1行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。
1行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。
1行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。公務所若しくは公務員の印章若しくは署名(以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において「印章等」という。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画(以下この章において「文書等」という。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書等を偽造する行為公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等(印章等として表示されることとなる電磁的記録をいう。以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において同じ。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等(文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録をいう。以下この章において同じ。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等を偽造する行為
1 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名(以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において「印章等」という。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画(以下この章において「文書等」という。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書等を偽造する行為
2 公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等(印章等として表示されることとなる電磁的記録をいう。以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において同じ。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等(文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録をいう。以下この章において同じ。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等を偽造する行為
2公務所若しくは公務員が押印し若しくは署名した文書等又は公務所若しくは公務員が電磁的記録印章等を使用して作成した電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様とする。
3前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書等若しくは電磁的記録文書等を変造した者は、三年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。
正しい。169条の「法律により宣誓した証人」の宣誓は適法にされたものでなければならず、宣誓をさせることができない者が誤って宣誓のうえ虚偽の陳述をしても、偽証罪は成立しない(最大判昭27.11.5)。
偽証罪は、「法律により宣誓した証人」を主体とする身分犯である。宣誓は、証人に真実を述べる義務を自覚させ、偽証の制裁を予告することで証言の信用性を担保する手続であり、偽証罪はこの宣誓に反したことを処罰の根拠としている。そのため、ここにいう宣誓は、法律上有効にされたものでなければならない。判例も、169条にいう「法律により宣誓した証人」とは、法律上宣誓させることができる証言事項について宣誓した証人をいい、法律上宣誓させることができないのに宣誓した証人を含まないとしている(最大判昭27.11.5)。刑事訴訟法155条1項は、宣誓の趣旨を理解することができない者には宣誓をさせないで尋問しなければならないと定めており、この者に誤って宣誓をさせても、その宣誓は適法なものではない。したがって、その者が虚偽の陳述をしても偽証罪は成立しない。これに対し、証言を拒むことができるにすぎない者が宣誓した場合は、有効な宣誓であり、偽証罪が成立する。

偽証罪を定めた刑法169条にいわゆる「法律ニ依リ宣誓シタル証人」とは、法律上宣誓せしめ得る証言事項につき宣誓したる証人と解するを相当とし、従つて前記の如く法律上宣誓せしめ得ない証言事項につき宣誓したる証人を含まない
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
正しい。公務員でない者が虚偽の申立てをして公務員に虚偽の公文書を作成させても、157条に当たる場合のほかは処罰されず、虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない(最判昭27.12.25)。
虚偽公文書作成罪(156条)は、文書の作成権限を有する公務員が、その職務に関し、内容虚偽の文書を作成する罪である。公務員でない者が、情を知らない公務員を利用して虚偽の公文書を作成させた場合に、同罪の間接正犯が成立するかが問題になる。判例は、公務員でない者が虚偽の公文書作成の間接正犯であるときは、157条の場合のほかはこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。刑法は、公務員に虚偽の申立てをして、権利義務に関する公正証書の原本や免状、鑑札、旅券に不実の記載をさせた場合に限って157条を設け、しかも156条より著しく軽い刑で処罰している。157条に挙げられていない公文書について156条の間接正犯を認めると、重要な文書については軽く、それ以外の文書については重く処罰することになり、均衡を失するからである。課税証明書は157条に挙げられた文書ではないから、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
| 利用する者 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 公務員でない者が虚偽の申立てをして作成させる | 最判昭27.12.25 | 157条に当たる場合のほかは処罰されない |
| 起案を担当する公務員が、情を知らない作成権限者に署名させる | 最判昭32.10.4 | 虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する |
正しい。公務員である医師が職務として作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の病名を記載すれば、虚偽診断書等作成罪ではなく虚偽公文書作成罪が成立する。
156条は、公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成することを処罰する。市立病院に勤務する医師は公務員であり、その病院の患者について作成する診断書は、公務員が職務上作成する文書であるから公文書に当たる。そこに虚偽の病名を記載する行為は、作成権限のある公務員による内容虚偽の公文書の作成であり、虚偽公文書作成罪が成立する。これに対し、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合を処罰する規定である。私文書については内容を偽る行為が原則として処罰されないなかで、公務所に提出される医師の診断書の証明力を特に保護するために例外として置かれたものであり、公務員でない医師が作成する私文書としての診断書を対象としている。本肢の診断書は裁判所に提出するためのものであるが、公文書である以上、法定刑の重い156条が適用され、160条は適用されない。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
正しい。公務員である医師が職務として作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の病名を記載すれば、虚偽診断書等作成罪ではなく虚偽公文書作成罪が成立する。
156条は、公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成することを処罰する。市立病院に勤務する医師は公務員であり、その病院の患者について作成する診断書は、公務員が職務上作成する文書であるから公文書に当たる。そこに虚偽の病名を記載する行為は、作成権限のある公務員による内容虚偽の公文書の作成であり、虚偽公文書作成罪が成立する。これに対し、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合を処罰する規定である。私文書については内容を偽る行為が原則として処罰されないなかで、公務所に提出される医師の診断書の証明力を特に保護するために例外として置かれたものであり、公務員でない医師が作成する私文書としての診断書を対象としている。本肢の診断書は裁判所に提出するためのものであるが、公文書である以上、法定刑の重い156条が適用され、160条は適用されない。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
誤り。違うのは「虚偽有印公文書作成罪が成立する」の部分である。虚偽公文書作成罪の主体は文書の作成権限を持つ公務員に限られ、権限のない甲が作成した発注書については有印公文書偽造罪が成立する。
公文書偽造罪(155条)と虚偽公文書作成罪(156条)は、文書の内容の真偽ではなく、作成者にその文書の作成権限があるかどうかで分かれる。虚偽公文書作成罪は、文書の作成権限を持つ公務員だけが主体となる身分犯であり、公務員であっても、その文書を作成する権限のない者はこの罪の主体にならない。甲はX市立病院の事務長であるが、同病院のために発注書を作成する権限を授与されていない。そのような甲が「X市立病院事務長甲」名義の発注書を作成することは、作成権限のない者による公文書の作成であり、公文書偽造罪に当たる。判例は、文書が一般人をして公務員の職務権限内において作成されたものと信じさせるに足りる形式外観を備えている以上、名義者である公務員にその権限がない場合でも偽造公文書に当たるとしている(最判昭28.2.20)。事務長名義の発注書はこれに当たるから、甲には有印公文書偽造罪が成立する。

偽造文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文書というを妨げない
誤り。違うのは「虚偽有印公文書作成罪が成立する」の部分である。虚偽公文書作成罪の主体は文書の作成権限を持つ公務員に限られ、権限のない甲が作成した発注書については有印公文書偽造罪が成立する。
公文書偽造罪(155条)と虚偽公文書作成罪(156条)は、文書の内容の真偽ではなく、作成者にその文書の作成権限があるかどうかで分かれる。虚偽公文書作成罪は、文書の作成権限を持つ公務員だけが主体となる身分犯であり、公務員であっても、その文書を作成する権限のない者はこの罪の主体にならない。甲はX市立病院の事務長であるが、同病院のために発注書を作成する権限を授与されていない。そのような甲が「X市立病院事務長甲」名義の発注書を作成することは、作成権限のない者による公文書の作成であり、公文書偽造罪に当たる。判例は、文書が一般人をして公務員の職務権限内において作成されたものと信じさせるに足りる形式外観を備えている以上、名義者である公務員にその権限がない場合でも偽造公文書に当たるとしている(最判昭28.2.20)。事務長名義の発注書はこれに当たるから、甲には有印公文書偽造罪が成立する。

