第230条過去問 16
1公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
この条文の過去問 16問
摘示した事実が真実であった場合、名誉毀損罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。刑法230条1項は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定めており、摘示事実が真実であるか虚偽であるかを問わず構成要件該当性が認められる。本罪の保護法益は、人に対する社会的評価という外部的名誉であり、真実の事実であっても摘示によって社会的評価が低下し得る以上、真実性は構成要件該当性を左右しない。真実の摘示が不可罰となるのは、表現の自由との調整規定である230条の2による場合に限られる。同条1項は、①摘示事実が公共の利害に関する事実であること、②その目的が専ら公益を図ることにあったこと、③真実であることの証明があったこと、という三要件をすべて充たす場合にはじめて「これを罰しない」としており、真実性の証明だけで不処罰となるわけではない。したがって、真実であれば名誉毀損罪が成立することはないとする本肢は誤りである。なお、真実性の証明に失敗した場合でも、確実な資料・根拠に照らして真実と誤信したことに相当の理由があるときは故意が阻却されるとするのが判例である(最大判昭和44年6月25日・夕刊和歌山時事事件)。
乙がインターネットの掲示板に書き込んだ行為について、乙が摘示した事実が真実であったとしても、乙に名誉毀損罪が成立する。
解説
本肢は誤り。名誉毀損罪(刑法230条1項)は、公然と事実を摘示して人の外部的名誉を害する危険を生じさせることで成立し、摘示事実の真偽を問わないのが原則である。真実であることは、230条の2の要件(公共の利害に関する事実に係り、目的が専ら公益を図るものであり、真実であることの証明があること)を満たしてはじめて処罰を阻却するにすぎない。
もっとも、死者の名誉に対する罪については、230条2項が「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」と定めており、虚偽の事実の摘示であることが構成要件要素とされている。歴史的事実の探究や自由な言論を過度に制約しないための特則であり、摘示事実が真実であれば、そもそも同罪の構成要件に該当しない。
本事例において、乙は、Aが死亡したことを知った上で、不特定多数の者が閲覧可能なインターネット掲示板に、Aに死亡事故の前科がある旨を書き込んでいる。公然性及び死者の社会的評価を低下させる事実の摘示は認められるが、乙はかつてA本人からその前科を聞いており、摘示された事実は真実である。したがって「虚偽の事実」の摘示に当たらず、乙に死者に対する名誉毀損罪は成立しない。真実であっても名誉毀損罪が成立するとする本肢は誤りである。
乙がインターネットの掲示板に書き込んだ行為について、乙が摘示した事実が真実であったとしても、乙に名誉毀損罪が成立する。
解説
本肢は誤り。乙は、インターネットの掲示板に書き込んで不特定多数の者が閲覧できる状態を作出しており、不特定又は多数人が認識し得る状態という意味での「公然」性は満たし、また前科という具体的事実の摘示もある。しかし、名誉毀損の客体とされたAは既に死亡しており、死者に対する名誉毀損については刑法230条2項が「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」と定めている。
ここで重要なのは、摘示事実の虚偽性が死者に対する名誉毀損罪の構成要件要素とされている点である。死者については、なお遺族の敬愛追慕の情や歴史的評価を保護する必要がある一方、真実に基づく歴史的・社会的な評価活動まで処罰対象とすべきではないため、虚偽の事実を摘示した場合に限って可罰性が認められている。生存者に対する名誉毀損(230条1項)では、摘示事実が真実であっても構成要件該当性は失われず、公共の利害に関する事実であり、目的が専ら公益を図ることにあり、かつ真実性の証明があった場合に初めて230条の2により不可罰となるのと対比して押さえておくべきである。
本事例において、Aには実際に死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙が摘示した事実は真実である。そうすると、虚偽の事実の摘示という230条2項の要件を欠くから、乙に名誉毀損罪は成立しない。真実であっても同罪が成立するとする本肢は誤りである。なお、死者に対する名誉毀損罪も親告罪であり、告訴権者は死者の親族又は子孫である(232条2項)。
ある事実を基礎とする意見を表明する行為が、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合であっても、意見の前提となる事実がその重要な部分について真実であることの証明がなければ、当該表現行為は、名誉毀損と評価されることとなる。
解説
