって、【見解】に従えば、甲に住居侵入罪の教唆犯は成立し得ず、本肢は正しい。教唆された者が実行に出なかった場合に教唆犯が成立しないのと同じ理屈である。

人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
誤り。違うのは「政党のビラを配布することまで禁止するのは合理性を欠くとして、かかる行為を刑法第130条の罪に問うことは憲法第21条第1項に反する旨判示された」の部分である。葛飾マンションビラ配布事件判決は、ビラの種類で区別せず、処罰は21条1項に違反しないとした。
最判平21.11.30(葛飾マンションビラ配布事件)は、政党の政治的意見等を記載したビラを配布する目的で分譲マンションの共用部分である廊下・階段等に管理組合の承諾なく立ち入った行為について、刑法130条前段の罪の成立を認め、処罰は憲法21条1項に違反しないとした。理由づけは最判平20.4.11(立川反戦ビラ事件)の枠組みを踏襲する。政党のビラの配布は表現の自由の行使に当たることを認めつつ、本件で問われているのは表現そのものの処罰ではなく、管理組合の承諾なくマンション内に立ち入ったことを処罰することの憲法適合性だとした。その上で、立入り先は住人が私的生活を営む住宅の共用部分であって一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではないから、管理組合の意思に反する立入りは管理権と住人の私生活の平穏を侵害するとした。判決は配布するビラが商業的な宣伝・広告か政党の政治的意見かで処罰の可否を分けておらず、いずれであれ管理権者の意思に反する立入りである点を捉えて可罰性を肯定している。本肢は結論も理由も判決と逆である。

本件で被告人が立ち入った場所は、本件マンションの住人らが私的生活を営む場所である住宅の共用部分であり、その所有者によって構成される本件管理組合がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、そこに本件管理組合の意思に反して立ち入ることは、本件管理組合の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 自衛官宿舎の敷地・共用部分に政治的ビラの投かん目的で立入り | 最判平20.4.11(立川反戦ビラ事件) | 問われるのは表現そのものではなく立入りの処罰の憲法適合性。一般に自由に出入りできる場所ではなく、管理権と私生活の平穏を侵害するから邸宅侵入罪で処罰しても21条1項に違反しない |
| 分譲マンションの共用部分に政党ビラの配布目的で立入り | 最判平21.11.30(葛飾マンションビラ配布事件) | 立川反戦ビラ事件の枠組みを踏襲し、管理組合の意思に反する立入りの処罰は21条1項に違反しない。ビラの種類で区別しない |
| 駅構内でのビラ配布・演説 | 最判昭59.12.18(吉祥寺駅構内ビラ配布事件) | 鉄道営業法と住居侵入罪による処罰は21条1項に違反しない。伊藤正己裁判官の補足意見がパブリック・フォーラム論を説いたが法廷意見は採用していない |
正しい。A方とB方の人違いは住居侵入罪の構成要件の中の錯誤であり、窃盗の教唆で強盗が実行された場合は両罪が重なり合う窃盗罪の限度で教唆犯が成立する。
教唆者の認識と正犯が実行した事実が食い違っても、両者が同じ構成要件の範囲で一致していれば故意は否定されない(最判昭25.7.11)。甲はA方への侵入を教唆し、乙はB方をA方と誤認して侵入したが、いずれも人の住居に管理権者の意思に反して立ち入るという住居侵入罪(130条前段)の構成要件の中で一致しているので、甲にはB方への住居侵入罪の教唆犯が成立する。次に、甲は金品の窃取を教唆したのに、乙はその場にいたBから金品を強取しており、乙には強盗罪が成立する。強盗罪と窃盗罪は、他人の財物の占有を奪う点で共通し、暴行・脅迫を手段とするかどうかだけが異なるので、両罪の構成要件は窃盗罪の限度で重なり合う。教唆や共謀と違う罪が実行された場合、重なり合う軽い罪の限度で共犯が成立するという判例の考え方(最決昭54.4.13)からすると、甲にはBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。したがって、甲にはB方への住居侵入罪とBに対する窃盗罪の教唆犯が成立し、本肢は正しい。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
誤り。違うのは「管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない限り,建造物侵入罪が成立することはない」の部分である。判例は、拒否の意思が明示されていなくても、諸事情から管理権者が容認していないと合理的に判断されれば同罪が成立するとしている(最判昭58.4.8)。
判例は、130条前段にいう侵入とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、その建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などから見て、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないとしている(最判昭58.4.8)。侵入に当たるかどうかは管理権者の意思に反するかで決まるのであり、立入りの態様が平穏であるかどうかは独立の基準ではない。また、管理権者の意思は明示されたものに限られず、建造物の性質や立入りの目的などの事情から推認される黙示の不同意で足りる。したがって、立入りが平穏な態様で行われ、拒否の意思が積極的に明示されていなくても、管理権者が容認していないと合理的に判断されれば建造物侵入罪が成立する余地があり、成立することはないと言い切る本肢は誤りである。