偽造文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文書というを妨げない
誤り。違うのは「虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する」の部分である。判例は、公務員でない者が情を知らない公務員を利用した場合は157条に当たるときを除き処罰しない趣旨とし、甲には公正証書原本不実記載罪が成立する(最判昭27.12.25)。
虚偽公文書作成罪(156条)の主体は、その公文書の作成権限を持つ公務員に限られる。判例は、刑法は無形偽造を公文書についてだけ処罰し、公文書の無形偽造についても156条のほかに、公務員に対し虚偽の申立てをして権利義務に関する公正証書の原本、免状、鑑札、旅券に不実の記載をさせたときに限って157条の処罰規定を設け、しかも156条より著しく軽く罰しているにすぎないことから、公務員でない者が虚偽公文書作成の間接正犯であるときは、157条の場合のほかこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。157条が軽い刑で限定的に処罰している行為を、156条の間接正犯として重く処罰することは、157条を置いた法の趣旨に反するからである。本肢の甲は公務員でなく、情を知らない公務員に虚偽の申立てをして登記簿に不実の記載をさせているので、公正証書原本不実記載罪(157条1項)が成立し、不実の記載がされた登記簿謄本の交付を受けた点も含めて同条の罪で処理される。虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しないので、本肢は誤りである。

公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法一五七条の場合の外これを処罰しない趣旨と解する
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「虚偽公文書作成罪が成立する」の部分である。供述調書は供述者が述べたとおりに録取することが求められる文書であり、供述を忠実に録取した以上、その内容が客観的事実と異なっても内容虚偽の文書には当たらない。
虚偽公文書作成罪(156条)は、作成権限のある公務員がその職務に関し、行使の目的で内容虚偽の文書を作成した場合に成立する無形偽造の罪である。文書の内容が虚偽かどうかは、その文書が何を証明するために作られるものかによって決まる。司法警察員が作成する参考人の供述調書は、参考人がどのような供述をしたかを記録する文書であり、証明の対象は供述の存在と内容であって、供述された事実が真実であるかどうかではない。したがって供述調書が虚偽であるといえるのは、参考人が述べていないことを述べたように記載したり、述べた内容を変えて記載したりした場合であり、参考人の供述をそのまま録取した調書は、たとえ供述の内容が客観的事実と異なっていても、調書としては真実を記載したものである。甲は、乙の供述が客観的事実と異なることを知りながらも、乙の供述をそのまま録取しており、内容虚偽の文書を作成したとはいえない。虚偽を述べた乙についても、宣誓した証人ではないから偽証罪は成立しない。本肢は誤りである。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
誤り。違うのは「虚偽診断書等作成罪が成立するので,虚偽公文書作成罪は成立しない」の部分である。公務員である医師が職務上作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の記載をすれば虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を対象とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。
私文書については無形偽造を処罰しないのが原則であり、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合をその例外として処罰する規定である。この罪の客体は医師が私人の立場で作成する診断書、すなわち私文書である。これに対し、公務員がその職務に関して作成する文書は公文書であり、内容虚偽の公文書を作成すれば156条の虚偽公文書作成罪が成立する。市立病院に勤務する公務員である甲が、同病院の医師として患者の診断書を作成することは、公務員がその職務に関して文書を作成することにほかならず、その診断書は公文書である。したがって、これに虚偽の病名を記載した甲には虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を客体とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。判例も、刑務所の医務課長が内容虚偽の診断書を作成した事案で、虚偽公文書作成罪に当たることを前提とした判断をしている(最判昭23.10.23)。公務員である医師の虚偽診断書を軽い160条で処理すれば、公文書に対する公共の信用を厚く保護する156条の趣旨に反する。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する」の部分である。判例は、公務員でない者が情を知らない公務員を利用して虚偽の公文書を作成させても、157条に当たる場合を除いて処罰されないとしている。
虚偽公文書作成罪(156条)は、公文書の作成権限を持つ公務員がその職務に関し内容虚偽の文書を作成する罪であり、主体が公務員に限られる身分犯である。公務員でない者が情を知らない公務員に虚偽の公文書を作成させた場合について判例は、刑法が無形偽造については公文書のみを処罰し、公文書の無形偽造についても156条のほかに、公務員に対し虚偽の申立てをして公正証書の原本や免状等に不実の記載をさせたときに限り157条の処罰規定を設け、しかも156条より著しく軽い刑で罰しているにすぎないことから、公務員でない者が虚偽公文書作成の間接正犯であるときは157条の場合のほかはこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。157条の類型以外を156条の間接正犯として重く処罰すれば、157条を設けた意味が失われるからである。村長名義の証明書は157条に列挙された公正証書の原本・免状・鑑札・旅券に当たらないので、甲は処罰されない。本肢は誤りである。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
1公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札若しくは旅券に不実の記載をさせ、又は電磁的記録文書等その他の電磁的記録であって、免状、鑑札若しくは旅券の全部若しくは一部として用いられるものに不実の記録をさせた者は、一年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。
3前二項の罪の未遂は、罰する。
正しい。公務員でない者が虚偽の申立てをして公務員に虚偽の公文書を作成させても、157条に当たる場合のほかは処罰されず、虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しない(最判昭27.12.25)。
虚偽公文書作成罪(156条)は、文書の作成権限を有する公務員が、その職務に関し、内容虚偽の文書を作成する罪である。公務員でない者が、情を知らない公務員を利用して虚偽の公文書を作成させた場合に、同罪の間接正犯が成立するかが問題になる。判例は、公務員でない者が虚偽の公文書作成の間接正犯であるときは、157条の場合のほかはこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。刑法は、公務員に虚偽の申立てをして、権利義務に関する公正証書の原本や免状、鑑札、旅券に不実の記載をさせた場合に限って157条を設け、しかも156条より著しく軽い刑で処罰している。157条に挙げられていない公文書について156条の間接正犯を認めると、重要な文書については軽く、それ以外の文書については重く処罰することになり、均衡を失するからである。課税証明書は157条に挙げられた文書ではないから、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
| 利用する者 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 公務員でない者が虚偽の申立てをして作成させる | 最判昭27.12.25 | 157条に当たる場合のほかは処罰されない |
| 起案を担当する公務員が、情を知らない作成権限者に署名させる | 最判昭32.10.4 | 虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する |
正しい。登記簿の磁気ディスクに不実の記録をさせれば電磁的公正証書原本不実記録罪が、これを閲覧可能な状態にすれば同供用罪が成立し、両罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯となる。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者を処罰する。登記簿の磁気ディスクはこの電磁的記録に当たるから、情を知らない登記官に虚偽の申立てをして不実の記録をさせた甲には、電磁的公正証書原本不実記録罪が成立する。判例は、公務員でない者が虚偽の公文書を作成させる間接正犯の形態は、157条に当たる場合のほかは処罰しない趣旨であるとしており(最判昭27.12.25)、甲の行為は同条によって処罰される。さらに、不実の記録がされた電磁的記録を閲覧可能な状態に置くことは、これを公正証書の原本としての用に供することであるから、158条1項の供用罪が成立する。不実の記録をさせるのは、それを原本として用いさせるためであり、両罪は、文書偽造罪と偽造文書行使罪の関係と同じく、罪質上通例として手段と結果の関係にある。したがって、両罪は牽連犯(54条1項後段)となる。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
誤り。違うのは「当該土地についての詐欺罪が成立する」の部分である。欺かれた登記官には土地を処分する権限が無いから、所有権移転登記を完了させても土地についての詐欺罪は成立せず、公正証書原本不実記載罪が成立するにとどまる。
詐欺罪(246条1項)は、欺かれた者が錯誤に基づいて財物を処分することによって成立するから、欺かれた者と財産上の被害者が異なる場合には、欺かれた者がその財物を処分し得る権能又は地位を持っていることが必要である。処分権限の無い者を欺いても、その者の行為によって被害者の財産が移転したとはいえないからである。大判大12.11.12は、土地所有者の印鑑を冒用して不動産売渡証書を偽造し、登記官に提出して自己への所有権移転登記を完了させた事案で、それだけでは詐欺罪は成立しないとした。登記官は申請に基づいて登記簿に記載する権限を持つだけで、他人の土地を処分する権能を持たず、所有者の意思に基づかない所有権移転登記は効力も無いから、登記官を欺いて登記を移させても、所有者の土地が処分されたことにならないのである。この場合、登記簿に不実の記載をさせた点で公正証書原本不実記載罪(157条1項)が成立し、偽造した書類について有印私文書偽造罪・同行使罪も成立する。本肢は、処分権限の無い登記官への欺罔で土地の詐欺罪が成立するとする点で判例の立場と食い違う。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する」の部分である。判例は、公務員でない者が情を知らない公務員を利用した場合は157条に当たるときを除き処罰しない趣旨とし、甲には公正証書原本不実記載罪が成立する(最判昭27.12.25)。
虚偽公文書作成罪(156条)の主体は、その公文書の作成権限を持つ公務員に限られる。判例は、刑法は無形偽造を公文書についてだけ処罰し、公文書の無形偽造についても156条のほかに、公務員に対し虚偽の申立てをして権利義務に関する公正証書の原本、免状、鑑札、旅券に不実の記載をさせたときに限って157条の処罰規定を設け、しかも156条より著しく軽く罰しているにすぎないことから、公務員でない者が虚偽公文書作成の間接正犯であるときは、157条の場合のほかこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。157条が軽い刑で限定的に処罰している行為を、156条の間接正犯として重く処罰することは、157条を置いた法の趣旨に反するからである。本肢の甲は公務員でなく、情を知らない公務員に虚偽の申立てをして登記簿に不実の記載をさせているので、公正証書原本不実記載罪(157条1項)が成立し、不実の記載がされた登記簿謄本の交付を受けた点も含めて同条の罪で処理される。虚偽公文書作成罪の間接正犯は成立しないので、本肢は誤りである。

