1人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
この条文の過去問 37問
誤り。違うのは「甲に詐欺罪は成立しない」の部分である。債務の負担が私法上有効であるかどうかは詐欺罪の成立に影響しない(最決昭43.10.24)。
甲は、不正な細工を施した花札を用いて乙を負けさせ、300万円の債務を負担させている。勝敗を甲が支配しており、偶然の勝敗を争っていないから、これは賭博ではなく、乙を欺いて債務を負担させる行為であり、得たものが財物ではなく債権という利益であるから、246条2項の詐欺罪が問題となる。賭博による債務は公序良俗に反して無効であり、権利関係が発生しないから財産上の利益の侵害がないという主張に対し、最決昭43.10.24は、私法上有効であるかどうかは詐欺罪の成立に影響がないとして、2項詐欺罪の成立を認めた原判断を是認した。無効な債務であっても、乙は事実上その支払を求められる立場に置かれ、甲は事実上支払を受け得る地位を得ているのであり、詐欺罪はこのような事実上の財産的利益を保護しているからである。したがって、甲には乙に対する2項詐欺罪が成立する。原因となる行為が無効であることを理由に成立を否定する本肢は、判例に反する。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「甲に詐欺罪は成立しない」の部分である。債務の負担が私法上有効であるかどうかは詐欺罪の成立に影響しない(最決昭43.10.24)。
甲は、不正な細工を施した花札を用いて乙を負けさせ、300万円の債務を負担させている。勝敗を甲が支配しており、偶然の勝敗を争っていないから、これは賭博ではなく、乙を欺いて債務を負担させる行為であり、得たものが財物ではなく債権という利益であるから、246条2項の詐欺罪が問題となる。賭博による債務は公序良俗に反して無効であり、権利関係が発生しないから財産上の利益の侵害がないという主張に対し、最決昭43.10.24は、私法上有効であるかどうかは詐欺罪の成立に影響がないとして、2項詐欺罪の成立を認めた原判断を是認した。無効な債務であっても、乙は事実上その支払を求められる立場に置かれ、甲は事実上支払を受け得る地位を得ているのであり、詐欺罪はこのような事実上の財産的利益を保護しているからである。したがって、甲には乙に対する2項詐欺罪が成立する。原因となる行為が無効であることを理由に成立を否定する本肢は、判例に反する。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「刑法第246条第1項の詐欺罪及び同条第2項の詐欺罪が成立し、両罪は併合罪となる」の部分である。1個の欺く行為によって財物と財産上の利益を得た場合は、包括して1個の詐欺罪が成立する。
246条は、1項で人を欺いて財物を交付させる行為を、2項で同じ方法により財産上不法の利益を得る行為を処罰する。1項と2項は客体が財物か利益かによって分けられているだけで、同じ条文の同じ罪質の罪である。判例は、1個の欺く行為によって財物をだまし取り、かつ財産上不法の利益を得た場合には、246条に当たる単一の詐欺罪が成立するとしている(大判大12.12.8)。甲は、代金を支払う意思も能力もないのにあるように装って朝食付きの宿泊を申し込み、宿泊という利益と朝食という財物の提供を受けている。宿泊と朝食は、同じ民宿に対する1個の申込みという同じ欺く行為と、代金が支払われるという同じ錯誤に基づき、同じ機会に提供されたものであり、害されたのも同じ民宿の財産である。これを二つの詐欺罪に分けて併合罪とする理由はなく、全体を包括して1個の詐欺罪が成立する。恐喝して財物の交付を受けるとともに利益を得た場合も同様である。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。(2項)前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「刑法第246条第1項の詐欺罪及び同条第2項の詐欺罪が成立し、両罪は併合罪となる」の部分である。1個の欺く行為によって財物と財産上の利益を得た場合は、包括して1個の詐欺罪が成立する。
246条は、1項で人を欺いて財物を交付させる行為を、2項で同じ方法により財産上不法の利益を得る行為を処罰する。1項と2項は客体が財物か利益かによって分けられているだけで、同じ条文の同じ罪質の罪である。判例は、1個の欺く行為によって財物をだまし取り、かつ財産上不法の利益を得た場合には、246条に当たる単一の詐欺罪が成立するとしている(大判大12.12.8)。甲は、代金を支払う意思も能力もないのにあるように装って朝食付きの宿泊を申し込み、宿泊という利益と朝食という財物の提供を受けている。宿泊と朝食は、同じ民宿に対する1個の申込みという同じ欺く行為と、代金が支払われるという同じ錯誤に基づき、同じ機会に提供されたものであり、害されたのも同じ民宿の財産である。これを二つの詐欺罪に分けて併合罪とする理由はなく、全体を包括して1個の詐欺罪が成立する。恐喝して財物の交付を受けるとともに利益を得た場合も同様である。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。(2項)前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる」の部分である。判例は、偽造通貨を行使して財物の交付を受けた場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別に成立しないとしている。
行使の目的で1万円札を偽造した点には通貨偽造罪(148条1項)が、これを代金として事情を知らないAに手渡した点には偽造通貨行使罪(同条2項)が成立し、両罪は手段と結果の関係にあるので牽連犯になる。問題は、偽造の1万円札を真正なものと誤信させて商品の交付を受けた点について、さらに詐欺罪(246条1項)が成立するかである。判例は、偽造通貨を行使して財物の交付を受けた場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別に罪を構成しないとしている。偽造通貨の行使は、これを真正な通貨と誤信させて相手方に受け取らせ、財物や利益を得ることを当然に伴うからである。また、別に詐欺罪の成立を認めると、収得後にそれと知って行使した者について、額面価格の3倍以下の罰金又は科料という特に軽い刑を定めた152条の趣旨が失われることになる。したがって、甲に成立するのは通貨偽造罪と偽造通貨行使罪であり、詐欺罪を加えた3罪の牽連犯になるのではない。

