第204条過去問 14
人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
この条文の過去問 14問
医師ではない甲は、女性Aに対し、医学的に必要とされる措置を採らず、身体に重大な傷害を生じさせかねない危険な方法で豊胸手術を行った。Aが豊胸手術に伴う身体傷害についてあらかじめ承諾していた場合、甲に傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。人の生理的機能を害する行為は傷害(204条)に当たり、医学的に必要とされる措置を採らず身体に重大な傷害を生じさせかねない危険な方法で豊胸手術を行う行為は、傷害罪の構成要件に該当する。問題となるのは、被害者の承諾による違法性阻却の可否である。判例は、被害者が身体傷害を承諾していた場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけで決まるのではなく、承諾を得た動機・目的、身体傷害の手段・方法、損傷の部位・程度など諸般の事情に照らして判断すべきであるとする(最決昭和55年11月13日。保険金を詐取する目的で故意に自動車衝突事故を起こし同乗者に傷害を負わせた事案につき、承諾があっても違法性は阻却されないとした)。この枠組みによれば、医師の資格を有しない者が、医学的に要求される衛生管理や適応判断といった措置を欠いたまま、重大な傷害を招きかねない危険な方法で施術する行為は、その手段・方法自体が社会通念上許容される範囲・程度を超え、社会的相当性を欠くから、被害者の事前の承諾があっても違法性は阻却されない(無資格者による豊胸手術につき同旨、東京高判平成9年8月4日)。したがって甲には傷害罪が成立し得るのであり、「成立することはない」とする本肢は誤りである。
相手方に暴行を加えて負傷させた者が、傷害結果が発生することについて認識を欠いている場合には、傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。刑法204条は「人の身体を傷害した者」と規定し、208条は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に暴行罪が成立する旨を定める。この規定の仕方から、暴行を加えて傷害の結果を生じさせた場合には傷害罪が成立するのであって、傷害罪は、当初から傷害の故意で結果を生じさせた場合のみならず、暴行の故意しかない者が傷害結果を惹起した場合をも含む、暴行罪の結果的加重犯としての性格を併有すると解されている。判例も、暴行の故意があれば傷害の結果についての認識がなくても傷害罪が成立するとしている(最判昭和25年11月9日刑集4巻11号2239頁)。結果的加重犯の重い結果については故意を要しないからであり、責任主義との関係では基本行為である暴行と傷害結果との間の因果関係(および少なくとも重い結果の予見可能性)が問題となるにとどまる。したがって、傷害結果の認識を欠く場合には傷害罪が成立しないとする本肢の記述は誤りである。なお、暴行によらずに傷害結果を生じさせる場合には、傷害の故意が必要である。
相手方に暴行を加えて負傷させた者が、傷害結果が発生することについて認識を欠いている場合には、傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。傷害罪(刑法204条)は、傷害の故意をもって傷害結果を生じさせた場合だけでなく、暴行の故意で暴行を加えた結果として傷害結果が発生した場合にも成立すると解されている。すなわち、208条が「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは」と規定し、暴行罪を傷害結果が生じなかった場合の補充的類型として位置付けていることから、暴行の故意で暴行に及び傷害結果が生じた以上は204条が適用されることになり、傷害罪は暴行罪の結果的加重犯としての性格を併有する。判例も、傷害罪の成立には傷害結果についての認識(傷害の故意)を要せず、暴行の故意があれば足りるとしている(最判昭和25年11月9日刑集4巻11号2239頁)。したがって、相手方に暴行を加えて負傷させた者に傷害結果発生の認識がなくとも、暴行についての故意(38条1項)が認められる限り傷害罪が成立するのであって、本肢の記述は誤りである。もっとも、暴行の故意すら欠く場合には傷害罪は成立せず、過失傷害罪(209条)等の成否が問題となるにとどまる。また、記述ウのように暴行によらない無形的方法で生理的機能の障害を生じさせる場合には、故意の対象となる暴行が介在しないため、傷害の故意が必要である。なお、現行法上、傷害罪の法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、暴行罪の法定刑は2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料である。