公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法一五七条の場合の外これを処罰しない趣旨と解する
誤り。甲に電子計算機使用詐欺罪は成立しない。甲が書き換えさせた「同不動産の登記に関する電磁的記録」は財産権の得喪・変更を公証する記録にすぎず、「財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録」に当たらないので、成立するのは電磁的公正証書原本不実記録罪である。
246条の2にいう「財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録」とは、財産権の得喪・変更の事実を記録した電磁的記録であって、その作出や更新によって直接、事実上その財産権の得喪・変更が生じるものをいう。預金残高や電子マネー残高の記録がこれに当たる。これに対し、不動産登記の電磁的記録は、不動産に関する権利関係を公示し公証するために記録されているものであり、登記記録を書き換えても、それによって直接事実上その不動産の所有権が移転するわけではない。本肢の甲は、登記官乙に内容虚偽の申告をして、Aの所有権登記がある不動産について自己に所有権が移転した旨に登記の電磁的記録を書き換えさせているが、この記録は財産権の得喪・変更に係る電磁的記録に当たらないので、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。甲には、登記簿の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた電磁的公正証書原本不実記録罪(157条1項)が成立する。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「詐欺罪が成立するので,免状等不実記載罪は成立しない」の部分である。判例は、虚偽の申立てにより旅券に不実の記載をさせてその交付を受けた行為には157条2項の免状等不実記載罪だけが成立し、詐欺罪は成立しないとしている。
157条2項は、公務員に対し虚偽の申立てをして免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者を一年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。条文上は不実の記載をさせることだけが構成要件であるが、判例は、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人がその下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同項の構成要件は不実の記載をさせるだけで充足されると同時に、その性質上、不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するとし、同項の法定刑が詐欺罪に比べて軽いことも参酌して、虚偽の申請により旅券の交付を受ける行為には詐欺罪は成立せず、157条2項のみを適用すべきであるとした(最判昭27.12.25)。旅券の交付まで含めて軽い刑で処罰する趣旨の規定が置かれている以上、同じ行為を詐欺罪としても処罰すれば、157条2項を設けた意味が失われるからである。本肢は、詐欺罪が成立して免状等不実記載罪は成立しないとしており、成立する罪と成立しない罪が判例と逆である。本肢は誤りである。

免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含する
誤り。違うのは「甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する」の部分である。判例は、公務員でない者が情を知らない公務員を利用して虚偽の公文書を作成させても、157条に当たる場合を除いて処罰されないとしている。
虚偽公文書作成罪(156条)は、公文書の作成権限を持つ公務員がその職務に関し内容虚偽の文書を作成する罪であり、主体が公務員に限られる身分犯である。公務員でない者が情を知らない公務員に虚偽の公文書を作成させた場合について判例は、刑法が無形偽造については公文書のみを処罰し、公文書の無形偽造についても156条のほかに、公務員に対し虚偽の申立てをして公正証書の原本や免状等に不実の記載をさせたときに限り157条の処罰規定を設け、しかも156条より著しく軽い刑で罰しているにすぎないことから、公務員でない者が虚偽公文書作成の間接正犯であるときは157条の場合のほかはこれを処罰しない趣旨であるとした(最判昭27.12.25)。157条の類型以外を156条の間接正犯として重く処罰すれば、157条を設けた意味が失われるからである。村長名義の証明書は157条に列挙された公正証書の原本・免状・鑑札・旅券に当たらないので、甲は処罰されない。本肢は誤りである。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
正しい。婚姻の意思がないのに内容虚偽の婚姻届を提出し、情を知らない係員に戸籍の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせて事務処理に用いられる状態に置かせた甲には、電磁的公正証書原本不実記録罪(157条1項)と同供用罪(158条1項)が成立する。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、戸籍簿その他の権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又はその原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者を処罰する。公務員が作成する公文書の内容の真実性を、虚偽の申立てをする私人の側から守る規定であり、申立てを受ける公務員が情を知らないことが予定されている。戸籍は身分関係を公に証明する権利義務に関する公正証書の原本であり、電磁的記録で作られた戸籍はその原本として用いられる電磁的記録に当たる。甲は、乙に長期滞在資格を取得させるため、婚姻の意思がないのに甲乙が婚姻する旨の内容虚偽の婚姻届を作成して、情を知らない市役所の係員に提出しており、これが虚偽の申立てに当たる。係員はこれを受理して甲の戸籍の電磁的記録に婚姻した旨の不実の記録をしているので、不実記録罪が成立する。さらに、係員がその記録を市役所の事務処理に用いられる状態に置いたことにより、不実の記録をされた電磁的記録を原本としての用に供したものとして供用罪(158条1項)も成立し、両罪は牽連犯になる。したがって、本肢は正しい。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「不動産の占有が甲に移ったといえるから,甲に詐欺罪が成立する」の部分である。判例は、登記官を欺いて不実の移転登記をさせる行為は公正証書原本不実記載・同行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成しないとしている(大判大12.11.12)。
詐欺罪(246条1項)は、欺かれた者が錯誤に基づいて財物を処分することによって成立するので、欺かれた者と財物の被害者が異なる場合には、欺かれた者がその財物を処分できる権限や地位を持っていることが必要である。判例は、登記官を欺いて土地登記簿の原本に不実の記載をさせる行為は、公正証書原本不実記載及びその行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成するものではないとしている(大判大12.11.12)。登記官は登記をする権限を持つにすぎず乙の土地を処分する権限はないので、登記官の行為を乙の財産の処分行為とみることはできず、不実の登記によって甲が所有権や対抗力を取得するわけでもないからである。甲は、買い受けた事実がないのに登記申請書類を偽造して登記官に提出し、乙から甲への所有権移転登記をさせているが、これにより乙の土地の占有が甲に移ったとはいえず、乙に対する詐欺罪は成立しない。したがって、本肢は誤りである。甲には、公正証書原本不実記載罪(157条1項)と同供用罪(158条1項)、文書偽造の罪が問題になる。