行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
誤り。違うのは「不作為による欺罔行為が認められることはない」の部分である。告知義務のある者が真実を告げないことも欺罔行為になり、判例は誤振込みを告げずに払戻しを受けた行為に詐欺罪を認めている(最決平15.3.12)。
246条1項の「人を欺いて」とは、相手方を錯誤に陥らせる行為をいい、その手段・方法に制限はないから、不作為によって行うこともできる。ただし、不作為が欺罔行為と評価されるのは、真実を告知すべき法律上の義務を負う者が、これを告げずに相手方の錯誤を利用した場合に限られる。判例は、一定の事情を告知すべき義務のある者がことさらにこれを黙秘することも欺罔の手段になるとし(大判大7.7.17)、生命保険契約の締結に際して既往症を告知しなかった場合に法令上の告知義務違反を認めている(大判昭7.2.19)。また、自己の口座に誤った振込みがあったことを知りながら、これを告げずに預金の払戻しを受けた事案では、受取人は誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務を負うとして、詐欺罪の成立を認めた(最決平15.3.12)。銀行には組戻しなどの措置をとる利益があるからである。したがって、詐欺罪に不作為による欺罔行為が認められることはないとする肢は誤りである。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる」の部分である。判例は、偽造通貨を行使して財物の交付を受けた場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別に成立しないとしている。
行使の目的で1万円札を偽造した点には通貨偽造罪(148条1項)が、これを代金として事情を知らないAに手渡した点には偽造通貨行使罪(同条2項)が成立し、両罪は手段と結果の関係にあるので牽連犯になる。問題は、偽造の1万円札を真正なものと誤信させて商品の交付を受けた点について、さらに詐欺罪(246条1項)が成立するかである。判例は、偽造通貨を行使して財物の交付を受けた場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別に罪を構成しないとしている。偽造通貨の行使は、これを真正な通貨と誤信させて相手方に受け取らせ、財物や利益を得ることを当然に伴うからである。また、別に詐欺罪の成立を認めると、収得後にそれと知って行使した者について、額面価格の3倍以下の罰金又は科料という特に軽い刑を定めた152条の趣旨が失われることになる。したがって、甲に成立するのは通貨偽造罪と偽造通貨行使罪であり、詐欺罪を加えた3罪の牽連犯になるのではない。

行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
誤り。違うのは「乙に事後強盗既遂罪が成立する」の部分である。窃盗に着手した後、財物を奪うために暴行を加えて奪った場合は、暴行が財物奪取の手段であるから、236条1項の強盗既遂罪が成立する。
本件計画は、うそを言ってカードを封筒に入れさせ、隙を見て封筒をすり替えて持ち去るというもので、Aに交付をさせるものではないから、窃盗に当たる。この種の計画では、うそが述べられ、すり替え役が被害者宅付近まで赴いた時点で窃盗罪の実行の着手が認められており(最決令4.2.14)、乙がA方でカードを封筒に入れるよう求めた時点では、すでに窃盗に着手している。事後強盗罪(238条)は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をした場合の罪である。これに対し、窃盗に着手した者が、まだ得ていない財物を奪うために暴行・脅迫を加えて奪った場合は、暴行・脅迫が財物奪取の手段になっているから、236条1項の強盗罪が成立する。乙は、逮捕を免れる目的とともに、カードを手に入れるためにAを多数回殴り、抵抗できないAからカードを奪っている。したがって、乙に成立するのは強盗既遂罪である。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
- ["奪う意思で暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫なしに取る", "窃盗罪(新たな暴行・脅迫を必要とする見解)"]
- ["窃盗に着手後に発見され、奪うために暴行を加えて奪う", "1項強盗罪(居直り強盗)"]
- ["窃盗の後、取返しを防ぎ・逮捕を免れ・罪跡を隠滅するために暴行を加える", "事後強盗罪"]
誤り。違うのは「乙に事後強盗既遂罪が成立する」の部分である。窃盗に着手した後、財物を奪うために暴行を加えて奪った場合は、暴行が財物奪取の手段であるから、236条1項の強盗既遂罪が成立する。
本件計画は、うそを言ってカードを封筒に入れさせ、隙を見て封筒をすり替えて持ち去るというもので、Aに交付をさせるものではないから、窃盗に当たる。この種の計画では、うそが述べられ、すり替え役が被害者宅付近まで赴いた時点で窃盗罪の実行の着手が認められており(最決令4.2.14)、乙がA方でカードを封筒に入れるよう求めた時点では、すでに窃盗に着手している。事後強盗罪(238条)は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をした場合の罪である。これに対し、窃盗に着手した者が、まだ得ていない財物を奪うために暴行・脅迫を加えて奪った場合は、暴行・脅迫が財物奪取の手段になっているから、236条1項の強盗罪が成立する。乙は、逮捕を免れる目的とともに、カードを手に入れるためにAを多数回殴り、抵抗できないAからカードを奪っている。したがって、乙に成立するのは強盗既遂罪である。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
- ["奪う意思で暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫なしに取る", "窃盗罪(新たな暴行・脅迫を必要とする見解)"]
- ["窃盗に着手後に発見され、奪うために暴行を加えて奪う", "1項強盗罪(居直り強盗)"]
- ["窃盗の後、取返しを防ぎ・逮捕を免れ・罪跡を隠滅するために暴行を加える", "事後強盗罪"]
誤り。違うのは「被告人としての防御権の行使に当たるから、名誉毀損罪が成立することはない」の部分である。人違いと気付きながら公判廷で虚偽の事実を摘示することは、防御権の範囲を逸脱した濫用であり、名誉毀損罪が成立する(最判昭27.3.7)。
被告人が公判廷で自己の言い分を述べることは、防御権の行使として保障されており、その過程で他人の名誉に触れる発言をしても、正当な防御の範囲内であれば、35条により違法性が阻却される。しかし、防御権も無制限ではなく、その範囲を逸脱した行為まで正当化されるわけではない。判例は、虚偽告訴の罪で起訴された被告人が、告訴が人違いであったことに気付いていながら、公判廷において、真意に反する主張をして公然と虚偽の事実を摘示し、被告訴人の名誉を毀損した事案で、被告人としての防御権の範囲を逸脱したもの、防御権の濫用と認めるべきであるとして、名誉毀損罪の成立を認めた原判決を正当とした(最判昭27.3.7)。人違いであると自ら分かっている以上、その虚偽の事実を述べることは、自己の正当な利益を守るために必要な主張とはいえず、他人の社会的評価を害するだけのものだからである。したがって、名誉毀損罪が成立することはないとする肢は誤りである。

