犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
この条文の過去問 6問
誤り。違うのは「甲には、中止犯が成立する」の部分である。共謀者の一人が犯意を放棄しても、他の共謀者の強取を阻止せず放任して既遂に至った以上、その者だけを中止犯として論ずることはできない(最判昭24.12.17)。
中止犯(43条ただし書)は未遂犯の一種であり、結果が発生して既遂に達した場合には成立しない。共同正犯では、共謀者の一人が自ら犯行をやめても、他の共謀者が共謀に基づいて既遂に至れば、やめた者も既遂の責任を負うのが原則であるから、中止犯が認められるには、他の共謀者の実行を阻止するか、共犯関係を解消して既遂の結果が自分に帰属しないようにする必要がある。判例は、強盗の共謀者の一人が犯意を放棄して立ち去った後に他の共謀者が金員を強取した事案で、強取することを阻止せず放任した以上、立ち去った者だけを中止犯として論ずることはできず、共謀者によって遂行された強盗既遂の罪責を免れないとした(最判昭24.12.17)。甲は「金は要らない」と言い、乙にもやめるよう言って立ち去ったが、甲の脅迫によるVの反抗抑圧状態はそのまま続いており、乙はこれを利用して強取している。甲は自分が作り出した状態を取り除かず、乙の強取を阻止もしていないので、強盗既遂の共同正犯の責任を負い、中止犯は成立しない。

強取することを阻止せず放任した以上、所論のように、被告人のみを中止犯として論ずることはできないのであつて、被告人としても右Bによつて遂行せられた本件強盗既遂の罪責を免れることを得ない
誤り。違うのは「甲と乙には、いずれも中止犯が成立する」の部分である。中止犯による刑の減免は自己の意思により犯罪を中止した者だけに認められ、甲に止められて犯行を継続できなかった乙には及ばない(大判大2.11.18)。
43条ただし書の中止犯は、「自己の意思により」犯罪を中止した者について刑を必要的に減軽又は免除するものであり、任意に中止したことに対する褒賞として、その者だけに認められる一身的な事由である。判例も、中止犯が成立する場合の中止の効力は他の共犯者に及ばないとしている(大判大2.11.18)。甲は、Vを殺害することができたのに憐憫の情から犯行をやめようと決意し、更に切り付けようとする乙を羽交い締めにしてVを逃がし、Vの死亡という結果の発生を自ら防止しているので、甲には中止犯が成立し得る。これに対し、乙は、更にVを切り付けようとしており、甲に羽交い締めにされたために犯行を継続できなかったにすぎず、自己の意思により犯罪を中止したとはいえない。乙にとってVが死亡しなかったことは外部の障害によるものであるから、乙は障害未遂(43条本文)であり、刑を減軽することができるにとどまる。甲に中止犯が成立しても、その効果は乙に及ばないので、両名のいずれにも中止犯が成立するという帰結にはならない。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
正しい。Aの見解は既遂時期が早いので未遂の段階が短く、Bの見解より中止犯の成立し得る範囲が狭くなり、刑事政策的に望ましくないという批判が向けられる。
中止犯(43条ただし書)は、犯罪が未遂にとどまる場合にだけ問題になる制度であり、いったん既遂に達した後に行為者が自ら消火しても、刑の必要的な減軽・免除を受けることはできず、量刑で考慮されるにとどまる。そのため、焼損の時期、すなわち既遂時期を早く設定する見解ほど、未遂の段階が短くなり、中止犯の成立し得る範囲は狭くなる。Aの見解は、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に至れば足りるとするから、柱や壁板の一部が燃え始めた程度でも既遂になり、その後に自ら消し止めても中止犯にならない。これに対し、Bの見解は重要部分の燃焼による効用の喪失まで要求するので、既遂時期はAの見解より遅く、それまでの間に自ら消火すれば中止犯が成立し得る。中止犯の制度は、行為者に結果の発生を防止する行為を促すためのものであるから、既遂を早く認めてこの余地を狭めることは、消火を促すという刑事政策の観点から望ましくないという批判が、Aの見解に向けられる。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
誤り。違うのは「既遂犯が成立する場合にも……中止未遂が成立する」の部分である。中止未遂は「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」についての規定であり、既遂に達した場合には成立しない。