丙がBを殴って負傷させた行為には、公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。
解説
本肢は正しい。丙がBを殴って全治2週間の打撲傷を負わせた行為には、公務執行妨害罪(95条1項)と傷害罪(204条)が成立し、両罪は観念的競合(54条1項前段)となる。
まず、Bは制服を着用して職務質問を行っていた警察官であり、職務質問は警職法2条1項に基づく適法な職務の執行である。丙がこれに対して手拳で殴打した行為は、公務員が「職務を執行するに当たり」加えられた暴行に当たるから、公務執行妨害罪が成立する。同罪は公務の円滑な遂行という国家的法益を保護するものであり、現実に職務執行が妨害されたことは必要でない(抽象的危険犯)。
他方、公務執行妨害罪の暴行はそれ自体としては公務員の身体に向けられた有形力の行使を当然に予定しているが、同罪の法定刑は傷害の結果までは織り込んでいない。そこで暴行により公務員に傷害の結果が生じた場合には、別途傷害罪も成立する。判例も、公務執行妨害罪と傷害罪の双方の成立を認めた上で、1個の暴行行為が二個の罪名に触れるものとして両罪を観念的競合とする(大判明治42年7月1日)。本事例でも、丙のBに対する1個の殴打行為が公務の執行を妨害すると同時に傷害の結果を生じさせているから、行為の単一性が認められ、観念的競合として科刑上一罪となる。したがって本肢の記述は判例の立場に沿うものである。
丙がBを殴って負傷させた行為には、公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。
解説
本肢は正しい。丙がBを殴って全治2週間の打撲傷を負わせた行為には、公務執行妨害罪(95条1項)と傷害罪(204条)が成立し、両罪は観念的競合(54条1項前段)となる。
まず、Bは制服を着用して職務質問を行っていた警察官であり、職務質問は警職法2条1項に基づく適法な職務の執行である。丙がこれに対して手拳で殴打した行為は、公務員が「職務を執行するに当たり」加えられた暴行に当たるから、公務執行妨害罪が成立する。同罪は公務の円滑な遂行という国家的法益を保護するものであり、現実に職務執行が妨害されたことは必要でない(抽象的危険犯)。
他方、公務執行妨害罪の暴行はそれ自体としては公務員の身体に向けられた有形力の行使を当然に予定しているが、同罪の法定刑は傷害の結果までは織り込んでいない。そこで暴行により公務員に傷害の結果が生じた場合には、別途傷害罪も成立する。判例も、公務執行妨害罪と傷害罪の双方の成立を認めた上で、1個の暴行行為が二個の罪名に触れるものとして両罪を観念的競合とする(大判明治42年7月1日)。本事例でも、丙のBに対する1個の殴打行為が公務の執行を妨害すると同時に傷害の結果を生じさせているから、行為の単一性が認められ、観念的競合として科刑上一罪となる。したがって本肢の記述は判例の立場に沿うものである。
甲は、乙と保険金詐欺を共謀し、過失による自動車事故を装い、甲運転の自動車を乙運転の自動車に故意に追突させて、乙に傷害を負わせた。この場合、乙が傷害を負わされることに同意している以上、甲に傷害罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。被害者の同意は、法益主体による処分として違法性を阻却する場合があるが、生命・身体という重要な法益については無制約に阻却を認めるべきではない。判例は、身体の傷害について承諾があった場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在したという事実のみによるのではなく、承諾を得た動機・目的、傷害の手段・方法、傷害の部位・程度など諸般の事情に照らして決すべきであるとする。そのうえで、過失による衝突事故を装って保険金を詐取する目的で、被害者の承諾を得たうえ故意に自車を追突させて傷害を負わせた事案について、その承諾は「保険金を騙取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであつて、これによつて当該傷害行為の違法性を阻却するものではない」とした(最決昭55.11.13)。本肢はまさにこの判例の事案であり、乙の同意があっても違法性は阻却されず、甲には傷害罪(204条)が成立する。なお、保険会社に対する保険金請求に及べば、別途詐欺罪(未遂を含む)の成否が問題となる。