刑法130条前段にいう『侵入シ』とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であつても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れない
| 住居権説(判例) | 平穏説 | |
|---|---|---|
| 保護法益 | 住居等にだれを立ち入らせるかを決める自由 | 住居等の事実上の平穏 |
| 侵入の意義 | 住居権者・管理権者の意思に反する立入り | 平穏を害する態様での立入り |
| 平穏な態様で意思に反して立ち入った場合 | 侵入に当たる | 侵入に当たらない |
| 同意に基づく立入り | 構成要件に該当しない | 態様が平穏なら構成要件に該当しない |
誤り。違うのは「住居侵入罪の構成要件には該当するが,違法性が阻却される」の部分である。判例の立場では、同意に基づく立入りは住居権者の意思に反する立入りではないので、侵入に当たらず構成要件に該当しない。
130条前段の保護法益については、住居の事実上の平穏とする見解と、住居等にだれを立ち入らせるかを決める住居権者の自由とする見解が対立するが、判例は後者に立ち、侵入とは住居権者・管理権者の意思に反する立入りをいうとしている(最判昭58.4.8)。この立場では、住居権者の同意に基づく立入りは、そもそも意思に反する立入りではないので侵入に当たらず、構成要件該当性が否定される。住居侵入罪における住居権者の同意は、構成要件に該当する行為について例外的に違法性を阻却する被害者の同意ではなく、侵入という構成要件要素そのものを欠くことになる事情として位置づけられる。立入りの態様が平穏を害するものであっても、住居権者が同意している以上、その者の意思に反する立入りではないから、構成要件該当性の段階で住居侵入罪は否定される。本肢は、平穏を害する態様であることを理由に構成要件該当性を認めたうえで違法性阻却を論じているが、これは態様の平穏を基準にする見解の発想であり、判例の立場では同意は構成要件の段階で処理される。したがって本肢は誤りである。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない限り,建造物侵入罪が成立することはない」の部分である。判例は、拒否の意思が明示されていなくても、諸事情から管理権者が容認していないと合理的に判断されれば同罪が成立するとしている(最判昭58.4.8)。
判例は、130条前段にいう侵入とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、その建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などから見て、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないとしている(最判昭58.4.8)。侵入に当たるかどうかは管理権者の意思に反するかで決まるのであり、立入りの態様が平穏であるかどうかは独立の基準ではない。また、管理権者の意思は明示されたものに限られず、建造物の性質や立入りの目的などの事情から推認される黙示の不同意で足りる。したがって、立入りが平穏な態様で行われ、拒否の意思が積極的に明示されていなくても、管理権者が容認していないと合理的に判断されれば建造物侵入罪が成立する余地があり、成立することはないと言い切る本肢は誤りである。

