人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
この条文の過去問 27問
誤り。違うのは「Aが殺害されることを承諾しているから、甲に殺人罪が成立することはない」の部分である。4歳のAは死の意味を理解する能力を欠き、その承諾は無効であるから、殺人罪が成立する。
202条後段は、人をその承諾を得て殺した者を、殺人罪より軽い刑で処罰する。刑が軽いのは、本人が自分の意思で生命を手放すと決めているからであり、同条が適用されるには、本人が死の意味を理解したうえで、自由な意思で承諾していることが必要である。判例は、一家心中のために5歳の子から承諾を得て殺害した事案で、子は死の意味を理解して承諾する能力を欠くとして、殺人罪の成立を認めている(大判昭9.8.27)。本肢のAは4歳であり、殺害されることの意味を理解する能力がないから、その承諾は無効である。有効な承諾がない以上、202条は適用されず、殺意をもってAを刺殺した甲には199条の殺人罪が成立する。また、仮に承諾が有効であったとしても、生命については承諾を得て殺した者も202条で処罰されるのであるから、承諾を理由に甲の行為が不可罰になることはない。

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
正しい。共謀に基づく殺害であるから甲及び乙は2個の殺人罪の全部について共同正犯となり、2個の殺害は別個の行為によるものであるから併合罪となる。
60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定める。共謀に基づいて互いに他人の行為を利用し合って犯罪を実現した以上、自ら手を下していない部分についても正犯としての責任を負う。甲及び乙は、A及びBの殺害を共謀し、その共謀に基づいて甲がAを、乙がBを殺害しているから、甲は乙によるBの殺害について、乙は甲によるAの殺害についても責任を負い、両名を共同正犯とする殺人罪が成立する。殺人罪は人の生命という被害者ごとに独立した法益を保護する罪であるから、罪数は被害者の数によって決まり、成立する殺人罪は2個である。次に、この2個の罪の関係を見ると、Aの殺害とBの殺害は、甲と乙がそれぞれ行った別個の行為であり、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為と評価することはできないから、観念的競合にはならない。手段と結果の関係にもないので牽連犯にもならず、2個の殺人罪は併合罪(45条前段)となる。

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
本肢は誤り。判例は、姦淫の目的で殺意をもって強度の暴行を加え、被害者を姦淫した上、その暴行により死亡させた事案について、強姦致死罪(当時の刑法181条。現行の不同意性交等致死罪)のみが成立するのではなく、殺人罪(199条)と強姦致死罪とが成立し、両罪は一個の行為が二個の罪名に触れる場合として観念的競合(54条1項前段)になるとしている(最判昭和31年10月25日)。実質的な理由は次の点にある。すなわち、181条の致死罪は基本犯たる性交等の罪から死の結果が生じた場合の結果的加重犯であり、条文の「よって人を死亡させた」という文言からも、死亡結果について故意(殺意)がある場合まで当然に予定した規定とはいえない。加えて、同条2項の法定刑は無期又は6年以上の拘禁刑であって死刑を含まないため、殺意ある殺害についてこれのみを適用すると、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑を定める殺人罪(199条)よりも法定刑の上限が軽くなり、著しい不均衡が生ずる。法定刑に死刑を含む強盗殺人罪(240条後段)につき判例が殺意ある場合を含むと解するのと異なり、性犯罪の致死罪では殺人罪を別個に成立させる必要があるのである。したがって、致死罪のみが成立するとする本肢は誤りであり、現行法の下でも不同意性交等致死罪と殺人罪が成立して観念的競合となる。
誤り。違うのは「親族関係や契約関係が必要であるから」「殺人罪は成立し得ない」の部分である。判例は、自己の責めに帰すべき事由により生命に具体的な危険を生じさせたことと、手当てを全面的に委ねられたことを根拠に作為義務を認めている(最決平17.7.4)。
不作為が殺人罪の実行行為と評価されるには、結果の発生を防止すべき作為義務が必要であるが、その根拠は、法令や契約に限られず、自分の行為で危険を生じさせたこと、被害者の保護を事実上引き受けたこと、他に結果を防止できる者がいないことなどからも認められる。判例は、独自の治療を施すと称する者が、入院中の重篤な患者を病院から運び出させ、必要な医療措置を受けさせないまま放置して死亡させた事案で、被告人は、自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせたうえ、患者の親族から重篤な患者に対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったとして、直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたとし、不作為による殺人罪の成立を認めた(最決平17.7.4)。肢の行為者も、医師の治療を打ち切らせて危険を生じさせ、一人暮らしの自宅に引き取って他の者による救助を期待できなくしているから、親族関係や契約関係がなくても作為義務を負い、殺人罪が成立し得る。