本肢は誤り。事実を摘示しての名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合には、摘示された事実が重要な部分について真実であることの証明があれば、違法性がなく不法行為は成立せず、また真実であることの証明がないときであっても、行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときは、故意又は過失が否定され不法行為は成立しないとするのが判例である(最判昭和41年6月23日)。刑事上も同様の調整がされており、刑法230条の2第1項は、公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合に真実性の証明があれば罰しない旨を定めるところ、判例は、真実性の証明がないときであっても、確実な資料、根拠に照らして真実と誤信したことに相当の理由があるときは犯罪の故意を欠き、名誉毀損罪は成立しないとしている(最大判昭和44年6月25日。夕刊和歌山時事事件)。そして、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損についても、判例は早くから、公共の利害に関する事項について自由に批判・論評を行うことは表現の自由の行使として尊重されるべきであるとして、目的が専ら公益を図るものであり前提事実が主要な点で真実であるときは、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱しない限り違法性を欠くとしていた(最判平成元年12月21日。長崎教師批判ビラ事件)。その後の判例は、事実摘示型と同様の枠組みを意見・論評型にも及ぼし、公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合において、意見・論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があるときは、意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り違法性を欠くとし、さらに前提事実の真実性の証明がない場合であっても、行為者においてこれを真実と信ずるにつき相当の理由があるときは故意又は過失が否定されるとしている(最判平成9年9月9日)。したがって、真実性の証明がないことから直ちに当該表現行為が名誉毀損と評価されることになるわけではなく、相当の理由の有無がなお問題となる。本肢はこの相当性の法理を欠落させ、真実性の証明の有無のみで結論が決まるかのように述べている点で判例の趣旨に反する。よって本肢は誤りである。
甲が、Aの上記行動を同級生2名に告げた行為は、特定かつ少数の者にAの名誉を毀損する事実を摘示したにすぎないことから、名誉毀損罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。名誉毀損罪(230条1項)は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ことを構成要件とし、公然性が要求される。ここにいう「公然」とは、不特定又は多数の者が認識し得る状態をいうと解されている。もっとも判例は、事実摘示の直接の相手方が特定かつ少数であっても、その者を通じて不特定又は多数の者に事実が伝わる可能性が認められる限り、公然性の要件を満たすとする(いわゆる伝播性の理論。最判昭和34年5月7日)。同判例は、「不特定又は多数人の視聴に達せしめ得る状態」で摘示すれば足りるとした。
本事例において、甲は同級生2名という特定かつ少数の者に対してAの行動を告げたにすぎないが、特に口止めもしておらず、現に同人らを介してクラス全生徒30名の知るところとなっている。伝播可能性は優に肯定され、判例の立場からは公然性が認められる。
また、摘示された飲酒喫煙や非行グループとの交際という事実は、Aの社会的評価を低下させるに足りる「人の名誉を毀損すべき事実」であり、230条1項後段が「その事実の有無にかかわらず」と定めるとおり、真実であることは犯罪の成否を左右しない。私生活上の非行にすぎず公共の利害に関する事実とはいえないから、230条の2による免責も問題とならない。
したがって、特定かつ少数の者への摘示であることのみを理由に名誉毀損罪の成立を全面的に否定する本肢は、判例の立場と整合せず誤りである。
虚偽告訴の罪で起訴された者が、人違いで告訴したと気付きながら、公判廷において、公然と虚偽の事実を摘示して被告訴人の名誉を毀損した場合、被告人としての防御権の行使に当たるから、名誉毀損罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。刑事被告人には防御権が保障されており、その正当な行使は刑法35条の正当行為として違法性が阻却され得る。しかし防御権の行使も無制限ではなく、その範囲を逸脱すれば正当化されない。最判昭和27年3月7日は、詐欺の告訴が人違いであったことに気付きながら、公判廷において真意に反して欺罔された旨の主張をし、公然と虚偽の事実を摘示して被告訴人の名誉を毀損した事案について、これは被告人としての防御権の範囲を逸脱した防御権の濫用と認めるべきであるとして、名誉毀損罪の成立を認めた原判決を正当とした。人違いであると分かっている以上、その主張は自己の防御に必要な範囲を超えており、専ら他人の社会的評価を害する虚偽事実の摘示にほかならないからである。したがって、公判廷における被告人の弁解という形をとっていても名誉毀損罪(230条)が成立し得るのであり、「成立することはない」と言い切る本肢は判例に反する。なお、当該事案は被告訴人が既に死亡していた事案であり、死者の名誉毀損(230条2項)として虚偽の事実の摘示が要件となる点も併せて押さえておきたい。