刑法130条前段にいう『侵入シ』とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であつても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れない
| 住居権説(判例) | 平穏説 | |
|---|---|---|
| 保護法益 | 住居等にだれを立ち入らせるかを決める自由 | 住居等の事実上の平穏 |
| 侵入の意義 | 住居権者・管理権者の意思に反する立入り | 平穏を害する態様での立入り |
| 平穏な態様で意思に反して立ち入った場合 | 侵入に当たる | 侵入に当たらない |
| 同意に基づく立入り | 構成要件に該当しない | 態様が平穏なら構成要件に該当しない |
誤り。違うのは「住居侵入罪の構成要件には該当するが,違法性が阻却される」の部分である。判例の立場では、同意に基づく立入りは住居権者の意思に反する立入りではないので、侵入に当たらず構成要件に該当しない。
130条前段の保護法益については、住居の事実上の平穏とする見解と、住居等にだれを立ち入らせるかを決める住居権者の自由とする見解が対立するが、判例は後者に立ち、侵入とは住居権者・管理権者の意思に反する立入りをいうとしている(最判昭58.4.8)。この立場では、住居権者の同意に基づく立入りは、そもそも意思に反する立入りではないので侵入に当たらず、構成要件該当性が否定される。住居侵入罪における住居権者の同意は、構成要件に該当する行為について例外的に違法性を阻却する被害者の同意ではなく、侵入という構成要件要素そのものを欠くことになる事情として位置づけられる。立入りの態様が平穏を害するものであっても、住居権者が同意している以上、その者の意思に反する立入りではないから、構成要件該当性の段階で住居侵入罪は否定される。本肢は、平穏を害する態様であることを理由に構成要件該当性を認めたうえで違法性阻却を論じているが、これは態様の平穏を基準にする見解の発想であり、判例の立場では同意は構成要件の段階で処理される。したがって本肢は誤りである。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「人の住居若しくは邸宅,又は人の看守する建造物若しくは艦船」の部分である。130条は「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」と定めており、「人の看守する」は邸宅にもかかる。
130条は、正当な理由がないのに、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」に侵入した者を処罰する。住居とは人が起臥寝食に使用している場所をいい、邸宅とは居住用の建物で住居以外のもの、たとえば空き家をいい、建造物とは住居と邸宅以外の建物をいう。このうち住居は、人が現に生活している場所である以上、それだけで保護に値するので、看守の有無を問わず客体になる。これに対し、邸宅、建造物、艦船は、人が現に生活していない場所であるから、人が事実上管理支配している状態、すなわち看守があって初めて客体になる。条文の文言上も、「人の看守する」は邸宅、建造物、艦船の三つにかかる形で置かれており、邸宅だけを看守の要件から外して読むことはできない。したがって、看守されていない空き家に立ち入っても邸宅侵入罪にはならない。本肢は、邸宅を住居と並べて「人の看守する」の要件がかからないものとして挙げている点で、条文の構造を取り違えており、誤りである。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
| 客体 | 意味 | 看守の要否 |
|---|---|---|
| 住居 | 人が起臥寝食に使用している場所。正当な権限に基づく居住である必要はない | 不要 |
| 邸宅 | 居住用の建物で住居以外のもの(空き家、集合住宅の共用部分など) | 必要 |
| 建造物 | 住居・邸宅以外の建物。囲繞地を含む | 必要 |
| 艦船 | 軍艦・船舶 | 必要 |
誤り。違うのは「「住居」に当たる」の部分である。判例は、集合住宅の1階出入口から各室玄関前までの部分を、居住用の建物の一部で管理者の管理に係るものとして「人の看守する邸宅」に当たるとしている。
住居とは、人が起臥寝食に使用している場所をいう。集合住宅の各居室はその居住者の住居であるが、1階出入口から各居室の玄関までの階段や廊下といった共用部分は、誰かが起臥寝食に使用している場所ではなく、居住者や訪問者が通行するための場所である。判例は、自衛隊の宿舎の各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分について、居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり、宿舎管理者の管理に係るものであるから、居住用の建物の一部として130条にいう「人の看守する邸宅」に当たるとし、その敷地は邸宅の囲繞地に当たるとした(最判平20.4.11)。共用部分は住居そのものではないが、居住用の建物の一部として管理者が管理支配しているので、看守のある邸宅として保護されるという整理である。本肢は、共用部分を「住居」に当たるとしている点で、判例の客体の整理と異なり、誤りである。なお、ビラを配布する目的であっても、管理権者の意思に反して共用部分に立ち入れば侵入に当たり、130条の罪が成立する。

各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分は、居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり、宿舎管理者の管理に係るものであるから、居住用の建物の一部として刑法130条にいう「人の看守する邸宅」に当たる
| 客体 | 意味 | 看守の要否 |
|---|---|---|
| 住居 | 人が起臥寝食に使用している場所。正当な権限に基づく居住である必要はない | 不要 |
| 邸宅 | 居住用の建物で住居以外のもの(空き家、集合住宅の共用部分など) | 必要 |
| 建造物 | 住居・邸宅以外の建物。囲繞地を含む | 必要 |
| 艦船 | 軍艦・船舶 | 必要 |
正しい。判例は、130条の建造物には建物だけでなくその囲繞地が含まれるとしており、建物に付属してその利用に供されることが門塀等の囲障によって明示された土地は建造物に当たる。
判例は、130条の「建造物」とは単に家屋を指すだけでなく、その囲繞地を包含するものと解している(最大判昭25.9.27)。囲繞地への立入りは、建物そのものへの立入りに準じる程度に建物利用の平穏を害するからである。そして判例は、囲繞地であるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足りるとしている(最判昭51.3.4)。門塀で囲まれた敷地は、外から見てもその建物のための土地であることが分かり、建物の管理権者の支配が及んでいることが明らかだからである。本肢は、建造物に付属し、その利用に供される囲繞地が130条の「建造物」に当たるとするものであり、判例の立場と一致しており正しい。囲繞地が建造物に含まれる以上、門塀で囲まれた工場の敷地に窃盗の目的で立ち入れば、建物に入る前に逮捕されても建造物侵入罪は既遂になる。

