1自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
この条文の過去問 33問
誤り。違うのは「甲に横領罪が成立することはない」の部分である。借りた物を約束の範囲を大きく超えて使い続けることは、不法領得の意思を実現する行為として横領に当たり得る。
横領罪(252条1項)は、委託を受けて占有する他人の物について、不法領得の意思を実現する行為をしたときに成立する。判例は、横領罪の不法領得の意思を、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思としている(最判昭24.3.8)。物を借りた者が、許された範囲を著しく超えて使用を続けることは、貸主を排除して所有者のように振る舞うことであり、この意思の現れと評価される。大阪高判昭46.11.26は、短時間の使用を許された自動車を8日間乗り回した事案で、横領罪の成立を認めている。本肢の甲は、半日以内に返す約束で借りた自動車を、返すのが惜しくなり、Aに無断で10日間乗り回している。約束の範囲を大きく超える使用であり、単なる返還の遅れにとどまらないから、甲に横領罪が成立し得る。成立することはないと言い切る本肢は誤っている。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「甲はAの配偶者であるから、刑が免除される」の部分である。特例の準用には、委託者だけでなく所有者との間にも親族関係が必要であり、所有者Bは甲の親族でない。
横領罪には、255条により親族間の犯罪に関する特例(244条)が準用され、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で犯した者の刑は免除される。もっとも、判例は、窃盗罪について、244条1項が適用されるためには、同項所定の親族関係が犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するとしている(最決平6.7.19)。親族間の財産のもめごとを親族の自律に委ねるという特例の考え方が当てはまるのは、被害を受けた者の全員が親族である場合に限られるからである。横領罪に準用する場合も同じであり、横領罪は委託者との信任関係と所有者の所有権の両方を害するから、親族関係は委託者との間だけでなく所有者との間にも必要である。本肢では、甲と委託者Aは配偶者であるが、刀剣の所有者BはAの友人であって甲の親族ではない。したがって特例は準用されず、甲の刑は免除されない。

配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
(255条)第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
正しい。質物の保管を委託された者が質権者に無断で質物を所有者に返還する行為は、所有権を侵害しないので横領罪にはならず、質権を侵害するものとして背任罪が成立する(大判明44.10.13)。
甲は、乙から委託されて丙所有の絵画を保管しているから、絵画は「自己の占有する他人の物」(252条1項)に当たる。しかし、横領罪は所有権を保護する罪であり、甲が絵画を返還した相手は所有者である丙自身であるから、所有権は侵害されておらず、横領罪は成立しない。他方、甲は、質権者である乙のために質物を保管する者であり、質権は質物の占有を続けることによって保たれるのであるから、質物を保管して乙の質権を保全することは、乙のためにその事務を処理することに当たる。甲が乙に無断で絵画を丙に返還すれば、乙は質物の占有を失い、貸金債権の担保を失うという財産上の損害を受ける。甲には乙に嫌がらせをするという本人加害の目的もある。判例も、質物の保管者が質権者に無断で質物を所有者に交付した行為について、所有権を侵害していないので横領罪は成立せず、質権を侵害したものとして背任罪が成立するとしている(大判明44.10.13)。

他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["不動産の二重売買", "売却済みの不動産は買主の物。登記名義の残る売主が処分すれば横領罪"]
- ["二重抵当", "不動産は設定者の物。登記に協力する任務に背いて先順位の登記をさせれば背任罪"]
- ["債権の二重譲渡", "譲渡人は譲受人が債権を取り立てられるようにする義務を負う。重ねて譲渡すれば背任罪"]
- ["質物の無断返還", "質物の保管を委託された者が質権者に無断で所有者に返せば背任罪"]
誤り。違うのは「実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから,横領罪は成立しない」の部分である。代金完済までは自動車の所有権は販売会社に留保されており、無断で処分すれば横領罪が成立する(最決昭55.7.15)。
判例は、自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡しを受けた貨物自動車を、同社に無断で、金融業者に自己の借入金の担保として提供した行為について、横領罪の成立を認めている(最決昭55.7.15)。所有権留保の約定がある以上、代金が完済されるまで自動車の所有権は売主である販売会社にあり、買主は引渡しを受けて占有しているにすぎないから、自動車は買主にとって「自己の占有する他人の物」に当たる。留保された所有権が代金債権の担保の働きをしているとしても、刑法上、売主の所有権として保護されることに変わりはない。本肢の買主は、24回の分割払いのうち3回分を支払ったにすぎず、代金の大部分が未払いの段階で、売却代金を生活費に充てるために無断で自動車を第三者に売却して引き渡している。これは、所有者でなければできない処分をしたものであり、担保に供した場合と同じく横領罪が成立する。

自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた三台の貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当するとした原判断は相当である。
誤り。違うのは「同人から買受けの意思表示がない場合,…横領罪は成立しない」の部分である。売却の申入れをした時点で横領罪は既遂に達し、相手方の買受けの意思表示は要しない(大判大2.6.12)。
横領行為とは、自己の占有する他人の物について、不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう(最判昭24.3.8)。横領罪では物はすでに行為者の占有下にあり、占有の移転という結果を必要としないから、この意思が外部に現れた時点で既遂となる。判例は、自己の占有する他人の物を不法に第三者に売り渡そうとする行為があれば、相手方の買受けの意思表示を待たずに横領罪は完成するとしている(大判大2.6.12)。賃借している動産を売ることができるのは所有者だけであり、第三者に売却を申し入れた時点で、所有者でなければできない処分をする意思が外部に現れている。本肢は、売買の成立を待って所有権侵害を認めようとする点で誤っている。これに対し、不動産の売却では、所有権移転登記を完了した時に既遂となる。