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
誤り。違うのは「一般人が認識可能であった事情及び被告人が特に認識した事情に基づいて判断すべきという立場に立った上で」以下の部分である。【判旨】は受領行為自体の危険性を問題としておらず、本肢のような評価も前提としていない。
【判旨】は、被告人が、欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与したことを理由に、「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず、加功前の欺罔行為を含めた本件について詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うとしている。責任の根拠は、すでに詐欺未遂に当たるXの欺罔行為を含む詐欺全体に共謀のうえ関与したことに置かれており、受領行為それ自体に未遂犯として処罰すべき危険性があるかどうかは判断されていない。作戦の開始の有無にかかわらないとしている以上、作戦が開始されたという事情を、危険性を判断する基礎に入れるかどうかも問題とされていない。また、本肢がいう一般人が認識可能であった事情と行為者が特に認識した事情を基礎とする立場によるとしても、一般人がAの協力の事実を認識できたと評価すれば、荷物を受領しても現金を得る危険性はないことになり、未遂犯の成立を否定する方向に働く。この立場から未遂犯を認めるのであれば、一般人はその事実を認識できなかったという評価が前提となるはずである。

被告人は,本件につき,Xによる欺罔行為がされた後,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,Xと共謀の上,本件を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与している。そうすると,「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず,被告人は,その加功前の欺罔行為を含めた本件につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。
正しい。判例は、搭乗券の交付を請求する者自身が搭乗するかどうかは係員の交付の判断の基礎となる重要な事項であり、他人を搭乗させる意図を秘して搭乗券の交付を請求する行為は欺く行為に当たるとして、搭乗券についての詐欺罪を認めている。
最決平22.7.29は、本肢と同じ事案で、搭乗券の交付に当たり厳重な本人確認が行われ、確認ができない場合や、請求者が搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図を持っていることが分かっていれば係員が交付に応じることはなかったという事情のもとでは、搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、係員においてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるとし、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して搭乗券の交付を請求する行為は詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これにより交付を受けた行為は246条1項の詐欺罪を構成するとした。欺く行為とは、相手方が財物を交付するかどうかを判断する基礎となる重要な事項を偽ることであり、言葉でうそを言う場合に限らず、自分が搭乗するという前提を含む請求という挙動によっても行われる。搭乗券は航空会社にとって財産的価値を持つ財物であり、代金が支払済みであっても、重要な事項を偽って交付させた以上、詐欺罪が成立する。本肢は判例の立場と一致しており、正しい。

搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して本件係員らに対してその搭乗券の交付を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず
- ["うそを言う", "事実と異なることを言葉で告げる。価格が暴落すると偽る、警察官を装うなどである"]
- ["挙動による欺罔", "行為そのものに一定の意思や事実の表示が含まれる。支払意思がないのに注文する、他人を搭乗させる意図を隠して搭乗券を請求するなどである"]
- ["不作為による欺罔", "告知義務があるのに真実を告げない。誤振込みを告げずに払い戻す、釣銭を多く渡されたと気付いたのに告げずに受け取るなどである"]
誤り。違うのは「詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,これらは観念的競合となる」の部分である。判例は、偽造通貨の行使による詐欺は偽造通貨行使罪に吸収され、詐欺罪は別に成立しないとしている。
偽造通貨を真正な通貨として相手に渡し、商品の交付を受ける行為は、偽造通貨行使罪(148条2項)に当たるとともに、相手を欺いて財物を交付させる詐欺罪(246条1項)の構成要件にも当たるように見える。しかし判例は、偽造紙幣を行使する詐欺行為によって財物を領得した場合、その詐欺行為は偽造通貨行使罪に吸収されるとしている。偽造通貨の行使は、相手をだまして財物を得ることを通常伴うのであり、その法益侵害は無期又は3年以上の拘禁刑という偽造通貨行使罪の重い法定刑の中で評価し尽くされている。重い罪に通常伴う軽い罪が重い罪に吸収される吸収関係であり、一個の行為が二個の罪名に触れる観念的競合(54条1項前段)ではない。観念的競合は二個の罪がいずれも成立したうえで科刑上一罪として扱う場合であるのに対し、吸収関係では成立する罪が一個に絞られる。本肢の甲には偽造通貨行使罪だけが成立し、詐欺罪は成立しないので、両罪が成立して観念的競合になるとする本肢は誤りである。

偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 偽造通貨を行使して商品をだまし取った | 判例 | 詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収 |
| 監禁するために逮捕し、引き続き監禁した | 最大判昭28.6.17 | 包括して220条の一罪 |
| 凶器を準備して集合した後、傷害に及んだ | 最決昭43.7.16 | 凶器準備集合罪と傷害罪は併合罪 |
| 恐喝の手段として監禁した | 最判平17.4.14 | 監禁罪と恐喝罪は併合罪(牽連犯でない) |
| 窃取した預金通帳で預金を払い戻した | 最判昭25.2.24 | 窃盗罪と詐欺罪が成立し併合罪 |
誤り。違うのは「強盗未遂罪のみが成立する」の部分である。売上金についての強盗未遂のほかに、脅迫によって乗車料金の支払を免れた点について2項強盗が成立し得るので、強盗未遂罪のみとはいえない。
甲は、売上金を奪う目的で運転手の首元に鋭利なガラス片を突き付けて売上金を渡すよう要求しており、相手の反抗を抑圧するに足りる脅迫を用いて財物の強取に着手している。抵抗されて売上金を得られなかったので、売上金については強盗未遂罪(236条1項・243条)が成立する。しかし、甲の行為はそれだけにとどまらない。甲は乗客を装ってタクシーに乗り、行き先を指定して人気のない場所まで運ばせており、乗車料金を請求された際に脅迫を加えてそのまま立ち去っている。乗車料金の支払を免れることは財産上不法の利益であり、反抗を抑圧するに足りる脅迫によって請求を受けない状態を作り出して料金の支払を免れた以上、2項強盗(236条2項)が成立する。同一の機会に同じ被害者に対して1項強盗の未遂と2項強盗の既遂があるので、包括して強盗既遂罪一罪になる。当初から料金を支払う意思がなかった点について詐欺罪の成否も問題になり得るが、いずれにしても強盗未遂罪のみが成立するとはいえず、本肢は誤りである。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「電子計算機使用詐欺罪が成立する」の部分である。246条の2は「前条に規定するもののほか」と定める詐欺罪の補充規定であり、窓口の行員を欺いて振込処理をさせた本肢では2項詐欺罪が成立して電子計算機使用詐欺罪は成立しない。
電子計算機使用詐欺罪(246条の2)は、欺くことのできない機械に虚偽の情報を与えて利益を得る行為を捕捉するために設けられた。同条は冒頭で「前条に規定するもののほか」と定めており、詐欺罪(246条)が成立する場合には適用されない補充規定である。本肢のAは、銀行の窓口行員Cに対してBに成り済まし、B名義の口座の預金をA名義の口座に振り込むよう依頼している。預金の振替を扱う銀行にとって、依頼者がその口座の名義人本人であるかどうかは、処理に応じるかどうかの判断の基礎となる重要な事項であるから、Bに成り済ました言動は欺く行為に当たる。Cはこれにより錯誤に陥って振込入金の処理という処分行為をし、Aは自己名義の口座に預金債権という財産上の利益を得ているので、2項詐欺罪(246条2項)が成立する。人を欺いて利益を得た以上は詐欺罪であり、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。したがって本肢は誤りである。Aが行員を介さずATMを操作して自ら振替処理をした場合に、初めて電子計算機使用詐欺罪の成否が問題になる。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 得たものが財物 | 得たものが財産上の利益 | |
|---|---|---|
| 人を欺いた | 詐欺罪(246条1項) | 詐欺罪(246条2項) |
| 機械に処理させた | 窃盗罪(235条) | 電子計算機使用詐欺罪(246条の2) |
本肢は正しい。いわゆる無銭飲食の事案であり、( )内の詐欺罪は既遂となる(正解は1)。詐欺罪(246条1項)の欺罔行為とは、財物の交付の判断の基礎となる重要な事項を偽る行為をいうところ、飲食店で料理を注文する行為は、その代金を支払う意思と能力があることを黙示的に表示するものである。したがって、当初から代金を支払う意思がないのにあえて注文する行為それ自体が、挙動による欺罔行為に当たる(最決昭30.7.7参照)。本肢の甲は、所持金がなく代金を支払う意思がないまま料理を注文しており、店員はこれを真実と誤信して料理を提供している。ここに欺罔行為→錯誤→処分行為→財物の占有移転という一連の因果経過がすべて認められるから、甲が料理の交付を受けてこれを食べた時点で、1項詐欺罪は既遂に達している。その後、代金を請求されて「財布を忘れたので自宅に取りに帰る」と嘘を述べ、これを店員に見破られている点は、すでに成立した既遂の後の事情にすぎず、既遂の成否を左右しない。なお、仮に注文時には支払意思があったという事案であれば、この嘘によって代金支払の猶予という財産上の利益を得たか否か(246条2項)が問題となり、見破られている以上2項詐欺は未遂にとどまるが、本肢は当初から支払意思がない場合であるから、1項詐欺の既遂で処理される。
誤り。違うのは「強盗未遂罪のみが成立する」の部分である。売上金についての強盗未遂のほかに、脅迫によって乗車料金の支払を免れた点について2項強盗が成立し得るので、強盗未遂罪のみとはいえない。
甲は、売上金を奪う目的で運転手の首元に鋭利なガラス片を突き付けて売上金を渡すよう要求しており、相手の反抗を抑圧するに足りる脅迫を用いて財物の強取に着手している。抵抗されて売上金を得られなかったので、売上金については強盗未遂罪(236条1項・243条)が成立する。しかし、甲の行為はそれだけにとどまらない。甲は乗客を装ってタクシーに乗り、行き先を指定して人気のない場所まで運ばせており、乗車料金を請求された際に脅迫を加えてそのまま立ち去っている。乗車料金の支払を免れることは財産上不法の利益であり、反抗を抑圧するに足りる脅迫によって請求を受けない状態を作り出して料金の支払を免れた以上、2項強盗(236条2項)が成立する。同一の機会に同じ被害者に対して1項強盗の未遂と2項強盗の既遂があるので、包括して強盗既遂罪一罪になる。当初から料金を支払う意思がなかった点について詐欺罪の成否も問題になり得るが、いずれにしても強盗未遂罪のみが成立するとはいえず、本肢は誤りである。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
正しい。詐欺罪の実行の着手は、財物を交付させる意思で欺く行為を始めた時点で認められるから、孫を装って送金を求めたがXに見破られた甲には詐欺未遂罪が成立する。
詐欺罪(246条1項)は、人を欺いて財物を交付させる罪であり、その未遂は罰せられる(250条)。実行の着手は、財物を交付させる意思で、相手方を錯誤に陥らせて交付の判断をさせるに足りる欺く行為を始めた時点で認められる。相手方が現実に錯誤に陥ったことや交付に至ったことは既遂の要件であり、相手方が欺かれなかった場合は未遂にとどまる。判例は、交付を求める文言を述べる前でも、交付の判断の前提となる重要なうそを述べれば着手が認められるとしており、着手の時期は、交付要求の時点より前に置かれている。本肢の甲は、現金をだまし取る目的で、Xの孫を装い、金がなくて困っているので指定の口座に100万円を送金してほしいと電話で告げている。これは、孫であるという身分と送金を必要とする事情を偽り、Xに送金の判断をさせようとする行為であり、客観的に見て人を錯誤に陥らせる危険性があるから、詐欺罪の実行の着手がある。Xは声が孫と違うことに気付いて送金しておらず、錯誤にも交付にも至っていないから、詐欺罪は未遂に終わっている。したがって、甲には詐欺未遂罪が成立し、本肢は正しい。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「財産犯については成立しない」の部分である。判例は、告知義務に反して誤振込みを秘し払戻しを受けた行為に不作為による詐欺罪を認めており、財産犯についても不真正不作為犯は成立する。
不真正不作為犯は、作為義務、作為の可能性・容易性、作為による構成要件の実現との同価値性が認められる限り、罪名を問わず成立し得る。生命・身体に対する罪や公共危険罪に限られる理由は無く、財産犯についても成立する。本肢の前段は正しい。殺人罪については最決平17.7.4が、必要な医療措置を受けさせずに患者を死亡させた行為に不作為による殺人罪を認め、放火罪については最判昭33.9.9が、自己の過失により生じた火について必要かつ容易な消火措置をとらなかった不作為に現住建造物等放火罪を認めている。しかし後段は誤りである。最決平15.3.12は、自己の預金口座に誤った振込みがあったことを知った者が、その事情を秘して銀行の窓口で払戻しを請求した事案で、受取人には信義則上これを銀行に告知すべき義務があるとし、これを告げないまま払戻しを受けた行為に詐欺罪の成立を認めた。古くは大判大7.7.17も、告知義務のある者がことさらに黙秘することも欺罔手段に当たるとしている。したがって、財産犯について成立しないとする本肢は誤りである。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
正しい。詐欺罪の実行の着手は、財物を交付させる目的で人を欺く行為を始めた時点で認められ、Xがうそに気付いて送金しなかった以上、詐欺未遂罪が成立する。
246条1項の詐欺罪は、人を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づく処分行為によって財物を交付させる罪であり、250条で未遂を罰する。その実行の着手は、相手方に財物を交付させることに向けて人を欺く行為を開始した時点で認められる。欺く行為が相手方に向けられれば、錯誤に基づく交付という結果が生じる現実的な危険が発生するからである。甲は、Xの孫を装って電話をかけ、金がなくて困っているので口座に100万円を送金してほしいと述べており、これはXの交付の判断の前提となる事項についてうそを述べ、現金の交付そのものを求める行為であるから、この時点で詐欺罪の実行に着手している。判例は、交付を求める文言を述べる前であっても、交付の判断の前提となる重要なうそを述べ、相手方が即座に交付してしまう危険性を著しく高めれば着手を認めている(最判平30.3.22)から、送金を求める文言まで述べた本肢で着手が認められることに疑いはない。Xは声が孫と違うことに気付いて錯誤に陥らず、送金もしていないから、既遂には至らない。したがって甲には詐欺未遂罪が成立し、本肢は正しい。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。甲に電子計算機使用詐欺罪は成立しない。甲は「甲をXと誤信した乙に同社の電子計算機を操作させ」ており、人であるオペレーターを欺いて振込みをさせた以上、成立するのは詐欺罪であって、「前条に規定するもののほか」とする電子計算機使用詐欺罪は適用されない。
246条の2は冒頭で「前条に規定するもののほか」と定めており、詐欺罪(246条)が成立する場合には適用されない補充的な規定である。本罪は人を介さずに機械から利益を得る行為を捕らえるために設けられたものであり、電子計算機の操作に人が介在し、その人が欺かれて処理をしたのであれば、成立するのは通常の詐欺罪である。本肢の甲は、無人契約機を使っているが、その契約機はオンラインセンターにいるオペレーター乙と結ばれており、甲はXに成り済まして乙に会員契約を締結させ、借入れを申し込んで、甲をXと誤信した乙に同社の電子計算機を操作させて、自己の管理するX名義の口座に50万円を振り込ませている。欺かれて錯誤に陥り、振込みという処分行為をしたのは人である乙であるから、甲には財産上の利益を得た2項詐欺罪(246条2項)が成立する。詐欺罪が成立する以上、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 得たものが財物 | 得たものが財産上の利益 | |
|---|---|---|
| 相手が人(欺いた) | 詐欺罪(246条1項) | 詐欺罪(246条2項) |
| 相手が機械(人を介さない) | 窃盗罪(235条) | 電子計算機使用詐欺罪(246条の2) |
正しい。本件不動産は詐欺罪という財産に対する罪によって領得された物に当たり、そのことを知りながら有償で譲り受けた乙には盗品等有償譲受け罪(256条2項)が成立する。
盗品等関与罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」である(256条1項)。本件不動産は、甲がAを欺いて交付させた物であり、詐欺罪(246条1項)という財産に対する罪によって直接領得された物に当たる。条文は不動産を除外しておらず、詐欺によって領得された不動産そのものを譲り受ける行為は、被害者の追求権の行使を困難にするものとして同罪の処罰対象になる。乙は、甲との売買交渉の過程で、甲がAをだまして相当安い価格で本件不動産を入手したことを知っており、本件不動産が財産に対する罪によって領得された物であることの認識、すなわち故意がある。そのうえで乙は、甲から3000万円という代金を提示されてこれを支払う売買契約を締結し、所有権移転登記を受けているので、「有償で譲り受け」たといえる。したがって、乙には盗品等有償譲受け罪(256条2項)が成立する。甲の詐欺罪の既遂後の関与であることは、幇助犯の成立を妨げても、同罪の成立を妨げない。

