二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
この条文の過去問 21問
正しい。共謀に基づく殺害であるから甲及び乙は2個の殺人罪の全部について共同正犯となり、2個の殺害は別個の行為によるものであるから併合罪となる。
60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定める。共謀に基づいて互いに他人の行為を利用し合って犯罪を実現した以上、自ら手を下していない部分についても正犯としての責任を負う。甲及び乙は、A及びBの殺害を共謀し、その共謀に基づいて甲がAを、乙がBを殺害しているから、甲は乙によるBの殺害について、乙は甲によるAの殺害についても責任を負い、両名を共同正犯とする殺人罪が成立する。殺人罪は人の生命という被害者ごとに独立した法益を保護する罪であるから、罪数は被害者の数によって決まり、成立する殺人罪は2個である。次に、この2個の罪の関係を見ると、Aの殺害とBの殺害は、甲と乙がそれぞれ行った別個の行為であり、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為と評価することはできないから、観念的競合にはならない。手段と結果の関係にもないので牽連犯にもならず、2個の殺人罪は併合罪(45条前段)となる。

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
正しい。共謀に基づく殺害であるから甲及び乙は2個の殺人罪の全部について共同正犯となり、2個の殺害は別個の行為によるものであるから併合罪となる。
60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定める。共謀に基づいて互いに他人の行為を利用し合って犯罪を実現した以上、自ら手を下していない部分についても正犯としての責任を負う。甲及び乙は、A及びBの殺害を共謀し、その共謀に基づいて甲がAを、乙がBを殺害しているから、甲は乙によるBの殺害について、乙は甲によるAの殺害についても責任を負い、両名を共同正犯とする殺人罪が成立する。殺人罪は人の生命という被害者ごとに独立した法益を保護する罪であるから、罪数は被害者の数によって決まり、成立する殺人罪は2個である。次に、この2個の罪の関係を見ると、Aの殺害とBの殺害は、甲と乙がそれぞれ行った別個の行為であり、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為と評価することはできないから、観念的競合にはならない。手段と結果の関係にもないので牽連犯にもならず、2個の殺人罪は併合罪(45条前段)となる。

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
誤り。違うのは「予備行為はこれに含まれないから、予備罪の共同正犯は成立しない」の部分である。判例は、殺害計画を打ち明けられて毒物を入手し手渡した者を殺人予備罪の共同正犯とした原判決を正当としている(最決昭37.11.8)。
60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者」を正犯とする。この「実行」に予備行為が含まれるかが問題になるが、予備罪も、基本となる構成要件を修正した一つの構成要件であり、その構成要件に該当する行為、すなわち予備行為という実行行為を考えることができる。予備罪が独立に処罰されている以上、二人以上の者が共同して予備行為をすれば、共同して犯罪を実行したといえる。判例は、殺害の計画を打ち明けられて毒物の入手を依頼され、青酸ソーダを入手して手渡した者を殺人予備罪の共同正犯とした原判決の判断を正当としており(最決昭37.11.8)、予備罪の共同正犯の成立を認めている。60条の「実行」を基本的構成要件の実現に向けた行為に限ると、予備の段階で重要な役割を果たした者を、正犯としても共犯としても処罰できないことになり、重大な犯罪について予備を処罰することとした趣旨に反する。したがって、予備罪の共同正犯は成立しないとする肢は誤りである。

第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
誤り。違うのは「過失犯には適用されない」の部分である。判例は、共同の注意義務に共同して違反した場合に、過失犯にも60条を適用して共同正犯を認めている(最決平28.7.12)。
