第103条過去問 16
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
この条文の過去問 16問
甲は、恐喝事件の被疑者としてAに逮捕状が発せられていると知りながら、Aが犯人ではないと信じてAを自宅にかくまったが、その後、Aが逮捕され、Aに対する有罪判決が確定した。この場合、Aが犯人蔵匿罪の「罪を犯した者」ではないと甲が誤信していたから、甲に同罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿等罪(103条)の客体である「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」について、判例は、真犯人であることを要せず、少なくとも捜査が開始された後は、その罪を犯した嫌疑によって捜査の対象とされている被疑者(起訴後は被告人)を含むと解している(最判昭28.10.2)。本罪の保護法益は国の刑事司法作用の適正な運用にあり、捜査段階では真犯人か否かが未確定である以上、嫌疑を受けて捜査対象となっている者を隠匿する行為も同作用を害するからである。本肢のAは恐喝事件(249条)の被疑者として逮捕状が発せられており、この客体にあたる(現に有罪判決も確定している)。次に故意(38条1項)についてみると、客体が真犯人であることが構成要件要素でない以上、真犯人であるとの認識も故意の内容とはならない。行為者としては、対象者が罰金以上の刑に当たる罪の嫌疑で捜査の対象となっている事実を認識していれば足りる。甲は逮捕状が発せられていることを知りながらAを自宅にかくまっているのであるから、構成要件該当事実の認識に欠けるところはなく、「Aは犯人ではない」という甲の思い込みは客体に関する錯誤とはいえず、故意を阻却しない。よって甲には犯人蔵匿罪が成立し、成立しないとする本肢は誤りである。
甲は、恐喝事件の被疑者としてAに逮捕状が発せられていると知りながら、Aが犯人ではないと信じてAを自宅にかくまったが、その後、Aが逮捕され、Aに対する有罪判決が確定した。この場合、Aが犯人蔵匿罪の「罪を犯した者」ではないと甲が誤信していたから、甲に同罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿等罪(103条)の客体である「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」について、判例は、真犯人であることを要せず、少なくとも捜査が開始された後は、その罪を犯した嫌疑によって捜査の対象とされている被疑者(起訴後は被告人)を含むと解している(最判昭28.10.2)。本罪の保護法益は国の刑事司法作用の適正な運用にあり、捜査段階では真犯人か否かが未確定である以上、嫌疑を受けて捜査対象となっている者を隠匿する行為も同作用を害するからである。本肢のAは恐喝事件(249条)の被疑者として逮捕状が発せられており、この客体にあたる(現に有罪判決も確定している)。次に故意(38条1項)についてみると、客体が真犯人であることが構成要件要素でない以上、真犯人であるとの認識も故意の内容とはならない。行為者としては、対象者が罰金以上の刑に当たる罪の嫌疑で捜査の対象となっている事実を認識していれば足りる。甲は逮捕状が発せられていることを知りながらAを自宅にかくまっているのであるから、構成要件該当事実の認識に欠けるところはなく、「Aは犯人ではない」という甲の思い込みは客体に関する錯誤とはいえず、故意を阻却しない。よって甲には犯人蔵匿罪が成立し、成立しないとする本肢は誤りである。
丙のいずれの行為についても、証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。丙が後に嫌疑不十分で不起訴となったとしても、丁に犯人蔵匿罪(103条)が成立する余地はある。
103条は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」を蔵匿・隠避する行為を処罰するところ、この「罪を犯した者」の意義について、真に犯罪を行った者に限られるかが問題となる。判例は、同条は司法に関する国権の作用(捜査・裁判・刑の執行)を妨害する者を処罰する趣旨であるから、「罪を犯した者」には犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含むと解さなければ立法目的を達し得ないとして、罰金以上の刑に当たる罪を犯したとして捜査の対象とされている被疑者を含むとしている(最判昭和24年8月9日、同旨大判大正12年5月9日)。同罪の保護法益が国家の刑事司法作用にある以上、犯人が真犯人であることの確定を待たなければ処罰できないとするのは不合理だからである。
