他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
この条文の過去問 37問
正しい。甲に窃盗罪が成立する(設問の「成立しないもの」には当たらない)。自宅内にある物は、所在を見失っていても居住者の占有に属する(大判大15.10.8)。
窃盗罪(235条)は他人の占有する財物を窃取する罪であり、領得の時点でその財物に誰かの事実上の支配が及んでいたかどうかによって、窃盗罪と遺失物等横領罪(254条)とが分かれる。占有は、物を現実に所持し、又は監視していることを必要とせず、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在すれば足りる(最判昭32.11.8)。占有の有無は、支配の事実と支配の意思とを合わせて、社会通念に従って判断される。自宅は居住者の排他的な支配が及ぶ場所であり、居住者はその中にある物を包括的に支配する意思を有しているから、個々の物の所在を見失っていても、屋内にある限り居住者の占有は失われない。判例も、被害者が自宅内で財物の所在を見失っても、なお同人の占有が認められるとしている(大判大15.10.8)。V所有の指輪はV宅内にあり、Vの占有に属する。甲はこれを自己のものにする意思で無断で持ち去っており、Vの占有を侵害しているから、甲に窃盗罪が成立する。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["自宅内で所在を見失った物", "居住者の占有が続く。持ち去れば窃盗罪"]
- ["置き忘れた直後・近くにいる", "置き忘れた人の占有が続く(約5分・約20メートル、約27メートルの事案)。窃盗罪"]
- ["旅館内の忘れ物", "旅館主の占有に移る。窃盗罪"]
- ["電車の座席・網棚の忘れ物", "誰の占有も及ばない。遺失物等横領罪"]
- ["いけすから自然湖に逃げた錦鯉", "養殖者の占有を離れる。遺失物等横領罪"]
誤り。違うのは「乙に事後強盗既遂罪が成立する」の部分である。窃盗に着手した後、財物を奪うために暴行を加えて奪った場合は、暴行が財物奪取の手段であるから、236条1項の強盗既遂罪が成立する。
本件計画は、うそを言ってカードを封筒に入れさせ、隙を見て封筒をすり替えて持ち去るというもので、Aに交付をさせるものではないから、窃盗に当たる。この種の計画では、うそが述べられ、すり替え役が被害者宅付近まで赴いた時点で窃盗罪の実行の着手が認められており(最決令4.2.14)、乙がA方でカードを封筒に入れるよう求めた時点では、すでに窃盗に着手している。事後強盗罪(238条)は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をした場合の罪である。これに対し、窃盗に着手した者が、まだ得ていない財物を奪うために暴行・脅迫を加えて奪った場合は、暴行・脅迫が財物奪取の手段になっているから、236条1項の強盗罪が成立する。乙は、逮捕を免れる目的とともに、カードを手に入れるためにAを多数回殴り、抵抗できないAからカードを奪っている。したがって、乙に成立するのは強盗既遂罪である。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
- ["奪う意思で暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫なしに取る", "窃盗罪(新たな暴行・脅迫を必要とする見解)"]
- ["窃盗に着手後に発見され、奪うために暴行を加えて奪う", "1項強盗罪(居直り強盗)"]
- ["窃盗の後、取返しを防ぎ・逮捕を免れ・罪跡を隠滅するために暴行を加える", "事後強盗罪"]
誤り。違うのは「甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる」の部分である。窃盗罪と強盗罪は窃盗罪の限度で重なり合い、カードの占有は現に移転しているから、甲には窃盗既遂罪の共同正犯が成立する。
甲と乙が共謀したのはカードを窃取することであり、乙はこれを超えて強盗を実行している。共謀した者の認識した犯罪と実行された犯罪とが食い違う場合、軽い罪のつもりで関与した者を重い罪によって処断することはできないが(38条2項)、両罪の構成要件が重なり合う限度では、軽い罪の共同正犯が成立する。判例も、暴行・傷害を共謀した者の一人が殺意をもって殺害した事案で、殺意のない者に、重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯を認めている(最決昭54.4.13)。強盗罪は、暴行・脅迫を手段として財物の占有を奪う罪であり、他人の財物の占有を意思に反して移転するという点で窃盗罪と重なり合う。そして、乙がAからカードを奪ったのは本件計画の対象であるカードを手に入れるためであり、カードの占有は現に乙に移転している。窃盗罪として見ても結果は発生しているのであるから、暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった甲には、窃盗既遂罪の共同正犯が成立する。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