判例は、共同経営する飲食店で、法定の量を超えるメタノールを含む液体を、必要な検査をしないまま意思を連絡して販売した事案で、被告人両名の間に共犯関係の成立を認め、過失犯に60条を適用した(最判昭28.1.23)。その後、業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要であるとして、その成立要件を示している(最決平28.7.12)。60条の「共同して犯罪を実行した」というために必要な意思の連絡は、結果を発生させることについての意思の連絡に限られない。過失犯の実行行為は注意義務に違反する行為であり、同じ注意義務を共同して負う者が、不注意な行為を共同して行うことについて意思を通じていれば、その行為を共同して実行したといえるからである。本肢は、意思の連絡を故意の共同と同じものと捉えて、過失犯への60条の適用を否定している点で、判例の立場に反する。

業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である
- 共同の注意義務:同じ結果を防ぐために、同じ内容の注意義務を共同して負っていること。互いに相手の行為にも注意を払うべき関係にあることが必要である
- 共同の違反:その注意義務に、共同して違反したこと
- 因果関係:共同の注意義務違反と結果との間に因果関係があること
誤り。違うのは「一般人が認識可能であった事情及び被告人が特に認識した事情に基づいて判断すべきという立場に立った上で」以下の部分である。【判旨】は受領行為自体の危険性を問題としておらず、本肢のような評価も前提としていない。
【判旨】は、被告人が、欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与したことを理由に、「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず、加功前の欺罔行為を含めた本件について詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うとしている。責任の根拠は、すでに詐欺未遂に当たるXの欺罔行為を含む詐欺全体に共謀のうえ関与したことに置かれており、受領行為それ自体に未遂犯として処罰すべき危険性があるかどうかは判断されていない。作戦の開始の有無にかかわらないとしている以上、作戦が開始されたという事情を、危険性を判断する基礎に入れるかどうかも問題とされていない。また、本肢がいう一般人が認識可能であった事情と行為者が特に認識した事情を基礎とする立場によるとしても、一般人がAの協力の事実を認識できたと評価すれば、荷物を受領しても現金を得る危険性はないことになり、未遂犯の成立を否定する方向に働く。この立場から未遂犯を認めるのであれば、一般人はその事実を認識できなかったという評価が前提となるはずである。

被告人は,本件につき,Xによる欺罔行為がされた後,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,Xと共謀の上,本件を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与している。そうすると,「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず,被告人は,その加功前の欺罔行為を含めた本件につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。
誤り。違うのは「過失犯には適用されない」の部分である。判例は、共同の注意義務に共同して違反した場合に、過失犯にも60条を適用して共同正犯を認めている(最決平28.7.12)。
判例は、共同経営する飲食店で、法定の量を超えるメタノールを含む液体を、必要な検査をしないまま意思を連絡して販売した事案で、被告人両名の間に共犯関係の成立を認め、過失犯に60条を適用した(最判昭28.1.23)。その後、業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要であるとして、その成立要件を示している(最決平28.7.12)。60条の「共同して犯罪を実行した」というために必要な意思の連絡は、結果を発生させることについての意思の連絡に限られない。過失犯の実行行為は注意義務に違反する行為であり、同じ注意義務を共同して負う者が、不注意な行為を共同して行うことについて意思を通じていれば、その行為を共同して実行したといえるからである。本肢は、意思の連絡を故意の共同と同じものと捉えて、過失犯への60条の適用を否定している点で、判例の立場に反する。

業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である
- 共同の注意義務:同じ結果を防ぐために、同じ内容の注意義務を共同して負っていること。互いに相手の行為にも注意を払うべき関係にあることが必要である
- 共同の違反:その注意義務に、共同して違反したこと
- 因果関係:共同の注意義務違反と結果との間に因果関係があること