私人が現行犯人を逮捕しようとする場合、犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の実力を行使したことで犯人に傷害を負わせたとしても、法令による行為に当たるから、傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は正しい。刑事訴訟法213条は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定め、私人による現行犯逮捕を認めている。したがって私人の現行犯逮捕は法令に基づく行為であり、刑法35条により違法性が阻却される。問題は、逮捕に際して犯人に有形力を行使し傷害を負わせた場合にもなお35条の適用があるかである。最判昭和50年4月3日は、現行犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内で実力を行使することが許され、その実力行使が刑罰法令に触れることがあるとしても刑法35条により罰せられない旨を判示した。逮捕権限の行使に通常随伴する程度の実力行使は、逮捕を許容した法令が当然に予定するものとして法令行為の範囲に含まれる、という趣旨である。本肢は「社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内」という限定を付したうえで傷害罪の成立を否定しており、判例の判断枠組みと一致する。もっとも、この限度を超えた実力行使は法令行為とは認められず、別途正当防衛(36条1項)等の要件を満たさない限り傷害罪(204条)が成立する点には注意を要する。
傷害罪は,他人の身体の生理的機能を毀損する犯罪であるから,精神疾患の一種である心的外傷後ストレス障害(いわゆるPTSD)を負わせるなど精神的機能の障害を惹起した場合,傷害罪が成立することはない。
解説
解説は準備中です。
傷害罪は,暴行罪の結果的加重犯であるから,被害者に暴行を加えずに身体の生理的機能を毀損した場合,傷害罪が成立することはない。
解説
解説は準備中です。
傷害事件の被害者は,犯行の態様,被害の状況その他の事情により,被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがある場合,被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることができる。
解説
本肢は正しい。刑訴法290条の2第1項は、秘匿決定の対象事件を三つの類型に分けて規定している。1号は不同意わいせつ・不同意性交等(刑法176条から179条まで)やこれらの致死傷(181条)、わいせつ目的の略取誘拐等といった性犯罪類型であり、2号は児童福祉法60条1項の罪や児童買春・児童ポルノ関係の罪である。これらは被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされた場合の打撃が類型的に大きいため、事件の罪名のみで対象となる。これに対し3号は、1号・2号に掲げる事件以外であっても、「犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件」を対象に取り込む受け皿規定である。傷害罪(刑法204条)は1号にも2号にも掲げられていないが、3号が罪名による限定を置かず個別事情による判断を許している以上、被害者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれが認められる場合には、被害者は秘匿の申出をすることができる。本肢はまさに3号の要件をなぞった記述であるから正しい。なお、申出があっても決定を出すか否かは裁判所が相当性を判断するものであり、申出が直ちに秘匿決定に結び付くわけではない点にも注意を要する。
甲は,Aの太ももを蹴って怪我をさせたが,甲には,Aに傷害を負わせるまでの意思はなかった。甲には傷害罪は成立しない。
解説
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甲は,Aら数名が殴り合いのけんかをしているところにたまたま通り掛かり,「もっとやれ。」と言ってはやし立てた。Aらけんかの当事者が怪我をせず,Aらの暴行が互いの相手に対する暴行罪にとどまる場合でも,甲には現場助勢罪(刑法第206条)が成立する。
解説
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Aは,BがVを殴打しようとしているときに,Bに気付かれずにVの足を押さえ付けたため,Bは,Vの顔面を殴打して顔面打撲の傷害を負わせることができた。この場合,Aには傷害罪の共同正犯が成立する。
解説
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甲は,夜間,車道上にロープを張って,車道を閉塞したところ,自動二輪車を運転して同所を通り掛かった乙がこれに気付かないまま同ロープに引っ掛かり,転倒して負傷した。この場合,甲に乙が負傷をすることについて故意があれば,甲には往来妨害罪と傷害罪が成立し,両罪は牽連犯となる。
解説
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