誤り。違うのは「乙に事後強盗既遂罪が成立する」の部分である。窃盗に着手した後、財物を奪うために暴行を加えて奪った場合は、暴行が財物奪取の手段であるから、236条1項の強盗既遂罪が成立する。
本件計画は、うそを言ってカードを封筒に入れさせ、隙を見て封筒をすり替えて持ち去るというもので、Aに交付をさせるものではないから、窃盗に当たる。この種の計画では、うそが述べられ、すり替え役が被害者宅付近まで赴いた時点で窃盗罪の実行の着手が認められており(最決令4.2.14)、乙がA方でカードを封筒に入れるよう求めた時点では、すでに窃盗に着手している。事後強盗罪(238条)は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をした場合の罪である。これに対し、窃盗に着手した者が、まだ得ていない財物を奪うために暴行・脅迫を加えて奪った場合は、暴行・脅迫が財物奪取の手段になっているから、236条1項の強盗罪が成立する。乙は、逮捕を免れる目的とともに、カードを手に入れるためにAを多数回殴り、抵抗できないAからカードを奪っている。したがって、乙に成立するのは強盗既遂罪である。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
- ["奪う意思で暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫を加えて奪う", "1項強盗罪"]
- ["別の目的の暴行の後に奪う意思を生じ、新たな暴行・脅迫なしに取る", "窃盗罪(新たな暴行・脅迫を必要とする見解)"]
- ["窃盗に着手後に発見され、奪うために暴行を加えて奪う", "1項強盗罪(居直り強盗)"]
- ["窃盗の後、取返しを防ぎ・逮捕を免れ・罪跡を隠滅するために暴行を加える", "事後強盗罪"]
誤り。違うのは「甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる」の部分である。窃盗罪と強盗罪は窃盗罪の限度で重なり合い、カードの占有は現に移転しているから、甲には窃盗既遂罪の共同正犯が成立する。
甲と乙が共謀したのはカードを窃取することであり、乙はこれを超えて強盗を実行している。共謀した者の認識した犯罪と実行された犯罪とが食い違う場合、軽い罪のつもりで関与した者を重い罪によって処断することはできないが(38条2項)、両罪の構成要件が重なり合う限度では、軽い罪の共同正犯が成立する。判例も、暴行・傷害を共謀した者の一人が殺意をもって殺害した事案で、殺意のない者に、重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯を認めている(最決昭54.4.13)。強盗罪は、暴行・脅迫を手段として財物の占有を奪う罪であり、他人の財物の占有を意思に反して移転するという点で窃盗罪と重なり合う。そして、乙がAからカードを奪ったのは本件計画の対象であるカードを手に入れるためであり、カードの占有は現に乙に移転している。窃盗罪として見ても結果は発生しているのであるから、暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった甲には、窃盗既遂罪の共同正犯が成立する。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
誤り。違うのは「A及びBいずれの見解によっても」の部分である。事例Ⅰの甲には利用・処分する意思がないから、Bの見解では窃盗罪が成立するが、Aの見解では成立しない。
事例Ⅰの甲は、上司乙を困らせる目的で銀行届出印を持ち出し、自宅の天井裏に隠匿している。届出印を会社に戻すつもりはないから、権利者を排除して所有者として振る舞う意思は認められる。他方、甲は届出印を隠すだけで、印章として使うなど、その物から何らかの効用を得るつもりがないから、何らかの用途に従って利用・処分する意思は認められない。Bの見解は、権利者を排除して所有者として振る舞う意思だけを求めるので、この見解によれば事例Ⅰでは不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立する。これに対し、Aの見解は、これに加えて利用・処分する意思も求めるので、この見解によれば不法領得の意思を欠き、窃盗罪は成立しない。利用・処分する意思を求める見解は、この意思の有無によって、窃盗罪と、物の効用を失わせるだけの毀棄・隠匿の罪とを区別する。したがって、Aの見解によっても窃盗罪が成立するとしている点で、本肢は誤っている。

廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできない
| 事例Ⅰ(隠匿目的で届出印) | 事例Ⅱ(5分だけ自転車を借用) | 事例Ⅲ(水増し目的で投票用紙) | |
|---|---|---|---|
| 排除する意思/利用・処分する意思 | あり/なし | なし/あり | あり/あり |
| A(両方必要) | 不成立 | 不成立 | 成立 |
| B(排除する意思のみ必要) | 成立 | 不成立 | 成立 |
| C(利用・処分する意思のみ必要) | 不成立 | 成立 | 成立 |
| D(不要) | 成立 | 成立 | 成立 |
誤り。違うのは「教唆犯は成立し得ない」の部分である。刑事未成年者の窃盗も構成要件に該当し違法であり、欠けるのは責任だけであるから、【見解】によれば甲に窃盗罪の教唆犯が成立し得る。
41条は14歳に満たない者の行為は罰しないと定めるが、これは年齢だけで一律に責任能力が無いものと扱う責任の規定であり、刑事未成年者の行為が構成要件に該当せず違法でないとするものではない。刑事未成年者である乙が他人の財物を窃取すれば、その行為は窃盗罪(235条)の構成要件に該当し、違法性も備えており、ただ乙に責任が無いため乙は罰せられないにすぎない。【見解】は、共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとするだけで、正犯に責任があることまでは求めないから、乙に責任が無くても、乙を唆した甲には窃盗罪の教唆犯が成立し得る。責任は行為者ごとに個別に判断されるのであり、乙の責任の欠如は甲の罪責を左右しない。正犯の責任まで要求する極端従属性説に立てば、刑事未成年者を唆した者には教唆犯が成立せず、間接正犯の成否を検討することになるが、それは【見解】の帰結ではない。なお、刑事未成年者を利用した場合でも、その意思を抑圧して道具として利用したときは間接正犯になるが、本肢はそのような事情を含んでいない。本肢は誤っている。

十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
正しい。A方とB方の人違いは住居侵入罪の構成要件の中の錯誤であり、窃盗の教唆で強盗が実行された場合は両罪が重なり合う窃盗罪の限度で教唆犯が成立する。
教唆者の認識と正犯が実行した事実が食い違っても、両者が同じ構成要件の範囲で一致していれば故意は否定されない(最判昭25.7.11)。甲はA方への侵入を教唆し、乙はB方をA方と誤認して侵入したが、いずれも人の住居に管理権者の意思に反して立ち入るという住居侵入罪(130条前段)の構成要件の中で一致しているので、甲にはB方への住居侵入罪の教唆犯が成立する。次に、甲は金品の窃取を教唆したのに、乙はその場にいたBから金品を強取しており、乙には強盗罪が成立する。強盗罪と窃盗罪は、他人の財物の占有を奪う点で共通し、暴行・脅迫を手段とするかどうかだけが異なるので、両罪の構成要件は窃盗罪の限度で重なり合う。教唆や共謀と違う罪が実行された場合、重なり合う軽い罪の限度で共犯が成立するという判例の考え方(最決昭54.4.13)からすると、甲にはBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。したがって、甲にはB方への住居侵入罪とBに対する窃盗罪の教唆犯が成立し、本肢は正しい。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
正しい。従犯に独立した犯罪性を認めれば、従犯である乙を幇助した甲の行為はそれ自体として幇助の対象になるから、甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論拠となり得る。
62条1項は「正犯を幇助した者は、従犯とする」と定めるだけで、従犯を幇助した者を処罰する規定は置いていない。そこで、乙の従犯を幇助したにとどまる甲を同項で処罰できるかが問題になる。従犯には独立した犯罪性が認められるという見解に立てば、従犯は正犯に付随するだけの存在ではなく、それ自体が一個の犯罪として評価される。そうすると、従犯である乙の犯罪を容易にした甲の行為も、犯罪を幇助した行為として62条1項の幇助に取り込むことができ、甲に窃盗罪の従犯を認める方向に働く。これに対し、従犯の犯罪性を正犯への従属に求める立場からは、従犯を幇助しただけの者は「正犯を幇助した者」に当たらないという帰結に傾く。したがって、本肢は甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論拠となり得る。