誤り。違うのは「教唆犯」の部分である。甲は乙に犯行の方法を具体的に指示し、覆面とモデルガンを渡して強取した現金を全て受け取っており、乙と共同して強盗を実現した正犯であって、教唆犯にとどまらない。
教唆犯(61条1項)は、まだ犯罪を決意していない者を唆して犯罪を実行させた者であり、自ら犯罪を実現したとはいえない関与形態である。判例は、母親が12歳の長男に強盗を指示した事案で、指示は長男の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、長男は自らの意思により強盗の実行を決意し、臨機応変に対処して強盗を完遂したとして、母親に強盗の間接正犯ではなく共同正犯が成立するとした(最決平13.10.25)。本事例の甲は、乙に覆面とモデルガンを渡し、「金だ。」と言ってモデルガンを見せるという犯行の方法まで具体的に言い聞かせ、乙が強取した現金を全て受け取って、その中から乙に小遣いを与えた上で残りを自分の生活費などに費消している。犯行を計画して道具を用意し、利益のほとんどを自分のものにした甲は、犯罪を自己の犯罪として実現した者であり、乙を唆しただけの教唆犯ではなく共同正犯である。したがって、甲に教唆犯が成立するとする本肢は誤っている。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
誤り。違うのは「強盗罪」の部分である。乙が強盗の機会にAを負傷させている以上、強盗を共謀した甲は、その結果についても責任を負い、強盗罪ではなく強盗致傷罪の共同正犯になる。
甲は乙と共同して強盗を実現した共同正犯であるが、成立する罪名は強盗罪にとどまらない。強盗致傷罪(240条前段)は、強盗が人を負傷させたときに成立する結果的加重犯であり、負傷の結果は強盗の手段である暴行から生じたものに限られず、強盗の機会に生じたものであれば足りる。本事例の乙は、現金を強取して外に出ようとした際、トイレから脱出して向かってきたAに腕をつかまれ、これを激しく振り払ってAを転倒させ負傷させている。これは強盗の現場で逃走のためにした暴行から生じた負傷であり、強盗の機会における負傷に当たる。結果的加重犯の共同正犯では、基本となる犯罪を共謀した者は、共犯者の一人が生じさせた重い結果について、それを認識していなくても責任を負う。甲は乙と強盗を共謀し、乙がその強盗の機会にAを負傷させた以上、甲も強盗致傷罪の共同正犯になる。本肢は、強盗罪の共同正犯にとどめる点で誤っている。

強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。
正しい。乙は自らの意思で強盗を決意して臨機応変に実行しているので甲は間接正犯ではなく共同正犯であり、乙が強盗の機会にAを負傷させた以上、甲には強盗致傷罪の共同正犯が成立する(最決平13.10.25)。
判例は、本事例と同じく母親が12歳の長男に強盗を指示した事案で、指示は長男の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、長男は自らの意思により強盗の実行を決意し、臨機応変に対処して強盗を完遂したこと、母親は長男が奪ってきた金品を全て自分のものにしたことなどから、母親には強盗の間接正犯ではなく共同正犯が成立するとした(最決平13.10.25)。本事例の乙は、小遣い欲しさから自分の意思で承諾し、自己の判断で出入口の鍵を掛けてAをトイレに閉じ込めるなど臨機応変に対処しているから、甲の道具ではなく、犯行の方法を指示して道具を渡し、強取した現金を全て受け取った甲は、乙との共同正犯である。そして、乙は現金を強取した直後、向かってきたAの腕を激しく振り払って転倒させ負傷させており、これは強盗の機会における負傷であるから、乙には強盗致傷罪(240条前段)が成立する。強盗を共謀した甲は、共犯者である乙が強盗の機会に生じさせた負傷の結果についても責任を負うから、甲には強盗致傷罪の共同正犯が成立する。

強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。
- ["12歳の養女(最決昭58.9.21)", "日頃の暴行で意思を抑圧されていた。是非善悪の判断能力があっても間接正犯"]
- ["12歳の長男(最決平13.10.25)", "指示は意思を抑圧する程度でなく、自らの意思で決意し臨機応変に実行した。間接正犯ではなく共同正犯"]
誤り。違うのは「不注意の共同はあり得ないから,甲及び乙に業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地はない」の部分である。判例は、共同の業務上の注意義務に共同して違反したときに業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するとしている(最決平28.7.12)。