登記官吏をして土地登記簿の原本に其の旨不実の記載を為さしむる行為は公正証書原本の不実記載及其の行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成するものに非ず
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないので」の部分である。判例は旅券の不正取得について詐欺罪の成立を否定するが、その理由は免状等不実記載罪が不実記載された旅券の交付を受けることまで含めて処罰しているからであって、旅券が財物に当たらないからではない。
判例は、係員に虚偽の申立てをして旅券の下付を受けた事案で、旅券の下付を受ける行為は246条の詐欺罪に問うべきではなく、157条2項の免状等不実記載罪だけを適用すべきであるとした(最判昭27.12.25)。157条2項は、公務員に虚偽の申立てをして免状・鑑札・旅券に不実の記載をさせる行為を処罰しており、不実記載された旅券の下付を受ける事実を当然に含んでいるから、この規定が詐欺罪に優先して適用されるという趣旨である。したがって、詐欺罪が成立しないという結論自体は判例と同じであるが、本肢はその理由を、旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないからだとしている点で誤っている。判例は旅券が財物に当たらないとはしておらず、国や地方公共団体の財物でも詐欺罪の客体になる。預金通帳や国民健康保険被保険者証を欺いて交付させた場合には、それ自体が財産的価値を持つ財物であるとして詐欺罪が成立するのと対比すれば、旅券の扱いが客体の性質ではなく法条の関係によることが分かる。本肢は誤りである。

旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、…刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする
1第百五十四条から前条までの文書等若しくは電磁的記録文書等を行使し、同条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し、又は同条第二項の電磁的記録を人の事務処理の用に供した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2前項の罪の未遂は、罰する。
誤り。違うのは「行使の目的で作成されたものでなければならない」の部分である。158条1項は客体を偽造・変造・虚偽作成された公文書等とするだけで、行使の目的で作成されたことを要件としていない。
158条1項は、154条から157条までの文書等を行使した者を、その文書等を偽造し、変造し、又は虚偽の文書等を作成した者と同一の刑に処すると定めている。客体は偽造、変造又は虚偽作成された公文書であれば足り、条文上、それが行使の目的で作成されたものであることは求められていない。行使の目的は、偽造罪(155条)や虚偽公文書作成罪(156条)が成立するための主観的要件であって、行使罪の客体を限定する要件ではない。行使罪は、偽造された公文書が真正なものとして他人に示されることで、公文書に対する公共の信用が害されることを防ぐ罪である。行使の目的なく作られた偽造文書であっても、後にこれを真正な文書として使えば、文書に対する公共の信用が害される点に変わりはない。したがって、作成の時点では行使の目的がなく、偽造罪が成立しない場合であっても、その文書を行使すれば行使罪は成立する。本肢は、偽造罪の要件を行使罪の客体の要件に持ち込んでいる点で誤っている。

第百五十四条から前条までの文書等若しくは電磁的記録文書等を行使し、同条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し、又は同条第二項の電磁的記録を人の事務処理の用に供した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
誤り。違うのは「行使の目的で作成されたものでなければならない」の部分である。158条1項は客体を偽造・変造・虚偽作成された公文書等とするだけで、行使の目的で作成されたことを要件としていない。
158条1項は、154条から157条までの文書等を行使した者を、その文書等を偽造し、変造し、又は虚偽の文書等を作成した者と同一の刑に処すると定めている。客体は偽造、変造又は虚偽作成された公文書であれば足り、条文上、それが行使の目的で作成されたものであることは求められていない。行使の目的は、偽造罪(155条)や虚偽公文書作成罪(156条)が成立するための主観的要件であって、行使罪の客体を限定する要件ではない。行使罪は、偽造された公文書が真正なものとして他人に示されることで、公文書に対する公共の信用が害されることを防ぐ罪である。行使の目的なく作られた偽造文書であっても、後にこれを真正な文書として使えば、文書に対する公共の信用が害される点に変わりはない。したがって、作成の時点では行使の目的がなく、偽造罪が成立しない場合であっても、その文書を行使すれば行使罪は成立する。本肢は、偽造罪の要件を行使罪の客体の要件に持ち込んでいる点で誤っている。

第百五十四条から前条までの文書等若しくは電磁的記録文書等を行使し、同条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し、又は同条第二項の電磁的記録を人の事務処理の用に供した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
正しい。登記簿の磁気ディスクに不実の記録をさせれば電磁的公正証書原本不実記録罪が、これを閲覧可能な状態にすれば同供用罪が成立し、両罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯となる。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者を処罰する。登記簿の磁気ディスクはこの電磁的記録に当たるから、情を知らない登記官に虚偽の申立てをして不実の記録をさせた甲には、電磁的公正証書原本不実記録罪が成立する。判例は、公務員でない者が虚偽の公文書を作成させる間接正犯の形態は、157条に当たる場合のほかは処罰しない趣旨であるとしており(最判昭27.12.25)、甲の行為は同条によって処罰される。さらに、不実の記録がされた電磁的記録を閲覧可能な状態に置くことは、これを公正証書の原本としての用に供することであるから、158条1項の供用罪が成立する。不実の記録をさせるのは、それを原本として用いさせるためであり、両罪は、文書偽造罪と偽造文書行使罪の関係と同じく、罪質上通例として手段と結果の関係にある。したがって、両罪は牽連犯(54条1項後段)となる。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
1行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
1 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
2 他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
2他人が押印し若しくは署名した権利、義務若しくは事実証明に関する文書等又は他人が電磁的記録印章等を使用して作成した権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様とする。
3前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書等又は電磁的記録文書等を偽造し、又は変造した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲に私文書偽造罪は成立しない」の部分である。交通事件原票中の供述書は、その性質上、名義人以外の者が作成することが法令上許されない文書であり、名義人の承諾を得ていても私文書偽造罪が成立する(最決昭56.4.8)。
私文書偽造は、名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることをいう。名義人が自己の名義で文書を作成することをあらかじめ承諾していた場合、文書に表示された意思は名義人に帰属するので、原則として偽造にならない。しかし、文書の性質上、名義人本人が作成することが求められる文書については、承諾があっても、名義人にその文書についての責任を負わせることができない。判例は、交通事件原票中の供述書は、その文書の性質上、作成名義人以外の者がこれを作成することは法令上許されないものであって、この供述書を他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立するとした(最決昭56.4.8)。この供述書は、違反をした者本人が違反の事実を認める内容の文書であり、違反者本人が自分の名で作成することに意味があるからである。甲はAの許諾を受けていても、供述書に「A」と署名した以上、甲に私文書偽造罪が成立する。