正犯を幇助した者は、従犯とする。
| 論拠 | 働く方向 |
|---|---|
| 従犯には独立した犯罪性が認められる | 肯定 |
| 従犯も修正された構成要件においては「正犯」となる | 肯定 |
| 幇助は正犯を容易にすることであり、直接か間接かは問われない | 肯定 |
| 教唆犯に対する幇助行為は従犯として処罰される | 肯定 |
| 従犯の幇助には61条2項のような規定がない | 否定 |
正しい。判例は、窃取した貯金通帳を使って係員を欺き払戻しを受ける行為は新たな法益を侵害するものであり、盗品の単なる事後処分と同視できないとして詐欺罪を認め、窃盗罪との併合罪としている(最判昭25.2.24)。
窃盗罪が成立した後に盗んだ物を利用・処分する行為は、窃盗罪が既に評価している違法状態に通常含まれ、新たな法益侵害を伴わない限り、不可罰的事後行為として別罪を構成しない。しかし、新たな法益侵害を伴う行為は別に犯罪になる。判例は、窃取又は騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局の係員を欺き、真実の名義人が貯金の払戻しを請求するものと誤信させて貯金の払戻しの名義のもとに金員を騙取することは、更に新たな法益を侵害する行為であるから詐欺罪の成立を認めるべきであり、これを盗品の単なる事後処分と同視することはできないとして、窃盗罪と詐欺罪を併合罪とした原判断を是認した(最判昭25.2.24)。通帳の窃取で害されたのはAの財産、払戻しで害されたのはB銀行の財産であり、新たな法益侵害である。本肢の甲は、A名義の預金通帳を窃取したうえ、B銀行の窓口でAに成り済まして行員を欺き、預金を払い戻して金銭を得ているので、窃盗罪と詐欺罪が成立し、両罪は併合罪になる。したがって本肢は正しい。

窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって賍物の単なる事後処分と同視することはできない
誤り。違うのは「甲には窃盗未遂罪が成立する」の部分である。住居への侵入窃盗では、住居に侵入しただけでは窃盗罪の実行の着手は無く、物色行為や金品のある場所に近づく行為があってはじめて着手が認められる。
窃盗罪(235条)の実行の着手は、他人の財物の占有を侵害する現実的な危険のある行為を始めた時点で認められる。判例は、住居に侵入して金品を盗む場合について、住居に侵入しただけでは窃盗罪の着手は認められず、たんすなどの物色を始めた時点や、金品のある場所に近づいた時点で着手を認めている。土蔵や倉庫のように、建物そのものが財物を保管するための場所であれば、侵入に取りかかった時点で財物の占有を侵害する危険が生じるので着手が認められるが、通常の住居では、侵入しただけでは財物にまだ向かっておらず、占有侵害の現実的な危険が生じていないからである。本肢の甲は、居間の金庫の現金を盗む目的でX方の無施錠のドアから玄関に入ったところで、Xに発見されて逃走している。玄関に入っただけであり、居間に向かうことも金庫に近づくことも物色することもしていないから、現金の占有を侵害する現実的な危険はまだ生じておらず、窃盗罪の実行の着手は無い。したがって、甲には住居侵入罪(130条前段)が成立するにとどまり、窃盗未遂罪は成立しないから、本肢は誤りである。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["住居への侵入窃盗", "物色行為、又は金品のある場所へ近づく行為の時点である。玄関に入っただけでは足りない"]
- ["土蔵・倉庫", "侵入に取りかかった時点である"]
- ["すり", "すり取ろうとしてポケットの外側に触れた時点である"]
- ["自動車", "盗むためにドアを開けた時点である"]
- ["現金自動預払機", "カードを挿入して暗証番号を入力した時点である"]
誤り。違うのは「窃盗未遂罪が成立する」の部分である。住居に侵入しただけでは窃盗罪の実行の着手はなく、玄関に入ったところで発見された甲には住居侵入罪が成立するにとどまる。