横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいう
- 動産の売却:売却の意思表示をした時。相手方の買受けの意思表示は不要
- 不動産の売却・抵当権設定:所有権移転登記・抵当権設定登記を完了した時。不実の仮登記でも足りる
- 金銭:費消・着服した時。預金であれば払い戻した時など
- 未遂:処罰規定がない
誤り。違うのは「窃盗犯人との間の委託信任関係は法律上保護に値しないから,横領罪は成立しない」の部分である。横領罪の目的物は犯人の占有する他人の物であれば足り、盗品の売却代金を着服すれば横領罪が成立する(最判昭36.10.10)。
判例は、窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が売却代金を着服した事案で、252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることをもって足り、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としないとして、横領罪の成立を認めている(最判昭36.10.10)。盗品の売却の依頼は不法な原因による委託であり、民法708条により窃盗犯人は受託者に返還を請求できないとも考えられる。しかし、刑法は、民法上の返還請求の可否とは別に、物を預かった者が委託の趣旨に背いて領得する行為を処罰するのであり、委託した者が窃盗犯人であることは横領罪の成立を妨げない。売却代金は受託者自身の物ではなく、受託者にとって「他人の物」であることに変わりはない。本肢は、委託の原因が不法であることを理由に委託信任関係の保護を否定し、横領罪の成立を否定している点で、判例の立場に反する。

刑法二五二条一項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない
誤り。違うのは「甲には,横領罪が成立する」の部分である。施錠されたスーツケースの中身の占有は委託者乙にあり、開錠して衣類を取り出した甲には窃盗罪が成立する(最決昭32.4.25)。
横領罪は「自己の占有する他人の物」を領得する罪であるから、問題となる物の占有が行為者にあることが前提である。判例は、他人から衣類の入った縄掛け梱包の行李を預かり保管していた者が、勝手に梱包を解いて衣類を取り出した事案で、所有者はその衣類に対する所持を失っていないから、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しないとしている(最決昭32.4.25)。封をした物や施錠した物を預けた者は、受託者に中身を自由に出し入れさせるつもりはなく、受託者に委ねているのは外側の容器の保管だけである。そのため、容器全体の占有は受託者にあるが、中身の占有は委託者に残っている。本肢の甲は、施錠されたスーツケースを勝手に開錠して衣類を取り出しており、乙の占有する衣類を自己の占有に移したのであるから、窃盗罪が成立する。不法領得の意思の発現があることは横領罪にも窃盗罪にも共通であり、罪名を分けるのは衣類の占有がだれにあるかである。スーツケースごと領得した場合であれば、全体の占有は甲にあるから横領罪となる。

被告人が他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李一個を預り保管していたような場合は、所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない。
- 店員・雇人が店の商品や売上金を持ち出す:占有は店主にある。窃盗罪
- 管理を任され処分の権限を委ねられた者が領得する:その者に占有がある。業務上横領罪
- 封緘物・施錠物の中身を抜き取る:中身の占有は委託者にある。窃盗罪
- 封緘物を開封せず全体ごと領得する:全体の占有は受託者にある。横領罪
- 共同占有者の一人が単独の占有に移す:他の共同占有者の占有を侵害する。窃盗罪
誤り。違うのは「甲には,横領罪が成立する」の部分である。施錠されたスーツケースの中身の占有は委託者乙にあり、開錠して衣類を取り出した甲には窃盗罪が成立する(最決昭32.4.25)。
横領罪は「自己の占有する他人の物」を領得する罪であるから、問題となる物の占有が行為者にあることが前提である。判例は、他人から衣類の入った縄掛け梱包の行李を預かり保管していた者が、勝手に梱包を解いて衣類を取り出した事案で、所有者はその衣類に対する所持を失っていないから、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しないとしている(最決昭32.4.25)。封をした物や施錠した物を預けた者は、受託者に中身を自由に出し入れさせるつもりはなく、受託者に委ねているのは外側の容器の保管だけである。そのため、容器全体の占有は受託者にあるが、中身の占有は委託者に残っている。本肢の甲は、施錠されたスーツケースを勝手に開錠して衣類を取り出しており、乙の占有する衣類を自己の占有に移したのであるから、窃盗罪が成立する。不法領得の意思の発現があることは横領罪にも窃盗罪にも共通であり、罪名を分けるのは衣類の占有がだれにあるかである。スーツケースごと領得した場合であれば、全体の占有は甲にあるから横領罪となる。

