法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
この条文の過去問 10問
誤り。違うのは「偽証罪の教唆犯は成立しない」の部分である。被告人自身に黙秘権があるからといって、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは、偽証教唆の責任を免れない(最決昭28.10.19)。
偽証罪(169条)の主体は「法律により宣誓した証人」であり、被告人は自己の事件の証人にならないから、被告人が自己の事件について法廷で虚偽を述べても偽証罪は成立しない。しかし、このことから、被告人が他人に偽証をさせることまで許されるという結論は導かれない。判例は、被告人自身に黙秘権があるからといって、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆の責任を免れないとしている(最決昭28.10.19)。被告人に保障されているのは供述を拒む権利であって、虚偽の証拠を作り出す権利ではない。また、被告人が自ら虚偽を述べることが処罰されないのは、被告人という立場にある者に真実を述べることを期待できないからであるが、宣誓した証人という他人を巻き込んで国の審判作用を誤らせる行為は、この配慮が及ぶ範囲を超えている。したがって、知人を教唆して偽証をさせた被告人には、偽証罪の教唆犯(61条1項)が成立する。

被告人自身に黙秘権があるからといつて、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆の責を免れない
誤り。違うのは「国の審判作用は害されないから、偽証罪は成立しない」の部分である。判例は「虚偽の陳述」を証人の記憶に反する陳述と解しており、内容が真実に合致していても偽証罪が成立する(大判大3.4.29)。
169条の「虚偽の陳述」の意義について、判例は、証人の記憶に反する陳述をいうとする立場をとっている。判例は、証言の内容である事実が真実に一致し、又は少なくとも不実であると認めることができない場合であっても、証人が故意に記憶に反する陳述をしたときは偽証罪を構成するとした(大判大3.4.29)。証人の役割は、自分が経験した事実を記憶のとおりに述べることにあり、裁判所は、そのようにして得られた複数の証言や証拠を照らし合わせて事実を認定する。証人が記憶に反する陳述をすれば、それがたまたま真実に合っていたとしても、裁判所の事実認定の基礎をゆがめ、審判を誤らせる危険がある。国の審判作用は害されないという肢の理由づけは、陳述の内容が客観的真実に反することを「虚偽」とする見解のものであり、判例の立場ではない。したがって、証人が殊更記憶に反する陳述をした場合には、その内容が他の証拠から真実と認められても、偽証罪が成立する。

法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
| 主観説(判例) | 客観説 | |
|---|---|---|
| 虚偽の意味 | 証人の記憶に反すること | 客観的真実に反すること |
| 記憶に反する陳述がたまたま真実に合っていた | 成立する | 成立しない |
| 記憶のとおりの陳述が真実に反していた | 成立しない | 虚偽の認識がなく故意を欠く |
誤り。違うのは「同証人には自己負罪拒否特権があるから、偽証罪は成立しない」の部分である。証言を拒むことができる者も、証言拒絶権を行使せずに宣誓して虚偽の陳述をすれば、偽証罪が成立する。
偽証罪の主体は「法律により宣誓した証人」である。共犯者であっても、手続が分離されて他の共犯者の事件の証人として尋問される場合には、証人として宣誓をさせることができる。この証人は、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができるが、これは証言を拒む権利であって、虚偽を述べる権利ではない。判例は、証言を拒むことができる者が、証言拒絶権を行使せずに宣誓して虚偽の陳述をした場合には、その内容が自己の犯罪事実に関するものであっても、偽証罪が成立するとしている。自己に不利益な事実を述べたくなければ証言を拒めばよく、拒まずに宣誓した以上は、有効な宣誓をした証人として記憶のとおりに述べる義務を負うからである。真実を述べることを期待できないとはいえない。したがって、共犯者の事件に証人として出廷し、証言拒絶権を行使せずに宣誓して自己の犯罪事実に関して虚偽の陳述をした者には、偽証罪が成立する。