窃盗罪の実行の着手は、財物の占有を侵害する現実的な危険のある行為を始めた時点で認められる。住居に侵入して財物を盗む場合、判例は、住居に入っただけでは着手を認めず、財物の物色行為か、これに密接な行為を始めた時点で着手を認めている。最決昭40.3.9は、深夜に店舗に侵入し、懐中電灯で照らして電気器具類があると分かったが、なるべく金を取りたいのでタバコ売場の方に行きかけた時点で窃盗の着手を認めたが、これは現金のある場所に近づく行為によって占有侵害の危険が現実化したことを捉えたものである。甲は金庫の現金を盗む目的でX方の無施錠のドアから玄関に入ったところで発見されており、居間の金庫に近づいてもいなければ物色もしていない。この段階では、金庫の中の現金の占有を侵害する現実的な危険はまだ生じていないから、窃盗罪の実行の着手は認められない。甲に成立するのは住居侵入罪だけであり、本肢は誤りである。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["住居への侵入窃盗", "物色行為、又は金品のある場所へ近づく行為の時点。玄関に入っただけでは足りない"]
- ["土蔵・倉庫", "侵入に取りかかった時点"]
- ["すり", "すり取ろうとしてポケットの外側に触れた時点"]
- ["電話線", "切断を始めた時点"]
- ["自動車", "盗むためにドアを開けた時点"]
- ["現金自動預払機", "カードを挿入して暗証番号を入力した時点"]
- ["キャッシュカードのすり替え", "うそが述べられた後、すり替え役が被害者宅付近の路上まで赴いた時点"]
誤り。違うのは「財物と財産上の利益について成立する」の部分である。事後強盗罪の主体は「窃盗」であり、窃盗罪の客体は財物に限られるから、財産上の利益について事後強盗罪が成立することは無い。
強盗罪は、1項で財物の強取を、2項で財産上不法の利益の取得を処罰しており(236条)、財物と財産上の利益の両方を客体にする。これに対し、事後強盗罪(238条)は「窃盗」を主体とし、窃盗が一定の目的で暴行・脅迫をしたときに強盗として論ずるという構造の罪である。窃盗罪(235条)の客体は他人の「財物」に限られ、財産上の利益を客体とする2項犯罪が置かれていないから、財産上の利益については窃盗罪が成立する余地が無く、したがって窃盗を前提とする事後強盗罪も、財産上の利益について成立することは無い。たとえば、代金を支払わずに逃げようとした者が、追いかけてきた店員に逮捕を免れるために暴行を加えても、料金の支払を免れるという財産上の利益について窃盗罪は成立しないから、事後強盗罪にはならず、暴行罪などが成立するにとどまる。2項犯罪があるのは強盗・詐欺・恐喝だけであり、窃盗にはこれが無いという財産犯の体系の違いが、事後強盗罪の成立範囲にも及んでいるのである。本肢は誤りである。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["財物", "有体物である。電気は窃盗・強盗・詐欺・恐喝に限り財物とみなす(245条・251条)"]
- ["財産上の利益", "債務の免脱、役務の提供など財物以外の財産的利益である。客体とする2項犯罪があるのは強盗・詐欺・恐喝だけである"]
- ["窃盗", "客体は財物に限られる。事後強盗も窃盗を前提にするので、財産上の利益については成立しない"]
誤り。違うのは「財物と財産上の利益について成立する」の部分である。事後強盗罪の主体は「窃盗」であり、窃盗罪の客体は財物に限られるから、財産上の利益について事後強盗罪が成立することは無い。
強盗罪は、1項で財物の強取を、2項で財産上不法の利益の取得を処罰しており(236条)、財物と財産上の利益の両方を客体にする。これに対し、事後強盗罪(238条)は「窃盗」を主体とし、窃盗が一定の目的で暴行・脅迫をしたときに強盗として論ずるという構造の罪である。窃盗罪(235条)の客体は他人の「財物」に限られ、財産上の利益を客体とする2項犯罪が置かれていないから、財産上の利益については窃盗罪が成立する余地が無く、したがって窃盗を前提とする事後強盗罪も、財産上の利益について成立することは無い。たとえば、代金を支払わずに逃げようとした者が、追いかけてきた店員に逮捕を免れるために暴行を加えても、料金の支払を免れるという財産上の利益について窃盗罪は成立しないから、事後強盗罪にはならず、暴行罪などが成立するにとどまる。2項犯罪があるのは強盗・詐欺・恐喝だけであり、窃盗にはこれが無いという財産犯の体系の違いが、事後強盗罪の成立範囲にも及んでいるのである。本肢は誤りである。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["財物", "有体物である。電気は窃盗・強盗・詐欺・恐喝に限り財物とみなす(245条・251条)"]
- ["財産上の利益", "債務の免脱、役務の提供など財物以外の財産的利益である。客体とする2項犯罪があるのは強盗・詐欺・恐喝だけである"]
- ["窃盗", "客体は財物に限られる。事後強盗も窃盗を前提にするので、財産上の利益については成立しない"]