被告人が他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李一個を預り保管していたような場合は、所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない。
- 店員・雇人が店の商品や売上金を持ち出す:占有は店主にある。窃盗罪
- 管理を任され処分の権限を委ねられた者が領得する:その者に占有がある。業務上横領罪
- 封緘物・施錠物の中身を抜き取る:中身の占有は委託者にある。窃盗罪
- 封緘物を開封せず全体ごと領得する:全体の占有は受託者にある。横領罪
- 共同占有者の一人が単独の占有に移す:他の共同占有者の占有を侵害する。窃盗罪
誤り。違うのは「甲には,横領罪が成立する」の部分である。重機の所有者である乙の承諾を得て譲渡しているので、所有権の侵害がなく、横領罪は成立しない。
横領罪(252条1項)は、自己の占有する「他人の物」を横領する罪であり、「他人の物」とは行為者以外の者の所有に属する物をいう。横領罪が保護するのは所有権であるから、処分が所有者の意思に反することが必要であり、所有者の承諾を得た処分は横領に当たらない。本肢の重機の所有者は乙であり、甲は乙の承諾を得て自己の債権者に譲渡しているから、乙の所有権は侵害されておらず、乙に対する横領罪は成立しない。丙は転借人として重機を使用する権利を持つにすぎず所有者ではないから、丙に無断であっても、丙に対する横領罪も成立しない。判例も、質権者から質物の保管を委託された者が質権者に無断で質物を所有者に交付した事案で、所有権を侵害していないので横領罪は成立せず、質権を侵害するものとして背任罪が成立するとしている(大判明44.10.13)。所有者以外の者の権利の侵害は横領罪では捉えず、丙との関係で問題になるとすれば背任罪である。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
- ["構成要件該当性を否定する", "窃盗罪、横領罪、住居侵入罪など。被害者の意思に反することが構成要件の要素になっている"]
- ["犯罪の成立に影響しない", "虚偽告訴罪、特別公務員暴行陵虐罪、公然わいせつ罪、16歳未満の者に対する性的行為など"]
- ["軽い罪が成立する", "同意殺人罪(202条)、同意堕胎罪(213条)"]
- ["違法性を阻却する", "傷害罪。ただし判例は承諾の動機・目的、手段・方法、損傷の部位・程度を総合して決める"]
誤り。違うのは「甲には,横領罪が成立する」の部分である。重機の所有者である乙の承諾を得て譲渡しているので、所有権の侵害がなく、横領罪は成立しない。
横領罪(252条1項)は、自己の占有する「他人の物」を横領する罪であり、「他人の物」とは行為者以外の者の所有に属する物をいう。横領罪が保護するのは所有権であるから、処分が所有者の意思に反することが必要であり、所有者の承諾を得た処分は横領に当たらない。本肢の重機の所有者は乙であり、甲は乙の承諾を得て自己の債権者に譲渡しているから、乙の所有権は侵害されておらず、乙に対する横領罪は成立しない。丙は転借人として重機を使用する権利を持つにすぎず所有者ではないから、丙に無断であっても、丙に対する横領罪も成立しない。判例も、質権者から質物の保管を委託された者が質権者に無断で質物を所有者に交付した事案で、所有権を侵害していないので横領罪は成立せず、質権を侵害するものとして背任罪が成立するとしている(大判明44.10.13)。所有者以外の者の権利の侵害は横領罪では捉えず、丙との関係で問題になるとすれば背任罪である。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
- ["構成要件該当性を否定する", "窃盗罪、横領罪、住居侵入罪など。被害者の意思に反することが構成要件の要素になっている"]
- ["犯罪の成立に影響しない", "虚偽告訴罪、特別公務員暴行陵虐罪、公然わいせつ罪、16歳未満の者に対する性的行為など"]
- ["軽い罪が成立する", "同意殺人罪(202条)、同意堕胎罪(213条)"]
- ["違法性を阻却する", "傷害罪。ただし判例は承諾の動機・目的、手段・方法、損傷の部位・程度を総合して決める"]
正しい。判例は、非占有者には65条1項により業務上横領罪の共犯が成立し、業務上の占有者の身分が無いので65条2項により単純横領罪の刑を科すとしている(最判昭32.11.19)。
業務上横領罪(253条)は、他人の物の占有者という真正身分と、業務者という加減的身分の二つを重ねた罪である。判例は、村長が収入役の業務上横領に共謀して加功した事案で、村長は業務に従事していたとは認められないから、65条1項により253条に該当する業務上横領罪の共同正犯として論ずべきであるとし、しかし253条は横領罪の犯人が業務上物を占有する場合に特に重い刑を科することを規定したものであるから、業務上物の占有者たる身分のない者に対しては65条2項により252条1項の通常の横領罪の刑を科すべきであるとした(最判昭32.11.19)。判例は、65条1項を真正身分犯の成立と科刑の規定、2項を不真正身分犯の成立と科刑の規定と読むが、占有者でも業務者でもない者が加功した場合には、1項で占有者の身分を連帯させて業務上横領罪の共犯を成立させた上で、2項で業務者の身分の無い者に単純横領罪の刑を科すという処理をとる。成立する罪名と科される刑が食い違う点に批判はあるが、判例の立場では本肢のとおりである。

犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
- ["判例", "1項で業務上横領罪の共犯が成立し、2項で単純横領罪の刑を科す"]
- ["1項=真正身分犯の成立と科刑、2項=不真正身分犯の成立と科刑とする見解", "1項で甲・乙は単純横領罪の共犯となり、2項で甲に業務上横領罪が成立する"]
- ["1項=共犯の成立、2項=不真正身分犯の科刑とする見解", "乙に業務上横領罪の共犯が成立し、単純横領罪の刑が科される"]
- ["1項=違法身分の連帯、2項=責任身分の個別化とする見解", "占有の受託者たる身分は違法身分、業務者たる身分は責任身分。乙には単純横領罪の共犯が成立する"]
本肢は誤り。委託物横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、その占有が委託信任関係に基づくことを要する。本問では、乙が甲に腕時計の売却を依頼し、甲がその売却代金80万円を受領しているから、甲は乙との委託関係に基づいて同代金を占有している。
もっとも、乙は窃盗犯人であり、その委託は不法原因給付(民法708条)に当たるから、乙は甲に対して代金の返還を請求できず、したがって代金は「他人の物」といえないのではないかが問題となる。判例は、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない」として、この場合にも横領罪の成立を認めている(最判昭和36年10月10日)。横領罪の保護法益は所有権等の本権であるとともに、委託信任関係もまた刑法上保護に値するのであって、給付者が民事上返還請求権を行使できないことは、受託者が委託の趣旨に反して物を領得することを正当化しないからである。
したがって、甲が乙に無断で売却代金全額を遊興費として費消した行為は、不法領得の意思の発現たる領得行為であり、甲には委託物横領罪が成立する。これを否定する本肢は誤りである。
正しい。判例は、非占有者には65条1項により業務上横領罪の共犯が成立し、業務上の占有者の身分が無いので65条2項により単純横領罪の刑を科すとしている(最判昭32.11.19)。
業務上横領罪(253条)は、他人の物の占有者という真正身分と、業務者という加減的身分の二つを重ねた罪である。判例は、村長が収入役の業務上横領に共謀して加功した事案で、村長は業務に従事していたとは認められないから、65条1項により253条に該当する業務上横領罪の共同正犯として論ずべきであるとし、しかし253条は横領罪の犯人が業務上物を占有する場合に特に重い刑を科することを規定したものであるから、業務上物の占有者たる身分のない者に対しては65条2項により252条1項の通常の横領罪の刑を科すべきであるとした(最判昭32.11.19)。判例は、65条1項を真正身分犯の成立と科刑の規定、2項を不真正身分犯の成立と科刑の規定と読むが、占有者でも業務者でもない者が加功した場合には、1項で占有者の身分を連帯させて業務上横領罪の共犯を成立させた上で、2項で業務者の身分の無い者に単純横領罪の刑を科すという処理をとる。成立する罪名と科される刑が食い違う点に批判はあるが、判例の立場では本肢のとおりである。

犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
- ["判例", "1項で業務上横領罪の共犯が成立し、2項で単純横領罪の刑を科す"]
- ["1項=真正身分犯の成立と科刑、2項=不真正身分犯の成立と科刑とする見解", "1項で甲・乙は単純横領罪の共犯となり、2項で甲に業務上横領罪が成立する"]
- ["1項=共犯の成立、2項=不真正身分犯の科刑とする見解", "乙に業務上横領罪の共犯が成立し、単純横領罪の刑が科される"]
- ["1項=違法身分の連帯、2項=責任身分の個別化とする見解", "占有の受託者たる身分は違法身分、業務者たる身分は責任身分。乙には単純横領罪の共犯が成立する"]
誤り。違うのは「代金の引渡しを請求する権利がないので,甲に委託物横領罪は成立しない」の部分である。横領罪の目的物は犯人の占有する他人の物であれば足り、給付者が民法上返還を請求できることを要しない(最判昭36.10.10)。
甲は乙の依頼で腕時計を売却した代金80万円を乙のために占有していたが、この委託は盗品の換金という不法な原因に基づき、民法708条の趣旨から乙は代金の引渡しを請求できないとも考えられるため、横領罪が成立するかが問題になる。判例は、横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることをもって足りるのであって、その物の給付者において民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としないとして、不法な原因に基づいて給付された物についても横領罪の成立を認めている(最判昭36.10.10)。横領罪は委託信任関係も守るものであり、民事上の請求権の有無で直ちに刑法上の保護が失われるわけではないからである。乙に無断で代金全額を遊興費に費消した甲の行為は、委託の趣旨に反して所有者でなければできない処分をするものであり、不法領得の意思の発現として横領に当たる。甲には委託物横領罪が成立し、本肢は誤っている。

横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない
- ["判例の見解", "横領罪の目的物は犯人の占有する他人の物であれば足り、民法上返還を請求できることを要しない。横領罪が成立する"]
- ["横領罪を否定する見解", "給付者は返還を請求できず、その反射的効果として所有権は受給者に帰属する。「他人の物」に当たらないので横領罪は成立しない"]
- ["給付と寄託を区別する見解", "民法708条の「給付」は終局的な利益を与えるものに限られる。不法な目的で預けただけの場合は不法原因給付に当たらず、所有権は委託者に残るので横領罪が成立する"]
正しい。登記名義が残る本件土地にAに無断で抵当権を設定し登記した甲には横領罪が成立し、Aは甲の実弟で別居しているから、255条が準用する244条2項により告訴がなければ公訴を提起することができない。
甲は本件土地をAに売却して代金全額を受け取っているから、所有権は既にAに移転しており、本件土地は甲にとって「他人の物」である。もっとも、登記名義は甲に残り、甲は登記済証も保管しているから、甲は登記名義人として本件土地を法律上支配する占有者であり、売主としてAのために登記を移すべき委託信任関係もある。判例は、不動産を売却した者が、登記が自分に残っていることを奇貨として第三者のために抵当権を設定し登記した行為を横領罪としており(最判昭34.3.13)、甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し登記した行為には横領罪(252条1項)が成立する。次に、255条は親族間の犯罪に関する特例である244条を横領の罪に準用しており、244条2項は、配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族との間で犯した罪は告訴がなければ公訴を提起することができないとする。Aは甲の実弟であって傍系血族であり、配偶者でも直系血族でもなく、甲とは別居しているから同居の親族にも当たらない。したがって、甲の横領罪は親告罪となり、Aの告訴がなければ公訴を提起することができない。

前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
| 相手方 | 効果 |
|---|---|
| 配偶者、直系血族又は同居の親族 | 刑を免除する(244条1項) |
| それ以外の親族(別居の兄弟姉妹など) | 告訴がなければ公訴を提起することができない(244条2項) |
| 親族でない共犯 | 特例は適用されない(244条3項) |
正しい。登記名義が残る本件土地にAに無断で抵当権を設定し登記した甲には横領罪が成立し、Aは甲の実弟で別居しているから、255条が準用する244条2項により告訴がなければ公訴を提起することができない。
甲は本件土地をAに売却して代金全額を受け取っているから、所有権は既にAに移転しており、本件土地は甲にとって「他人の物」である。もっとも、登記名義は甲に残り、甲は登記済証も保管しているから、甲は登記名義人として本件土地を法律上支配する占有者であり、売主としてAのために登記を移すべき委託信任関係もある。判例は、不動産を売却した者が、登記が自分に残っていることを奇貨として第三者のために抵当権を設定し登記した行為を横領罪としており(最判昭34.3.13)、甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し登記した行為には横領罪(252条1項)が成立する。次に、255条は親族間の犯罪に関する特例である244条を横領の罪に準用しており、244条2項は、配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族との間で犯した罪は告訴がなければ公訴を提起することができないとする。Aは甲の実弟であって傍系血族であり、配偶者でも直系血族でもなく、甲とは別居しているから同居の親族にも当たらない。したがって、甲の横領罪は親告罪となり、Aの告訴がなければ公訴を提起することができない。