交通事件原票中の供述書は、その文書の性質上、作成名義人以外の者がこれを作成することは法令上許されないものであつて、右供述書を他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する
誤り。違うのは「甲に私文書偽造罪は成立しない」の部分である。偽造は名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることであり、内容が真実に合致していても、Aに無断でA名義の借用書を作成すれば私文書偽造罪が成立する。
判例は、私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとしている。文書に対する公共の信用は、その文書が名義人の意思を表示したものであるという点に向けられており、刑法は、私文書については、作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を作成する行為を処罰し、名義人が内容虚偽の文書を作成する行為は、医師の診断書など特に定めた場合を除いて処罰していない。保護されているのは、内容が真実であることではなく、文書の成立が真正であることである。甲がAに100万円を貸し付けていたことは事実であるが、借用書は借主であるAが借用の事実を認める意思を表示する文書であり、その名義人はAである。甲は、Aに無断でA名義の借用書を作成しているから、文書から読み取れる名義人Aと、実際に意思を表示した作成者甲とが一致しない。したがって、記載内容が真実に合致していても、甲に私文書偽造罪が成立する。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
誤り。違うのは「甲に私文書偽造罪は成立しない」の部分である。この文書の名義人は「国際運転免許証の発給権限を有する団体A」であり、発給権限のないAから委託を受けていても、名義人と作成者の人格の同一性を偽ったことになる(最決平15.10.6)。
名義人がだれであるかは、文書に記載された名称だけでなく、文書の性質によって決まる。判例は、正規の国際運転免許証に酷似する文書を、その発給権限のない民間団体の名義で作成した事案で、この文書の記載内容、性質などに照らすと、条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体により作成されているということが、まさにこの文書の社会的信用性を基礎づけるものといえるから、名義人は、条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体としてのその団体であるとした(最決平15.10.6)。そのうえで、その団体が実際には発給権限を与えられていない以上、団体から作成の委託を受けていたとしても、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽るものであるとして、私文書偽造罪の成立を認めている。Aには正規の国際運転免許証を発給する権限がなく、甲もそのことを知っていたのであるから、Aの委託を受けて作成したとしても、甲に私文書偽造罪が成立する。

本件文書の記載内容、性質などに照らすと、ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体により作成されているということが、正に本件文書の社会的信用性を基礎付けるものといえる
誤り。違うのは「甲に私文書偽造罪は成立しない」の部分である。弁護士の業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式・内容の文書では、名義人は弁護士である甲であり、資格のない甲とは別人格である(最決平5.10.5)。
自己の氏名を記載して文書を作成した場合、名義人と作成者は一致するのが通常であり、肩書を偽っただけでは原則として偽造にならない。しかし、名義人がだれであるかは文書の性質によって決まる。判例は、弁護士資格のない被告人が、実在する同姓同名の弁護士になりすまして、弁護士の肩書を付した報酬請求書などを作成した事案で、名義人として表示された者の氏名が被告人の氏名と同一であったとしても、各文書が弁護士としての業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式、内容のものである以上、表示された名義人は実在の弁護士であって、弁護士資格を有しない被告人とは別人格の者であるとし、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものとして、私文書偽造罪の成立を認めた(最決平5.10.5)。土地調査に関する書面も、弁護士が業務として作成したものと受け取られる文書であり、読む者は弁護士である甲が作成したと理解する。したがって、甲に私文書偽造罪が成立する。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 承諾を得た他人の名義で交通事件原票の供述書に署名 | 最決昭56.4.8 | 偽造に当たる |
| 定着した通称で再入国許可申請書を作成 | 最判昭59.2.17 | 偽造に当たる |
| 同姓同名の弁護士になりすまして弁護士名義の文書を作成 | 最決平5.10.5 | 偽造に当たる |
| 発給権限のない団体の名義で国際運転免許証に酷似する文書を作成 | 最決平15.10.6 | 偽造に当たる |
正しい。「権利又は義務に関する他人の文書」は、権利又は義務の存否・得喪・変更・消滅などを証明し得る文書で、他人の所有に属するものをいう。
私用文書等毀棄罪(259条)の客体は「権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録」である。「権利又は義務に関する」文書とは、権利又は義務の存否・得喪・変更・消滅などを証明し得る文書をいい、契約書や借用証書、領収書がその例である。私文書偽造罪(159条)の客体が「権利、義務又は事実証明に関する文書」とされているのと異なり、単に事実を証明するにとどまる文書は含まれず、その毀棄は器物損壊罪(261条)の問題になる。「他人の」文書とは、他人の所有に属する文書をいい、作成名義人が誰であるかは問わない。自分の名義で作成して相手方に差し入れた借用証書も、相手方の所有に属する以上は「他人の文書」であり、それを取り戻して破れば本罪が成立する。本罪の客体の定義として、本肢の記述は判例・通説の理解と一致している。

権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
| 罪名 | 客体 | 法定刑 | 親告罪 |
|---|---|---|---|
| 公用文書等毀棄罪(258条) | 公務所の用に供する文書・電磁的記録 | 3月以上7年以下の拘禁刑 | でない |
| 私用文書等毀棄罪(259条) | 権利又は義務に関する他人の文書・電磁的記録 | 5年以下の拘禁刑 | 親告罪 |
| 建造物等損壊罪(260条) | 他人の建造物・艦船 | 5年以下の拘禁刑 | でない |
| 器物損壊罪(261条) | 上の三つ以外の他人の物(動物・土地を含む) | 3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料 | 親告罪 |
| 境界損壊罪(262条の2) | 土地の境界 | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | でない |
| 信書隠匿罪(263条) | 他人の信書 | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料 | 親告罪 |
正しい。私文書偽造罪の行使の目的は構成要件要素であり、行使の目的のない乙の偽造は構成要件に該当しないので、【見解】によれば甲に私文書偽造罪の教唆犯は成立し得ない。
私文書偽造罪(159条1項)は、「行使の目的で」他人の印章又は署名を使用して権利、義務又は事実証明に関する文書を偽造した者を処罰する目的犯である。行使の目的は、偽造された文書を真正な文書として使用する目的であり、この目的が無ければ、文書に対する公共の信用を害する危険が生じないため、条文は行使の目的を犯罪成立の要件にしている。行使の目的は主観的な要素であるが、構成要件の要素として定められており、主観的違法要素と解されている。したがって、乙が他人名義の私文書を作成しても、行使の目的が無ければ、乙の行為は私文書偽造罪の構成要件に該当しない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするから、正犯である乙の行為が構成要件に該当しない以上、乙を唆した甲に私文書偽造罪の教唆犯は成立し得ない。甲自身に行使の目的があったとしても、教唆犯の成立は正犯の行為に従属するのであり、正犯の構成要件該当性を甲の目的で補うことはできない。本肢は正しい。