判例は、業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要であるとして、過失犯にも60条が適用されることを前提に、その成立要件を示した(最決平28.7.12)。共同正犯の根拠を不注意という主観面の共同に求めるのではなく、同じ結果を防ぐために同じ内容の注意義務を共同して負う者が、その義務に共同して違反したという客観面に求めるのである。本肢は、不注意の共同はあり得ないという理由で共同正犯の成立を一律に否定しており、判例の立場と合わない。本事例の甲と乙は同等の立場で同じ橋脚の補強工事に従事し、A鋼材を用いて補強すべき共同の業務上の注意義務を負っていたところ、二人で相談したうえ、崩落の予見可能性がありながら共同してB鋼材による工事を行っている。共同の注意義務に共同して違反したといえ、業務上過失致死罪(211条前段)の共同正犯が成立する余地がある。同じ判例が、副署長と地域官の役割は基本的に異なるとして共同の注意義務を否定したのは、義務が共同のものでなかったからである。

業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である
- 共同の注意義務:同じ結果を防ぐために、同じ内容の注意義務を共同して負っていること。互いに相手の行為にも注意を払うべき関係にあることが必要である
- 共同の違反:その注意義務に共同して違反したこと
- 因果関係:共同の注意義務違反と結果との間に因果関係があること
正しい。甲には殺人罪が成立する(設問の「成立しないもの」には当たらない)。暴行で追い詰められ逃げ場を失ったVが川に飛び込んだのは自由な意思によるものではなく、甲はVの行為を利用して殺害したと評価される(最決昭59.3.27)。
川に飛び込んだのがV自身であっても、それが暴行・脅迫によって他に道のない状態で強いられたものであれば、Vの自由な意思決定に基づく行為とはいえず、行為者がVの行為を利用して死亡結果を生じさせたことになる。判例は、被害者に暴行を加えるなどして衰弱させ、堤防上で脅迫しながら護岸際まで追い詰め、更に殴りかかる態度を示すなどして、逃げ場を失った被害者を川に転落させて溺死させた事案について、殺人罪の成立を認めた(最決昭59.3.27)。同じ理屈で、暴行・脅迫を交えて自殺を執ように迫り、命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせた事案でも、被害者に命令して自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせた行為が殺人罪の実行行為に当たるとされている(最決平16.1.20)。本肢の甲は、真冬の深夜に激しい暴行を加えたうえ、溺死するかもしれないがそれでも構わないと考えて堤防際までVを追い詰めており、逃げ場を失ったVが暴行を免れるため川に飛び込んで溺死した以上、殺人の未必の故意をもってVの行為を利用した殺人罪が成立する。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["死の意味を理解していない", "自殺を理解する能力のない者に命じて首を吊らせた(最決昭27.2.21)、5歳の子の承諾を得て殺した(大判昭9.8.27)"]
- ["意思決定の自由を奪われている", "暴行・脅迫で追い詰め、逃げ場を失った者が川に飛び込んで溺死した(最決昭59.3.27)"]
- ["追死すると欺かれている", "追死の意思がないのに心中を装い、誤信した者に毒を飲ませた(最判昭33.11.21)"]
- ["承諾があると誤信して殺した", "38条2項により同意殺人罪の限度で成立し、殺人罪は成立しない"]
誤り。違うのは「Aには傷害罪の共同正犯が成立する」の部分である。共同正犯には意思の連絡が必要であり、判例は片面的共同正犯を否定するので、Bに気付かれずに加わったAに共同正犯は成立せず、幇助犯にとどまる。
共同正犯(60条)が、各人を自己の行為だけでなく共同者の行為についても正犯として全部の責任を負わせるのは、行為者相互の間に意思の連絡、すなわち共同して犯行を行う認識があり、互いに相手の行為を利用し補い合って犯罪を実現するからである。判例は、この理由から、一方だけが共同して実行する意思を持ち、相手方がそれを知らない片面的共同正犯の成立を否定している(大判大11.2.25)。本肢のAは、BがVを殴打しようとしているときに、Bに気付かれずにVの足を押さえ付けており、AとBの間に意思の連絡は全くない。Bは自分の暴行だけを認識して実行しており、Aの行為を利用しているという関係もない。したがって、Aには傷害罪の共同正犯は成立しない。もっとも、Vの足を押さえ付けたことによってBはVの顔面を殴打して傷害を負わせることができたのであるから、Aの行為はBの実行を物理的に容易にしており、片面的幇助を認める判例の立場からは、Aには傷害罪の幇助犯が成立する。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