前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
| 相手方 | 効果 |
|---|---|
| 配偶者、直系血族又は同居の親族 | 刑を免除する(244条1項) |
| それ以外の親族(別居の兄弟姉妹など) | 告訴がなければ公訴を提起することができない(244条2項) |
| 親族でない共犯 | 特例は適用されない(244条3項) |
正しい。甲には横領罪が成立する。売却済みの不動産は乙の物であり、登記名義の残る甲はこれを占有しているので、丙に売却して登記を移せば横領罪になる(最判昭30.12.26)。
売買によって所有権は意思表示だけで買主に移るので、甲が乙に不動産を売却した時点で、その不動産は甲にとって他人の物になる。もっとも、所有権移転登記が済むまで登記名義は甲に残っており、甲は登記名義を通じてその不動産を法律上処分し得る地位にあるから、甲には横領罪の占有が認められる。判例は、山林の二重売買の事案で、不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべきであり、したがって二重売買においては横領罪の成立が認められるとしている(最判昭30.12.26)。甲は売買契約に基づいて乙のために登記手続に協力すべき立場にあり、その占有は委託信任関係に基づくものといえる。横領とは不法領得の意思を実現する一切の行為をいい、不動産では登記を完了した時に既遂になる。甲が第二買主丙に売却して丙への所有権移転登記を完了した行為は、乙を排除して所有者として振る舞う意思の発現であり、横領に当たる。したがって甲には横領罪が成立する。

不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる
| 場面 | 客体は他人の物か | 成立する罪 |
|---|---|---|
| 不動産の二重売買 | 第一買主の物 | 横領罪 |
| 売却済みの不動産への抵当権設定 | 買主の物 | 横領罪 |
| 二重抵当 | 設定者自身の物 | 横領罪は成立せず背任罪 |
| 質物を質権者に無断で所有者に返還 | 所有権を侵害していない | 横領罪は成立せず背任罪 |
正しい。甲には横領罪が成立する。所有権留保付きで買った自動車は代金完済まで売主の物であり、無断で借金の担保に提供すれば横領罪になる(最決昭55.7.15)。
所有権留保の特約付き割賦売買では、代金が完済されるまで目的物の所有権は売主に留保される。甲は24回払いのうち3回分を支払ったにすぎないので、自動車の所有権はなお自動車販売会社にあり、その自動車は甲にとって他人の物である。甲は引渡しを受けて自動車を現実に支配しているが、その占有は、代金完済までは売主の所有権を尊重して保管・使用すべきという売買契約上の委託の趣旨に基づくものであり、甲と販売会社との間には委託信任関係がある。横領罪の不法領得の意思は、委託の任務に背いて、権限がないのに所有者でなければできない処分をする意思であり、甲が売主に無断で自己の借入金の担保として自動車を金融業者に差し入れる行為は、まさにこの意思の発現である。担保の提供は所有権の終局的な移転を伴わないが、判例は、所有権留保の特約付き割賦売買契約に基づいて引渡しを受けた貨物自動車を、会社に無断で金融業者に借入金の担保として提供した事案で、横領罪に該当するとした原判断を相当としている(最決昭55.7.15)。したがって甲には横領罪が成立する。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
正しい。甲には横領罪が成立する。判例は、横領罪の目的物は犯人の占有する他人の物であれば足り、給付者が民法上返還を請求し得ることを要件としないとして、盗品の売却代金の着服に横領罪を認めている(最判昭36.10.10)。
甲は乙から盗品の売却を委託され、売却代金を乙のために保管中に着服している。委託は盗品の換金という不法な目的に基づくものであり、委託者乙は民法708条により代金の返還を請求できないので、それでも横領罪が成立するかが問題になる。判例は、窃盗犯人から盗品の有償処分のあっせんを依頼された者がその売却代金を着服した事案で、252条1項の横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることをもって足り、その物の給付者において民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としないとしたうえ、窃盗犯人が返還を請求し得ないとしても、被告人は自己以外の者のためにこれを占有しているのであるから、その占有中にこれを着服した以上、横領の罪責を免れないとした(最判昭36.10.10)。刑法上の他人の物であるかどうかは民法上の返還請求権の有無と切り離して判断され、事実上の委託信任関係とそれに基づく占有があれば横領罪の構成要件に該当する。したがって、甲には横領罪が成立する。

刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以って足るのであって、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない
正しい。甲には横領罪が成立する。判例は、他人の不動産に不実の抵当権設定仮登記を了したことも不法領得の意思を実現する行為として十分であるとしている(最決平21.3.26)。
甲は不動産を乙に売却しており、所有権は乙に移っているので、その不動産は甲にとって他人の物であり、登記名義が甲に残っている以上、甲には横領罪の占有が認められる(最判昭30.12.26)。問題は、丙との間に消費貸借も抵当権設定契約も存在しないのに、丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を了したにすぎない行為が横領に当たるかである。判例は、他人のために保管する建物の登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了した事案で、仮登記には本登記によって後の権利変動に優先する順位保全の効力があり、不動産取引の実務では仮登記があればその権利が確保されているものとして扱われるのが通常であることを理由に、不実とはいえ仮登記を了したことは不法領得の意思を実現する行為として十分であるとして、横領罪の成立を認めた(最決平21.3.26)。抵当権の設定という所有権の一部の処分であっても、登記が実体を欠くものであっても、所有者でなければできない処分をする意思の発現と評価できる。したがって甲には横領罪が成立する。

不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である
- 動産の売却:売却の意思表示をした時。相手方の買受けの意思表示は不要
- 不動産の売却・抵当権設定:所有権移転登記・抵当権設定登記を完了した時。不実の仮登記でも足りる
- 金銭:費消・着服した時。預金であれば払い戻した時など
- 未遂:処罰規定がない
誤り。甲に横領罪は成立しない。「丙を権利者とする抵当権を設定し,その抵当権設定登記を完了した」不動産は甲自身の所有物であり、他人の物に当たらないので、横領罪ではなく背任罪が問題になる(最判昭31.12.7)。
横領罪(252条1項)の客体は自己の占有する他人の物である。本肢の不動産は甲自身が所有するものであり、乙のために抵当権を設定しても所有権は甲に残ったままである。抵当権は目的物の交換価値を把握する担保物権にすぎず、不動産が乙の物になるわけではないので、他人の物という要件を欠き、横領罪の構成要件に該当しない。もっとも、抵当権設定者は、登記が完了するまで抵当権者に登記手続を完了させるよう協力する任務を負い、この任務は主として他人である抵当権者のために負うものであるから、設定者は他人のためにその事務を処理する者(247条)に当たる。判例は、自己の不動産に乙のため根抵当権を設定した後、その登記が未了であることを利用して丙のために根抵当権を設定して登記を了した事案で、乙の一番抵当権を後順位の二番抵当権にとどめたことは抵当物件の価額からの優先弁済という財産上の利害に関わるので247条の損害に当たるとして、背任罪の成立を認めている(最判昭31.12.7)。したがって、甲に成立するのは背任罪であり、横領罪は成立しない。