前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。
- 財産に対する罪(窃盗・強盗・詐欺・恐喝・横領など)によって直接領得された物に限る。不動産も含む
- 賄賂として収受した現金や賭博で得た金銭:財産に対する罪で領得された物ではなく、客体にならない
- 盗んだ資料のコピー:直接領得された物ではなく、客体にならない
- 2項詐欺で得た財産上の利益:物ではなく、客体にならない
- 本犯者が刑事未成年・親族相盗例で刑を免除される・公訴時効が完成している:盗品性は失われない
正しい。本件不動産は詐欺罪という財産に対する罪によって領得された物に当たり、そのことを知りながら有償で譲り受けた乙には盗品等有償譲受け罪(256条2項)が成立する。
盗品等関与罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」である(256条1項)。本件不動産は、甲がAを欺いて交付させた物であり、詐欺罪(246条1項)という財産に対する罪によって直接領得された物に当たる。条文は不動産を除外しておらず、詐欺によって領得された不動産そのものを譲り受ける行為は、被害者の追求権の行使を困難にするものとして同罪の処罰対象になる。乙は、甲との売買交渉の過程で、甲がAをだまして相当安い価格で本件不動産を入手したことを知っており、本件不動産が財産に対する罪によって領得された物であることの認識、すなわち故意がある。そのうえで乙は、甲から3000万円という代金を提示されてこれを支払う売買契約を締結し、所有権移転登記を受けているので、「有償で譲り受け」たといえる。したがって、乙には盗品等有償譲受け罪(256条2項)が成立する。甲の詐欺罪の既遂後の関与であることは、幇助犯の成立を妨げても、同罪の成立を妨げない。

