1公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
この条文の過去問 11問
正しい。刑法の「公務員」は日本の法令により公務に従事する職員を指し、外国大使館の職員は含まれないから、公務執行妨害罪は成立しない。
95条1項の客体は「公務員」であり、その意義は7条1項が「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」と定めている。ここにいう国・地方公共団体は我が国のものを指し、法令も日本の法令をいう。公務執行妨害罪は、公務員個人ではなく、公務員によって執行される我が国の公務の円滑な遂行を保護する罪であるから、保護される公務も日本の公務に限られるのである。判例も、米国領事館の職員は刑法上の公務員に当たらないとしている(最判昭27.12.25)。本肢のAは、日本国内で勤務していても、外国の機関である大使館の業務に従事する者であり、日本の法令により公務に従事する職員ではないから、「公務員」に当たらない。甲がAの頭部を拳で殴った行為に公務執行妨害罪は成立せず、暴行罪(208条)が成立するにとどまる。

この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
正しい。職務質問中の警察官を殴って負傷させた1個の暴行が、公務執行妨害罪と傷害罪の2個の罪名に触れるから、両罪は観念的競合となる。
公務執行妨害罪(95条1項)は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた場合に成立する。制服警察官Bによる職務質問は適法な職務の執行であり、丙がBを殴った行為はこれに対する暴行に当たる。同罪は公務の円滑な遂行を保護する罪であり、公務員の身体の安全を保護する傷害罪(204条)とは保護法益が異なる。同罪の法定刑も、暴行によって傷害の結果が生じることまでは評価に含めていない。そのため、暴行によって公務員を負傷させた場合には、公務執行妨害罪のほかに傷害罪が成立する。判例も、両罪の成立を認めたうえで、観念的競合になるとしている。Bを殴るという行為は、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為であり、それが公務執行妨害罪と傷害罪という2個の罪名に触れているからである。したがって、丙がBを殴って全治2週間を要する打撲傷を負わせた行為には両罪が成立し、54条1項前段により、最も重い刑で処断される。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
正しい。職務質問中の警察官を殴って負傷させた1個の暴行が、公務執行妨害罪と傷害罪の2個の罪名に触れるから、両罪は観念的競合となる。
公務執行妨害罪(95条1項)は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた場合に成立する。制服警察官Bによる職務質問は適法な職務の執行であり、丙がBを殴った行為はこれに対する暴行に当たる。同罪は公務の円滑な遂行を保護する罪であり、公務員の身体の安全を保護する傷害罪(204条)とは保護法益が異なる。同罪の法定刑も、暴行によって傷害の結果が生じることまでは評価に含めていない。そのため、暴行によって公務員を負傷させた場合には、公務執行妨害罪のほかに傷害罪が成立する。判例も、両罪の成立を認めたうえで、観念的競合になるとしている。Bを殴るという行為は、自然的観察のもとで社会的見解上1個の行為であり、それが公務執行妨害罪と傷害罪という2個の罪名に触れているからである。したがって、丙がBを殴って全治2週間を要する打撲傷を負わせた行為には両罪が成立し、54条1項前段により、最も重い刑で処断される。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
誤り。違うのは「公務執行妨害罪における「職務」には該当しない」の部分である。公務執行妨害罪の「職務」には広く公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれ、強制力を行使しない公務も当たる(最判昭53.6.29)。
業務妨害罪の「業務」に公務が含まれるかについて、判例は、強制力を行使する権力的公務はこれに当たらず、それ以外の公務は当たるとしており、強制力を行使しない公務は威力業務妨害罪の「業務」に当たる(最決平14.9.30)。本肢の前半はこのとおりである。これに対し、公務執行妨害罪(95条1項)の「職務」について、判例は、広く公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしており(最判昭53.6.29)、権力的な公務に限っていない。公務執行妨害罪は暴行・脅迫から公務の執行を守る罪であり、窓口での説明や相談のような非権力的な事務であっても、暴行・脅迫によって妨げられれば公務の円滑な遂行が害されるからである。したがって、強制力を行使しない公務は、業務妨害罪の「業務」に当たると同時に、公務執行妨害罪の「職務」にも当たり、暴行・脅迫で妨害されれば両罪が成立し得る。この二重の保護が判例の立場への批判の種になっているのであって、「職務」から外れるわけではない。本肢は後半が誤っている。

