第252条過去問 24
1自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
この条文の過去問 24問
甲は、半日以内にAに返す約束でAの承諾を得て、A所有の自動車をAから借り受けたが、同車を運転するうちに、約束どおり同車をAに返すことが惜しくなり、Aに無断でそのまま10日間にわたり同車を乗り回した。この場合、甲に横領罪が成立することはない。
解説
本肢は誤り。委託物横領罪(252条1項)は、委託信任関係に基づいて他人の物を占有する者が、これを横領することによって成立する。判例は、横領とは不法領得の意思を発現する一切の行為をいい、ここでの不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思であるとする(最判昭和24年3月8日)。使用の期間や態様を限定して借り受けた物であっても、その約定の範囲を著しく逸脱する使用は、単なる債務不履行の域を超え、所有者を排除して自ら所有者として振る舞う意思の外部的発現と評価される。本肢の甲は、半日以内に返す約束で借り受けた自動車について、返還が惜しくなって返還意思を放棄し、無断で10日間乗り回しているのであるから、委託の趣旨を著しく逸脱した所有者的処分といえ、不法領得の意思の発現が認められる。裁判例も、短時間の使用を許されたにすぎない自動車を8日間にわたり乗り回した事案について横領罪の成立を認めている(大阪高判昭和46年11月26日)。したがって甲に横領罪が成立し得るから、本肢は誤りである。なお、貸主側に何らの利益もなく委託信任関係を認め難い場合には、占有はなお貸主にあるとして窃盗罪(235条)が成立する余地も指摘されるが、いずれにせよ不可罰とはならない。
甲は、配偶者Aから、その友人であるB所有の刀剣の保管を委託され、同刀剣を保管していたが、A及びBに無断で、同刀剣をCに売却した。この場合、甲には委託者であるAに対する横領罪が成立するが、甲はAの配偶者であるから、刑が免除される。
解説
解説は準備中です。
甲は、乙から頼まれ、乙が丙に対する貸金債権の質物として提供を受けていた丙所有の絵画を甲の自宅倉庫で保管していたが、乙に嫌がらせをする目的で、同絵画を乙に無断で丙に返還した。この場合、甲に背任罪が成立する。
解説
本肢は正しい。まず横領罪の成否を検討すると、絵画は丙の所有物であり、甲はこれを乙から委託されて保管しているから「自己の占有する他人の物」(252条1項)に当たるようにも見える。しかし、委託物横領罪の保護法益は第一次的には物の所有権であり、委託信任関係の保護は副次的なものにとどまる。本肢で甲が絵画を返還した相手は所有者である丙自身であるから、所有権に対する侵害は生じておらず、不法領得の意思に基づく所有権侵害を内容とする横領罪は成立しない。
もっとも、甲は質権者である乙から質物の保管を委託され、乙のために目的物を占有継続して質権の効力(動産質は占有の継続が第三者対抗要件である。民法352条参照)を維持すべき地位にあった。この保管事務は乙のための事務であるから、甲は乙との関係で「他人のためにその事務を処理する者」に当たる。乙に無断で質物を質権設定者兼所有者の丙に返還する行為は、質物の占有を失わせて質権による優先弁済の担保的機能を失わせるものであり、任務違背行為に当たる。これにより乙は貸金債権の担保を失うから、経済的見地において財産上の損害も生じている。さらに甲は「乙に嫌がらせをする目的」で行為しており、加害目的も認められる。
大判明44.10.13も、質物を委託されて保管する者が所有者にこれを返還した事案につき、侵害されたのは所有権ではなく質権であるとして横領罪を否定し、背任罪の成立を認めている。したがって、甲に背任罪が成立するとする本肢は正しい。
所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の均等分割払いで,自動車販売会社から自動車を購入した者が,同車の引渡しを受け,3回分の支払を済ませた時点で,同車の売却代金を自己の生活費として費消するため,同社に無断で,第三者に同車を売却し,これを引き渡した場合,当該行為は,実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから,横領罪は成立しない。
解説
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所有者から動産を賃借している者が,同動産の売却代金を自己の生活費として費消するため,所有者に無断で,第三者に同動産の売却を申し入れたが,同人から買受けの意思表示がない場合,他人の所有権を侵害する状態には至っていないから,横領罪は成立しない。
解説
解説は準備中です。
窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が,その売却代金を自己の用途に費消するため着服した場合,当該行為は,他人の所有権を侵害する行為であるものの,窃盗犯人との間の委託信任関係は法律上保護に値しないから,横領罪は成立しない。
解説
解説は準備中です。
甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。
解説
解説は準備中です。
甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。
解説
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甲は,乙の承諾を得て,乙から借り受けた乙所有の重機を丙に転貸していたが,同重機の修理のため一時これを丙から預かった際,乙の承諾を得て,丙に無断で,自己の借金の返済として同重機を自己の債権者に譲渡した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
解説
解説は準備中です。
甲は,乙の承諾を得て,乙から借り受けた乙所有の重機を丙に転貸していたが,同重機の修理のため一時これを丙から預かった際,乙の承諾を得て,丙に無断で,自己の借金の返済として同重機を自己の債権者に譲渡した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
解説
解説は準備中です。
非占有者が業務上の占有者による横領行為に加功した場合,当該非占有者には,刑法第65条第1項の適用により業務上横領罪の共犯が成立し,同条第2項の適用により単純横領罪の刑が科される。
解説
解説は準備中です。
甲が腕時計の売却代金を費消したことについては,同腕時計の窃盗犯人である乙は甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がないので,甲に委託物横領罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。委託物横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、その占有が委託信任関係に基づくことを要する。本問では、乙が甲に腕時計の売却を依頼し、甲がその売却代金80万円を受領しているから、甲は乙との委託関係に基づいて同代金を占有している。
もっとも、乙は窃盗犯人であり、その委託は不法原因給付(民法708条)に当たるから、乙は甲に対して代金の返還を請求できず、したがって代金は「他人の物」といえないのではないかが問題となる。判例は、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない」として、この場合にも横領罪の成立を認めている(最判昭和36年10月10日)。横領罪の保護法益は所有権等の本権であるとともに、委託信任関係もまた刑法上保護に値するのであって、給付者が民事上返還請求権を行使できないことは、受託者が委託の趣旨に反して物を領得することを正当化しないからである。
したがって、甲が乙に無断で売却代金全額を遊興費として費消した行為は、不法領得の意思の発現たる領得行為であり、甲には委託物横領罪が成立する。これを否定する本肢は誤りである。
非占有者が業務上の占有者による横領行為に加功した場合,当該非占有者には,刑法第65条第1項の適用により業務上横領罪の共犯が成立し,同条第2項の適用により単純横領罪の刑が科される。
解説
解説は準備中です。
甲が腕時計の売却代金を費消したことについては,同腕時計の窃盗犯人である乙は甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がないので,甲に委託物横領罪は成立しない。
解説
本肢は誤り。委託物横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、その成立には物の占有が委託信任関係に基づくことを要する。本問の甲は、乙の依頼を受けて腕時計を丙に売却し、その代金80万円を乙のために占有していたのであるから、形式的には要件を満たす。もっとも、この委託は盗品の換金という不法な原因に基づくものであり、民法708条の趣旨からすれば乙は甲に対して代金の引渡しを請求できないとも考えられる。そこで、民事上の返還請求権が否定される物について、なお「他人の物」として、また保護に値する委託信任関係として刑法上の保護を及ぼしてよいかが問題となる。
この点について判例は、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない」として、不法な原因に基づいて給付された物についても横領罪の成立を認めている(最判昭和36年10月10日)。横領罪が保護するのは所有権等の本権のみならず、他人の財物を委託に従って管理すべきという委託信任関係でもあり、民事法上の請求権の存否によって直ちに刑法的保護が失われるわけではないからである。