前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。
- 財産に対する罪(窃盗・強盗・詐欺・恐喝・横領など)によって直接領得された物に限る。不動産も含む
- 賄賂として収受した現金や賭博で得た金銭:財産に対する罪で領得された物ではなく、客体にならない
- 盗んだ資料のコピー:直接領得された物ではなく、客体にならない
- 2項詐欺で得た財産上の利益:物ではなく、客体にならない
- 本犯者が刑事未成年・親族相盗例で刑を免除される・公訴時効が完成している:盗品性は失われない
誤り。違うのは「刑法第246条第1項の詐欺罪が成立する」の部分である。アパートの一室を借り受けて得るのは部屋の所有権や占有という財物ではなく、部屋を利用する財産上の利益であるから、成立するのは246条2項の詐欺罪である。
246条1項は人を欺いて「財物を交付させた」場合、2項は同じ方法で「財産上不法の利益を得」た場合を処罰しており、欺いて得たものが財物か利益かで適用される項が分かれる。不動産については、大連判大11.12.15が、所有権移転の意思表示をさせただけでは足りず、現実に占有を移転させるか所有権取得の登記を経たときに1項詐欺が完了するとしているが、これは不動産の所有権をだまし取る場面の話である。本肢の甲は、家賃を支払う意思も能力もないのにあるように装って大家を欺き、アパートの一室を借り受けている。賃貸借で借主が得るのは部屋を使用収益する権利であり、所有権が移るわけではなく、部屋の占有を得ても、それは賃料相当額の利益ないし居住の利益を得たものと評価される。財物そのものをだまし取ったのではなく、役務の提供や利用権という財産上の利益を得たのであるから、成立するのは2項詐欺罪であって1項詐欺罪ではない。本肢は誤りである。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
誤り。違うのは「刑法第248条の準詐欺罪が成立する」の部分である。準詐欺罪は欺く行為に至らない誘惑などの方法で交付させる場合の規定であり、未成年者でも欺いて錯誤に陥らせて交付させたのであれば246条の詐欺罪が成立する。
248条の準詐欺罪は、未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得る罪である。判断能力の乏しい者は、欺かれなくても誘惑などに乗って財産を手放してしまうことがあり、欺く行為に当たらない方法でこれに乗じる行為を詐欺罪と同じ刑で処罰するために置かれた規定である。したがって準詐欺罪が成立するのは、欺く行為に至らない誘惑その他の方法が用いられた場合であり、相手方が未成年者や心神耗弱者であっても、欺く行為によって錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて交付させたのであれば、246条の詐欺罪の要件をすべて満たしているから、詐欺罪が成立する(大判大4.6.15)。本肢は、知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ財物の交付を受けたというのであるから、成立するのは詐欺罪であって準詐欺罪ではない。本肢は誤りである。

未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
正しい。だまして飲食した後に暴行で代金請求を免れた行為は2項強盗罪に当たり、先行する詐欺罪とは包括一罪として重い2項強盗既遂罪の刑で処断される(最決昭61.11.18)。
236条2項の強盗利得罪は、反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を用いて財産上不法の利益を得る罪であり、飲食代金の支払を免れることはその典型である。処分行為は不要であり、反抗を抑圧して逃走し事実上請求を受けない状態にすれば利益を得たといえる。本肢の甲は、支払う意思も能力もないのに乙をだまして酒食を注文して飲食しており、この時点で1項詐欺罪が成立するが、その後に代金の支払を免れるために乙に反抗を抑圧するに足りる暴行を加えて逃走しているから、代金債務を免れた点について2項強盗罪が成立する。最決昭61.11.18は、覚せい剤をだまし取った後にその代金の支払を免れるために相手を殺害しようとした事案について、先行する取得行為が窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、その罪と2項強盗殺人未遂罪との包括一罪として重い後者の刑で処断すべきであるとした。本肢でも、詐欺罪と2項強盗既遂罪の包括一罪として重い強盗既遂罪の刑で処断され、甲に強盗既遂罪が成立するとする本肢は正しい。

先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と(二項)強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。
正しい。判例は、他人に成り済まして銀行に口座開設を申し込み預金通帳の交付を受ける行為について、預金通帳は246条1項の財物に当たるとして詐欺罪の成立を認めており(最決平14.10.21)、甲には預金通帳とキャッシュカードについて詐欺罪の共同正犯が成立する。
詐欺罪(246条1項)は、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽る欺く行為により相手方を錯誤に陥れ、その錯誤に基づいて財物を交付させることで成立する。最決平14.10.21は、他人に成り済まして銀行窓口で預金口座の開設を申し込み、預金通帳の交付を受けた事案で、預金通帳は預金債権とは別にそれ自体として経済的価値を有する財物であるとして、1項詐欺罪の成立を認めた。通帳は払戻しを受けるための手段として財産的な価値があり、だまされて交付した銀行はそれを失うからである。本件で甲は、加工された免許証と虚偽の記載をした申込書を示してAであるかのように装い、窓口係丙は記載内容が虚偽と知っていれば口座を開設しなかったのであるから、甲の行為は交付の判断の基礎となる重要事項を偽る欺く行為に当たる。丙は甲をAと誤信し、その錯誤に基づいて預金通帳を窓口で交付し、キャッシュカードをBの住所宛てに郵送しており、いずれも錯誤に基づく処分行為による占有移転がある。甲は乙との共謀に基づいて実行しているので、詐欺罪の共同正犯が成立する。したがって、本肢は正しい。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 対象 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 運転免許証(写真の貼替え・氏名の書換え) | 有印公文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 本質的部分の改変で変造ではなく偽造(最決昭35.1.12) |
| 口座開設申込書(A名義・Aの印鑑) | 有印私文書偽造・同行使罪の共同正犯 | 名義人Aと作成者甲の人格の同一性を偽る |
| 預金通帳・キャッシュカード | 詐欺罪の共同正犯 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 免許証・申込書・通帳・カード | 有価証券偽造罪は不成立 | 財産権を表章した証券ではない |
| 通帳・カードの自宅保管 | 盗品等保管罪は不成立 | 詐欺の本犯者には成立しない |
誤り。違うのは「偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し,両罪は牽連犯となる」の部分である。偽造通貨を真貨と偽って相手に渡し財産を得ても、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別に成立しない。
偽造通貨を情を知らない相手に真正の通貨として渡す行為は、偽造通貨行使罪(148条2項)の典型である。この行使は、相手に真貨と誤信させて対価を得ることを当然に予定しており、偽造通貨を使って財物や財産上の利益を得るという詐欺に当たる事実は、行使罪の中に通常含まれている。判例は、偽造通貨を行使して財物を騙取した場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収され、別罪を構成しないとしている(大判昭7.6.6)。偽造通貨を収得した後に偽造と知って行使した者を額面価格の三倍以下の罰金又は科料にとどめる152条が置かれていることからも、行使に伴う欺く行為を別途詐欺罪として重く処罰しない趣旨が読み取れる。甲は、偽造通貨であることを秘して丙に宿泊代金として支払い、丙が真貨と誤信して宿泊させているが、成立するのは偽造通貨行使罪のみであり、詐欺罪は成立しないから、両罪が牽連犯になることもない。本肢は誤りである。

貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。
- ["特別関係", "一般法と特別法の関係。特別法だけが適用される(業務上横領罪と横領罪、保護責任者遺棄罪と遺棄罪)"]
- ["補充関係", "基本法と補充法の関係。基本法だけが適用される(傷害罪と暴行罪、殺人罪と殺人未遂罪)"]
- ["択一関係", "両立しない構成要件が重なって見える関係。一方だけが適用される(横領罪と背任罪)"]
- ["吸収関係", "重い罪に通常伴う軽い罪が、重い罪に吸収される関係(殺人罪と殺人予備罪、偽造通貨行使罪と詐欺罪)"]
誤り。違うのは「詐欺罪が成立するので,免状等不実記載罪は成立しない」の部分である。判例は、虚偽の申立てにより旅券に不実の記載をさせてその交付を受けた行為には157条2項の免状等不実記載罪だけが成立し、詐欺罪は成立しないとしている。
157条2項は、公務員に対し虚偽の申立てをして免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者を一年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。条文上は不実の記載をさせることだけが構成要件であるが、判例は、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人がその下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同項の構成要件は不実の記載をさせるだけで充足されると同時に、その性質上、不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するとし、同項の法定刑が詐欺罪に比べて軽いことも参酌して、虚偽の申請により旅券の交付を受ける行為には詐欺罪は成立せず、157条2項のみを適用すべきであるとした(最判昭27.12.25)。旅券の交付まで含めて軽い刑で処罰する趣旨の規定が置かれている以上、同じ行為を詐欺罪としても処罰すれば、157条2項を設けた意味が失われるからである。本肢は、詐欺罪が成立して免状等不実記載罪は成立しないとしており、成立する罪と成立しない罪が判例と逆である。本肢は誤りである。

免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含する
誤り。違うのは「詐欺罪の一罪のみが成立する」の部分である。偽造された払戻請求書を郵便局員に提出する行為は偽造私文書行使罪に当たり、これを手段としてされた詐欺罪とは牽連犯となるから、詐欺罪一罪にはならない。
偽造された郵便貯金払戻請求書は、権利・義務に関する私文書であり、これを真正な文書として郵便局員に提出する行為は、偽造私文書行使罪(161条1項)の構成要件に該当する。甲は、この行使によって郵便局員乙を正当な払戻請求であると誤信させ、その錯誤に基づいて貯金の払戻しを受けており、詐欺罪(246条1項)も成立する。偽造文書の行使は詐欺の欺く行為そのものとして用いられており、両罪は犯罪の手段と結果の関係にあるから、54条1項後段の牽連犯として、最も重い刑により処断される。偽造文書を行使して財物をだまし取る行為について、判例は一貫して偽造文書行使罪と詐欺罪の牽連犯としている。偽造通貨行使罪に詐欺罪が吸収されるのと異なり、偽造文書の行使は通常詐欺を伴うとはいえず、文書に対する公共の信用という詐欺罪とは別の法益を侵害しているから、詐欺罪に吸収されることはない。したがって、詐欺罪の一罪のみが成立するとする本肢は誤りである。なお、甲が払戻請求書を自ら偽造していれば有印私文書偽造罪も成立し、三罪が牽連犯となる。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
誤り。違うのは「返還期日が経過しなければ甲に詐欺罪は成立しない」の部分である。返還する意思がないのに借り受ける行為は交付に向けられた欺く行為であり、自動車の引渡しを受けた時点で詐欺罪は既遂に達する。
詐欺罪(246条1項)は、人を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて財物を交付させた時点で既遂に達する。契約を履行する意思がないのに履行するように装って契約を結び、相手方から財物の引渡しを受ける行為は、相手方がその真意を知れば交付しなかったはずの重要な事実について相手方を錯誤に陥らせるものであり、財物の交付に向けられた欺く行為である。甲は契約締結の時点から返還期日に返還する意思がなかったのに、7日後に返還する約定で自動車を借り受け、甲が契約を履行すると信じた乙会社従業員から自動車の引渡しを受けている。この引渡しによって自動車の占有は乙会社から甲に移り、乙会社に財産上の損害が生じているから、この時点で詐欺罪は既遂となる。返還期日が経過して現実に返還されなかったことは、甲に当初から返還の意思がなかったことを示す事情にはなるが、既遂の時期を左右するものではない。返還期日を待たなければ詐欺罪が成立しないとすれば、期日前に自動車を処分して逃げた者を処罰できないことになり不当である。本肢は誤りである。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「財産上の利益を得たといえるから,甲に電子計算機使用詐欺罪が成立する」の部分である。電子計算機使用詐欺罪(246条の2)は財産上不法の利益を得た場合に限って成立し、現金という財物を手に入れた甲には銀行に対する窃盗罪が成立する。
246条の2は、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録を作るなどして、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者を処罰する。この罪は、機械を相手にすると人を欺くことがなく詐欺罪が成立しない間隙を埋めるために詐欺利得罪(246条2項)の補充類型として設けられたもので、客体は財産上の利益に限られ、機械から財物を取得した場合は窃盗罪(235条)で処罰できるので対象から外されている。甲は盗んだカードで現金自動預払機から現金を払い戻しており、詐欺罪が成立しないという点は正しいが、甲が得たのは現金という財物であって財産上の利益ではないので、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。現金自動預払機内の現金は銀行が占有しており、権限のない甲がこれを取り出した行為は、銀行に対する窃盗罪に当たる。したがって、本肢は誤りである。盗んだカードで振替送金をして残高を動かした場合に、財産上の利益を得たものとして電子計算機使用詐欺罪が成立するのと区別される。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「不動産の占有が甲に移ったといえるから,甲に詐欺罪が成立する」の部分である。判例は、登記官を欺いて不実の移転登記をさせる行為は公正証書原本不実記載・同行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成しないとしている(大判大12.11.12)。
詐欺罪(246条1項)は、欺かれた者が錯誤に基づいて財物を処分することによって成立するので、欺かれた者と財物の被害者が異なる場合には、欺かれた者がその財物を処分できる権限や地位を持っていることが必要である。判例は、登記官を欺いて土地登記簿の原本に不実の記載をさせる行為は、公正証書原本不実記載及びその行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成するものではないとしている(大判大12.11.12)。登記官は登記をする権限を持つにすぎず乙の土地を処分する権限はないので、登記官の行為を乙の財産の処分行為とみることはできず、不実の登記によって甲が所有権や対抗力を取得するわけでもないからである。甲は、買い受けた事実がないのに登記申請書類を偽造して登記官に提出し、乙から甲への所有権移転登記をさせているが、これにより乙の土地の占有が甲に移ったとはいえず、乙に対する詐欺罪は成立しない。したがって、本肢は誤りである。甲には、公正証書原本不実記載罪(157条1項)と同供用罪(158条1項)、文書偽造の罪が問題になる。