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「公務執行妨害罪における「職務」には該当しない」の部分である。公務執行妨害罪の「職務」には広く公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれ、強制力を行使しない公務も当たる(最判昭53.6.29)。
業務妨害罪の「業務」に公務が含まれるかについて、判例は、強制力を行使する権力的公務はこれに当たらず、それ以外の公務は当たるとしており、強制力を行使しない公務は威力業務妨害罪の「業務」に当たる(最決平14.9.30)。本肢の前半はこのとおりである。これに対し、公務執行妨害罪(95条1項)の「職務」について、判例は、広く公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしており(最判昭53.6.29)、権力的な公務に限っていない。公務執行妨害罪は暴行・脅迫から公務の執行を守る罪であり、窓口での説明や相談のような非権力的な事務であっても、暴行・脅迫によって妨げられれば公務の円滑な遂行が害されるからである。したがって、強制力を行使しない公務は、業務妨害罪の「業務」に当たると同時に、公務執行妨害罪の「職務」にも当たり、暴行・脅迫で妨害されれば両罪が成立し得る。この二重の保護が判例の立場への批判の種になっているのであって、「職務」から外れるわけではない。本肢は後半が誤っている。

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「これに公務執行妨害罪は吸収されるから,同罪は成立しない」の部分である。公務執行妨害罪に吸収されるのは手段である暴行・脅迫の罪であり、強盗罪などが成立する場合には公務執行妨害罪と観念的競合になる。
甲は窃盗の機会に逮捕を免れるため、警察官乙に反抗を抑圧するに足りる暴行を加えているので、事後強盗罪(238条)が成立する。公務執行妨害罪(95条1項)は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える罪であり、その手段である暴行罪や脅迫罪は公務執行妨害罪の中で評価されるので別に成立せず、吸収される。しかし、吸収されるのは公務執行妨害罪の構成要件に含まれている暴行・脅迫の限度であり、暴行が傷害の結果を生じさせた場合や、暴行が強盗や殺人などの別の重い罪の実行行為に当たる場合には、その罪は公務執行妨害罪の中で評価し尽くされていないので、その罪と公務執行妨害罪の両方が成立し、一個の暴行が二個の罪名に触れるものとして観念的競合(54条1項前段)になる。本肢では、乙に対する暴行が事後強盗罪の実行行為であるとともに、職務を執行する警察官に対する暴行でもあるので、事後強盗罪と公務執行妨害罪が成立して観念的競合になる。公務執行妨害罪が事後強盗罪に吸収されるという関係はなく、本肢は誤りである。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
正しい。公務執行妨害罪の暴行は公務員に向けられた不法な有形力の行使であることが必要であり、丙の手を引いて逃げただけの甲は乙に対して直接にも間接にも有形力を行使していない。
公務執行妨害罪(95条1項)の暴行とは、公務員に向けられた不法な有形力の行使をいう。判例は、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいうとしており(最判昭37.1.23)、公務員の身体に直接触れなくても、差し押さえた物を公務員の眼前で壊すなど、公務員に向けられた有形力の行使であれば暴行に当たる。しかし、公務員に向けられていない行為は、結果として公務員の職務の執行を妨げたとしても暴行には当たらない。本肢の甲は、職務質問を受けている丙の右手をつかんで引っ張り、一緒に走って逃げただけであり、有形力は丙に対して行使されているにすぎない。乙が丙を追い掛けて肩をつかもうとし、つかめずにバランスを崩して転倒したのは、乙自身の動作の結果であって、甲が乙に向けて有形力を行使したものではない。甲の行為は乙に対する直接の暴行でも間接の暴行でもないので、公務執行妨害罪の暴行には当たらず、同罪は成立しない。したがって本肢は正しい。丙の逃走を助けた点は犯人隠避罪などの成否の問題になるにとどまる。

公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいう
正しい。公務執行妨害罪の職務には公務員が取り扱う事務のすべてが含まれ、判例は、強制力を行使する権力的公務でない公務は業務妨害罪の業務にも当たるとしているから、非権力的公務は両罪で保護される。
公務執行妨害罪(95条1項)の「職務」については、判例は、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるとしており、強制力を行使しない非権力的公務もこれに含まれる。他方、公務が業務妨害罪の「業務」に当たるかについては見解が分かれるが、最決平12.2.17は、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務について、強制力を行使する権力的公務ではないから233条・234条にいう業務に当たるとした。強制力を行使する権力的公務は、威力や偽計による妨害を自らの強制力で排除できるから業務妨害罪の保護を要しないが、それ以外の公務にはそのような自力排除の手段が無く、民間の業務と同じように保護する必要があるという考え方である。この結果、強制力を行使しない非権力的公務は、公務執行妨害罪の職務に当たるとともに業務妨害罪の業務にも当たり、暴行・脅迫による妨害には公務執行妨害罪が、威力・偽計による妨害には業務妨害罪が成立し得る。本肢は判例の立場と一致して正しい。二重に保護されるという批判はあるが、判例はこの立場を採っている。