他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
正しい。私文書偽造罪の行使の目的は構成要件要素であり、行使の目的のない乙の偽造は構成要件に該当しないので、【見解】によれば甲に私文書偽造罪の教唆犯は成立し得ない。
私文書偽造罪(159条1項)は、「行使の目的で」他人の印章又は署名を使用して権利、義務又は事実証明に関する文書を偽造した者を処罰する目的犯である。行使の目的は、偽造された文書を真正な文書として使用する目的であり、この目的が無ければ、文書に対する公共の信用を害する危険が生じないため、条文は行使の目的を犯罪成立の要件にしている。行使の目的は主観的な要素であるが、構成要件の要素として定められており、主観的違法要素と解されている。したがって、乙が他人名義の私文書を作成しても、行使の目的が無ければ、乙の行為は私文書偽造罪の構成要件に該当しない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするから、正犯である乙の行為が構成要件に該当しない以上、乙を唆した甲に私文書偽造罪の教唆犯は成立し得ない。甲自身に行使の目的があったとしても、教唆犯の成立は正犯の行為に従属するのであり、正犯の構成要件該当性を甲の目的で補うことはできない。本肢は正しい。

他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
正しい。口座開設申込書の名義人はBの住所に住むAであるのに、現実に意思を表示した作成者は甲であり、名義人と作成者の人格の同一性を偽っているので、Aの印鑑を押した申込書の作成は有印私文書偽造罪に当たり、窓口への提出は同行使罪に当たる。
私文書偽造罪(159条1項)の偽造とは、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることをいう。判例は、文書から認識される名義人と現実に意思を表示した作成者が別人格であれば、名義人が実在しない架空人であっても、一般人が真正に作成された文書と誤信するおそれのある形式・外観を備えている限り偽造に当たるとしている。文書に対する公共の信用は、その文書が名義人の意思に基づいて作られたという点に向けられており、名義人が架空でも信用の侵害は同じだからである。口座開設申込書は預金契約の申込みという権利義務に関する私文書であり、そこから認識される名義人はBの住所に居住するAであるのに、記載して意思を表示したのは甲であるから、両者の人格の同一性に食い違いがある。甲はAの姓を刻した印鑑を押しているので、他人の印章を使用した「有印」に当たる。甲は乙と意思を通じ、銀行に提出する行使の目的で作成しているので有印私文書偽造罪の共同正犯が成立し、これを真正な文書として窓口係丙に提出した行為は偽造私文書行使罪(161条1項)の共同正犯に当たる。したがって、本肢は正しい。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
| 対象 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 運転免許証(写真の貼替え・氏名の書換え) | 有印公文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 本質的部分の改変で変造ではなく偽造(最決昭35.1.12) |
| 口座開設申込書(A名義・Aの印鑑) | 有印私文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 名義人Aと作成者甲の人格の同一性を偽る |
| 預金通帳・キャッシュカード | 詐欺罪の共同正犯 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 免許証・申込書・通帳・カード | 有価証券偽造罪は不成立 | 財産権を表章した証券ではない |
| 通帳・カードの自宅保管 | 盗品等保管罪は不成立 | 詐欺の本犯者には成立しない |
正しい。文書の性質を偽って名義人に署名押印させた場合、名義人は内容を認識せずに署名しているから文書の作成者は甲であり、名義人と作成者の人格の同一性を偽ったものとして、有印私文書偽造罪の間接正犯が成立する。
私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある(最決平11.12.20)。文書の作成者とは、自ら筆を執った者ではなく、その文書に表示された意思や観念を文書にさせた者をいうから、他人を利用して文書を作らせた場合でも、その他人が文書の内容を理解して自己の意思で作成したのであれば作成者はその他人であり、そうでなければ利用者が作成者である。判例は、署名者として表示される者を欺いて別の文書であると誤信させた上で署名押印させた場合には私文書偽造罪が成立するとし、他人を利用して文書を作成させる手段として欺く行為を用いても、成立するのは詐欺罪ではなく文書偽造罪であるとしている(大判明44.5.8)。乙は、売買契約書を入会申込書と誤信して売主欄に署名押印しており、建物を売り渡す意思を表示する認識が全くないから、売買契約書の作成者は乙ではなく、乙を道具として利用した甲である。甲は乙名義の売買契約書を乙に無断で作成したことになり、権利・義務に関する文書についての有印私文書偽造罪(159条1項)が間接正犯の形で成立する。本肢は正しい。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
誤り。違うのは「虚偽診断書等作成罪が成立するので,虚偽公文書作成罪は成立しない」の部分である。公務員である医師が職務上作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の記載をすれば虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を対象とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。
私文書については無形偽造を処罰しないのが原則であり、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合をその例外として処罰する規定である。この罪の客体は医師が私人の立場で作成する診断書、すなわち私文書である。これに対し、公務員がその職務に関して作成する文書は公文書であり、内容虚偽の公文書を作成すれば156条の虚偽公文書作成罪が成立する。市立病院に勤務する公務員である甲が、同病院の医師として患者の診断書を作成することは、公務員がその職務に関して文書を作成することにほかならず、その診断書は公文書である。したがって、これに虚偽の病名を記載した甲には虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を客体とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。判例も、刑務所の医務課長が内容虚偽の診断書を作成した事案で、虚偽公文書作成罪に当たることを前提とした判断をしている(最判昭23.10.23)。公務員である医師の虚偽診断書を軽い160条で処理すれば、公文書に対する公共の信用を厚く保護する156条の趣旨に反する。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲には無印私文書偽造罪が成立する」の部分である。159条1項は他人の印章又は署名のいずれかを使用した偽造を有印私文書偽造罪としており、押印がなくても乙の氏名が記載されていれば他人の署名を使用した偽造として有印私文書偽造罪が成立する。
私文書偽造罪は、他人の印章等、すなわち印章又は署名を使用して権利・義務又は事実証明に関する文書等を偽造した場合(159条1項1号)と、印章も署名も使用せずに偽造した場合(同条3項)とで刑が大きく異なり、前者が有印私文書偽造罪、後者が無印私文書偽造罪である。有印か無印かを分けるのは、文書に他人の印章又は署名が表示されているかどうかであり、条文は印章と署名のいずれかを使用すれば足りる形で定めているから、両方がそろっている必要はなく、どちらか一方があれば有印となる。判例は、ここでいう署名について、本人の自署に限らず、代筆や印刷による記名も含むとしている。甲が作成した金銭借用証には債務者として乙の氏名が記載されており、乙の署名を使用した文書である。押印がなくても、乙の署名のある権利・義務に関する文書を行使の目的で勝手に作成した以上、甲には有印私文書偽造罪が成立する。印章も署名もない場合に限って無印私文書偽造罪になるのであるから、本肢は誤りである。