本事例において、丙は強盗(窃盗)に係るカードの運搬による盗品等運搬罪、公務執行妨害罪・傷害罪といういずれも罰金以上の刑に当たる罪について現に警察の捜査対象となっており、丁はその事実を認識しつつ丙を自宅にかくまっている。したがって、丁の行為は捜査という国家作用を妨害するものとして103条の構成要件に該当する。事後的に証拠が足りず不起訴処分となったことは、蔵匿行為時に存在した捜査妨害という実質を左右しないから、犯人蔵匿罪の成立は妨げられない。
丙のいずれの行為についても、証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。丙が嫌疑不十分で不起訴となった場合であっても、丁の行為について犯人蔵匿罪(103条)の成立は妨げられない。
103条は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」を蔵匿し、又は隠避させる行為を処罰する。この「罪を犯した者」を真に当該犯罪を実行した者(真犯人)に限る解釈もあり得るが、判例は、同罪が捜査・裁判・刑の執行という司法に関する国家作用の適正な遂行を保護法益とすることを理由に、罰金以上の刑に当たる罪の嫌疑を受けて捜査の対象とされている者もこれに含まれると解している(最判昭和24年8月9日。同旨、大判大正12年5月9日)。捜査段階で被疑者の身柄確保が妨げられれば、その者が後に有罪と認定されるか否かにかかわらず、司法作用は現に侵害されるからである。したがって、真犯人であることが確定していることは構成要件要素ではなく、後日の処分結果によって、蔵匿の時点で既に成立した犯罪が遡って否定されることもない。
本事例の丙は、公務執行妨害罪(95条1項)、傷害罪(204条)、盗品等運搬罪(256条2項)といずれも罰金以上の刑に当たる罪の嫌疑を受けて捜査されており、丁はその事実を認識した上で丙を自宅にかくまっている。「蔵匿」とは官憲による発見・逮捕を免れるべき隠れ場所を提供することをいい、自宅に居住させる行為はこれに当たる。よって丁には犯人蔵匿罪が成立する。
なお、丁は丙の交際相手にすぎず親族ではないから105条の適用はなく、仮に親族であっても、同条は刑の任意的免除を定めるにとどまり犯罪の成立自体を否定するものではない。
丙が乙の身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿・隠避罪(103条)にいう「隠避させた」とは、蔵匿すなわち場所を提供して匿う行為以外の方法により、捜査機関による発見・逮捕を免れさせるべき一切の行為をいうと解されている。身柄を直接隠す行為に限られず、犯人が誰であるかの認識を誤らせて捜査を妨げる行為も含まれる。
判例は、真犯人ではない者が自ら犯人である旨を捜査機関に申し立てる、いわゆる身代わり出頭について、犯人隠避罪の成立を認めてきた(大判大正4年8月24日)。さらに、犯人が既に逮捕勾留された後に他人を教唆して身代わり犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた事案においても、現になされている身柄の拘束を免れさせるべき性質の行為として「隠避」に当たるとし、犯人隠避教唆罪の成立を認めている(最決平成元年5月1日)。
したがって、身代わり出頭が犯人の特定を誤らせるにとどまるとして犯人隠避罪の成立を否定する本肢の立論は、判例の立場と相容れない。丙の出頭行為には犯人隠避罪が成立する。
また、証拠偽造罪(104条)にいう「証拠を偽造」するとは、証拠方法を新たに作出することをいい、参考人が捜査機関に対して口頭で虚偽の供述をする行為はこれに当たらないと解されている。丙は虚偽の供述をしたにすぎず、証拠偽造罪は成立しない。この点でも本肢は誤りである。
丙が乙の身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿等罪(103条)は、罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を「蔵匿し、又は隠避させた」ことを内容とし、その法定刑は3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金である。本罪の保護法益は国家の刑事司法作用、とりわけ犯人の発見・確保の作用にある。そして「隠避」とは、蔵匿すなわち隠れ場所の提供以外の方法により、捜査機関による発見・逮捕を免れさせる一切の行為をいうと解されている(大判昭和5年9月18日)。この理解によれば、犯人を物理的にかくまう行為に限らず、真犯人が誰であるかについて捜査機関の判断を誤らせ、犯人の身柄確保を困難にする行為も「隠避」に含まれる。
判例も、真犯人の身代わりとして捜査機関に出頭し、自己が犯人である旨の虚偽の供述をする行為につき、犯人隠避に当たることを認めている(大判大正4年8月24日)。さらに最決平成元年5月1日は、犯人が既に逮捕・勾留された後に第三者を身代わり犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨虚偽の陳述をさせた事案について、なお「隠避させた」に当たるとして犯人隠避教唆罪の成立を肯定した。身柄が確保された後であっても釈放等を通じて刑事司法作用が害され得るとした点で、間接的な妨害にとどまることを理由に本罪の成立を否定する本肢の理由付けは、判例と整合しない。