したがって、本犯である乙が民事上代金の引渡しを請求し得ないとしても、そのことは横領罪の成否を左右しない。乙に無断で代金全額を遊興費として費消した甲の行為には、委託の趣旨に反して所有者でなければできない処分をする意思、すなわち不法領得の意思の発現が認められ、横領行為に当たる。よって甲には委託物横領罪が成立するのであり、その成立を否定する本肢は誤りである。なお、甲にはこれとは別に盗品等有償処分あっせん罪(256条2項)が成立する。
甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し,その旨の登記を完了したことについては,甲に横領罪が成立するが,Aは甲の実弟であるので,告訴がなければ公訴を提起することができない。
解説
本肢は正しい。甲は本件土地をAに売却し代金全額の支払を受けているから、所有権は意思表示により既にAへ移転している(民法176条)。もっとも移転登記が未了で登記名義は甲に残り、甲は登記済証も保管していたのであるから、甲は登記名義人として本件土地を法律上支配する者、すなわち「他人の物」を「占有する」者にあたり、売主としてAのために登記手続に協力すべき委託信任関係も認められる。この地位を利用してAに無断で本件土地に抵当権を設定し、その旨の登記を了する行為は、所有者でなければできない処分を行うものとして不法領得の意思の発現たる「横領」にあたり、構成要件該当性が肯定されて単純横領罪(252条1項)が成立する(最判昭34.3.13)。抵当権設定は所有権そのものの移転ではないが、判例は目的物に対する処分権限を侵害する行為として横領の実行行為性を認めている。次に、刑法255条は親族間の犯罪に関する特例を定める244条を横領の罪に準用している。244条2項は「配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族」との間で犯した罪について、告訴がなければ公訴を提起することができない旨を定めるところ、Aは甲の実弟であって傍系血族であり、直系血族でも配偶者でもなく、かつ甲とは別居しているから同居の親族にも当たらない。よってAは同項にいう「以外の親族」に該当し、甲の横領罪は親告罪となる。したがって、Aの告訴がなければ公訴を提起することができないとする本肢は正しい。なお、255条による準用にあたっては物の所有者と委託者の双方との間に親族関係が必要と解されるが、本件ではAが所有者かつ委託者であるから問題はない。
甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し,その旨の登記を完了したことについては,甲に横領罪が成立するが,Aは甲の実弟であるので,告訴がなければ公訴を提起することができない。
解説
本肢は正しい。甲は本件土地をAに売却し代金全額の支払を受けているから、所有権は意思表示により既にAへ移転している(民法176条)。もっとも移転登記が未了で登記名義は甲に残り、甲は登記済証も保管していたのであるから、甲は登記名義人として本件土地を法律上支配する者、すなわち「他人の物」を「占有する」者にあたり、売主としてAのために登記手続に協力すべき委託信任関係も認められる。この地位を利用してAに無断で本件土地に抵当権を設定し、その旨の登記を了する行為は、所有者でなければできない処分を行うものとして不法領得の意思の発現たる「横領」にあたり、構成要件該当性が肯定されて単純横領罪(252条1項)が成立する(最判昭34.3.13)。抵当権設定は所有権そのものの移転ではないが、判例は目的物に対する処分権限を侵害する行為として横領の実行行為性を認めている。次に、刑法255条は親族間の犯罪に関する特例を定める244条を横領の罪に準用している。244条2項は「配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族」との間で犯した罪について、告訴がなければ公訴を提起することができない旨を定めるところ、Aは甲の実弟であって傍系血族であり、直系血族でも配偶者でもなく、かつ甲とは別居しているから同居の親族にも当たらない。よってAは同項にいう「以外の親族」に該当し、甲の横領罪は親告罪となる。したがって、Aの告訴がなければ公訴を提起することができないとする本肢は正しい。なお、255条による準用にあたっては物の所有者と委託者の双方との間に親族関係が必要と解されるが、本件ではAが所有者かつ委託者であるから問題はない。
甲は,自己が所有する不動産を乙に売却したが,乙への所有権移転登記が完了する前に,同不動産を丙に売却し,丙への所有権移転登記を完了した。
解説