自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた
- ["法令", "親の子に対する監護義務(民法820条)など"]
- ["契約・事務管理", "看護の契約、子を預かる契約など"]
- ["先行行為", "自分の行為で結果発生の危険を生じさせたこと。過失で出火させた場合の消火義務など"]
- ["保護の引受け", "被害者の保護を事実上引き受けたこと。はねた被害者を自動車に乗せたことなど"]
- ["排他的支配", "結果の防止を期待できる者がほかにいないこと"]
正しい。共謀に基づく殺害であるから甲及び乙は2個の殺人罪の全部について共同正犯となり、2個の殺害は別個の行為によるものであるから併合罪となる。
60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定める。共謀に基づいて互いに他人の行為を利用し合って犯罪を実現した以上、自ら手を下していない部分についても正犯としての責任を負う。甲及び乙は、A及びBの殺害を共謀し、その共謀に基づいて甲がAを、乙がBを殺害しているから、甲は乙によるBの殺害について、乙は甲によるAの殺害についても責任を負い、両名を共同正犯とする殺人罪が成立する。殺人罪は人の生命という被害者ごとに独立した法益を保護する罪であるから、罪数は被害者の数によって決まり、成立する殺人罪は2個である。次に、この2個の罪の関係を見ると、Aの殺害とBの殺害は、甲と乙がそれぞれ行った別個の行為であり、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為と評価することはできないから、観念的競合にはならない。手段と結果の関係にもないので牽連犯にもならず、2個の殺人罪は併合罪(45条前段)となる。

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
誤り。「被利用者の行為を基準として実行の着手を判断すべき」という考え方を本件に当てはめると、宅配業者が配達に至っていない以上、実行の着手は認められず、殺人未遂罪の成立を認める論拠にならない。
本件は、毒入りのワインを発送する行為と、乙がこれを飲んで死亡するという結果との間に、時間的・場所的な隔たりがある事案である。本肢は、他人を道具として利用する間接正犯について、利用者が被利用者に働きかけた時点ではなく、被利用者が結果の発生に向けた行為をした時点を基準として実行の着手を判断する考え方をとり、これを本件にも及ぼすものである。この考え方は、利用者の働きかけだけでは法益侵害の危険がまだ現実のものになっておらず、被利用者の行為があって初めて危険が差し迫ると考える。本件でこれに当たるのは、宅配業者が本件ワインを乙宅に配達する行為である。ところが、本件ワインは、申込み当日に事務所での保管中に瓶が破損して廃棄され、乙宅に配達されていない。そうすると、この考え方によれば、甲には殺人罪の実行の着手が認められず、殺人未遂罪は成立しないことになる。したがって、本肢は、甲に殺人未遂罪の成立を否定する方向の論拠であり、成立を認めるための論拠としては適切でない。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
| 利用者の行為の時に着手を認める見解 | 被利用者の行為の時・到達の時に着手を認める見解 | |
|---|---|---|
| 着手の時期 | 発送・配達の申込みの時 | 相手方に到達して飲食し得る状態になった時 |
| 配達前に廃棄された場合 | 殺人未遂罪が成立する | 殺人未遂罪は成立しない |
| 論拠 | 犯行計画上なすべきことを行ったこと、到着がほぼ確実で結果発生の蓋然性があること | 結果発生の切迫した危険が必要であること、自ら届ける場合との均衡 |
誤り。違うのは「因果関係がない」の部分である。Vを即死させたのは2発目の発射行為であり、2発目と死亡との間に因果関係が認められて殺人罪が成立する(最決昭53.3.22)。
判例は、本肢と同じ事案で、1発目の発射行為について業務上過失傷害罪、2発目の発射行為について殺人罪の成立を認め、両罪を併合罪とした(最決昭53.3.22)。殺人罪の成立を認めている以上、2発目の発射行為と死亡との間に因果関係があることが前提になっている。本肢では、1発目の大腿部の銃創は放置すれば十数分で死亡する程度のものであり、胸部の銃創は単独では半日から1日で死亡する程度のものであるが、Vは2発目の銃弾が胸部に命中したことによって失血により即死している。先行する傷害によっていずれ死亡したであろう被害者であっても、後の行為がその死期を現実に早めたのであれば、現に生じた死亡という結果は後の行為のしわざであり、後の行為の危険が結果に現実化したといえる。行為者自身の行為が介在した場合も、介在した行為と結果との結びつきは第三者の行為が介在した場合と同じように判断される。したがって、甲の2発目の発射行為とVの死亡との間には因果関係があり、これを否定する本肢は誤りである。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「現住建造物等放火罪のみが成立する」の部分である。殺意をもって放火し居住者を焼死させた場合には、現住建造物等放火罪のほかに殺人罪も成立する。
現住建造物等放火罪(108条)は、公共の安全を保護法益とする罪であり、居住者が死亡することを要件にしていない。その法定刑に死刑が含まれているのは、人が住み、又は人がいる建造物に放火すれば不特定・多数の人の生命・身体が危険にさらされるからであって、居住者の死亡という結果や殺意をその中で評価しているわけではない。乙を殺そうと考えて乙の居住する家屋に放火し、就寝中の乙を焼死させた甲は、放火を手段として人を殺したのであり、乙の生命という個人的法益の侵害は殺人罪(199条)で別に評価しなければならない。放火によって生じた人の死亡について、刑法は放火致死罪のような結果的加重犯を置いていないので、殺意があれば殺人罪が、殺意がなければ過失致死の罪が放火罪と別に成立する。両罪の罪数については、古い判例に牽連犯としたものがあり、一個の行為とみて観念的競合とする裁判例もあるが、いずれにしても現住建造物等放火罪のみが成立するのではない。したがって本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「死亡の結果について行為者に刑事責任を問うことはできない」の部分である。責任能力は実行行為の時に存在すれば足り、結果発生の時に存在することは要らない。
責任能力は、行為について行為者を非難するための前提となる能力であり、その有無・程度は実行行為の時点を基準に判断される(行為と責任の同時存在の原則)。殴打という暴行を加えた時点で行為者に責任能力があれば、その暴行について行為者を非難できる。殺人罪や傷害致死罪のような結果犯では、構成要件に該当する行為の時に責任能力があれば足り、結果が発生した時点にも責任能力があることは要件にならない。結果は行為から因果の流れを経て生じるものであり、行為の後に行為者の精神状態がどう変わっても、行為の時に有責になされた行為とその結果との結びつきは変わらないからである。本肢で、暴行の時点で死亡の結果について故意があれば殺人罪が、暴行又は傷害の故意しかなければ傷害致死罪が成立し得るが、いずれにしても、暴行の時に責任能力が存在した以上、相手が死亡した時点で責任能力が存在しなかったとしても、死亡の結果について刑事責任を問うことができる。したがって本肢は誤りである。