| 類型 | 判例の結論 | 理由 |
|---|---|---|
| 片面的共同正犯 | 否定(大判大11.2.25) | 共同正犯の根拠は互いに利用し補い合う関係にあり、意思の連絡がなければ成り立たない。各自は自分の行為から生じた結果だけに責任を負う |
| 片面的幇助 | 肯定(大判大14.1.22) | 正犯の行為を認識して幇助する意思があれば足り、正犯との意思の連絡は要らない。ただし正犯の実行を物理的に容易にしたことが必要である |
誤り。違うのは「甲には,Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する」の部分である。傷害を共謀しただけで殺意のない甲には、殺人罪と構成要件が重なり合う限度で傷害致死罪の共同正犯が成立する(最決昭54.4.13)。
共謀の内容と実行された犯罪が食い違った場合、共謀の射程内であれば、認識した罪と実現した罪の構成要件が重なり合う限度で共犯の成立を認める。最決昭54.4.13は、暴行・傷害を共謀した者のうちの一人が未必の殺意をもって被害者を刺殺した事案について、殺人罪と傷害致死罪とは殺意の有無という主観的な面に差異があるだけでその余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、殺意のなかった者については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するとし、重い殺人罪の共同正犯を成立させて刑だけを傷害致死罪の刑で処断するのは誤りであるとした。殺意のない者には殺人罪の共同正犯の意思がない以上、成立する罪そのものが傷害致死罪になるという処理である。本肢の甲は傷害を共謀しただけで殺意がなく、乙の殺害は共謀した暴行の延長で行われているから、甲には傷害致死罪の共同正犯が成立し、殺人罪の共同正犯は成立しない。本肢は誤りである。

殺人罪と傷害致死罪とは、殺意の有無という主観的な面に差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、暴行・傷害を共謀した被告人Xら7名のうちのYが前記福原派出所前でA巡査に対し未必の故意をもつて殺人罪を犯した本件において、殺意のなかつた被告人Xら6名については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するものと解すべきである。
| 見解 | 殺意のある者 | 殺意のない者 |
|---|---|---|
| 行為共同説 | 殺人罪の共同正犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |
| 完全犯罪共同説 | 殺人罪の共同正犯 | 殺人罪の共同正犯(刑は傷害致死罪) |
| 部分的犯罪共同説(判例) | 傷害致死罪の共同正犯+殺人罪の単独犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |
正しい。共同正犯には相互の意思の連絡が必要であり、甲に気付かれないように加わった乙との間には意思の連絡がないから、片面的共同正犯は認められず、各自に器物損壊罪の単独犯が成立する。
60条の共同正犯が成立するには、共同して犯罪を実行した事実とともに、共同して実行する意思、すなわち関与者相互の意思の連絡が必要である。共同正犯が自ら手を下していない部分についても全部の責任を負うのは、互いに他人の行為を利用し補充し合って一つの犯罪を実現したからであり、相手方が知らない片面的共同正犯では相互利用補充の関係が成り立たない。判例も、共同正犯が成立するには数人の犯行者相互間に意思の連絡があることを要するとして、片面的共同正犯を否定している(大判大11.2.25)。本肢の乙は、甲が窓ガラスを割っているのをたまたま見て、甲に気付かれないように別の窓ガラスを割っており、甲と乙の間に意思の連絡はない。したがって両者に器物損壊罪の共同正犯は成立せず、同時犯として、甲は自分が割った窓ガラスについて、乙は自分が割った窓ガラスについて、それぞれ器物損壊罪の単独犯の責任を負う。本肢は正しい。片面的幇助は判例上認められている。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
誤り。違うのは「この判旨と結論において一致することはない」の部分である。共同正犯は構成要件に該当する違法な行為を共謀することによって成立するという見解からも、正当防衛である第1行為について共同正犯は成立せず、第2行為について新たな共謀がない以上は甲は不可罰となり、判旨の結論と一致し得る。