本肢は正しい。不動産の二重売買の事案である。売買により所有権は意思表示のみで買主に移転する(民法176条)から、甲が乙に不動産を売却した時点で当該不動産は甲にとって「他人の物」(刑法252条1項)となる。もっとも、移転登記が未了で登記名義が甲に残っている間は、甲は登記名義を通じて法律上・事実上その不動産を処分し得る地位にあるから、甲に法律上の占有が認められる。判例も、山林の二重売買の事案について、所有権が買主に移った後も登記簿上の名義が売主にとどまる場合には売主が当該不動産を占有すると解すべきであり、二重売買につき横領罪の成立を認めるとしている(最判昭和30年12月26日)。また、甲は売買契約に基づき乙のために登記手続に協力すべき地位にあり、委託信任関係も認められる。そして、横領行為とは不法領得の意思が外部に発現する行為をいうところ、第二買主丙に売却して丙への所有権移転登記まで了した行為は、乙を排除して所有者として振る舞う意思の発現にほかならず、丙が背信的悪意者でない限り乙は所有権取得を丙に対抗できなくなる(民法177条)。したがって、甲には横領罪(252条1項)が成立する。
甲は,所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の月賦払いで,自動車販売会社から自動車を購入し,同自動車の引渡しを受けたが,3回分を支払った時点で,自己の借金の担保として,同自動車を金融業者に提供した。
解説
本肢は正しい。所有権留保特約付き割賦売買では、代金が完済されるまで目的物の所有権は売主に留保される。本肢の甲は24回払のうち3回分を支払ったにすぎないから、自動車の所有権はなお自動車販売会社に帰属しており、当該自動車は甲にとって「他人の物」(刑法252条1項)に当たる。他方、甲は引渡しを受けて現実に自動車を支配しているが、その占有は割賦代金完済までは売主の所有権を尊重して保管・使用すべきという売買契約上の委託の趣旨に基づくものであり、甲と販売会社との間には委託信任関係が認められる。そうすると、甲が売主に無断で、自己の借入金の担保として自動車を金融業者に差し入れる行為は、権限なくして目的物を処分するものであって、所有者でなければできない処分をする意思、すなわち不法領得の意思の発現行為に当たる。担保提供は所有権の終局的移転を伴わないが、判例は横領行為性を肯定しており、所有権留保付割賦売買で引渡しを受けた貨物自動車を無断で借入金の担保に供した事案において横領罪の成立を認めた原判断を是認している(最決昭和55年7月15日)。したがって、甲には横領罪(252条1項)が成立する。
甲は,乙から盗品を売却するよう依頼され,同盗品を丙に売却したが,その売却代金を着服した。
解説
本肢は正しい。甲は乙から盗品の売却を委託され、その売却代金を保管中に着服している。ここでは、委託自体が盗品の換金という不法な目的に基づくものであり、委託者乙が民法上その代金の返還を請求できない(民法708条参照)としても横領罪が成立するかが問題となる。判例は、窃盗犯人から盗品の有償処分のあっせんを依頼された者がその売却代金を着服した事案について、委託者が返還を請求し得ないとしても、被告人は自己以外の者のためにその金員を占有しているのであるから、占有中にこれを着服した以上横領の罪責を免れないとした。その理由として、横領罪の客体は行為者が占有する他人の物であれば足り、給付者が民法上返還請求権を有することは要件ではない旨を述べている(最判昭和36年10月10日)。横領罪の保護法益を所有権その他の本権と解しつつも、刑法独自の見地から、事実上の委託信任関係とこれに基づく占有が存在すれば構成要件該当性を肯定する趣旨であり、不法原因給付物の横領を肯定する立場と軌を一にする。したがって、甲には横領罪(252条1項)が成立する。
甲は,自己が所有する不動産を乙に売却したが,乙への所有権移転登記が完了する前に,丙との間で金銭消費貸借契約を締結した事実及びその担保として同不動産に係る抵当権設定契約を締結した事実がないにもかかわらず,同不動産について,丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了した。
解説
本肢は正しい。甲は不動産を乙に売却しており、所有権は乙に移転している(民法176条)から、当該不動産は甲にとって「他人の物」であり、移転登記未了で登記名義が甲に残る以上、甲には法律上の占有が認められる(アと同様。最判昭和30年12月26日)。問題は、実体を伴わない不実の抵当権設定仮登記を了したにすぎない行為が「横領した」といえるかである。判例は、他人のために保管する建物の登記記録に、消費貸借も抵当権設定契約も存在しないのに不実の抵当権設定仮登記を了した事案について、仮登記は本登記を経由することによりその後に登記された権利変動に優先して権利を主張し得る順位保全の効力を有し(不動産登記法105条2号、106条参照)、不動産取引の実務でも仮登記があれば権利が確保されているものとして扱われるのが通常であることを理由に、不実であっても仮登記を了したことは不法領得の意思を実現する行為として十分であるとして、横領罪の成立を認めた(最決平成21年3月26日)。すなわち、抵当権設定という所有権の一部を処分する態様であっても、また登記が実体を欠くものであっても、所有者でなければできない処分をする意思の発現と評価できる。したがって、甲には横領罪(252条1項)が成立する。
