第35条過去問 6
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
この条文の過去問 6問
A説によれば、真実性の証明に失敗した場合、刑法第35条によって違法性が阻却される余地はない。
解説
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私人が現行犯人を逮捕しようとする場合、犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の実力を行使したことで犯人に傷害を負わせたとしても、法令による行為に当たるから、傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は正しい。刑事訴訟法213条は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定め、私人による現行犯逮捕を認めている。したがって私人の現行犯逮捕は法令に基づく行為であり、刑法35条により違法性が阻却される。問題は、逮捕に際して犯人に有形力を行使し傷害を負わせた場合にもなお35条の適用があるかである。最判昭和50年4月3日は、現行犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内で実力を行使することが許され、その実力行使が刑罰法令に触れることがあるとしても刑法35条により罰せられない旨を判示した。逮捕権限の行使に通常随伴する程度の実力行使は、逮捕を許容した法令が当然に予定するものとして法令行為の範囲に含まれる、という趣旨である。本肢は「社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内」という限定を付したうえで傷害罪の成立を否定しており、判例の判断枠組みと一致する。もっとも、この限度を超えた実力行使は法令行為とは認められず、別途正当防衛(36条1項)等の要件を満たさない限り傷害罪(204条)が成立する点には注意を要する。
私人が現行犯人を逮捕しようとする場合、犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の実力を行使したことで犯人に傷害を負わせたとしても、法令による行為に当たるから、傷害罪が成立することはない。
解説
本肢は正しい。刑事訴訟法213条は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定め、私人による現行犯逮捕を認めている。したがって私人の現行犯逮捕は法令に基づく行為であり、刑法35条により違法性が阻却される。問題は、逮捕に際して犯人に有形力を行使し傷害を負わせた場合にもなお35条の適用があるかである。最判昭和50年4月3日は、現行犯人から抵抗を受けたときは、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内で実力を行使することが許され、その実力行使が刑罰法令に触れることがあるとしても刑法35条により罰せられない旨を判示した。逮捕権限の行使に通常随伴する程度の実力行使は、逮捕を許容した法令が当然に予定するものとして法令行為の範囲に含まれる、という趣旨である。本肢は「社会通念上逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内」という限定を付したうえで傷害罪の成立を否定しており、判例の判断枠組みと一致する。もっとも、この限度を超えた実力行使は法令行為とは認められず、別途正当防衛(36条1項)等の要件を満たさない限り傷害罪(204条)が成立する点には注意を要する。
殺人被告事件の弁護人が,同被告事件の真犯人は被告人の兄であると考え,第一審の有罪判決後に行った記者会見で「同被告事件の真犯人は被告人の兄である。」旨発表した場合,弁護活動の一環として行ったものであるから,正当な業務行為として違法性が阻却され,名誉毀損罪は成立し得ない。
解説
本肢は誤り。刑法35条にいう正当業務行為として違法性が阻却されるためには、当該行為が業務ないし職務として行われたというだけでは足りず、行為の具体的状況その他の諸事情を踏まえて、法秩序全体の見地から許容されるものと認められることを要する。最決昭和51年3月23日は、殺人被告事件の弁護人が第一審の有罪判決後に開いた記者会見で「真犯人は被告人の兄である」旨を発表した事案について、弁護人が刑事被告人の利益を擁護するためにした正当な弁護活動であれば、名誉毀損罪の構成要件に該当しても35条により罰せられないとしつつ、35条適用の可否の判断に当たっては、その行為が法令上の根拠を持つ職務活動であるか、弁護目的の達成との間にどのような関連性を有するか、被告人自身が同じ行為をした場合に違法性阻却を認めるべきかといった諸点を考慮すべきであるとした。その上で、弁護人が弁護活動のために他人の名誉を毀損する事実を公表することを許容する法令上の具体的な定めは存在せず、当該公表は訴訟外の救援活動にとどまり、弁護目的との関連性も著しく間接的であるとして、正当な弁護活動の範囲を超えるものであり違法性阻却を認めるべきいわれはないと判断した。したがって、弁護活動の一環であることのみを理由に違法性が阻却され名誉毀損罪(230条1項)が成立し得ないとする本肢は、判例の立場と相容れない。なお、公表内容の真実性等については230条の2による免責が別途問題となり得るが、本肢は35条による阻却を当然視する点で誤りである。
現行犯人を逮捕しようとする私人が,犯人から抵抗を受け,逮捕のために社会通念上必要かつ相当な範囲で実力を行使し同人に傷害を負わせた場合,法令による行為として違法性が阻却され,傷害罪は成立し得ない。
解説
本肢は正しい。現行犯人については、何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる(刑訴法213条)から、私人による現行犯逮捕は法令に基づく行為であり、その遂行に必要な範囲の実力行使も法令行為として刑法35条により違法性が阻却される。最判昭和50年4月3日は、現行犯逮捕をしようとする場合において現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者が警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法35条により罰せられないとした。私人には司法警察職員のような一般的強制力の行使権限はないが、現行犯逮捕自体が法律上許容されている以上、その実効性を確保するために必要な有形力の行使は逮捕権限に随伴するものとして許容される、という趣旨である。もっとも、違法性が阻却されるのは必要かつ相当な限度内の行為に限られ、これを超える暴行・傷害は違法であって傷害罪(204条)等が成立する。本肢は社会通念上必要かつ相当な範囲での実力行使を前提としているから、その結果として傷害の結果が生じても違法性が阻却され、傷害罪は成立し得ない。よって本肢は正しい。
A説に立つことと,相当な資料・根拠に基づく言論活動について刑法第35条による違法性阻却の余地を認めることは両立しない。
解説
本肢は誤り。A説は、230条の2が定めるのはあくまで処罰阻却事由であって違法性阻却事由ではないと解する見解であるが、そのことは、同条以外の一般規定による違法性阻却の可能性まで否定する趣旨を含むものではない。刑法35条は正当行為・正当業務行為による違法性阻却の一般規定であり、報道機関の取材・報道活動や公益目的の言論活動が、相当な資料・根拠に基づいて行われた場合には、表現の自由(憲法21条1項)の保障を受ける正当な業務行為として、35条により違法性が阻却される余地がある。むしろA説を徹底すると、真実性の証明に失敗した場合の救済を230条の2の枠内で図ることが難しくなるため、相当な資料・根拠に基づく言論について35条による違法性阻却を認めることで処罰範囲を限定するという構成が、A説と結び付きやすい面すらある。したがって、A説に立つことと35条による違法性阻却の余地を認めることは十分に両立するのであって、両立しないとする本肢は誤りである。