本件において妨害の対象となった職務は、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務であり、右事務は、強制力を行使する権力的公務ではないから、右事務が刑法…二三三条、二三四条にいう「業務」に当たるとした原判断は、正当である
- ["公務はすべて業務に含まれるとする見解", "威力や偽計による公務の妨害に業務妨害罪が成立する。国家的法益に対する罪と個人的法益に対する罪を混同するという批判がある"]
- ["公務は業務に含まれないとする見解", "威力や偽計による公務の妨害はどちらの罪にも当たらず、公務の保護が業務より軽くなるという批判がある"]
- ["強制力を行使する権力的公務を除いて業務に含まれるとする見解(判例)", "強制力を行使しない公務には業務妨害罪も公務執行妨害罪も成立し得る。二重に保護されるという批判がある"]
誤り。違うのは「公務執行妨害罪は成立しない」の部分である。95条1項の暴行は公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいい、警ら中の警察官が乗っているパトロールカーに石を投げ付ける行為は警察官に対する間接的な暴行に当たる(最判昭37.1.23)。
最判昭37.1.23は、95条にいわゆる暴行とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいうとした。公務執行妨害罪が守るのは公務の円滑な執行であるから、暴行は公務員に向けられた不法な有形力の行使であれば足り、公務員の身体に直接触れることは必要でなく、公務員が使用している物に有形力を加えることでその公務員に物理的・心理的な影響を及ぼす場合も暴行に当たる。差し押さえた物を公務員の眼前で壊す行為や、公務員の指揮の下で執行に密接不可分に関与する補助者への暴行が公務執行妨害罪の暴行とされるのも、同じ考え方による。甲は、パトロールカーに乗って警ら中の警察官乙に向けて、その乗っている車に石を投げ付けてフロントガラスに命中させ、ひび割れを生じさせた。乗車中の警察官の車に石をぶつける行為は、乙の身体に直接当たらなくても乙に対する間接的な不法な攻撃であり、警ら中という職務の執行中に加えられている。したがって、器物損壊罪のほかに公務執行妨害罪も成立し、両罪は観念的競合になるので、公務執行妨害罪は成立しないとする本肢は誤りである。

刑法95条にいわゆる暴行とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいう
誤り。違うのは、本肢の行為に公務執行妨害罪が成立するとする点である。道を尋ねるふりをして丙の注意をそらす行為は偽計であり、95条1項の手段である「暴行又は脅迫」に当たらない。
公務執行妨害罪(95条1項)の実行行為は、職務を執行する公務員に対する暴行又は脅迫に限られている。暴行は不法な有形力の行使、脅迫は害悪の告知であり、人を欺いたり誤解させたりして職務の執行を妨げる偽計は、どちらにも当たらない。業務妨害罪(233条・234条)が偽計と威力を手段として掲げているのと異なり、95条1項は公務の執行を物理的・心理的な強制から守る規定であって、偽計による妨害までは処罰の対象にしていないからである。甲は、丙の注意をそらすため、道を尋ねるふりをして丙に話しかけ、そのすきに乙を逃走させている。甲が丙に向けたのは言葉による働きかけであって、有形力の行使でも害悪の告知でもなく、丙を欺いて注意をそらす偽計である。したがって、甲の行為は暴行にも脅迫にも当たらず、公務執行妨害罪は成立しない。本肢は誤りである。乙を逃走させた点については、犯人隠避罪(103条)の成否が別に問題になる。

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- 暴行とは、公務員に向けられた不法な有形力の行使をいい、公務員の身体に直接加えられる必要はない(間接暴行を含む)
- 公務員に向けられていない有形力の行使(第三者を引っ張る、車で道をふさぐ)は暴行に当たらない
- 偽計は95条1項の手段に含まれない
- 暴行・脅迫を加えた時点で成立し、職務の執行が現実に妨害されたことは要らない(最判昭33.9.30)
正しい。公務執行妨害罪の故意は、公務員が職務を執行していることの認識があれば足り、職務Aを「職務Bであると誤信して」いても、公務員が職務を執行するに当たり暴行を加えるという同一の構成要件の範囲内の錯誤であるから故意は阻却されない。
公務執行妨害罪(95条1項)の構成要件は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えることであり、故意の対象は、相手が公務員であることと、その者が職務を執行していることである。構成要件は職務の種類を特定しておらず、法令上の職務であればどの職務でも同じ構成要件に当たる。判例の法定的符合説では、認識した事実と実現した事実が同じ構成要件の範囲内で符合していれば故意が認められるので、公務員が法令上の職務を執行していることを認識して暴行を加えた以上、その職務が実際にはAであったかBであったかは、故意の成否に影響しない。甲は、公務員乙が法令上の職務Aを執行しているのに、別の法令上の職務Bを執行していると誤信して、乙の顔面を殴っている。甲は、公務員が職務を執行していることを認識したうえで暴行を加えているので、公務執行妨害罪の故意に欠けるところはない。職務Aだと分かっていれば暴行に及ばなかったという事情は、動機の問題にすぎず、構成要件該当事実の認識を否定するものではない。したがって、甲には公務執行妨害罪が成立し、本肢は正しい。

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。