抵当権設定者はその登記に関し、これを完了するまでは、抵当権者に協力する任務を有することはいうまでもないところであり、右任務は主として他人である抵当権者のために負うものといわなければならない。
| 場面 | 客体は他人の物か | 成立する罪 |
|---|---|---|
| 不動産の二重売買 | 第一買主の物 | 横領罪 |
| 売却済みの不動産への抵当権設定 | 買主の物 | 横領罪 |
| 二重抵当 | 設定者自身の物 | 横領罪は成立せず背任罪 |
| 質物を質権者に無断で所有者に返還 | 所有権を侵害していない | 横領罪は成立せず背任罪 |
誤り。違うのは「横領罪が成立する」の部分である。だまし取った本件不動産を乙に転売して登記を移す行為は、先に成立した詐欺罪によって評価し尽くされた不可罰的事後行為であり、横領罪は成立しない。
横領罪(252条1項)は、自己の占有する他人の物を横領する罪であり、その占有は所有者との委託信任関係に基づくものであることを要する。甲は、Aをだまして本件不動産の所有権移転登記を受け、引渡しも受けているが、この占有はAの委託に基づくものではなく、詐欺によって奪い取ったものである。しかも、Aの所有権に対する侵害は、甲が本件不動産をだまし取った時点で詐欺罪として完成しており、その後に甲が本件不動産を乙に売却して所有権移転登記を行っても、Aの所有権が新たに侵害されるわけではない。詐欺罪は状態犯であり、既遂後に財物を利用・処分する行為は、先行する詐欺罪の違法評価の中に含まれている。したがって、乙への所有権移転登記は詐欺罪の不可罰的事後行為であり、別に横領罪を構成しない。窃盗犯人が盗んだ物を売却しても横領罪にならないのと同じである。乙は甲の詐取の事実を知って譲り受けているので、乙に対する詐欺罪も問題にならない。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「横領罪が成立する」の部分である。だまし取った本件不動産を乙に転売して登記を移す行為は、先に成立した詐欺罪によって評価し尽くされた不可罰的事後行為であり、横領罪は成立しない。
横領罪(252条1項)は、自己の占有する他人の物を横領する罪であり、その占有は所有者との委託信任関係に基づくものであることを要する。甲は、Aをだまして本件不動産の所有権移転登記を受け、引渡しも受けているが、この占有はAの委託に基づくものではなく、詐欺によって奪い取ったものである。しかも、Aの所有権に対する侵害は、甲が本件不動産をだまし取った時点で詐欺罪として完成しており、その後に甲が本件不動産を乙に売却して所有権移転登記を行っても、Aの所有権が新たに侵害されるわけではない。詐欺罪は状態犯であり、既遂後に財物を利用・処分する行為は、先行する詐欺罪の違法評価の中に含まれている。したがって、乙への所有権移転登記は詐欺罪の不可罰的事後行為であり、別に横領罪を構成しない。窃盗犯人が盗んだ物を売却しても横領罪にならないのと同じである。乙は甲の詐取の事実を知って譲り受けているので、乙に対する詐欺罪も問題にならない。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「法律上の支配力を有する状態を含まない」の部分である。横領罪の占有は濫用のおそれのある支配力をいい、事実上の支配に加えて登記名義や預金名義のような法律上の支配を含む。
窃盗罪のような奪取罪では、占有は侵害の対象であり、他人の占有を奪ったといえるかが問題になるから、物に対する事実上の支配を意味し、その排他性が重視される。これに対し、横領罪の占有は侵害の対象ではなく、委託者との信頼関係に基づいて物を任されている状態であり、その者が物を濫用して所有者でなければできない処分をする危険があるかどうかが問題になる。したがって、横領罪の占有は、濫用のおそれのある支配力があれば足り、物を現実に手元に置く事実上の支配だけでなく、不動産の登記名義人や預金の名義人のように、処分できる地位にあるという法律上の支配も含まれる。判例も、他人の不動産の登記名義人がこれを勝手に処分した場合や、預かった金銭を預金していた者がこれを払い戻した場合に横領罪を認めており、法律上の支配を占有として扱っている。本肢は、横領罪の占有から法律上の支配を除いており、誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
| 窃盗罪 | 横領罪 | |
|---|---|---|
| 占有の意味 | 事実上の支配(他人の占有を奪う対象) | 事実上の支配+法律上の支配(任された物を処分できる立場) |
| 不動産 | 客体にならない(不動産侵奪罪) | 客体になる。登記名義人に占有がある |
| 預金 | 預金の名義人に占有がある |
誤り。違うのは「横領罪が成立する」の部分である。客室備付けのドライヤーの占有はホテルにあり、宿泊客の甲との間に委託信任関係に基づく占有はないから、成立するのは窃盗罪である。
横領罪(252条1項)の客体は自己の占有する他人の物であり、その占有は委託信任関係に基づくものでなければならない。これに対し、他人が占有する物をその意思に反して自己の占有に移せば窃盗罪(235条)となる。両罪を分けるのは、行為者がその物を任されて占有していたかどうかである。客室備付けのドライヤーは、宿泊客が客室内で使うことを許されているにすぎず、ホテルは客室の設備として引き続き管理している。宿泊客が客室内で手に取って使えることは、ホテルから保管を任されたことを意味せず、ドライヤーの占有はホテルにある。甲は、ホテルの占有するドライヤーを自宅で使うつもりで勝手に持ち帰り、ホテルの意思に反してその占有を自己に移しているから、窃取に当たる。したがって甲に成立するのは窃盗罪であり、横領罪は成立しない。本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
- ["共同で保管している現金", "共同占有。1人が無断で全部を持ち出せば窃盗罪(最判昭25.6.6)"]
- ["レジ係のアルバイトとレジ内の売上金", "占有は店長にある。持ち出せば窃盗罪"]
- ["施錠されたスーツケースの中身", "中身の占有は委託者にある。開錠して取り出せば窃盗罪"]
- ["客室備付けのドライヤー", "占有はホテルにある。持ち帰れば窃盗罪"]
- ["誤って配達された他人あての荷物", "委託信任関係がない。領得すれば遺失物等横領罪"]
誤り。違うのは「委託物横領罪」が成立するとする点である。横領罪は他人の所有権を侵害する罪であり、質物を所有者の丙に返した甲は乙の質権を害しただけで所有権を侵害していないから、成立するのは背任罪であって委託物横領罪ではない。
横領罪(252条1項)の客体は「自己の占有する他人の物」であり、他人の所有に属する物を自己の物として処分することで他人の所有権を侵害する罪である。質物である腕時計の所有者は、被担保債権の債務者である丙であり、質権者の乙は腕時計について質権という担保物権を持つにすぎない。甲が乙に無断で腕時計を丙に返還した行為は、乙の質権を失わせるものではあるが、腕時計を所有者である丙の手に戻したのであるから、丙の所有権を侵害したことにはならない。判例も、質権者から質物の保管を委託された者がほしいままにこれを所有者に交付した行為について、252条1項の罪の成立には他人の所有権に対する侵害が必要であるとして横領罪の成立を否定し、質権者のために質物を保管する任務に背いて質権者に損害を加えたものとして背任罪の成立を認めている(大判明44.10.13)。したがって甲に成立するのは背任罪であり、委託物横領罪は成立しない。本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
- ["不動産の二重売買", "不動産は第一買主の物。横領罪"]
- ["売却済みの不動産への抵当権設定", "不動産は買主の物。横領罪"]
- ["二重抵当", "不動産は設定者の物。横領罪は成立せず背任罪"]
- ["質物を質権者に無断で所有者に返還", "所有権を侵害していない。横領罪は成立せず背任罪"]
- ["会社の情報を自己の媒体で持ち出す", "他人の「物」を領得していない。背任罪が問題になる"]
誤り。違うのは「犯人の一身的な継続的属性に限られる」の部分である。判例は、65条の身分を一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態をすべて含むものとし、継続的な属性に限っていない。
65条は、身分によって構成すべき犯罪と身分によって刑の軽重がある犯罪について、身分のない者が加功した場合の処理を定めている。ここでいう身分について判例は、男女の性別、内外国人の別、親族の関係、公務員たる資格のような関係のみに限らず、総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称するものであるとし、横領罪における物の占有者という地位も身分に当たるとした(最判昭27.9.19)。性別や親族関係のような継続的な属性だけでなく、他人の物を占有しているという一時的な状態や、特定の行為との関係でのみ意味を持つ地位も身分に含まれる。65条が身分犯について特別の規定を置いたのは、構成要件が行為者の人的な地位や状態を要素としている以上、それを持たない者の加功をどう扱うかを定める必要があるからであり、その地位や状態が継続的であるかどうかは、この必要性と関係がない。判例はさらに、営利の目的のような一定の目的も身分に当たるとしている。したがって、一身的な継続的属性に限るとする本肢は誤りである。