誤り。甲に電子計算機使用詐欺罪は成立しない。甲は「現金自動預払機に挿入して作動させ,これに保管されていた現金を引き出した」のであり、得たのは財物である現金であって財産上の利益ではないので、成立するのは窃盗罪である。
電子計算機使用詐欺罪(246条の2)は、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作るなどして、「財産上不法の利益を得」る罪である。詐欺罪が財物を客体とする1項と財産上の利益を客体とする2項に分かれているのに対し、本罪の結果は財産上の利益の取得に限られ、財物を得た場合は含まれない。機械を相手に財物を取得した場合には窃盗罪(235条)が成立し、本罪で捕らえる必要がないからである。本肢の甲は、電磁的記録部分を偽造したキャッシュカードを現金自動預払機に挿入して作動させ、これに保管されていた現金を引き出している。現金自動預払機内の現金は銀行が占有する財物であり、甲はこれを銀行の意思に反して自己の占有に移しているので、窃盗罪が成立する。得たものが財物である以上、「財産上不法の利益を得」たとはいえず、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 得たものが財物 | 得たものが財産上の利益 | |
|---|---|---|
| 相手が人(欺いた) | 詐欺罪(246条1項) | 詐欺罪(246条2項) |
| 相手が機械(人を介さない) | 窃盗罪(235条) | 電子計算機使用詐欺罪(246条の2) |
正しい。判例は、窃盗の目的で他人の財物を切断しようとしたときに既に窃盗の着手があったとしており、電話線を切断している甲には窃盗罪の実行の着手が認められる。
窃盗罪の実行の着手は、他人の財物の占有を侵害する現実的な危険のある行為を始めた時点に認められる。電柱に架設された電話線を盗むには、これを切断して電柱から取り外す必要があり、切断に取り掛かることは、電話会社の占有を排除して自己の占有に移す行為に直結する。判例は、電柱に架設中の電話線を切断窃取しようとしたが巡査に発見逮捕されて目的を遂げなかった事案について、被告人は窃盗の目的で他人の財物を切断しようとしたのであるから、このとき既に窃盗の着手があったとみるのが相当であるとした(最決昭31.10.2)。切断そのものが財物に対する直接の働きかけであり、これによって占有侵害の危険が現実化しているからである。本肢の甲は、電話線を盗む目的で、電話会社所有の電話線を現に切断しているところを警察官に発見されており、判例の事案と同じく、他人の財物を切断しようとした段階に至っている。したがって、切断が完了して電話線を取り外す前であっても、甲には窃盗罪の実行の着手が認められ、窃盗未遂罪が成立する。

被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があつたとみるのが相当である。
- 住居への侵入窃盗:物色行為、又は金品のある場所へ近づく行為の時点。玄関に入っただけでは足りない
- 土蔵・倉庫:侵入に取りかかった時点
- すり:すり取ろうとしてポケットの外側に触れた時点。財物の有無を確かめる当たり行為は着手でない
- 電話線:切断を始めた時点
- 自動車:盗むためにドアを開けた時点
- 現金自動預払機:カードを挿入して暗証番号を入力した時点
誤り。違うのは「甲には強盗殺人既遂罪が成立する」の部分である。強盗殺人罪の主体は強盗であり、殺害が財物の強取に向けられていない甲は強盗ではないので、殺人罪と窃盗罪が成立するにとどまる。
強盗罪(236条1項)が成立するには、暴行・脅迫が財物を強取する手段として行われること、すなわち財物奪取の意思の下に暴行・脅迫が行われることが必要である。強盗殺人罪(240条後段)は「強盗」が人を死亡させた場合の罪であるから、殺害が強盗の機会に行われたものでなければならない。本肢の甲は、路上で乙とけんかになって乙を殺害しており、殺害の時点では腕時計を奪う意思はなく、殺害は財物の強取に向けられたものではない。腕時計を自分のものにしようと考えたのは殺害のすぐ後であり、甲は強盗ではないので、強盗殺人罪は成立しない。判例は、被害者を殺害した後にその財物を奪う意思を生じて奪った場合について、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して財物を奪取した一連の行為を全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものとして窃盗罪の成立を認めている(最判昭41.4.8)。甲には、乙に対する殺人罪と、腕時計についての窃盗罪が成立し、両罪は併合罪となる。

被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきである
| 場合 | 成立する罪 |
|---|---|