心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
誤り。違うのは「財産犯については成立しない」の部分である。判例は、告知義務に反して誤振込みを秘し払戻しを受けた行為に不作為による詐欺罪を認めており、財産犯についても不真正不作為犯は成立する。
不真正不作為犯は、作為義務、作為の可能性・容易性、作為による構成要件の実現との同価値性が認められる限り、罪名を問わず成立し得る。生命・身体に対する罪や公共危険罪に限られる理由は無く、財産犯についても成立する。本肢の前段は正しい。殺人罪については最決平17.7.4が、必要な医療措置を受けさせずに患者を死亡させた行為に不作為による殺人罪を認め、放火罪については最判昭33.9.9が、自己の過失により生じた火について必要かつ容易な消火措置をとらなかった不作為に現住建造物等放火罪を認めている。しかし後段は誤りである。最決平15.3.12は、自己の預金口座に誤った振込みがあったことを知った者が、その事情を秘して銀行の窓口で払戻しを請求した事案で、受取人には信義則上これを銀行に告知すべき義務があるとし、これを告げないまま払戻しを受けた行為に詐欺罪の成立を認めた。古くは大判大7.7.17も、告知義務のある者がことさらに黙秘することも欺罔手段に当たるとしている。したがって、財産犯について成立しないとする本肢は誤りである。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
正しい。甲には殺人罪が成立する(設問の「成立しないもの」には当たらない)。自殺がどのようなものかを理解する能力のないVの行為を利用した甲は、自殺関与罪ではなく殺人罪の間接正犯である(最決昭27.2.21)。
202条の自殺関与罪の刑が殺人罪より軽いのは、本人が死の意味を理解したうえで、自由な意思で自分の生命を手放すと決めているからである。したがって、本人に自殺がどのようなものかを理解する能力がなければ、その者が首を吊る行為をしても、本人の意思に基づく自殺とはいえない。判例は、通常の意思能力もなく自殺の何たるかを理解せず、しかも被告人の命ずることには何でも服従する者を利用して、首を吊る方法を教えたうえでこれを実行させて死亡させた事案について、自殺関与罪ではなく殺人罪の成立を認めた(最決昭27.2.21)。本人は死ぬということを理解しないまま命じられた行為をしているにすぎず、行為者は本人の行為を道具として利用して殺害したと評価されるからである。本肢のVは自殺を理解する能力がなく、甲の命令に何でも服従する者であるから、甲が首を吊る方法を教えて命じ、Vがそのとおりに窒息死した以上、甲には殺人罪の間接正犯が成立する。

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
- ["死の意味を理解していない", "自殺を理解する能力のない者に命じて首を吊らせた(最決昭27.2.21)、5歳の子の承諾を得て殺した(大判昭9.8.27)"]
- ["意思決定の自由を奪われている", "暴行・脅迫で追い詰め、逃げ場を失った者が川に飛び込んで溺死した(最決昭59.3.27)"]
- ["追死すると欺かれている", "追死の意思がないのに心中を装い、誤信した者に毒を飲ませた(最判昭33.11.21)"]
- ["承諾があると誤信して殺した", "38条2項により同意殺人罪の限度で成立し、殺人罪は成立しない"]
正しい。甲には殺人罪が成立する(設問の「成立しないもの」には当たらない)。暴行で追い詰められ逃げ場を失ったVが川に飛び込んだのは自由な意思によるものではなく、甲はVの行為を利用して殺害したと評価される(最決昭59.3.27)。
川に飛び込んだのがV自身であっても、それが暴行・脅迫によって他に道のない状態で強いられたものであれば、Vの自由な意思決定に基づく行為とはいえず、行為者がVの行為を利用して死亡結果を生じさせたことになる。判例は、被害者に暴行を加えるなどして衰弱させ、堤防上で脅迫しながら護岸際まで追い詰め、更に殴りかかる態度を示すなどして、逃げ場を失った被害者を川に転落させて溺死させた事案について、殺人罪の成立を認めた(最決昭59.3.27)。同じ理屈で、暴行・脅迫を交えて自殺を執ように迫り、命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせた事案でも、被害者に命令して自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせた行為が殺人罪の実行行為に当たるとされている(最決平16.1.20)。本肢の甲は、真冬の深夜に激しい暴行を加えたうえ、溺死するかもしれないがそれでも構わないと考えて堤防際までVを追い詰めており、逃げ場を失ったVが暴行を免れるため川に飛び込んで溺死した以上、殺人の未必の故意をもってVの行為を利用した殺人罪が成立する。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["死の意味を理解していない", "自殺を理解する能力のない者に命じて首を吊らせた(最決昭27.2.21)、5歳の子の承諾を得て殺した(大判昭9.8.27)"]
- ["意思決定の自由を奪われている", "暴行・脅迫で追い詰め、逃げ場を失った者が川に飛び込んで溺死した(最決昭59.3.27)"]
- ["追死すると欺かれている", "追死の意思がないのに心中を装い、誤信した者に毒を飲ませた(最判昭33.11.21)"]
- ["承諾があると誤信して殺した", "38条2項により同意殺人罪の限度で成立し、殺人罪は成立しない"]
正しい。最大判昭48.4.4(尊属殺違憲判決)は、尊属殺の加重規定を設けること自体は合理的根拠を欠かないが、加重の程度が極端で立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失するときは著しく不合理な差別として違憲になるとした。
最大判昭48.4.4は、尊属殺人を普通殺人より重く処罰していた刑法200条の14条1項適合性を判断した。同判決は、尊属に対する尊重報恩は社会生活上の基本的道義であり、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持尊重は刑法上の保護に値するから、尊属殺という特別の罪を設けて刑を加重すること自体は直ちに合理的な根拠を欠く差別的取扱いに当たるとはいえないとした。そのうえで、加重の程度が極端であって、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものとして違憲になるという枠組みを示した。刑法200条は法定刑を死刑又は無期懲役のみに限っており、普通殺の刑法199条と対比して著しく不均衡で、法律上の減軽を最大限に行っても執行猶予を付し得ない場合が生ずることから、判決は同条を立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失するものとして違憲無効とした。目的ではなく加重の程度を理由に違憲としたところに本判決の特徴がある。