甲は,自己が所有する不動産について,乙を権利者とする抵当権を設定したが,その抵当権設定登記が完了する前に,同不動産について,丙を権利者とする抵当権を設定し,その抵当権設定登記を完了した。
解説
本肢は誤り。甲に横領罪は成立しない。横領罪(刑法252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であるところ、本肢の不動産は甲自身が所有するものであり、乙のために抵当権を設定しても所有権は甲に帰属したままである。抵当権は目的物の交換価値を把握する担保物権にすぎず、目的不動産が乙の「物」となるわけではないから、「他人の物」の要件を欠く。したがって、二重売買(アの記述)の場合と異なり、横領罪の構成要件該当性が否定される。もっとも、抵当権設定者は登記が完了するまで抵当権者に登記手続を完了させるべく協力する任務を負い、この任務は主として他人である抵当権者のために負担するものであるから、設定者は「他人のためにその事務を処理する者」(247条)に当たる。判例も、自己の不動産に乙のため根抵当権を設定した後、その登記が未了であることを利用して丙のために根抵当権を設定し登記を了した事案について、乙の一番抵当権を後順位の二番抵当権にとどめたことは抵当物件の価額からの優先弁済という財産上の利害に関わる以上、247条にいう財産上の損害に当たるとして、背任罪の成立を認めている(最判昭和31年12月7日)。
甲が本件不動産の乙への所有権移転登記を行った行為には,横領罪が成立する。
解説
本肢は誤り。横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、委託信任関係に基づく占有と、その物が他人の物であることが必要である。もっとも、本肢で問うべき中心は、これに先立つ罪数上の処理である。
記述アのとおり、甲には本件不動産につき詐欺既遂罪(246条1項)が成立しており、詐欺罪は状態犯であるから、既遂に達した後も違法状態が存続する。この違法状態の範囲内で行われる事後の利用・処分行為は、先行する財産犯によって既に法的評価を受け尽くしており、新たな法益侵害を生じさせない限り、別罪を構成しない(いわゆる不可罰的事後行為・共罰的事後行為)。甲が本件不動産を乙に売却し、同月20日に乙への所有権移転登記を了した行為は、まさに詐取した不動産を換価処分したにすぎず、Aの本件不動産に対する所有権侵害は詐欺罪の成立によって既に評価されている。よって、この処分行為について別途横領罪は成立しない。
また、そもそも甲は自己名義の登記を備えて本件不動産を事実上・法律上支配しており、Aとの間に本件不動産を保管するという委託信任関係は存在しないから、この点からも「他人の物」を委託に基づいて占有するという横領罪の構成要件を充たすとはいい難い。以上より、乙への所有権移転登記行為に横領罪が成立するとする本肢は誤りである。
甲が本件不動産の乙への所有権移転登記を行った行為には,横領罪が成立する。
解説
本肢は誤り。横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、委託信任関係に基づく占有と、その物が他人の物であることが必要である。もっとも、本肢で問うべき中心は、これに先立つ罪数上の処理である。
記述アのとおり、甲には本件不動産につき詐欺既遂罪(246条1項)が成立しており、詐欺罪は状態犯であるから、既遂に達した後も違法状態が存続する。この違法状態の範囲内で行われる事後の利用・処分行為は、先行する財産犯によって既に法的評価を受け尽くしており、新たな法益侵害を生じさせない限り、別罪を構成しない(いわゆる不可罰的事後行為・共罰的事後行為)。甲が本件不動産を乙に売却し、同月20日に乙への所有権移転登記を了した行為は、まさに詐取した不動産を換価処分したにすぎず、Aの本件不動産に対する所有権侵害は詐欺罪の成立によって既に評価されている。よって、この処分行為について別途横領罪は成立しない。
また、そもそも甲は自己名義の登記を備えて本件不動産を事実上・法律上支配しており、Aとの間に本件不動産を保管するという委託信任関係は存在しないから、この点からも「他人の物」を委託に基づいて占有するという横領罪の構成要件を充たすとはいい難い。以上より、乙への所有権移転登記行為に横領罪が成立するとする本肢は誤りである。
横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上の支配力を有する状態を含まない。
解説
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