| 当初から奪う意思で殺害して奪う | 強盗殺人罪 |
| 殺害した後に領得の意思を生じ、直後に現場で奪う | 殺人罪と窃盗罪(併合罪)。生前の占有を死亡直後も保護する |
| 殺害と無関係の第三者が死体から取る | 占有離脱物横領罪 |
誤り。違うのは「不動産は横領罪の客体とはならない」の部分である。横領罪の占有は法律上の支配を含むから、登記名義などにより支配される不動産も横領罪の客体になる。
横領罪の「物」は、窃盗罪の「財物」と同じく有体物を意味すると解されている。しかし、窃盗罪では、不動産は持ち去ることができず他人の占有を奪う形で侵害されないため、財物に含まれず、別に不動産侵奪罪(235条の2)が置かれている。これに対し、横領罪の占有は事実上の支配だけでなく法律上の支配を含むから、不動産についても、登記名義人や管理を任された者はこれを処分できる地位にあり、横領罪の占有が認められる。したがって、不動産は横領罪の客体になる。判例も、不動産の所有者から登記名義を預かっていた者や、売主が買主に所有権を移転した後も登記名義を保持していた者が、その不動産を第三者に売却して登記を移した二重譲渡の事案などで、横領罪の成立を認めている(最判昭34.3.13)。なお、電気は有体物ではなく、窃盗罪では245条により財物とみなされるが、横領罪にはこの規定がないので客体にならない。本肢は、不動産を横領罪の客体から外しており、誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
| 窃盗罪 | 横領罪 | |
|---|---|---|
| 占有の意味 | 事実上の支配(他人の占有を奪う対象) | 事実上の支配+法律上の支配(任された物を処分できる立場) |
| 不動産 | 客体にならない(不動産侵奪罪) | 客体になる。登記名義人に占有がある |
| 預金 | 預金の名義人に占有がある |
正しい。意識のあるAの傍らに落ちていたかばんの中の財布は、社会通念上Aの支配力の及ぶ場所にありAの占有が認められるから、これを持ち去った甲には窃盗罪が成立する。
窃盗罪(235条)の客体は他人の占有する財物であり、占有者の意思に反してその占有を侵害し自己の占有に移せば窃取に当たる。占有とは財物に対する事実上の支配をいうが、判例は、必ずしも物の現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在すれば足り、その物がなお占有者の支配内にあるといえるかどうかは、通常人ならばだれもが首肯する社会通念によって決するほかはないとしている(最判昭32.11.8)。本肢の財布は、重傷を負って倒れているAの傍らに落ちていたAのかばんの中にあった。Aは動ける状態ではないが意識があり、かばんはAの身体のすぐそばにあって、Aがその支配を放棄したとみる理由はないから、社会通念上、財布はなおAの支配力の及ぶ場所に存在し、Aの占有が認められる。甲は、Aが了解するはずのない財布を取り出して自分のかばんに入れており、Aの意思に反してその占有を自己に移したものである。したがって甲には窃盗罪が成立し、本肢は正しい。

必ずしも物の現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以て足りる・・・その物がなお占有者の支配内にあるというを得るか否かは通常人ならば何人も首肯するであろうところの社会通念によつて決するの外はない。
誤り。違うのは「不動産は横領罪の客体とはならない」の部分である。横領罪の占有は法律上の支配を含むから、登記名義などにより支配される不動産も横領罪の客体になる。
横領罪の「物」は、窃盗罪の「財物」と同じく有体物を意味すると解されている。しかし、窃盗罪では、不動産は持ち去ることができず他人の占有を奪う形で侵害されないため、財物に含まれず、別に不動産侵奪罪(235条の2)が置かれている。これに対し、横領罪の占有は事実上の支配だけでなく法律上の支配を含むから、不動産についても、登記名義人や管理を任された者はこれを処分できる地位にあり、横領罪の占有が認められる。したがって、不動産は横領罪の客体になる。判例も、不動産の所有者から登記名義を預かっていた者や、売主が買主に所有権を移転した後も登記名義を保持していた者が、その不動産を第三者に売却して登記を移した二重譲渡の事案などで、横領罪の成立を認めている(最判昭34.3.13)。なお、電気は有体物ではなく、窃盗罪では245条により財物とみなされるが、横領罪にはこの規定がないので客体にならない。本肢は、不動産を横領罪の客体から外しており、誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
| 窃盗罪 | 横領罪 | |
|---|---|---|