判旨によれば、甲の第1行為には正当防衛が成立して違法性が阻却され、第2行為については乙との間に新たな共謀が認められないので共同正犯は成立せず、甲は第2行為に自ら加わってもいないから、甲は不可罰である。他方、共同正犯は構成要件に該当する違法な行為を共謀することによって成立するという見解に立つと、第1行為は正当防衛として適法な行為であるから、違法な行為の共謀は存在せず、第1行為について共同正犯は成立しない。そして、第2行為については甲が新たな共謀を交わしていない以上、やはり共同正犯は成立せず、甲は第2行為についても責任を負わない。この見解からも甲は不可罰という結論に至り得るのであり、第1行為と第2行為が別個の行為であることや第2行為について新たな共謀がないことの認定は、見解の違いによって左右されない。両者は、離脱を問題にするか新たな共謀を問題にするかという理由づけの構成が異なり得るにすぎず、本事例における甲の罪責という結論では一致し得る。したがって、結論において一致することはないと断じる本肢は誤りである。

相手方の侵害に対し,複数人が共同して防衛行為としての暴行に及び,相手からの侵害が終了した後に,なおも一部の者が暴行を続けた場合において,侵害現在時における暴行が正当防衛と認められる場合には,侵害終了後の暴行については,侵害現在時における防衛行為としての暴行の共同意思から離脱したかではなく,新たに共謀が成立したかどうかを検討すべきであり,共謀の成立が認められるときに初めて侵害現在時及び侵害終了後の一連の行為を全体として考察し,防衛行為の相当性を検討すべきである
正しい。口座開設申込書の名義人はBの住所に住むAであるのに、現実に意思を表示した作成者は甲であり、名義人と作成者の人格の同一性を偽っているので、Aの印鑑を押した申込書の作成は有印私文書偽造罪に当たり、窓口への提出は同行使罪に当たる。
私文書偽造罪(159条1項)の偽造とは、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることをいう。判例は、文書から認識される名義人と現実に意思を表示した作成者が別人格であれば、名義人が実在しない架空人であっても、一般人が真正に作成された文書と誤信するおそれのある形式・外観を備えている限り偽造に当たるとしている。文書に対する公共の信用は、その文書が名義人の意思に基づいて作られたという点に向けられており、名義人が架空でも信用の侵害は同じだからである。口座開設申込書は預金契約の申込みという権利義務に関する私文書であり、そこから認識される名義人はBの住所に居住するAであるのに、記載して意思を表示したのは甲であるから、両者の人格の同一性に食い違いがある。甲はAの姓を刻した印鑑を押しているので、他人の印章を使用した「有印」に当たる。甲は乙と意思を通じ、銀行に提出する行使の目的で作成しているので有印私文書偽造罪の共同正犯が成立し、これを真正な文書として窓口係丙に提出した行為は偽造私文書行使罪(161条1項)の共同正犯に当たる。したがって、本肢は正しい。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
| 対象 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 運転免許証(写真の貼替え・氏名の書換え) | 有印公文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 本質的部分の改変で変造ではなく偽造(最決昭35.1.12) |
| 口座開設申込書(A名義・Aの印鑑) | 有印私文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 名義人Aと作成者甲の人格の同一性を偽る |
| 預金通帳・キャッシュカード | 詐欺罪の共同正犯 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 免許証・申込書・通帳・カード | 有価証券偽造罪は不成立 | 財産権を表章した証券ではない |
| 通帳・カードの自宅保管 | 盗品等保管罪は不成立 | 詐欺の本犯者には成立しない |
正しい。判例は、他人に成り済まして銀行に口座開設を申し込み預金通帳の交付を受ける行為について、預金通帳は246条1項の財物に当たるとして詐欺罪の成立を認めており(最決平14.10.21)、甲には預金通帳とキャッシュカードについて詐欺罪の共同正犯が成立する。