登記官吏をして土地登記簿の原本に其の旨不実の記載を為さしむる行為は公正証書原本の不実記載及其の行使の罪を構成するにとどまり、土地に対する詐欺罪を構成するものに非ず
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「預金通帳は口座開設に伴って発行される証書にすぎないので,甲に詐欺罪は成立しない」の部分である。判例は、預金通帳は預金の預入れ・払戻しを受けられるなどの財産的価値を有し、他人名義の口座開設に伴って銀行から交付される場合でも246条1項の財物に当たるとしている(最決平14.10.21)。
最決平14.10.21は、他人に成り済まして預金口座を開設し、銀行の窓口係員から他人名義の預金通帳の交付を受けた事案で、預金通帳は、それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず、これを利用して預金の預入れ、払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから、他人名義で預金口座を開設し、それに伴って銀行から交付される場合であっても、246条1項の財物に当たるとして、詐欺罪の成立を認めた。通帳は預金の出し入れをできる手段として経済的な価値を持ち、銀行は申込者が名義人本人であると信じたからこそ交付したのであって、成り済ましを知っていれば交付しなかったからである。甲は、架空人乙に成り済まして口座を開設し、乙名義の預金通帳の交付を受けている。名義人が架空人であっても、銀行を欺いて財物である通帳を交付させた点に変わりはなく、詐欺罪が成立する。したがって、本肢は誤りである。虚偽の申請で旅券の交付を受けた場合に157条2項の罪だけが成立し詐欺罪にならないのとは、通帳について特別の処罰規定がない点で異なる。

預金通帳は、それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず、これを利用して預金の預入れ、払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから、他人名義で預金口座を開設し、それに伴って銀行から交付される場合であっても、刑法246条1項の財物に当たる
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「いまだ他人名義の口座に振込みを受けたにすぎないので,甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる」の部分である。甲が通帳・印鑑を所持して自由に処分できる口座に乙が現金を振り込んだ時点で、金員は甲の支配下に移っており、詐欺罪は既遂になる。
詐欺罪が既遂に達するには、欺く行為によって相手方が錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為によって財物の占有が行為者側に移転することが必要である。判例は、行為者の預貯金口座に金員を振り込ませた場合、振込みが完了した時点でその金員は行為者の自由に処分できる状態に置かれたといえるとして、既遂をもって論じるべきであるとしている(大判昭2.3.15)。預金の名義人は預金相当額の金銭を払い戻して処分できる地位にあり、口座への入金は現金を手渡されたのと同じく被害者の財産が行為者の支配に移ったことを意味するからである。甲は、架空人丙の名義で口座を開設し、その通帳と印鑑を自ら所持している。名義は他人のものであっても、口座を現実に支配して預金を自由に引き出せるのは甲であるから、乙が甲のうそを信じて現金を振り込んだ時点で、乙の財産は甲の支配下に移っている。したがって、甲には詐欺罪の既遂が成立し、未遂にとどまるとする本肢は誤りである。口座の名義が架空人であることは、甲が口座を支配している以上、既遂の時期を左右しない。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
正しい。詐欺罪の既遂には欺く行為によって相手方が錯誤に陥り、その錯誤に基づいて財物を交付することが必要であり、うそを見破った乙が憐憫の情から現金を渡した場合は錯誤に基づく処分行為がないので、甲には詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
詐欺罪(246条1項)は、欺く行為、相手方の錯誤、錯誤に基づく処分行為、財物の移転が因果の連鎖でつながっていることを要し、途中で連鎖が切れれば既遂にならない。甲は、返済する意思がないのに、父親が亡くなって帰郷の金がないといううそを言って乙に借入れを申し込んでおり、これは乙が真実を知れば交付しないような事実について欺く行為であって、詐欺罪の実行の着手が認められる。しかし、乙はそのうそを見破り、甲に返済の意思がないことを察したうえで、憐憫の情から現金を手渡している。乙は錯誤に陥っておらず、現金の交付は欺く行為によって生じた錯誤に基づくものではなく、別の動機によるものである。欺く行為と財物の移転との間に錯誤に基づく処分行為という因果の環がない以上、詐欺罪は既遂に達しない。詐欺罪の未遂は250条により処罰されるので、甲には詐欺未遂罪が成立する。したがって、本肢は正しい。相手方が真実を知ったうえで交付した場合に未遂にとどまるのは、詐欺罪が相手方の瑕疵ある意思に基づく交付を要件とする罪だからである。

この章の罪の未遂は、罰する。
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないので」の部分である。判例は旅券の不正取得について詐欺罪の成立を否定するが、その理由は免状等不実記載罪が不実記載された旅券の交付を受けることまで含めて処罰しているからであって、旅券が財物に当たらないからではない。
判例は、係員に虚偽の申立てをして旅券の下付を受けた事案で、旅券の下付を受ける行為は246条の詐欺罪に問うべきではなく、157条2項の免状等不実記載罪だけを適用すべきであるとした(最判昭27.12.25)。157条2項は、公務員に虚偽の申立てをして免状・鑑札・旅券に不実の記載をさせる行為を処罰しており、不実記載された旅券の下付を受ける事実を当然に含んでいるから、この規定が詐欺罪に優先して適用されるという趣旨である。したがって、詐欺罪が成立しないという結論自体は判例と同じであるが、本肢はその理由を、旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないからだとしている点で誤っている。判例は旅券が財物に当たらないとはしておらず、国や地方公共団体の財物でも詐欺罪の客体になる。預金通帳や国民健康保険被保険者証を欺いて交付させた場合には、それ自体が財産的価値を持つ財物であるとして詐欺罪が成立するのと対比すれば、旅券の扱いが客体の性質ではなく法条の関係によることが分かる。本肢は誤りである。

旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、…刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする
- ["不法原因給付", "覚醒剤やヤミ米の買付資金と偽って金員を交付させれば、相手に返還請求権がなくても詐欺罪が成立する"]
- ["処分行為の欠如", "借用証書と気付かせずに署名させても、債務を負担する処分行為がなく詐欺罪は成立しない。文書偽造の罪の問題になる"]
- ["旅券の不正取得", "免状等不実記載罪(157条2項)だけを適用し詐欺罪に問わない。旅券が財物でないという理由ではない"]
- ["払戻権限の偽り", "権限がないのにあるように装って銀行から払戻しを受ければ、銀行員を欺いた1項詐欺罪"]
- ["相当対価の提供", "真実を告げれば交付しなかったといえる場合は、価格が適正でも代金の交付自体が損害で詐欺罪が成立する"]






