加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものである。…尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限つている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法一九九条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法一四条一項に違反して無効である。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 国籍法の準正要件 | 最大判平20.6.4 | 子の意思や努力で変えられない事柄・重要な法的地位なので慎重に検討。準正要件のみ違憲 |
| 尊属殺の重罰 | 最大判昭48.4.4 | 加重すること自体は合理的根拠を欠かないが、加重の程度が極端で手段として甚だしく均衡を失し違憲 |
| 非嫡出子の法定相続分 | 最大決平25.9.4 | 立法裁量を考慮しても区別に合理的な根拠がなければ違憲。遅くとも平成13年7月には根拠が失われていた |
| 給与所得者の必要経費 | 最大判昭60.3.27 | 租税の区別は政策的・技術的判断に委ねられ、著しく不合理であることが明らかでない限り合憲 |
正しい。最大判昭48.4.4(尊属殺重罰規定違憲判決)は、尊属殺を特別の罪として刑を加重すること自体は直ちに違憲ではないが、加重の程度が極端で立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失するときは著しく不合理な差別として違憲になるとした。
最大判昭48.4.4は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役に限っていた改正前の刑法200条について、14条1項の平等が事柄の性質に即応した合理的根拠に基づく区別まで禁ずるものではないという前提から、立法目的と手段の相当性を分けて審査した。立法目的については、尊属に対する尊重報恩は基本的道義であり、尊属の殺害を通常の殺人より高度の社会的道義的非難に値するものとして特別の罪を設け刑を加重すること自体は、あながち不合理とはいえず直ちに14条1項に違反しないとした。その上で、加重の程度が極端であって立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理であると述べ、法定刑を死刑と無期懲役に限る同条の下では減軽しても執行猶予を付せず科刑上の調整ができないから、必要な限度を遥かに超えるとして同条を違憲無効とした。本肢はこの二段階の枠組みを正確に述べている。尊属殺の罪を設けること自体を違憲とするのは少数意見の立場である。

加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 国籍法の準正要件 | 最大判平20.6.4 | 重要な法的地位・自ら変えられない事柄だから慎重に検討し、合理的関連性を失っているとして違憲 |
| 嫡出でない子の相続分 | 最大決平25.9.4 | 立法裁量を考慮してもなお合理的な根拠がないとして違憲(平7.7.5決定は合憲) |
| 尊属殺の重罰規定 | 最大判昭48.4.4 | 加重自体は合憲だが、死刑・無期に限る加重の程度が極端で違憲 |
| 所得税法の給与所得者の区別 | 最大判昭60.3.27 | 政策的・技術的判断に委ね、著しく不合理でない限り合憲 |
誤り。違うのは「Aには殺人既遂罪の幇助犯が成立する」の部分である。幇助犯は正犯の実行を物理的又は心理的に容易にして初めて成立し、Bの知らない間に待機していただけのAはBの実行を何も容易にしていない。
幇助犯(62条1項)は、実行行為以外の方法で正犯の実行を容易にした者に成立し、幇助行為と正犯の実行との間に、物理的又は心理的に実行を容易にしたという因果性が必要である。判例は片面的幇助を認めるので、正犯が幇助されていることを知らなくても幇助犯は成立し得るが、その場合には、正犯を安心させて決意を強めるという心理的な経路は働かないので、実行を物理的に容易にしたことが必要になる。本肢のAは、Bの弾丸が命中しなかった場合に自らVを射殺しようと考えて、Bの知らない間に拳銃を持って付近に待機していたにすぎず、Bの発射した弾丸がVに当たってVは死亡している。Aは拳銃を発射しておらず、Bの殺害行為に物理的に役立った事実はない。BはAの存在に気付いていないので、Aの待機がBを精神的に力づけ、その意図を維持ないし強化したともいえない。したがって、Aの行為はBの実行を物理的にも心理的にも容易にしておらず、Aに幇助の意思があっても、Aには殺人既遂罪の幇助犯は成立しない。