法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「具体的な危険が発生しなかったといえるから、偽証罪は成立しない」の部分である。偽証罪は抽象的危険犯であり、虚偽の陳述が裁判の結果に影響したかどうかは成否に関係しない(大判大12.12.11)。
169条は、法律により宣誓した証人が「虚偽の陳述をしたとき」に偽証罪が成立すると定めており、その陳述によって裁判の結果が左右されたことや、誤った裁判がされる具体的な危険が生じたことを要件としていない。偽証罪は国の審判作用の適正を保護する罪であるが、宣誓した証人が記憶に反する陳述をすること自体に、審判を誤らせる危険が類型的に認められるので、法は、その行為があれば直ちに処罰することとしている。このような罪を抽象的危険犯という。判例も、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、その陳述が裁判の結果に影響を及ぼすかどうかにかかわらず、偽証罪を構成するとしている(大判大12.12.11)。虚偽の陳述は、一回の尋問手続における陳述が全体として終了した時に既遂に達し、その後に裁判所がその証言を信用しなかったとしても、成立した罪が消えることはない。したがって、裁判の結果に影響しなかったことを理由に偽証罪の成立を否定する肢は誤りである。

法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
正しい。169条の「法律により宣誓した証人」の宣誓は適法にされたものでなければならず、宣誓をさせることができない者が誤って宣誓のうえ虚偽の陳述をしても、偽証罪は成立しない(最大判昭27.11.5)。
偽証罪は、「法律により宣誓した証人」を主体とする身分犯である。宣誓は、証人に真実を述べる義務を自覚させ、偽証の制裁を予告することで証言の信用性を担保する手続であり、偽証罪はこの宣誓に反したことを処罰の根拠としている。そのため、ここにいう宣誓は、法律上有効にされたものでなければならない。判例も、169条にいう「法律により宣誓した証人」とは、法律上宣誓させることができる証言事項について宣誓した証人をいい、法律上宣誓させることができないのに宣誓した証人を含まないとしている(最大判昭27.11.5)。刑事訴訟法155条1項は、宣誓の趣旨を理解することができない者には宣誓をさせないで尋問しなければならないと定めており、この者に誤って宣誓をさせても、その宣誓は適法なものではない。したがって、その者が虚偽の陳述をしても偽証罪は成立しない。これに対し、証言を拒むことができるにすぎない者が宣誓した場合は、有効な宣誓であり、偽証罪が成立する。

偽証罪を定めた刑法169条にいわゆる「法律ニ依リ宣誓シタル証人」とは、法律上宣誓せしめ得る証言事項につき宣誓したる証人と解するを相当とし、従つて前記の如く法律上宣誓せしめ得ない証言事項につき宣誓したる証人を含まない
正しい。証人に偽証をさせる行為は偽証罪の教唆犯となり、証拠偽造罪の教唆犯は成立しない(大判大3.6.23)。
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば偽証罪(169条)が成立し、これを教唆して実行させた者は偽証罪の教唆犯となる。他方、判例は、証人に偽証をさせる行為について、104条の証拠偽造罪の教唆犯の成立を否定している(大判大3.6.23)。104条の「偽造」は、存在しない証拠を新たに作り出すことをいう。証人が法廷で虚偽の内容を述べることは、供述そのものであって、新たな証拠を作り出すこととは異なる。刑法は、虚偽の供述については、宣誓した証人によるものに限って偽証罪として処罰することとしており、証拠偽造罪より重い刑を定めた独立の規定を置いている。そうすると、証人の虚偽の陳述は偽証罪によって評価されるのであり、これを重ねて証拠の偽造として扱う余地はない。判例は、参考人が捜査官に虚偽の供述をしただけでは証拠偽造罪に当たらないとしつつ、虚偽の内容の供述調書などの書面を作り出した場合には同罪の成立を認めているが(最決平28.3.31)、これは書面という証拠を新たに作り出した場合である。

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「教唆犯は成立し得ない」の部分である。乙の偽証罪は証人尋問手続の終了までに既遂に達して構成要件に該当し違法であり、その後の自白は刑の減免事由にすぎないから、【見解】によれば甲に偽証罪の教唆犯が成立し得る。
偽証罪(169条)は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときに成立する。既遂時期については、個々の虚偽の陳述の時とする考え方と証人尋問手続の終了の時とする考え方があるが、遅くとも宣誓の上で行われた証人尋問手続が終了した時点では既遂に達していることに争いは無い。本肢の乙は、宣誓した上で虚偽の陳述をし、証人尋問手続が終了しているから、乙の行為は偽証罪の構成要件に該当し、違法性も備えている。170条は、偽証をした者がその証言をした事件の裁判が確定する前に自白したときはその刑を減軽し又は免除することができると定めるが、これは既に成立した偽証罪について刑を減免できるとする規定であり、犯罪の成立を遡って否定するものではない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするだけで、正犯の刑の減免事由の有無は問わないから、乙が判決言渡し前に自白しても、乙を唆した甲には偽証罪の教唆犯が成立し得る。乙の自白による刑の減免は乙の一身的な事情であり、甲に及ぶものでもない。本肢は誤っている。

