人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
この条文の過去問 2問
誤り。違うのは「乙の同意がある以上、甲に虚偽告訴罪は成立しない」の部分である。虚偽告訴罪は国家の審判作用を害する罪であり、被告訴者の承諾があっても成立は妨げられない(大判大元.12.20)。
虚偽告訴罪(172条)は、人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の申告をした者を処罰する。この罪は、不当に処分を受けるおそれのある個人の利益も守っているが、第一次的には、虚偽の申告によって捜査や審判という国家の作用が誤った方向に進むことを防ぐための罪である。事実に反する被害届を受ければ、捜査機関は存在しない犯罪の捜査に動かされ、審判作用は現に害される。この国家的な利益は、申告される個人が自由に処分できるものではないから、被告訴者が同意していても、犯罪の成立を否定する理由にならない。判例も、虚偽告訴罪は個人の権利を侵害すると同時に官憲の職務を誤らせる危険があるために処罰するものであるから、被告訴者の承諾があっても成立は妨げられないとしている(大判大元.12.20)。甲は、乙の同意を得て、乙に現金を窃取されたという虚偽の被害届を司法警察員に提出しており、乙に刑事処分を受けさせる目的もあるから、甲に虚偽告訴罪が成立する。

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「申告者が虚偽であると認識していれば,成立する」の部分である。虚偽告訴罪の「虚偽」は申告の内容が客観的真実に反することをいい、内容が真実に合致していれば申告者の認識にかかわらず成立しない(最決昭33.7.31)。
虚偽告訴罪(172条)は、人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をしたときに成立する。判例は、同条にいう虚偽の申告とは、申告の内容をなすところの刑事、懲戒の処分の原因となる事実が客観的真実に反することをいうとしている(最決昭33.7.31)。この罪が守るのは国の審判作用の適正と、処分を受けさせられる個人の利益であり、申告の内容が客観的真実に合致している限り、捜査機関や懲戒権者は正しい事実に基づいて処分を判断でき、申告された人も不当な処分を受けることはないから、申告者が内心で虚偽だと思っていたとしても、法益の侵害も危険も生じない。偽証罪の「虚偽」が証人の記憶に反する陳述をいうと解されているのと異なり、虚偽告訴罪の「虚偽」は客観的真実に反することを意味するので、両罪で基準が違うことになる。本肢は、告訴の内容が客観的真実に合致していても申告者の認識だけで成立するとしており、判例と食い違っている。

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。