他方、証拠偽造罪(104条)にいう「偽造」とは、他人の刑事事件に関する証拠として不真正なものを新たに作り出すことをいうところ、身代わり犯人として口頭で虚偽の供述をすること自体は、証拠方法となる物を作出するものではなく、「証拠を偽造した」には当たらないと解されている。
したがって、丙には犯人隠避罪が成立し(乙は罰金以上の刑に当たる罪を犯した者であり、丙は105条の親族にも当たらない)、証拠偽造罪は成立しない。本肢は誤りである。なお、丙に依頼した甲には犯人隠避罪の教唆犯が成立し得る。
丁が,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については,犯人隠避罪が成立する。
解説
本肢は正しい。犯人隠避罪(刑法103条)の構成要件該当性、とりわけ既に身柄を拘束されている犯人についての「隠避させた」の意義が問題となる。まず、甲の被疑事実である建造物損壊罪(260条前段)の法定刑は5年以下の拘禁刑であるから、同条にいう「罰金以上の刑に当たる罪」に当たり、甲は現に逮捕された「罪を犯した者」である。次に、判例は「隠避」を、蔵匿以外の方法により捜査機関による発見・逮捕を免れさせる一切の行為をいうと解しており(大判昭和5年9月18日)、既に身柄が拘束されている犯人についても、身柄の拘束を免れさせるような性質の行為であれば同罪が成立し得る。最決平成29年3月27日は、犯人との間で口裏合わせをした上、参考人として警察官の取調べを受けた際に、犯人が犯人として身柄の拘束を継続されることに疑念を生じさせるような内容の虚偽の供述をした行為は、刑法103条にいう「罪を犯した者」を「隠避させた」に当たると判示した。本事例において丁は、甲との間で犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした上、参考人としての取調べにおいてこれに沿う虚偽のアリバイ供述をしている。これは甲の身柄拘束の継続に疑念を生じさせる性質の行為にほかならないから、丁には犯人隠避罪が成立する。なお、丁は甲の親族ではないため105条による刑の免除の余地もない。
丁が,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については,犯人隠避罪が成立する。
解説
本肢は正しい。犯人隠避罪(刑法103条)の構成要件該当性、とりわけ「隠避させた」の意義が問題となる。同罪は捜査・審判・刑の執行という広義の刑事司法作用を保護法益とする。まず客体について、甲が犯した建造物損壊罪(260条前段)は5年以下の拘禁刑を法定刑とするから、甲は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たる。そして、既に逮捕・勾留されている者も同条の客体から除外されない。次に「隠避」とは、蔵匿以外の方法により捜査機関による発見・逮捕を免れさせるべき一切の行為をいう(大判昭和5年9月18日)。もっとも、身柄が既に拘束されている犯人について隠避が観念できるかが問題となるところ、最決平成29年3月27日は、犯人が逮捕・勾留された後に、その犯人と口裏合わせをした上で参考人として警察官の取調べに応じ、犯人が犯人として身柄の拘束を継続されることに疑いを生じさせる内容の虚偽供述をした行為につき、身体の拘束を免れさせるべき性質の行為に当たるとして「隠避させた」に該当すると判示した。本事例の丁の供述は、犯行時間帯に甲がA組事務所にいたというアリバイを内容とするものであり、犯人性そのものを否定して身柄拘束の基礎となる嫌疑を揺るがす性質を持つ。しかも事前に甲と通謀した上での虚偽供述であって、単なる捜査への非協力とは質を異にする。また、丁は甲の親族ではないから105条による刑の免除の余地もない。したがって丁には犯人隠避罪が成立し、本肢は正しい。
甲が強盗犯人Aの妻乙を唆してAを蔵匿させた場合,甲には犯人蔵匿罪の教唆犯は成立し得ない。
解説
解説は準備中です。
甲が強盗犯人Aの妻乙を唆してAを蔵匿させた場合,甲には犯人蔵匿罪の教唆犯は成立し得ない。
解説
解説は準備中です。
犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には,犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない。
解説
本肢は誤り。刑法103条の犯人蔵匿・隠避罪は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」を客体とするところ、判例は、既に犯人として逮捕・勾留されている者もここにいう罪を犯した者に含まれるとしている(最決平成元年5月1日刑集43巻5号405頁)。同決定は、真犯人が身柄を拘束された後に、第三者が身代わりとして捜査機関に出頭し犯人であると申し立てた事案について、犯人隠避罪の成立を認めたものである。
