法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
この条文の過去問 6問
誤り。違うのは「刑法第35条によって違法性が阻却される余地はない」の部分である。A説に立つことと、相当な資料・根拠に基づく言論活動について35条による違法性阻却の余地を認めることとは両立する。
A説は、230条の2を処罰阻却事由を定めた規定とみる。この見解では、真実であることの証明は犯罪の成否と無関係であるから、真実であると誤信していても故意は阻却されず、230条の2の中では、証明に失敗した者を救うことができない。しかし、A説が述べているのは230条の2という規定の性格であって、名誉毀損行為の違法性が他の規定によって阻却される可能性を否定するものではない。35条は「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」と定めており、正当な行為の違法性を阻却する一般的な規定である。そこで、A説に立ったうえで、相当な資料・根拠に基づいてされた言論活動は、結果として真実性の証明に失敗した場合であっても、表現の自由の正当な行使として35条により違法性が阻却されると考える立場がある。処罰阻却事由と違法性阻却事由は別の段階の問題であり、両者は両立する。したがって、A説から、35条によって違法性が阻却される余地はないという帰結は導かれない。

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
正しい。現行犯逮捕の際に抵抗を受けたときは、社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の実力を行使することが許され、その行使が刑罰法令に触れても35条により罰せられない(最判昭50.4.3)。
刑事訴訟法213条は、現行犯人は何人でも逮捕状なくして逮捕することができると定めており、私人による現行犯逮捕は法令による行為(35条)に当たる。逮捕は相手の意思に反して身体を拘束する行為であるから、抵抗を受けたときに実力を用いることは、逮捕を認めた法令が当然に予定している。判例は、現行犯逮捕をしようとする場合において、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者は、警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法35条により罰せられないとした(最判昭50.4.3)。この限度内の実力行使によって犯人に傷害を負わせた場合、その行為は傷害罪の構成要件に該当するが、法令による行為として違法性が阻却されるので、傷害罪は成立しない。限度を超えた実力行使は、この範囲に含まれない。

その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法三五条により罰せられない
正しい。現行犯逮捕の際に抵抗を受けたときは、社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の実力を行使することが許され、その行使が刑罰法令に触れても35条により罰せられない(最判昭50.4.3)。
刑事訴訟法213条は、現行犯人は何人でも逮捕状なくして逮捕することができると定めており、私人による現行犯逮捕は法令による行為(35条)に当たる。逮捕は相手の意思に反して身体を拘束する行為であるから、抵抗を受けたときに実力を用いることは、逮捕を認めた法令が当然に予定している。判例は、現行犯逮捕をしようとする場合において、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者は、警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法35条により罰せられないとした(最判昭50.4.3)。この限度内の実力行使によって犯人に傷害を負わせた場合、その行為は傷害罪の構成要件に該当するが、法令による行為として違法性が阻却されるので、傷害罪は成立しない。限度を超えた実力行使は、この範囲に含まれない。

その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法三五条により罰せられない
誤り。違うのは「弁護活動の一環として行ったものであるから、正当な業務行為として違法性が阻却され、名誉毀損罪は成立し得ない」の部分である。判例は、記者会見での真犯人の発表は訴訟外の救援活動で弁護目的との関連性も著しく間接的であり、正当な弁護活動の範囲を超えるとした。
最決昭51.3.23は、本肢と同じ事案で、刑事被告人の利益を擁護するためにした正当な弁護活動であれば名誉毀損罪の構成要件に当たる行為も35条により罰せられないとしつつ、35条の適用を受けるためには、その行為が弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないとした。その判断では、法令上の根拠を持つ職務活動か、弁護目的の達成との間にどのような関連性を持つか、被告人自身が行った場合に違法性阻却を認めるべきかを考慮する。そのうえで、弁護人が弁護活動のために名誉毀損に当たる事実を公表することを許容する法令上の定めは無く、記者会見での公表は訴訟外の救援活動に属し、弁護目的との関連性も著しく間接的であって、正当な弁護活動の範囲を超えるとして違法性阻却を否定した。弁護人の業務であることだけで正当業務行為になるのではなく、目的との関連性と手段の相当性が要るのである。本肢は、弁護活動の一環であることだけを理由に違法性が阻却されるとする点で判例と食い違う。

刑法三五条の適用を受けるためには、その行為が弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならない
- ["法令による行為", "私人による現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)、正当な争議行為(労働組合法1条2項)などである"]
- ["正当な業務による行為", "医師の治療行為、弁護人の弁護活動、報道機関の取材活動などである。目的の正当性と手段の相当性が必要である"]
- ["自救行為", "法の手続によらず自ら実力で権利を回復する行為である。明文がなく、原則として認められない"]
正しい。判例は、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕しようとする者が警察官か私人かを問わず、社会通念上逮捕のために必要かつ相当な限度内の実力行使が許され、刑罰法令に触れても35条により罰せられないとしている。
現行犯人は、何人でも逮捕状なしに逮捕することができる(刑事訴訟法213条)から、私人による現行犯逮捕は法令による行為であり、その遂行に必要な範囲の実力行使も法令による行為として35条により違法性が阻却される。最判昭50.4.3は、現行犯逮捕をしようとする場合において現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者が警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、35条により罰せられないとした。私人には警察官のような一般的な強制力の行使権限は無いが、現行犯逮捕そのものが法律上許されている以上、その実効性を確保するために必要な有形力の行使は逮捕の権限に伴って許されるのである。もっとも、違法性が阻却されるのは必要かつ相当な限度内の行為に限られる。本肢は、社会通念上必要かつ相当な範囲での実力行使を前提にしているから、傷害を負わせても違法性が阻却され、傷害罪(204条)は成立し得ない。

現行犯逮捕をしようとする場合において、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者は、警察官であると私人であるとをとわず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法三五条により罰せられない
- ["法令による行為", "私人による現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)、正当な争議行為(労働組合法1条2項)などである"]
- ["正当な業務による行為", "医師の治療行為、弁護人の弁護活動、報道機関の取材活動などである。目的の正当性と手段の相当性が必要である"]
- ["自救行為", "法の手続によらず自ら実力で権利を回復する行為である。明文がなく、原則として認められない"]
誤り。違うのは「両立しない」の部分である。A説は230条の2を処罰阻却事由と解するにすぎず、同条以外の一般規定である35条によって相当な資料・根拠に基づく言論の違法性が阻却される可能性まで否定する趣旨を含まないので、両者は両立する。
A説は、230条の2が定めるのは処罰阻却事由であって違法性阻却事由ではないと解する見解である。しかし、それは同条の法的性格についての理解であって、同条以外の規定による違法性阻却の可能性まで否定するものではない。35条は、法令又は正当な業務による行為を罰しないとする違法性阻却の一般規定であり、報道機関の取材・報道活動や公益目的の言論活動が、相当な資料・根拠に基づいて行われた場合には、表現の自由の保障を受ける正当な業務行為として、35条により違法性が阻却される余地がある。むしろA説を徹底すると、真実性の証明に失敗した場合には処罰阻却事由がないことになり、230条の2の枠内で行為者を救済することが難しくなる。そのため、35条による違法性阻却で処罰範囲を限定する構成は、A説と結び付きやすい面すらある。したがって、A説に立つことと、相当な資料・根拠に基づく言論活動について35条による違法性阻却の余地を認めることは十分に両立するのであり、両立しないとする本肢は誤りである。

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。















































