43条は、本文で「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」について刑を減軽することができると定め、ただし書で、そのうち自己の意思により犯罪を中止したときは刑を減軽し、又は免除すると定める。ただし書の中止未遂は本文の未遂犯を前提にした規定であるから、中止未遂が成立するには、まず未遂犯が成立していること、すなわち結果が発生せず既遂に達していないことが必要である。結果発生の防止のために真摯な努力をしたとしても、その努力にもかかわらず結果が発生して既遂に達してしまった場合には、「これを遂げなかった」とはいえないから、中止未遂は成立しない。中止犯の刑の必要的減免は、未遂犯の刑の任意的減軽をさらに進めたものであり、既遂犯について適用する余地は条文の文言上無いのである。この場合、中止に向けた真摯な努力は、既遂犯の量刑の事情として考慮されるにとどまる。したがって、既遂犯が成立する場合にも中止未遂が成立するとする本肢は、43条の文言に反し誤りである。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
- ["任意性", "自己の意思により中止したことである"]
- ["中止行為", "実行行為が終わっていなければ以後の実行の放棄で足りる。結果発生の危険が生じていれば結果防止のための真摯な努力が要る"]
- ["結果の不発生", "既遂に達した場合は中止犯にならない"]
- ["効果", "刑を減軽し、又は免除する(必要的減免)。中止した本人にだけ生じる"]
誤り。違うのは「任意的に減軽又は免除される」の部分である。43条ただし書は「その刑を減軽し、又は免除する」と定めており、中止未遂の刑の減免は必要的である。
43条本文は、犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者について「その刑を減軽することができる」と定め、未遂犯一般の刑を任意的減軽としている。これに対し、同条ただし書は、自己の意思により犯罪を中止したときは「その刑を減軽し、又は免除する」と定めており、減軽するか免除するかは裁判所が選ぶが、そのどちらもしないことは許されない必要的減免である。中止未遂に必要的減免が認められるのは、自己の意思で犯罪を中止した者には違法性や責任の減少が認められ、また、実行に着手した者に結果の発生を防ぐよう促す政策的な理由があるからであり、任意的減軽にとどまる障害未遂とは扱いが異なる。したがって、中止未遂の刑が任意的に減軽又は免除されるとする本肢は、43条ただし書の文言に反し誤りである。なお、同じ必要的な減軽でも、心神耗弱(39条2項)や従犯(63条)は「減軽する」とされ免除までは認められないのに対し、中止未遂は免除まで可能な点で、より手厚い扱いである。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
- ["障害未遂(43条本文)", "刑を減軽することができる(任意的減軽)"]
- ["中止未遂(43条ただし書)", "刑を減軽し、又は免除する(必要的減免)"]
誤り。違うのは「必ずその刑が免除される」の部分である。43条ただし書は中止犯の刑を「減軽し、又は免除する」と定めており、減免は必要的であるが、減軽にとどまる場合もある。
43条本文は、実行に着手してこれを遂げなかった障害未遂について、刑を減軽することができると定め、減軽するかどうかを裁判所の裁量に委ねている。これに対し同条ただし書は、自己の意思により犯罪を中止した中止犯について、その刑を減軽し、又は免除すると定める。障害未遂と異なり、中止犯では裁判所は必ず刑を減軽するか免除するかのいずれかをしなければならず、この意味で中止犯の効果は必要的減免と呼ばれる。しかし、減軽と免除のどちらを選ぶかは裁判所の裁量に委ねられており、中止犯が成立すれば必ず刑が免除されるわけではない。殺意をもって重傷を負わせた後に自ら救護して一命を取り留めさせたような場合、中止犯は成立するが、生じた傷害の結果の重さなどを考慮して刑の減軽にとどめることができる。本肢は、必要的減免を必要的免除と取り違えており、誤りである。なお、中止犯の減免は自己の意思により中止した本人にだけ生じる一身的な効果であり、他の共犯者には及ばない。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
- ["任意性", "自己の意思により中止したこと"]
- ["中止行為", "実行行為が終わっていなければ以後の実行の放棄。結果発生の危険が生じていれば結果防止のための真摯な努力"]
- ["結果の不発生", "既遂に達した場合は中止犯にならない"]
- ["効果", "刑を減軽し、又は免除する(必要的減免)。中止した本人にだけ生じる"]