本罪の保護法益は、捜査・審判及び刑の執行という国家の刑事司法作用にある。身柄が現に確保されている場合であっても、身代わり出頭等により捜査機関の判断を誤らせれば、真犯人の身柄拘束が解かれ、あるいはその訴追が妨げられる危険が生じるから、法益侵害の危険は否定されない。また、構成要件要素である「隠避させ」るとは、蔵匿以外の方法によって捜査機関による発見・身柄確保を免れさせる一切の行為をいうと解されており、現に拘束中の者を釈放させる方向に働く行為もこれに当たる。よって、逮捕・勾留されている者は客体から除かれるとする本肢は、判例の立場に反する。
犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には,犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない。
解説
本肢は誤り。刑法103条の犯人蔵匿・隠避罪は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」を客体とするところ、判例は、既に犯人として逮捕・勾留されている者もここにいう罪を犯した者に含まれるとしている(最決平成元年5月1日刑集43巻5号405頁)。同決定は、真犯人が身柄を拘束された後に、第三者が身代わりとして捜査機関に出頭し犯人であると申し立てた事案について、犯人隠避罪の成立を認めたものである。
本罪の保護法益は、捜査・審判及び刑の執行という国家の刑事司法作用にある。身柄が現に確保されている場合であっても、身代わり出頭等により捜査機関の判断を誤らせれば、真犯人の身柄拘束が解かれ、あるいはその訴追が妨げられる危険が生じるから、法益侵害の危険は否定されない。また、構成要件要素である「隠避させ」るとは、蔵匿以外の方法によって捜査機関による発見・身柄確保を免れさせる一切の行為をいうと解されており、現に拘束中の者を釈放させる方向に働く行為もこれに当たる。よって、逮捕・勾留されている者は客体から除かれるとする本肢は、判例の立場に反する。
甲は,殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され,乙の身代わり犯人として警察署に出頭し,自己が犯人であるという嘘の申告をした。甲には犯人隠避罪が成立する。
解説
本肢は正しい。犯人隠避罪(刑法103条後段)にいう「隠避」とは、蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕・身柄拘束を免れさせる一切の行為をいう。本肢では、既に逮捕勾留されている者が客体たる「罪を犯した者」に含まれるか、また身代わり出頭が「隠避」に当たるかが問題となる。この点、判例は、同条にいう「罪を犯した者」には犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、そのような者について現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう「隠避」に当たるとして、勾留中の犯人の身代わりとして警察官に対し自己が犯人である旨の虚偽の申告をした行為に犯人隠避罪の成立を認めている(最決平成元年5月1日)。本罪の保護法益が刑事司法作用である以上、既に身柄が確保されている犯人についても、虚偽の身代わり申告により身柄拘束が解かれ、あるいは捜査・訴追が誤導される危険が現に生じるからである。本肢において、乙が犯した殺人罪(199条)は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑であり、「罰金以上の刑に当たる罪」に当たる。甲は、逮捕勾留中の乙に依頼され、その身代わり犯人として警察署に出頭し自己が犯人であるとの虚偽の申告をしているのであるから、乙の身柄拘束を免れさせる性質の行為をしたものとして「隠避」に当たり、甲には犯人隠避罪が成立する。よって本肢は正しい。
甲は,乙につき,傷害罪で逮捕状が発付されていることを知りながら,乙をかくまった。その後,乙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となった場合,甲には犯人蔵匿罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿罪(刑法103条)の客体である「罪を犯した者」の意義について、本罪の保護法益が捜査・訴追・裁判という刑事司法作用にあることから、真に犯罪を行った者に限られず、犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっている者もこれに含まれると解されている。