正犯を幇助した者は、従犯とする。
| 類型 | 判例の結論 | 理由 |
|---|---|---|
| 片面的共同正犯 | 否定(大判大11.2.25) | 共同正犯の根拠は互いに利用し補い合う関係にあり、意思の連絡がなければ成り立たない。各自は自分の行為から生じた結果だけに責任を負う |
| 片面的幇助 | 肯定(大判大14.1.22) | 正犯の行為を認識して幇助する意思があれば足り、正犯との意思の連絡は要らない。ただし正犯の実行を物理的に容易にしたことが必要である |
誤り。違うのは「甲には殺人罪の実行の着手が認められる」の部分である。裁判例は、道端に毒入りジュースを置いただけでは他人の食用に供されたとはいえず殺人の予備にとどまるとしており、前日の夜に通学路に置いただけの甲に着手は認められない。
毒物を用いた殺人では、被害者が毒物を口にする危険が差し迫った時点でなければ、生命侵害の現実的な危険が生じたとはいえず、実行の着手は認められない。裁判例は、家族らが日常通行する農道の道端に毒入りジュースを置いて拾得飲用させて殺害しようとした事案について、農道に単に食品が配置されたというだけではそれが直ちに他人の食用に供されたといえないことは明らかであるとして、置いた時点では殺人の予備にとどまるとし、被害者が拾得して飲用する直前に着手があるとした(宇都宮地判昭40.12.9)。本肢の甲は、前日の夜に、夜間は人通りのない通学路に毒入りのジュースを置いただけである。翌朝に子供が通学路を通って拾い、飲むかどうかはなお不確定であり、置いた時点では他人が拾って飲む危険が差し迫っているとはいえない。したがって、甲の行為は殺人の予備にとどまり、殺人罪の実行の着手は認められない。

農道に単に食品が配置されたというだけではそれが直ちに他人の食用に供されたといえないことは明らかである。
- 住宅を焼損する目的で隣接する物置に放火:現住建造物等放火罪の着手あり(大判大12.11.12)
- 建物に燃え移るように設定した時限発火装置の設置:着手あり
- 室内へのガソリンの散布(点火前):焼損に至る切迫した危険があれば着手あり
- 通学路に毒入りジュースを置いただけ:殺人罪の着手なし(予備)。他人が拾って飲む直前に着手
正しい。判例は、別個の殺害行為を予定して逮捕監禁に及んだ場合の逮捕監禁罪と殺人罪を併合罪としており(最判昭63.1.29)、監禁罪と恐喝罪を併合罪とする本問の見解はこれと同じ考え方である。
最判昭63.1.29は、被告人が逮捕監禁に及ぶ以前に殺意を固めていたとはいえ、逮捕監禁行為自体により被害者を殺害しようとしたものではなく、後に別個の殺害行為を予定してまず逮捕監禁に及んだという事案について、逮捕監禁の事実を殺人の実行行為の一部とみるのは相当でないとして、逮捕監禁罪と殺人罪が共に成立し、両罪は併合罪であるとした。監禁と殺害は別個の行為であって観念的競合にならず、監禁が殺人の手段として罪質上通例予定されているわけでもないから牽連犯にもならない、という処理である。本問の見解も、恐喝の目的で人を監禁し、その監禁中に脅迫して現金を喝取した場合に、監禁行為と恐喝行為を別個の行為とみて観念的競合を否定し、監禁が恐喝の手段として類型的に予定されるものでもないとして牽連犯を否定したうえで、監禁罪と恐喝罪を併合罪としている。目的とする犯罪のために先に監禁し、監禁中に別の行為でその犯罪を実行した場合に、両罪を併合罪とする点で、判例の監禁罪と殺人罪の処理と同じ考え方である。本肢は見解の理解として正しい。

逮捕監禁行為自体によりCを殺害しようとしたものではなく、後に別個の殺害行為を予定してまず逮捕監禁に及んだとされているのであるから、逮捕監禁の事実を殺人の実行行為の一部とみるのは相当でなく、・・・被告人Dについては逮捕監禁罪と殺人罪が共に成立し、両罪は併合罪であると解するのが相当である。
- ["逮捕に引き続く監禁", "包括して220条の一罪(最大判昭28.6.17)"]
- ["恐喝の手段としての監禁", "監禁罪と恐喝罪の併合罪(最判平17.4.14)"]
- ["別個の殺害行為を予定した逮捕監禁", "逮捕監禁罪と殺人罪の併合罪(最判昭63.1.29)"]
- ["身の代金要求の手段としての監禁", "監禁罪との併合罪"]
誤り。違うのは「その治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場からも殺人罪の成立は否定される」の部分である。判旨は、Aから手当てを全面的に委ねられた甲に、独自の治療ではなく生命維持に必要な医療措置を受けさせる義務を認めている。
判旨は、甲が自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせたうえ、甲を信奉するAから重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったと認定し、そのうえで、甲はBの重篤な状態を認識し、これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから、直ちにBの生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたとしている。作為義務の内容は、Aが何を求めていたかではなく、Bの生命に対する危険を甲が引き受けた以上、その危険を除くために客観的に必要な行為は何かによって決まる。本件の事例でAが甲の独自の治療を真摯に求めていたことは判旨も前提にしているが、だからといって作為義務が独自の治療を施すことに限られるわけではなく、むしろ判旨は、その治療で救命できる根拠がない以上、必要な医療措置を受けさせることこそが義務の内容であるとしたのである。したがって、本肢の事情があっても判旨の立場では殺人罪の成立は否定されず、本肢は誤りである。