詐欺罪(246条1項)は、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽る欺く行為により相手方を錯誤に陥れ、その錯誤に基づいて財物を交付させることで成立する。最決平14.10.21は、他人に成り済まして銀行窓口で預金口座の開設を申し込み、預金通帳の交付を受けた事案で、預金通帳は預金債権とは別にそれ自体として経済的価値を有する財物であるとして、1項詐欺罪の成立を認めた。通帳は払戻しを受けるための手段として財産的な価値があり、だまされて交付した銀行はそれを失うからである。本件で甲は、加工された免許証と虚偽の記載をした申込書を示してAであるかのように装い、窓口係丙は記載内容が虚偽と知っていれば口座を開設しなかったのであるから、甲の行為は交付の判断の基礎となる重要事項を偽る欺く行為に当たる。丙は甲をAと誤信し、その錯誤に基づいて預金通帳を窓口で交付し、キャッシュカードをBの住所宛てに郵送しており、いずれも錯誤に基づく処分行為による占有移転がある。甲は乙との共謀に基づいて実行しているので、詐欺罪の共同正犯が成立する。したがって、本肢は正しい。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 対象 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 運転免許証(写真の貼替え・氏名の書換え) | 有印公文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 本質的部分の改変で変造ではなく偽造(最決昭35.1.12) |
| 口座開設申込書(A名義・Aの印鑑) | 有印私文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 名義人Aと作成者甲の人格の同一性を偽る |
| 預金通帳・キャッシュカード | 詐欺罪の共同正犯 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 免許証・申込書・通帳・カード | 有価証券偽造罪は不成立 | 財産権を表章した証券ではない |
| 通帳・カードの自宅保管 | 盗品等保管罪は不成立 | 詐欺の本犯者には成立しない |
正しい。判例は教唆犯の共同正犯と従犯の共同正犯の成立を認めており、二人以上が共同して教唆行為や幇助行為をすることも60条の「共同して犯罪を実行した」に当たる。
60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定めており、ここでいう「犯罪」が正犯の構成要件に該当する行為に限られるのか、教唆犯や従犯として処罰される行為も含むのかが問題になる。判例は、二人以上の者が共謀して他人に犯罪を教唆した場合に教唆犯の共同正犯を認め、また共同して正犯を幇助した場合に従犯の共同正犯を認めている(大判昭10.10.24、最判昭23.10.23)。教唆や幇助も刑法が処罰の対象とする犯罪行為であり、これを二人以上が共同の意思の下に一体となって行えば、互いの行為を利用し補充し合って一個の教唆行為や幇助行為を実現したといえるから、「共同して犯罪を実行した」という60条の文言に反しない。教唆犯の共同正犯が成立すれば、共謀者の一人だけが実際に教唆行為をした場合でも、共謀に加わった全員が教唆犯としての責任を負うことになり、従犯の共同正犯でも同様である。したがって本肢は正しい。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
誤り。違うのは「乙に是非善悪の判断能力があると認められる以上,甲には窃盗罪の共同正犯が成立する」の部分である。判例は、日ごろの暴行で意思を抑圧されている者を利用した場合には、その者に是非善悪の判断能力があっても窃盗罪の間接正犯が成立するとしている。
間接正犯は、他人を道具として利用し、自ら手を下したのと同視できる形で犯罪を実現した場合に成立する。被利用者が刑事未成年者であっても、是非善悪の判断能力があれば道具とはいえないようにも見えるが、判例は、日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせていた12歳の養女に窃盗を命じて行わせた事案で、養女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人は自己の日ごろの言動に畏怖し意思を抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったと認められるから、窃盗の間接正犯が成立するとした(最決昭58.9.21)。被利用者が自らの意思で犯罪を決意したといえないほどに意思を抑圧されていれば、判断能力の有無にかかわらず、利用者がその行為を一方的に支配しているからである。本肢の乙は、甲の日ごろの言動に畏怖して意思を抑圧されたまま甲の指示どおりに窃盗をしており、判例の事案と同じである。したがって甲に成立するのは窃盗罪の間接正犯であり、判断能力があることを理由に共同正犯とする本肢は誤りである。

たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立する
