賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
この条文の過去問 5問
誤り。違うのは「勝敗が決し、金品の授受がなされなければならない」の部分である。賭博罪は賭博行為が開始されれば成立し、勝敗が決したことも金品が授受されたことも要しない(大判大6.11.8)。
185条は「賭博をした者」を処罰する。賭博とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいい、条文は、争った結果として利益の得喪が実現したことを要件としていない。判例は、花札を使って金銭を賭ける目的で札の配付を受けた後、まだ勝敗が決まらないうちに発覚した事案で、賭博行為はすでに実行を開始されており、賭博罪は成立するとした(大判大6.11.8)。賭博の罪が処罰されるのは、偶然の勝敗に財産を賭ける行為が、勤労によって財産を得るという健全な経済的風俗を害するからであり、この害は賭けて勝負を始めた時点で生じている。勝敗が決することや、賭けた金品が現実に授受されることを待つ理由はないのである。賭博罪には未遂を処罰する規定がないが、賭博行為の開始によって直ちに既遂に達するので、勝敗が決する前に発覚した場合も賭博罪として処罰される。

賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
誤り。違うのは「当事者全員に賭博罪が成立する」の部分である。一方が勝敗の結果を知っている場合は偶然の勝敗を争っておらず、欺いた側に詐欺罪だけが成立し、相手方に賭博罪は成立しない(最判昭26.5.8)。
賭博といえるためには、勝敗が当事者の双方にとって偶然の事情にかかっていることが必要である。ここでいう偶然とは、当事者が確実に予見することができず、又は自由に支配することができないことをいう。当事者の一方があらかじめ結果を知っている場合や、細工をして勝敗を自由に決められる場合は、その者にとって勝敗は偶然ではなく、偶然の勝敗によって財物の得喪を争うという賭博の実質を欠く。判例は、このような場合、欺く手段を用いた側には詐欺罪だけが成立し、相手方には賭博罪は成立しないとしている(最判昭26.5.8)。結果を知らない相手方は、賭博をするつもりで金銭を賭けているが、客観的には賭博が行われておらず、金銭をだまし取られた被害者の立場にあるからである。したがって、あらかじめ勝敗の結果を知ったうえで、これを知らない者に金銭を賭けさせて利益を得た者には詐欺罪が成立し、当事者全員に賭博罪が成立するのではない。

賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
誤り。違うのは「常習性のない者には常習賭博罪の幇助犯が成立する」の部分である。常習性は65条2項の身分であり、常習性のない者には単純賭博罪の幇助犯が成立する(大判大2.3.18)。
65条2項は、「身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する」と定める。賭博の常習者であることは、これがなくても単純賭博罪(185条)が成立し、これがあると常習賭博罪(186条1項)として刑が重くなる事情であるから、同項にいう身分に当たる。判例は、65条1項を身分があって初めて成立する犯罪についての規定、2項を身分によって刑の軽重がある犯罪についての規定と解しており、後者では、身分のない者には通常の刑に当たる罪の共犯が成立する。常習性は、賭博を繰り返す習癖という行為者その人の属性であり、これを持たない者にまで重い刑を及ぼす理由がないからである。判例も、常習性のない者が常習者の賭博を幇助した事案で、常習性のない者には単純賭博罪の幇助犯が成立するとしている(大判大2.3.18)。反対に、常習者が常習性のない者の賭博を教唆・幇助した場合には、常習者に常習賭博罪の教唆犯・幇助犯が成立する(大判大3.5.18)。

身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
| 関与の形 | 判例 | 成立する罪 |
|---|---|---|
| 常習性のない者が常習者の賭博を幇助 | 大判大2.3.18 | 常習性のない者に単純賭博罪の幇助犯 |
| 常習者が常習性のない者の賭博を教唆・幇助 | 大判大3.5.18 | 常習者に常習賭博罪の教唆犯・幇助犯 |
正しい。常習性を身分とみれば常習賭博罪は不真正身分犯であり、Ⅲの見解では、非常習者の甲にも1項により常習賭博罪の教唆犯が成立し、2項により単純賭博罪の刑が科される。
常習賭博罪(186条1項)は、単純賭博罪(185条)と同じ賭博行為について、行為者に常習性があることを理由に刑を加重する罪であるから、常習性を身分とみれば、身分によって刑の軽重がある不真正身分犯である。Ⅲの見解は、65条1項を真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定、2項を不真正身分犯の科刑についての規定と解するから、不真正身分犯に身分のない者が関与した場合、まず1項によって身分のある者と同じ罪の共犯が成立し、次に2項によって身分のない者には通常の刑が科されることになる。本肢の甲は賭博の非常習者であり、常習者である乙を唆して賭博をさせているから、正犯である乙には常習賭博罪が成立し、甲には1項により常習賭博罪の教唆犯が成立したうえで、2項により常習性のない者に対する通常の刑である単純賭博罪の刑が科される。成立する罪は常習賭博罪の教唆犯であるが科刑は単純賭博罪の刑になるという、Ⅲの見解に特有の帰結であり、本肢は正しい。Ⅰの見解からは、2項により甲には単純賭博罪の教唆犯が成立する。

身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
| 見解 | 1項 | 2項 | 批判 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ(判例・通説) | 真正身分犯の成立と科刑 | 不真正身分犯の成立と科刑 | 連帯的作用と個別的作用を分ける実質的根拠が明らかでない |
| Ⅱ(違法身分・責任身分) | 身分が違法性に関係する場合 | 身分が責任に関係する場合 | 違法身分と責任身分の区別が困難 |
| Ⅲ(成立と科刑) | 真正・不真正を通じて共犯の成立 | 不真正身分犯の科刑 | 成立する罪と科される刑が食い違う |
誤り。違うのは「甲には同罪の教唆犯が成立する」の部分である。この見解では常習賭博罪は常習性という身分で刑が加重される不真正身分犯であり、65条2項が成立と科刑を定めるので、非常習者の甲には単純賭博罪の教唆犯が成立する。
本肢の見解は、65条1項を真正身分犯の成立と科刑に関する規定、同条2項を不真正身分犯の成立と科刑に関する規定と解する。賭博罪(185条)は身分がなくても成立する罪であり、常習賭博罪(186条1項)は常習者という身分によって刑が加重される罪であるから、常習性を身分に含めると、常習賭博罪は不真正身分犯に当たる。この見解では、不真正身分犯に身分のない者が加功した場合、2項により、身分のない者には通常の罪が成立し、その刑が科される。常習者である正犯の乙には常習賭博罪が成立するが、これを教唆した甲は賭博の非常習者であり、常習者という身分がない。したがって、甲には2項により通常の罪である単純賭博罪の教唆犯が成立するのであって、常習賭博罪の教唆犯が成立するとする本肢は、この見解からの帰結として誤りである。1項を共犯の成立、2項を科刑の規定と読む見解からは、甲に常習賭博罪の教唆犯が成立して単純賭博罪の刑が科されることになり、見解によって罪名が変わる。

身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
| 見解 | 1項 | 2項 | 非占有者の罪責 |
|---|---|---|---|
| 判例・通説 | 真正身分犯の成立と科刑 | 不真正身分犯の成立と科刑 | 判例は1項で業務上横領罪の共犯、2項で単純横領罪の刑 |
| 成立と科刑で分ける見解 | 真正・不真正を通じて共犯の成立 | 不真正身分犯の科刑 | 業務上横領罪の共犯が成立し、単純横領罪の刑 |
| 違法身分と責任身分で分ける見解 | 違法身分の連帯 | 責任身分の個別化 | 単純横領罪の共犯 |