この【見解】からは、刑法第231条の「事実を摘示しなくても」という文言は、事実の摘示の有無にかかわらず侮辱罪が成立し得るという趣旨で解釈される。
解説
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甲が、Aの上記行動を同級生2名に告げた行為は、特定かつ少数の者にAの名誉を毀損する事実を摘示したにすぎないことから、名誉毀損罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。名誉毀損罪(230条1項)は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ことを構成要件とし、公然性が要求される。ここにいう「公然」とは、不特定又は多数の者が認識し得る状態をいうと解されている。もっとも判例は、事実摘示の直接の相手方が特定かつ少数であっても、その者を通じて不特定又は多数の者に事実が伝わる可能性が認められる限り、公然性の要件を満たすとする(いわゆる伝播性の理論。最判昭和34年5月7日)。同判例は、「不特定又は多数人の視聴に達せしめ得る状態」で摘示すれば足りるとした。
本事例において、甲は同級生2名という特定かつ少数の者に対してAの行動を告げたにすぎないが、特に口止めもしておらず、現に同人らを介してクラス全生徒30名の知るところとなっている。伝播可能性は優に肯定され、判例の立場からは公然性が認められる。
また、摘示された飲酒喫煙や非行グループとの交際という事実は、Aの社会的評価を低下させるに足りる「人の名誉を毀損すべき事実」であり、230条1項後段が「その事実の有無にかかわらず」と定めるとおり、真実であることは犯罪の成否を左右しない。私生活上の非行にすぎず公共の利害に関する事実とはいえないから、230条の2による免責も問題とならない。
したがって、特定かつ少数の者への摘示であることのみを理由に名誉毀損罪の成立を全面的に否定する本肢は、判例の立場と整合せず誤りである。
死者であっても,その外部的名誉を保護すべきことに変わりはないので,死者の名誉を毀損する事実が摘示された場合も,その事実の真偽にかかわらず,名誉毀損罪が成立し得る。
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死者であっても,その外部的名誉を保護すべきことに変わりはないので,死者の名誉を毀損する事実が摘示された場合も,その事実の真偽にかかわらず,名誉毀損罪が成立し得る。
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事実の摘示が「公然」といえるためには,摘示内容を不特定かつ多数人が認識し得る状態にあったことが必要であるから,不特定ではあるが,少数人しか認識し得ない状態にとどまる場合には,名誉毀損罪は成立しない。
解説
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死者の名誉を毀損したとしても,虚偽の事実を摘示した場合でなければ処罰されないから,摘示した事実が真実である場合には,名誉毀損罪として処罰されない。
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事実の摘示が「公然」といえるためには,摘示内容を不特定かつ多数人が認識し得る状態にあったことが必要であるから,不特定ではあるが,少数人しか認識し得ない状態にとどまる場合には,名誉毀損罪は成立しない。
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死者の名誉を毀損したとしても,虚偽の事実を摘示した場合でなければ処罰されないから,摘示した事実が真実である場合には,名誉毀損罪として処罰されない。
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この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命じた家庭裁判所の秘密であると考えている。
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教授甲は,数百人が出席している講演会で,日頃意見の対立するV教授がX県出身であったことから,誰のことを言っているかは分からないようにしつつ,「X県人は頭が悪い。」と述べた。甲には名誉毀損罪が成立する。
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