刑法六五条にいわゆる身分は、男女の性別内外国人の別、親族の関係、公務員たるの資格のような関係のみに限らず、総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称する
誤り。「横領罪」は成立しない。横領罪の占有は委託信任関係に基づくものでなければならず、乙に無断でB工場の敷地を使用している甲の占有はこれに当たらない。
横領罪(252条1項)は、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する。ここでいう占有は、所有者などから物の保管や管理を任されたという委託信任関係に基づくものでなければならず、横領罪は、任された物を自己の物として処分することで信頼を裏切る点に本質がある。委託信任関係に基づかずに他人の物を占有している者がこれを領得しても、横領罪ではなく、占有の取得の態様に応じて窃盗罪、不動産侵奪罪、遺失物等横領罪などが問題になるにすぎない。甲がB工場の敷地の一部を占有するに至ったのは、乙に無断で倉庫を建築したからであり、乙から敷地の管理を任されたわけでも、賃借したわけでもない。甲の占有は乙の意思に反して一方的に設定されたものであって、乙との間に委託信任関係は存在しない。不動産は横領罪の客体になり得るが、本肢では「自己の占有する」という要件のうち委託信任関係に基づく占有という点を欠く。したがって甲に横領罪は成立せず、同じ事実は不動産侵奪罪として評価される。本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「当該家屋は「自己の占有する」物とはいえないので,甲には乙を被害者とする横領罪は成立しない」の部分である。横領罪の占有は法律上の支配を含み、登記名義を保持する売主は引渡し後も不動産を占有しているから、無断で抵当権を設定した甲には横領罪が成立する。
横領罪(252条1項)の占有は、物に対する事実上の支配に限られず、登記名義や預金名義のように、物を処分し得る法律上の支配を含む。横領罪の本質は、委託信任関係に背いて物を領得する点にあり、濫用のおそれのある支配力を持つ者が主体となるからである。判例は、不動産の売買で所有権移転登記が未了のときは、売主はなお当該不動産を占有しているとしている(最判昭30.12.26)。甲は家屋を乙に売却して引き渡し代金も受領しているから、所有権は乙に移転し、家屋は甲にとって他人の物である。しかし登記名義は甲に残っており、甲は登記名義人として家屋を処分し得る法律上の支配を持っているから、引き渡した後も横領罪にいう占有を失っていない。その家屋に乙に無断で丙のための抵当権を設定し登記をする行為は、所有者でなければできない処分を権限なくするものであり、不法領得の意思を実現する横領行為に当たる。したがって甲には乙を被害者とする横領罪が成立し、本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「甲に横領罪は成立しない」の部分である。借り受けた自動車は乙会社から委託を受けて占有する他人の物であり、返還の要求を拒否して使用を続けた行為は不法領得の意思を外部に表す横領行為に当たるから、横領罪が成立する。
甲は、借り受けた時点では返還期日に返還する意思を持っていたから、引渡しを受けた時点で詐欺罪は成立しない。借り受けた自動車は、レンタル契約という委託信任関係に基づいて甲が占有する乙会社所有の物であり、横領罪(252条1項)の客体である自己の占有する他人の物に当たる。横領とは、自己の占有する他人の物について不法領得の意思を実現する一切の行為をいい、不法領得の意思とは、委託の任務に背いてその物について権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。返還期日を過ぎて使い続けただけでは、単なる返還の遅滞とみる余地もあるが、所有者である乙会社の従業員から直ちに返還するよう強く要求されたのにこれを拒否し、なお自分のために使用を続けた時点で、甲が自動車を所有者のように扱う意思は外部に明らかに表れている。返還の拒絶は、委託された物を自己の物として保持する処分であり、不法領得の意思を実現する横領行為に当たる。したがって甲には横領罪が成立し、本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「甲に横領罪が成立する」の部分である。横領罪は不法領得の意思を実現する行為を処罰するものであり、過失で水没させた自動車を放置しただけの甲には、自動車を自己の物として利用・処分する意思がなく、横領罪は成立しない。
横領罪(252条1項)の横領とは、自己の占有する他人の物について不法領得の意思を実現する一切の行為をいい、判例は、横領罪における不法領得の意思を、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物について権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思としている(最判昭24.3.8)。横領罪は領得罪であり、物を自己の物として利用・処分する意思に基づく行為を処罰するものであるから、物を壊したり捨てたりする毀棄・隠匿の意思で行う行為は、横領罪ではなく毀棄罪の問題になる。甲は、借り受けた自動車を運転中にハンドル操作を誤って海に転落させており、水没は過失によるものであって、自動車を領得する行為ではない。その後そのまま放置したことも、水没した自動車の占有を手放したにすぎず、自動車を自己の物として利用・処分する意思の表れとはいえない。領得の意思を伴う行為が全く存在しない以上、甲に横領罪は成立しない。過失による毀棄を処罰する規定もないから、甲の責任は民事上の損害賠償にとどまる。本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
正しい。1項を真正身分犯・不真正身分犯を通じた共犯の成立の規定、2項を不真正身分犯の科刑の規定とする見解からは、非占有者の甲は1項により業務上横領罪の教唆犯となり、業務者という加重身分がないので2項により単純横領罪の刑が科される。
業務上横領罪(253条)は、他人の物の占有者という犯罪を構成する身分と、業務者という刑を加重する身分とが重なった罪である。本肢の見解は、65条1項を真正身分犯と不真正身分犯を通じて共犯の成立を定めた規定、2項を不真正身分犯の科刑を定めた規定と解する。この見解では、身分のない者が身分犯に加功した場合、罪名は1項によって身分者と同じ身分犯の共犯になり、不真正身分犯については2項によって科刑だけが通常の刑に落とされる。財物の非占有者である甲が、業務上占有者の乙を教唆して横領させた場合、甲には占有者・業務者のどちらの身分もないが、1項により業務上横領罪の教唆犯が成立し、業務者という加重身分がないので、2項により単純横領罪(252条1項)の刑が科される。したがって、本肢はこの見解からの帰結として正しい。判例も、非占有者が業務上占有者の横領に加功した事案で、1項により業務上横領罪の共犯の成立を認め、2項により単純横領罪の刑を科しており(最判昭32.11.19)、結論は同じである。

犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
| 見解 | 1項 | 2項 | 非占有者の罪責 |
|---|---|---|---|
| 判例・通説 | 真正身分犯の成立と科刑 | 不真正身分犯の成立と科刑 | 判例は1項で業務上横領罪の共犯、2項で単純横領罪の刑 |
| 成立と科刑で分ける見解 | 真正・不真正を通じて共犯の成立 | 不真正身分犯の科刑 | 業務上横領罪の共犯が成立し、単純横領罪の刑 |
| 違法身分と責任身分で分ける見解 | 違法身分の連帯 | 責任身分の個別化 | 単純横領罪の共犯 |
正しい。横領罪は不法領得の意思の発現行為があれば成立し、判例は、自己の占有する他人の物を第三者に売り渡そうとする行為があれば、相手方の買受けの意思表示を待たずに横領罪が完成するとしている(大判大2.6.12)。
横領罪(252条1項)の横領とは不法領得の意思を実現する一切の行為をいい、判例は、不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいうとしている(最判昭24.3.8)。その発現行為は必ずしも客観的な領得行為であることを要しない(最判昭27.10.17)。大判大2.6.12は、横領罪は自己の占有する他人の財物に対して不法領得の意思の発現行為があることによって成立し、第三者の行為が介在することを要しないとして、他人の財物を不法に第三者に売り渡そうとする行為があれば、相手方の買受けの意思表示を待たずに横領罪は完成するとした。売却の申込みをした時点で所有者でなければできない処分に出ているからである。甲は、乙から賃借している骨董品を、売却代金を自己の借金の返済に充てるつもりで乙に無断で丙に買取りを求めており、この時点で不法領得の意思が外部に発現している。したがって、丙が買受けの意思表示をしなくても甲には横領罪が成立し、本肢は正しい。

横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいう
- 占有:事実上の支配に加え、登記名義のような法律上の支配を含む。委託信任関係に基づくことが必要で、誤配達された物の占有は当たらない(遺失物等横領罪)
- 他人の物:売却して代金を受領した不動産は、登記が売主に残っていても買主の物
- 横領行為:不法領得の意思を実現する一切の行為。動産は売却の申込みをした時、不動産は登記を完了した時に既遂。抵当権の設定登記も横領行為
- 委託信任関係:契約が取り消され又は解除された後も、返還するまでの占有は委託信任関係に基づく