自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた
誤り。違うのは「甲には自殺関与罪が成立する」の部分である。必ず生き返るとだまされたVは死ぬことを認識しておらず、自殺の決意がないから、Vの行為を利用した甲には殺人罪の間接正犯が成立する。
202条の自殺関与罪の刑が殺人罪より軽いのは、本人が死の意味を理解したうえで自由な意思で自分の生命を手放すと決めているからである。したがって、本人に死ぬという認識がなく、自殺の決意といえるものがない場合には、202条は適用されず、本人の行為を道具として利用した殺人罪の間接正犯になる。判例は、通常の判断能力のない者に対し、首をつっても一時仮死状態になるだけで再び生き返ると誤信させて自ら首をつらせ死亡させた事案について、殺人罪を構成するとした(大判昭8.4.19)。本人は生き返ると信じて首をつったのであり、自分が死ぬことを認識していないから、自殺する意思がなく、自殺を教唆したとはいえないという理屈である。本肢のVは、通常の判断能力がなく、甲に必ず生き返るとだまされて首をつったのであるから、死ぬことを認識しておらず、甲にはVの行為を利用した殺人罪が成立する。自殺関与罪とする本肢は誤りである。追死すると欺いて自殺させた偽装心中の場合は、本人が死ぬこと自体は認識している点で事案が異なるが、判例はやはり殺人罪としている。

詐言を以て被害者を錯誤に陥らしめ之をして自殺するの意思なく自ら頚部を縊り一時仮死状態と成るも再び蘇生せしめらるべしと誤信せしめ自ら其の頚部を縊りて死亡するに至らしめたるときは殺人罪を構成す
- ["死の意味を理解していない", "自殺を理解する能力のない者に命じて首を吊らせた(最決昭27.2.21)、生き返るとだまして首をつらせた(大判昭8.4.19)、5歳の子の承諾を得て殺した(大判昭9.8.27)"]
- ["意思決定の自由を奪われている", "暴行・脅迫で追い詰め、逃げ場を失った者が川に飛び込んで溺死した(最決昭59.3.27)"]
- ["追死すると欺かれている", "追死の意思がないのに心中を装い、誤信した者に毒を飲ませた(最判昭33.11.21)"]
誤り。違うのは「甲には,Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する」の部分である。傷害を共謀しただけで殺意のない甲には、殺人罪と構成要件が重なり合う限度で傷害致死罪の共同正犯が成立する(最決昭54.4.13)。
共謀の内容と実行された犯罪が食い違った場合、共謀の射程内であれば、認識した罪と実現した罪の構成要件が重なり合う限度で共犯の成立を認める。最決昭54.4.13は、暴行・傷害を共謀した者のうちの一人が未必の殺意をもって被害者を刺殺した事案について、殺人罪と傷害致死罪とは殺意の有無という主観的な面に差異があるだけでその余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、殺意のなかった者については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するとし、重い殺人罪の共同正犯を成立させて刑だけを傷害致死罪の刑で処断するのは誤りであるとした。殺意のない者には殺人罪の共同正犯の意思がない以上、成立する罪そのものが傷害致死罪になるという処理である。本肢の甲は傷害を共謀しただけで殺意がなく、乙の殺害は共謀した暴行の延長で行われているから、甲には傷害致死罪の共同正犯が成立し、殺人罪の共同正犯は成立しない。本肢は誤りである。

殺人罪と傷害致死罪とは、殺意の有無という主観的な面に差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、暴行・傷害を共謀した被告人Xら7名のうちのYが前記福原派出所前でA巡査に対し未必の故意をもつて殺人罪を犯した本件において、殺意のなかつた被告人Xら6名については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するものと解すべきである。
| 見解 | 殺意のある者 | 殺意のない者 |
|---|---|---|
| 行為共同説 | 殺人罪の共同正犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |
| 完全犯罪共同説 | 殺人罪の共同正犯 | 殺人罪の共同正犯(刑は傷害致死罪) |
| 部分的犯罪共同説(判例) | 傷害致死罪の共同正犯+殺人罪の単独犯 | 傷害致死罪の共同正犯 |
誤り。違うのは「強姦致死罪のみが成立する」の部分である。判例は、殺意をもって被害者を死亡させた場合には致死罪と殺人罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしている(最判昭31.10.25)。
181条の致死罪は死亡の結果について故意がある場合を予定していない結果的加重犯であり、殺意をもって死亡させた場合に致死罪だけを成立させると、殺意があったことが評価されずに残る。最判昭31.10.25は、強姦致死の点について旧181条・177条を、殺人の点について199条を適用し、両者は54条1項前段の一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるとして重い殺人罪の刑によって処断すべきであるとした原審の法律判断を正当とした。甲は、強姦するために殺意をもってV女に強度の暴行を加えて反抗を抑圧し、姦淫したうえ、その暴行で同女を死亡させている。姦淫の手段とした暴行から死亡の結果が生じているので致死罪が成立し、その暴行は殺意をもって行われているので殺人罪も成立する。両罪は同じ暴行という一個の行為によるものであるから観念的競合となり、重い殺人罪の刑で処断される。したがって、致死罪のみが成立するとする本肢は誤りである。現行法では強姦致死罪は不同意性交等致死罪(181条2項)に当たり、殺人罪との観念的競合になるという結論は変わらない。