判例も、同条は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとする規定であることを理由に、「罪ヲ犯シタル者」には犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含まれるとしている(最判昭和24年8月9日)。そして、本罪の成否は蔵匿行為の時点を基準に判断されるものであり、その後に当該犯人が不起訴処分となり、あるいは無罪判決を受けたとしても、既に成立した犯人蔵匿罪が遡って否定されることはない。本肢において、乙については傷害罪(204条。法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、罰金以上の刑に当たる罪である)で逮捕状が発付されているのであるから、乙は犯罪の嫌疑により捜査の対象となっている者であり、「罪を犯した者」に当たる。甲はこれを知りながら乙をかくまっているから、その時点で犯人蔵匿罪が成立し、後に乙が嫌疑不十分で不起訴処分となったことは同罪の成否を左右しない。よって、犯人蔵匿罪は成立しないとする本肢は誤りである。
甲は,殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され,乙の身代わり犯人として警察署に出頭し,自己が犯人であるという嘘の申告をした。甲には犯人隠避罪が成立する。
解説
本肢は正しい。犯人隠避罪(刑法103条後段)にいう「隠避」とは、蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕・身柄拘束を免れさせる一切の行為をいう。本肢では、既に逮捕勾留されている者が客体たる「罪を犯した者」に含まれるか、また身代わり出頭が「隠避」に当たるかが問題となる。この点、判例は、同条にいう「罪を犯した者」には犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、そのような者について現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう「隠避」に当たるとして、勾留中の犯人の身代わりとして警察官に対し自己が犯人である旨の虚偽の申告をした行為に犯人隠避罪の成立を認めている(最決平成元年5月1日)。本罪の保護法益が刑事司法作用である以上、既に身柄が確保されている犯人についても、虚偽の身代わり申告により身柄拘束が解かれ、あるいは捜査・訴追が誤導される危険が現に生じるからである。本肢において、乙が犯した殺人罪(199条)は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑であり、「罰金以上の刑に当たる罪」に当たる。甲は、逮捕勾留中の乙に依頼され、その身代わり犯人として警察署に出頭し自己が犯人であるとの虚偽の申告をしているのであるから、乙の身柄拘束を免れさせる性質の行為をしたものとして「隠避」に当たり、甲には犯人隠避罪が成立する。よって本肢は正しい。
甲は,乙につき,傷害罪で逮捕状が発付されていることを知りながら,乙をかくまった。その後,乙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となった場合,甲には犯人蔵匿罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。犯人蔵匿罪(刑法103条)の客体である「罪を犯した者」の意義について、本罪の保護法益が捜査・訴追・裁判という刑事司法作用にあることから、真に犯罪を行った者に限られず、犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっている者もこれに含まれると解されている。判例も、同条は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとする規定であることを理由に、「罪ヲ犯シタル者」には犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含まれるとしている(最判昭和24年8月9日)。そして、本罪の成否は蔵匿行為の時点を基準に判断されるものであり、その後に当該犯人が不起訴処分となり、あるいは無罪判決を受けたとしても、既に成立した犯人蔵匿罪が遡って否定されることはない。本肢において、乙については傷害罪(204条。法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、罰金以上の刑に当たる罪である)で逮捕状が発付されているのであるから、乙は犯罪の嫌疑により捜査の対象となっている者であり、「罪を犯した者」に当たる。甲はこれを知りながら乙をかくまっているから、その時点で犯人蔵匿罪が成立し、後に乙が嫌疑不十分で不起訴処分となったことは同罪の成否を左右しない。よって、犯人蔵匿罪は成立しないとする本肢は誤りである。