他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
正しい。判例は、私文書偽造の本質は名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとし、架空の氏名で作成した履歴書は、本人の顔写真を貼り就職して勤務する意思があっても、名義人が作成者とは別人格の者であるから有印私文書偽造罪に当たるとしている。
私文書偽造罪の偽造とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成すること、すなわち文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることをいう。履歴書は社会生活に交渉を有する事項を証明する事実証明に関する文書に当たる。判例は、本名を隠して就職するために架空の氏名の履歴書などを作成した事案で、私文書偽造の本質は文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとした上で、これらの文書の性質、機能等に照らすと、たとえ被告人の顔写真が貼り付けられ、あるいは被告人がこれらの文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、文書に表示された名義人は被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたとして、有印私文書偽造罪の成立を認めた(最決平11.12.20)。甲の履歴書も、名義人は「乙」という架空の人物であり、作成者の甲とは別人格であるから、勤務する意思があっても有印私文書偽造罪が成立する。本肢は正しい。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
誤り。違うのは「文書の内容が真実であるから,甲には有印私文書偽造罪は成立しない」の部分である。私文書偽造罪の偽造は名義人と作成者の人格の同一性を偽ることであり、乙に無断で乙名義の借用証を作成すれば、内容が真実でも有印私文書偽造罪が成立する。
判例は、私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとしている(最決平11.12.20)。159条が処罰する偽造は、作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を作る有形偽造であり、内容が虚偽かどうかは問わない。文書に対する公共の信用は、その文書が名義人の意思に基づいて作られたという点に向けられており、内容が真実であっても、名義人が作っていない文書を名義人のものとして流通させれば、その信用は害されるからである。甲は、乙に100万円を貸したのに借用証を受け取れなかったため、証拠として使う目的で、乙に無断で乙の氏名を記載して乙名義の100万円の借用証を作成している。借用証は権利義務に関する文書であり、名義人は乙、作成者は甲で、人格の同一性が偽られている。乙の署名を甲が記載したので、他人の署名を使用した有印の偽造に当たる。貸金が実在して内容が真実であっても、乙は借用証の作成に関与しておらず、偽造の成立は妨げられない。したがって、甲には有印私文書偽造罪が成立し、本肢は誤りである。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「甲に私文書偽造罪は成立しない」の部分である。偽造は名義人と作成者との間の人格の同一性を偽ることであり、内容が真実に合致していても、Aに無断でA名義の借用書を作成すれば私文書偽造罪が成立する。
判例は、私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとしている。文書に対する公共の信用は、その文書が名義人の意思を表示したものであるという点に向けられており、刑法は、私文書については、作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を作成する行為を処罰し、名義人が内容虚偽の文書を作成する行為は、医師の診断書など特に定めた場合を除いて処罰していない。保護されているのは、内容が真実であることではなく、文書の成立が真正であることである。甲がAに100万円を貸し付けていたことは事実であるが、借用書は借主であるAが借用の事実を認める意思を表示する文書であり、その名義人はAである。甲は、Aに無断でA名義の借用書を作成しているから、文書から読み取れる名義人Aと、実際に意思を表示した作成者甲とが一致しない。したがって、記載内容が真実に合致していても、甲に私文書偽造罪が成立する。

私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある
正しい。公務員である医師が職務として作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の病名を記載すれば、虚偽診断書等作成罪ではなく虚偽公文書作成罪が成立する。
156条は、公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成することを処罰する。市立病院に勤務する医師は公務員であり、その病院の患者について作成する診断書は、公務員が職務上作成する文書であるから公文書に当たる。そこに虚偽の病名を記載する行為は、作成権限のある公務員による内容虚偽の公文書の作成であり、虚偽公文書作成罪が成立する。これに対し、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合を処罰する規定である。私文書については内容を偽る行為が原則として処罰されないなかで、公務所に提出される医師の診断書の証明力を特に保護するために例外として置かれたものであり、公務員でない医師が作成する私文書としての診断書を対象としている。本肢の診断書は裁判所に提出するためのものであるが、公文書である以上、法定刑の重い156条が適用され、160条は適用されない。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
正しい。公務員である医師が職務として作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の病名を記載すれば、虚偽診断書等作成罪ではなく虚偽公文書作成罪が成立する。
156条は、公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成することを処罰する。市立病院に勤務する医師は公務員であり、その病院の患者について作成する診断書は、公務員が職務上作成する文書であるから公文書に当たる。そこに虚偽の病名を記載する行為は、作成権限のある公務員による内容虚偽の公文書の作成であり、虚偽公文書作成罪が成立する。これに対し、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合を処罰する規定である。私文書については内容を偽る行為が原則として処罰されないなかで、公務所に提出される医師の診断書の証明力を特に保護するために例外として置かれたものであり、公務員でない医師が作成する私文書としての診断書を対象としている。本肢の診断書は裁判所に提出するためのものであるが、公文書である以上、法定刑の重い156条が適用され、160条は適用されない。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する」の部分である。医師でない甲が医師丙名義で診断書を作成した行為は偽造であって虚偽診断書作成罪ではなく、医師の身分のない乙にも同罪の共同正犯は成立しない。
虚偽診断書等作成罪(160条)は、医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をする罪であり、主体が医師に限られる身分犯である。しかも県立病院の医師が職務として作成する診断書は公文書であるから、丙自身が内容虚偽の診断書を作成していれば虚偽公文書作成罪が成立する場面である。本肢で現実に行われたのは、医師でない甲が、丙に断られた後に自ら県立病院医師丙名義で診断書を作成した行為である。これは作成権限のない者が公務員の名義を冒用したものであり、内容を偽る無形偽造ではなく名義を偽る有形偽造として公文書偽造罪に当たる。甲に虚偽診断書作成罪が成立しない以上、共謀した乙に同罪の共同正犯が成立する余地はない。判例は、公務員に虚偽の公文書を作成させることを共謀した者の一人が他の共謀者に無断で第三者に公文書の偽造を教唆した事案で、両罪は構成要件を異にするが罪質を同じくし法定刑も同じであるとして公文書偽造教唆の故意を阻却しないとしており(最判昭23.10.23)、この趣旨からすれば乙に成立し得るのは公文書偽造罪の共同正犯である。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「虚偽診断書等作成罪が成立するので,虚偽公文書作成罪は成立しない」の部分である。公務員である医師が職務上作成する診断書は公文書であり、これに虚偽の記載をすれば虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を対象とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。
私文書については無形偽造を処罰しないのが原則であり、160条の虚偽診断書等作成罪は、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をした場合をその例外として処罰する規定である。この罪の客体は医師が私人の立場で作成する診断書、すなわち私文書である。これに対し、公務員がその職務に関して作成する文書は公文書であり、内容虚偽の公文書を作成すれば156条の虚偽公文書作成罪が成立する。市立病院に勤務する公務員である甲が、同病院の医師として患者の診断書を作成することは、公務員がその職務に関して文書を作成することにほかならず、その診断書は公文書である。したがって、これに虚偽の病名を記載した甲には虚偽公文書作成罪が成立し、私文書を客体とする虚偽診断書等作成罪は成立しない。判例も、刑務所の医務課長が内容虚偽の診断書を作成した事案で、虚偽公文書作成罪に当たることを前提とした判断をしている(最判昭23.10.23)。公務員である医師の虚偽診断書を軽い160条で処理すれば、公文書に対する公共の信用を厚く保護する156条の趣旨に反する。本肢は誤りである。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「保険会社に提出する診断書に虚偽の記載をしたのであるから,甲には虚偽診断書作成罪が成立する」の部分である。虚偽診断書等作成罪(160条)の客体は医師が公務所に提出すべき診断書に限られ、保険会社に提出する診断書に虚偽の記載をしても同罪は成立しない。
私文書の無形偽造、すなわち作成権限のある者が内容の虚偽な文書を作る行為は、原則として処罰されず、160条の虚偽診断書等作成罪が例外として置かれているにすぎない。160条は、医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときに成立すると定めており、客体を公務所に提出すべきものに限定している。診断書は医師の専門的な判断を示す文書として高い信用を持つが、刑法が内容の虚偽を処罰してまで守るのは、裁判所や警察署などの公務所に提出されて公の判断の基礎になる場合に限ると割り切ったものである。甲は医師であり、乙に依頼されて、乙が肺結核に罹患した事実がないのに罹患している旨の虚偽の診断書を作成しているが、その診断書は乙が保険会社に提出するものであって、公務所に提出すべきものではない。したがって、160条の客体に当たらず、虚偽診断書作成罪は成立しない。本肢は誤りである。甲が公務員である医師で、職務として作成する診断書に虚偽の記載をした場合には、虚偽公文書作成罪(156条)が成立する点と区別される。