- ["故意のない者の利用", "事情を知らない買主に他人の物を搬出させる場合である。被利用者に過失があっても間接正犯が成立する"]
- ["是非を弁別する能力のない者の利用", "幼児や重い精神の障害がある者に物を取って来させる場合である"]
- ["意思を抑圧された者の利用", "日頃の暴行で逆らえなくなっている者に命じて窃盗をさせる場合である"]
- ["被害者自身の行為の利用", "被害者を他の行為を選択することができない精神状態に陥らせ、自らを死亡させる危険の高い行為をさせる場合である"]
- ["適法行為の利用", "医師の正当な治療行為や緊急避難に当たる行為を利用して結果を生じさせる場合である"]
誤り。違うのは「殺人既遂罪の共同正犯は成立せず,殺人未遂罪の共同正犯が成立する」の部分である。共同して殺害する意思で発射した以上、甲乙の行為全体と丙の死亡との間に因果関係があり、どちらの弾が命中したか不明でも、一部実行の全部責任により両名に殺人既遂罪の共同正犯が成立する。
60条は、二人以上共同して犯罪を実行した者をすべて正犯とする。共同正犯者は、共同の意思の下に互いの行為を利用し補充し合って一個の犯罪を実現するのであるから、各人は自分の行為から生じた結果だけでなく、共同の実行行為全体から生じた結果について正犯としての責任を負う。これが一部実行の全部責任である。甲と乙は、共同して丙を殺害する意思をもって、同時に1発ずつけん銃を発射し、そのうちの1発が丙の頭部に命中して丙は死亡した。命中した銃弾がどちらのけん銃から発射されたものか判明しなくても、甲乙いずれかの発射によることは明らかであり、共同の実行行為と丙の死亡との間の因果関係は認められる。したがって、甲と乙の双方に殺人既遂罪の共同正犯が成立し、殺人未遂罪の共同正犯にとどまるとする本肢は誤りである。意思の連絡がなく同時犯になる場合には、各自の行為と死亡との因果関係が不明なので殺人未遂罪にとどまるのと対比される。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
| 甲乙の関係 | 甲 | 乙 |
|---|---|---|
| 共同して殺害する意思(ア) | 殺人既遂罪の共同正犯 | 殺人既遂罪の共同正犯 |
| 甲だけが共同の意思(イ・片面的共同正犯) | 共同正犯は成立しない | 殺人未遂罪の単独犯 |
| 意思の連絡なし(ウ・同時犯) | 殺人未遂罪の単独犯 | 殺人未遂罪の単独犯 |
| 共同して傷害する意思(オ) | 傷害致死罪の共同正犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |
正しい。甲乙の間に意思の連絡がない以上、共同正犯は成立せず同時犯になり、丙の頭部に命中した銃弾がどちらのけん銃から発射されたか不明なので、各自の行為と死亡との間の因果関係を認めることができず、甲乙にはそれぞれ殺人未遂罪の単独犯が成立する。
共同正犯が成立するためには、行為者双方の間に意思の連絡があることが必要である(最判昭23.12.14)。甲と乙は、互いに何ら意思の連絡なく、それぞれ丙を殺害する意思でけん銃を発射しているので、共同正犯は成立せず、同じ客体に対して独立に実行行為をした同時犯にすぎない。同時犯では一部実行の全部責任の原則が働かず、各自は自分の行為から生じた結果についてだけ責任を負う。丙の頭部に命中した銃弾が甲乙どちらのけん銃から発射されたものか判明しない以上、甲の行為と丙の死亡との間にも、乙の行為と丙の死亡との間にも、因果関係を認めることはできない。207条の同時傷害の特例は、二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合に共犯の例によるとする規定であり、殺意をもって発射した本事例の殺人の罪には適用がない。したがって、甲乙は、それぞれ丙を殺害する意思で実行行為に着手したが結果を帰属させることができず、それぞれ殺人未遂罪の単独犯が成立する。本肢は正しい。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
| 甲乙の関係 | 甲 | 乙 |
|---|---|---|
| 共同して殺害する意思(ア) | 殺人既遂罪の共同正犯 | 殺人既遂罪の共同正犯 |
| 甲だけが共同の意思(イ・片面的共同正犯) | 共同正犯は成立しない | 殺人未遂罪の単独犯 |
| 意思の連絡なし(ウ・同時犯) | 殺人未遂罪の単独犯 | 殺人未遂罪の単独犯 |
| 共同して傷害する意思(オ) | 傷害致死罪の共同正犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |










