前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
誤り。違うのは「教唆犯は成立し得ない」の部分である。乙の偽証罪は証人尋問手続の終了までに既遂に達して構成要件に該当し違法であり、その後の自白は刑の減免事由にすぎないから、【見解】によれば甲に偽証罪の教唆犯が成立し得る。
偽証罪(169条)は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときに成立する。既遂時期については、個々の虚偽の陳述の時とする考え方と証人尋問手続の終了の時とする考え方があるが、遅くとも宣誓の上で行われた証人尋問手続が終了した時点では既遂に達していることに争いは無い。本肢の乙は、宣誓した上で虚偽の陳述をし、証人尋問手続が終了しているから、乙の行為は偽証罪の構成要件に該当し、違法性も備えている。170条は、偽証をした者がその証言をした事件の裁判が確定する前に自白したときはその刑を減軽し又は免除することができると定めるが、これは既に成立した偽証罪について刑を減免できるとする規定であり、犯罪の成立を遡って否定するものではない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするだけで、正犯の刑の減免事由の有無は問わないから、乙が判決言渡し前に自白しても、乙を唆した甲には偽証罪の教唆犯が成立し得る。乙の自白による刑の減免は乙の一身的な事情であり、甲に及ぶものでもない。本肢は誤っている。

前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
誤り。違うのは「甲には証拠偽造罪が成立する」の部分である。証拠偽造罪の偽造は証拠自体の偽造をいい、証人の偽証を含まないから、甲に成立するのは偽証罪である(最決昭28.10.19)。
104条の偽造とは、存在しない証拠を新たに作り出すことをいう。判例は、証拠偽造罪にいう証拠の偽造とは証拠自体の偽造を指称し、証人の偽証を包含しないとしている(最決昭28.10.19)。宣誓した証人の虚偽の陳述は169条の偽証罪が別に処罰しており、虚偽の供述を処罰するのはこの偽証罪に限るのが刑法の建前だからである。証人が偽りの証言をすれば、それに基づいて証人尋問調書が作成されるのは当然の成り行きであって、供述自体が偽造に当たらない以上、調書が作られたことをもって証拠を偽造したと評価することもできない。参考人が捜査官に虚偽の供述をし、それが供述調書に録取されても、それだけでは証拠偽造罪が成立しないとされるのも同じ理屈である(最決平28.3.31)。本肢の甲は、Aの強盗被告事件に証人として出廷し、法律により宣誓のうえ記憶と異なる証言をしており、成立するのは偽証罪であって証拠偽造罪ではない。

証拠自体の偽造を指称し、証人の偽証を包含しないと解すべきである
誤り。違うのは「その刑を免除することができる」の部分である。偽証罪には、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪における105条のような親族のための犯罪について刑を免除できる規定がなく、同居の実父のために偽証しても刑の免除の余地はない。
偽証罪(169条)は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときに成立し、国の審判作用の適正を守る罪である。刑法は、親族が親族のために犯した罪について刑を免除する特例をいくつか置いているが、それは個別の明文がある場合に限られる。犯人蔵匿等罪と証拠隠滅等罪については、105条が、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときはその刑を免除することができると定めている。しかし、偽証罪にはこれに相当する規定がなく、偽証の罪の章に置かれているのは、証言をした事件の裁判が確定する前に自白したときに刑を減軽し又は免除することができるという170条だけである。したがって、甲が同居している実父乙の窃盗事件の公判期日に証人として出廷し、宣誓のうえ乙の利益のために偽証した場合、甲には偽証罪が成立し、乙の親族であることを理由に刑を免除することはできない。したがって、本肢は誤りである。

前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