医師が、公務所に提出すべき診断書、検案書若しくは死亡証書に虚偽の記載をし、又は公務所に提出すべき電磁的記録文書等であって、診断書、検案書若しくは死亡証書の全部若しくは一部として用いられるものに虚偽の記録をしたときは、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
1前二条の文書等又は電磁的記録文書等を行使した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処する。
2前項の罪の未遂は、罰する。
誤り。違うのは「詐欺罪の一罪のみが成立する」の部分である。偽造された払戻請求書を郵便局員に提出する行為は偽造私文書行使罪に当たり、これを手段としてされた詐欺罪とは牽連犯となるから、詐欺罪一罪にはならない。
偽造された郵便貯金払戻請求書は、権利・義務に関する私文書であり、これを真正な文書として郵便局員に提出する行為は、偽造私文書行使罪(161条1項)の構成要件に該当する。甲は、この行使によって郵便局員乙を正当な払戻請求であると誤信させ、その錯誤に基づいて貯金の払戻しを受けており、詐欺罪(246条1項)も成立する。偽造文書の行使は詐欺の欺く行為そのものとして用いられており、両罪は犯罪の手段と結果の関係にあるから、54条1項後段の牽連犯として、最も重い刑により処断される。偽造文書を行使して財物をだまし取る行為について、判例は一貫して偽造文書行使罪と詐欺罪の牽連犯としている。偽造通貨行使罪に詐欺罪が吸収されるのと異なり、偽造文書の行使は通常詐欺を伴うとはいえず、文書に対する公共の信用という詐欺罪とは別の法益を侵害しているから、詐欺罪に吸収されることはない。したがって、詐欺罪の一罪のみが成立するとする本肢は誤りである。なお、甲が払戻請求書を自ら偽造していれば有印私文書偽造罪も成立し、三罪が牽連犯となる。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
1人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
4前項の罪の未遂は、罰する。
誤り。違うのは「支払用カード電磁的記録不正作出罪が成立する」の部分である。同罪の客体は支払用のカードを構成する電磁的記録に限られ、決済代行業者のコンピュータ内に作出された電子マネー購入の記録は客体に当たらない。
支払用カード電磁的記録不正作出罪(163条の2第1項)は、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、「クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するもの」を不正に作った者を処罰する。条文は、客体をカードという物を構成する電磁的記録に限っており、カードの磁気ストライプやICチップに記録された情報を不正に作る行為を対象としている。甲が作り出したのは、クレジットカード決済代行業者のコンピュータ内に記録された、Aが電子マネー10万円分を購入した旨の電磁的記録であり、カードを構成するものではない。インターネット上の決済手段である電子マネーは、カードという物の形をとっていないので、同罪の客体に当たらない。したがって、甲に支払用カード電磁的記録不正作出罪は成立しない。この行為については、人の事務処理を誤らせる目的で権利義務に関する電磁的記録を不正に作ったものとして、私電磁的記録不正作出罪(161条の2第1項)や、電子計算機使用詐欺罪(246条の2)の成否が問題になる。

人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する」の部分である。157条は情を知らない公務員に虚偽の申立てをして不実の記録をさせる罪であり、情を知る登記官に依頼して記録させた甲には同罪は成立しない。
157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿などの権利・義務に関する公正証書の原本やその原本として用いられる電磁的記録に不実の記載・記録をさせた者を処罰する。公務員でない者が情を知らない公務員を利用して内容虚偽の公文書を作らせる行為は、本来は虚偽公文書作成罪の間接正犯として処罰できるかが問題になるところ、157条は、登記簿や戸籍簿といった特に重要な文書について、この間接正犯の形態を虚偽公文書作成罪より軽い独立の罪として定めたものである。したがって、157条が予定しているのは情を知らない公務員への虚偽の申立てであり、公務員が情を知ったうえで不実の記録をする場合は、申立てをした者が公務員を道具として利用したとはいえず、同条の罪にはならない。本肢の甲は、担当登記官である乙に改ざんの情を打ち明けて依頼し、乙が登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしている。乙の行為は、公務員が職務上作成すべき電磁的記録を不正に作る公電磁的記録不正作出罪とその供用罪に当たり、甲はその共同正犯となる。157条の罪の共同正犯とする本肢は誤りである。

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
誤り。違うのは「データを入力する権限を有しているので,甲には私電磁的記録不正作出罪は成立しない」の部分である。「不正に作った」とはシステムの設置・運営主体の意図に反して権限なく又は権限を逸脱して記録を作ることをいい、入力権限者が虚偽のデータを入力する行為もこれに当たる。
私電磁的記録不正作出罪(161条の2第1項)は、人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利・義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合に成立する。電磁的記録には文書のような名義人の表示がないため、有形偽造と無形偽造の区別を持ち込まず、「不正に作った」という要件で処罰範囲を画している。不正に作るとは、電磁的記録を用いるシステムを設置・運営する主体の意図に反して、権限がないのに、又は与えられた権限を逸脱して記録を作り出すことをいう。会社の経理担当者としてデータを入力する権限を与えられている者であっても、その権限は会社の意図に沿って正しいデータを入力するために与えられたものであり、自己の横領を隠すために虚偽のデータを入力することは、会社が許した権限の範囲を逸脱している。甲は、会計帳簿ファイルに虚偽のデータを入力して記憶させており、会社の事務処理を誤らせる目的で権限を逸脱して電磁的記録を作ったものとして、私電磁的記録不正作出罪が成立する。入力権限があることは、虚偽のデータを作る権限まで意味しない。本肢は誤りである。

人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。