(原審の)強姦致死の点につき刑法181条、177条を、殺人の点につき同法199条を適用し、両者は同法54条1項前段の一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるとして同法10条に基き、重い殺人罪の刑によつて処断すべきであるとした法律判断は正当
正しい。3条の2第2号により、日本国外において日本国民に対して殺人罪を犯した日本国民以外の者には刑法が適用され、A国民の甲がB国で日本国民V1を殺害した行為には殺人罪が適用される。
刑法は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用される(1条1項)が、日本国外で犯された罪については、2条から4条の2までに掲げられた罪に限って適用される。3条の2は、日本国外において日本国民に対して所定の罪を犯した日本国民以外の者に刑法を適用する規定であり、その2号に199条の殺人罪とその未遂罪が掲げられている。国外で外国人が犯した罪であっても、被害者が日本国民であるときは、国民を保護するために日本の刑法を及ぼす趣旨である。甲はA国民であり、B国において、B国内に居住する日本国民V1を殺害しようと毒入酒をV1方に発送し、V1はこれをB国内で飲んで薬物中毒により死亡している。実行行為も結果もすべて日本国外で生じているので国内犯ではないが、日本国民以外の者が日本国外で日本国民に対して殺人罪を犯した場合に当たるので、3条の2第2号により甲のV1に対する行為には刑法の殺人罪が適用される。したがって、本肢は正しい。被害者が日本国民でないV4については、同じ国外犯でもこの規定の適用がない点と対比される。

この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。 二 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
| 被害者 | 犯罪地・結果 | 刑法の適用 |
|---|---|---|
| V1(日本国民・B国で死亡) | 国外犯 | 3条の2第2号で殺人罪が適用される |
| V2(毒入酒が届かない) | 到達なし=着手なし | 殺人未遂罪は成立せず、適用の問題にならない |
| V3(到達時に中身が無い) | 飲食し得る状態なし=着手なし | 殺人未遂罪は成立せず、適用の問題にならない |
| V4(B国民・B国で死亡) | 国外犯 | 日本国民に対する罪でなく、3条の2は適用されない |
| V5(日本国内で到達・保管) | 国内で着手の危険=国内犯 | 1条1項で殺人未遂罪が適用される(方法の錯誤は法定的符合説) |
正しい。判例は、人を殺す意思で発射した弾丸が認識していなかった別の人にも命中して死亡させた場合、およそ人を殺す点で法定の範囲内で符合するとして、その者に対しても殺人罪の成立を認めている(最判昭53.7.28)。
甲は乙に対する殺意をもって乙の背後からけん銃を発射し、弾丸が乙を貫通して、乙が抱いていた丙にも命中し、両名を死亡させた。乙に対する殺人罪が成立することに問題はなく、存在を認識していなかった丙についても殺人罪が成立するかが問題になる。最判昭53.7.28は、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるとし、特定の人を狙った発砲が意図しなかった人にも命中した事案で、その人に対する殺人未遂罪の成立を認めた。大判昭8.8.30も、殺害の結果が犯人の少しも意識しなかった客体の上に生じたときでも、因果関係が明白である限り殺人既遂の罪責を負うとしている。殺人罪の構成要件は「人を殺した」ことであり、「人」という法定の範囲で認識と事実が一致していれば故意に欠けるところはないからである。判例は故意の個数を問題にしないので、乙に対する殺人罪と丙に対する殺人罪がともに成立し、観念的競合になる。したがって、本肢は正しい。

犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りる
正しい。多数意見は、尊属殺の刑を加重すること自体ではなく、減軽を重ねても執行猶予を付けられないという加重の程度を違憲の理由としたから、執行猶予が可能になれば違憲でないと解する余地がある。
最大判昭48.4.4の多数意見は、尊属に対する尊重報恩は刑法上の保護に値するとし、普通殺のほかに尊属殺という特別の罪を設けてその刑を加重すること自体は直ちに違憲とはいえないとした。そのうえで、刑罰加重の程度いかんによっては差別の合理性を否定すべき場合があるとし、法定刑が死刑又は無期懲役に限られる刑法200条では、現行法上許される2回の減軽を加えても処断刑の下限が懲役3年6月を下らず、いかに酌量すべき情状があっても刑の執行を猶予できない点を捉えて、立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと結論づけた。違憲の理由は目的ではなく手段である加重の程度にあり、その核心は執行猶予を付けられないことにある。したがって、執行猶予の要件が緩和されて所定の減軽を経れば執行猶予を付せるようになるならば、多数意見の論理の下では違憲ではないと解する余地がある。