囲繞地であるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足りる
正しい。判例は、庁舎建物とその敷地を他から区画し外部からの干渉を排除する作用を果たす塀は建造物の一部であるとしており、塀の上部に上がった時点で建造物侵入罪が成立し、中庭に立ち入る意思がなくても結論は変わらない(最決平21.7.13)。
最決平21.7.13は、警察署の庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしているコンクリート塀について、正に庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして建造物侵入罪の客体に当たるとし、外部から見ることのできない敷地に駐車された捜査車両を確認する目的で塀の上部へ上がった行為について建造物侵入罪の成立を認めた原判断を是認した。この判例は、塀を囲繞地への立入りの境界と位置づけたのではなく、塀それ自体を建造物の一部と評価したものである。したがって、塀の上部に上がった時点で建造物の一部への侵入があり、同罪は既遂に達するので、塀から降りて中庭に立ち入る意思がなかったことは成否を左右しない。甲は、外部からの立入りが制限され内部をのぞき見ることができない構造の警察署のコンクリート塀の上に登り、捜査車両をのぞき見る目的でその上部に立って中庭を見ており、判例の事案と同じであるから、建造物侵入罪が成立する。

本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの干渉を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物の利用のために供されている工作物であって、刑法130条にいう「建造物」の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たると解するのが相当であり、外部から見ることのできない敷地に駐車された捜査車両を確認する目的で本件塀の上部へ上がった行為について、建造物侵入罪の成立を認めた原判断は正当である。
正しい。犬にかみつかれそうになっているという身体に対する現在の危難を避けるため、逃げ場のない状況で無関係なAの住居に逃げ込んだ行為は、害の程度も超えておらず、緊急避難として違法性が阻却される。
Aの住居に無断で立ち入る行為は住居侵入罪(130条前段)の構成要件に該当する。しかしAは犬の飼い主ではなく、甲に対する侵害とは無関係の第三者であるから、Aとの関係で正当防衛は問題にならず、正対正の関係を規律する緊急避難(37条1項)の成否が問題になる。甲は犬に足首付近をかみつかれそうになっており、自己の身体に対する現在の危難が存在する。甲は犬を蹴ったが、なおも犬がかみつこうとしており、逃げ場がなかったのであるから、Aの住居に逃げ込む以外に危難を避ける方法はなく、緊急避難に求められる補充性も満たす。そして、避けようとした害は甲の身体に対する傷害であるのに対し、生じた害はAの住居の平穏が一時的に害されたことにとどまり、生じた害が避けようとした害の程度を超えていない。したがって甲の行為は緊急避難として違法性が阻却され、住居侵入罪は成立しない。緊急避難では正当防衛と異なり補充性と害の均衡が必要になるが、本肢ではいずれも満たされている。本肢は正しい。

自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
- ["正当防衛(36条1項)", "防衛手段としての相当性。補充性は不要。退避義務なし。法益の権衡は要件でない"]
- ["緊急避難(37条1項)", "他に方法がないこと(補充性)。生じた害が避けようとした害の程度を超えないこと(法益の権衡)が必要"]
誤り。違うのは「懲役23年に処することができる」の部分である。事例Ⅲでは住居侵入罪が窃盗罪とも強盗罪とも牽連犯の関係に立つため全体が科刑上一罪となり、最も重い強盗罪の刑で処断されて、有期刑の上限は加重のない20年にとどまる。
甲は強盗の目的で乙方に立ち入っており住居侵入罪(130条前段)が成立し、現金1万円を窃取した点について窃盗罪(235条)が成立する。その直後に帰宅した乙に暴行を加えて反抗を抑圧し現金3万円を強取した点については強盗罪(236条1項)が成立する。住居侵入罪と窃盗罪、住居侵入罪と強盗罪は、いずれも手段と結果の関係にあり牽連犯(54条1項後段)となる。窃盗罪と強盗罪自体は本来併合罪の関係にあるが、両罪がともに住居侵入罪と牽連犯の関係にあるため、住居侵入罪をかすがいとして全体が一罪として扱われる。これをかすがい現象といい、判例はこの場合に全体を科刑上一罪として最も重い罪の刑で処断している。最も重いのは強盗罪であり、その法定刑は5年以上の有期懲役であるから、処断刑は5年以上20年以下となる。併合罪の加重はされないから、有期刑の上限は12条1項の原則どおり20年であり、懲役23年を言い渡すことはできない。本肢は誤りである。出題当時の懲役は現行法では拘禁刑であるが、結論は変わらない。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。