現行法上許される2回の減軽を加えても、尊属殺につき有罪とされた卑属に対して刑を言い渡すべきときには、処断刑の下限は懲役3年6月を下ることがなく、その結果として、いかに酌量すべき情状があろうとも法律上刑の執行を猶予することはできないのであり、普通殺の場合とは著しい対照をなすものといわなければならない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 条例による売春取締りの地域差 | 最大判昭33.10.15 | 合憲。条例制定権を認める以上、地域差は憲法自ら容認するところである |
| 尊属殺重罰規定(刑法旧200条) | 最大判昭48.4.4 | 違憲。加重すること自体は合理的だが、加重の程度が極端で執行猶予を付けられない |
| 非嫡出子の相続分(民法旧900条4号ただし書) | 最大決平7.7.5 | 合憲。立法理由との関連で著しく不合理とはいえず、裁量の限界を超えない。実質的関連性を求めたのは反対意見 |
| 同上 | 最大決平25.9.4 | 違憲。遅くとも平成13年7月当時には区別の合理的根拠は失われていた |
| 再婚禁止期間(民法旧733条) | 最判平7.12.5 | 立法趣旨は父性推定の重複回避と父子関係をめぐる紛争の防止。国賠法上違法でない |
| 同上 | 最大判平27.12.16 | 目的は合理的。100日を超える部分は違憲 |
正しい。殺人罪の有期刑は5年以上20年以下、傷害罪は1月以上15年以下であり、併合罪の加重により長期は重い殺人罪の20年に2分の1を加えた30年、短期は重い殺人罪の5年となるから、処断刑は5年以上30年以下である。
併合罪のうち2個以上の罪について有期の自由刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とし、ただし各罪の長期の合計を超えることはできない(47条)。殺人罪の有期刑は5年以上であり、長期は12条1項により20年である。傷害罪の自由刑は15年以下で、短期は1月である。最も重い罪は殺人罪であるから、長期は20年に10年を加えた30年となり、各罪の長期の合計35年も、有期刑を加重する場合の上限30年(14条2項)も超えない。短期は、併合罪の加重によって引き下げられることはなく、最も重い罪の短期である5年がそのまま処断刑の短期になる。したがって、処断刑は5年以上30年以下となり、本肢は正しい。出題当時の懲役刑は、現行法では拘禁刑に一本化されているが、刑期の計算は変わらない。

併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
| 場面 | 計算 | 処断刑 |
|---|---|---|
| 殺人(有期)+傷害の併合罪 | 重い殺人の長期20年×1.5=30年。各罪の長期の合計35年を超えない。短期は重い殺人の5年 | 5年以上30年以下 |
| 窃盗の従犯(法律上の減軽) | 1月以上10年以下の長期・短期を2分の1。短期は1月未満に下げられる | 15日以上5年以下 |
| 強盗致傷の有期刑を酌量減軽 | 6年以上20年以下の長期・短期を2分の1 | 3年以上10年以下 |
正しい。殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑であり、89条1号の死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪に当たるから、権利保釈は許されない。
89条は、保釈の請求があったときは、同条各号の場合を除いては、これを許さなければならないと定める(権利保釈・必要的保釈)。その1号は、被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑(出題当時は懲役若しくは禁錮)に当たる罪を犯したものであるときを挙げる。殺人罪(刑法199条)の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑であり、短期1年以上の罪に当たるから、殺人罪で起訴され勾留されている甲には1号の除外事由がある。ここにいう「罪を犯したものであるとき」とは、そのような罪で現に起訴されていることをいう。重い罪では有罪となれば重い刑が予想され、保証金によって出頭を確保することが類型的に難しいから、権利保釈から外されている。もっとも、権利保釈ができなくても、裁判所は90条により職権で裁量保釈をすることはできる。本肢は89条による保釈についてのものであり、正しい。

被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
| 事由 | 権利保釈の除外事由 | 勾留の理由 |
|---|---|---|
| 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪 | 1号 | ― |
| 死刑・無期・長期10年超の拘禁刑に当たる罪の有罪宣告の前科 | 2号 | ― |
| 常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 3号 | ― |
| 罪証隠滅の相当な理由 | 4号 | 2号 |
| 被害者等への加害・畏怖させる行為の相当な理由 | 5号 | ― |
| 氏名又は住居が分からない(住居不定を含む) | 6号 | 1号(住居不定) |
| 逃亡の相当な理由 | なし | 3号 |
正しい。89条2号は、被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるときを除外事由とし、殺人罪はこれに当たるから、その前科がある甲には権利保釈は許されない。
89条2号は、被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑(出題当時は懲役若しくは禁錮)に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるときを権利保釈の除外事由とする。この号は、前科の罪が法定刑の上で重い罪であるかどうかを問うものであり、実際に言い渡された刑の重さは問題にならない。殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑であるから、「死刑又は無期…に当たる罪」に当たり、甲がその罪で有罪の宣告を受けた以上、言い渡された刑が有期の懲役であっても2号に該当する。重大な罪の前科がある者は、今回の事件で重い処分が予想され、逃亡や再犯のおそれが類型的に高いとみられることから、権利保釈の対象から外されている。今回起訴された罪が傷害罪であって1号に当たらなくても、2号によって権利保釈は許されない。本肢は正しい。

被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
| 事由 | 権利保釈の除外事由 | 勾留の理由 |
|---|---|---|
| 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪 | 1号 | ― |
| 死刑・無期・長期10年超の拘禁刑に当たる罪の有罪宣告の前科 | 2号 | ― |
| 常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 3号 | ― |
| 罪証隠滅の相当な理由 | 4号 | 2号 |
| 被害者等への加害・畏怖させる行為の相当な理由 | 5号 | ― |
| 氏名又は住居が分からない(住居不定を含む) | 6号 | 1号(住居不定) |
| 逃亡の相当な理由 | なし | 3号 |