| 占有の意味 | 事実上の支配(他人の占有を奪う対象) | 事実上の支配+法律上の支配(任された物を処分できる立場) |
| 不動産 | 客体にならない(不動産侵奪罪) | 客体になる。登記名義人に占有がある |
| 預金 | 預金の名義人に占有がある |
正しい。意識のあるAの傍らに落ちていたかばんの中の財布は、社会通念上Aの支配力の及ぶ場所にありAの占有が認められるから、これを持ち去った甲には窃盗罪が成立する。
窃盗罪(235条)の客体は他人の占有する財物であり、占有者の意思に反してその占有を侵害し自己の占有に移せば窃取に当たる。占有とは財物に対する事実上の支配をいうが、判例は、必ずしも物の現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在すれば足り、その物がなお占有者の支配内にあるといえるかどうかは、通常人ならばだれもが首肯する社会通念によって決するほかはないとしている(最判昭32.11.8)。本肢の財布は、重傷を負って倒れているAの傍らに落ちていたAのかばんの中にあった。Aは動ける状態ではないが意識があり、かばんはAの身体のすぐそばにあって、Aがその支配を放棄したとみる理由はないから、社会通念上、財布はなおAの支配力の及ぶ場所に存在し、Aの占有が認められる。甲は、Aが了解するはずのない財布を取り出して自分のかばんに入れており、Aの意思に反してその占有を自己に移したものである。したがって甲には窃盗罪が成立し、本肢は正しい。

必ずしも物の現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以て足りる・・・その物がなお占有者の支配内にあるというを得るか否かは通常人ならば何人も首肯するであろうところの社会通念によつて決するの外はない。
正しい。甲に窃盗罪が成立する。店内の商品の占有は店長の乙にあり、レジ係のアルバイトである甲がこれを持ち出す行為は乙の占有を侵害する。
判例は、商店内の商品は雇主の占有に属し、雇人がこれを持ち出せば窃盗罪(235条)が成立するとしている。店主と店員のように物の保管に上下主従の関係がある場合、物を事実上支配しているのは上位者であり、下位者は上位者の手足として物を扱う占有補助者にすぎないからである。甲はコンビニエンスストアのレジ係のアルバイトで、店長の乙が短時間外出していた間に商品棚からたばこを自分のバッグに入れて持ち出している。乙の外出中であっても商品棚の商品に対する乙の支配は失われておらず、甲が商品を手に取れる立場にあったことは甲自身の占有を基礎づけない。したがって、甲の行為は乙の占有を侵害するものであり、自己の占有する他人の物を領得する横領罪ではなく、窃盗罪が成立する。店の管理を任され、商品の処分について一定の権限を委ねられた支配人のような立場であれば、その者に占有が認められて業務上横領罪になるが、甲はそのような立場にない。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- 店員・雇人が店の商品や売上金を持ち出す:占有は店主にある。窃盗罪
- 管理を任され処分の権限を委ねられた者が領得する:その者に占有がある。業務上横領罪
- 封緘物・施錠物の中身を抜き取る:中身の占有は委託者にある。窃盗罪
- 封緘物を開封せず全体ごと領得する:全体の占有は受託者にある。横領罪
- 共同占有者の一人が単独の占有に移す:他の共同占有者の占有を侵害する。窃盗罪
正しい。タンスの引き出しを開けて物色した甲には窃盗罪の着手があるが財物を得ておらず窃盗は未遂であり、事後強盗罪の既遂・未遂は窃盗の既遂・未遂によって決まるので、逮捕を免れるために脅迫した甲には事後強盗未遂罪が成立する。
甲は乙の住居内でタンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探しており、財物に対する占有を侵害する現実的な危険のある物色行為を始めているので、窃盗罪(235条)の実行の着手がある。しかし、目的物を見付けられず占有を取得していないので、窃盗は未遂にとどまる。事後強盗罪(238条)は、「窃盗」が財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をしたときに強盗として論じるものであり、ここにいう窃盗には窃盗未遂の犯人も含まれる。甲は逮捕を免れるために乙に包丁を示して脅迫しており、事後強盗罪の要件を充たす。そこで既遂か未遂かが問題になるが、判例は、事後強盗罪も財物の取得を内容とする強盗罪の一類型である以上、その既遂・未遂は先行する窃盗の既遂・未遂によって決まるとして、窃盗未遂の犯人が事後強盗の行為をした場合は事後強盗未遂で処断すべきであるとしている(最判昭24.7.9)。甲の窃盗は未遂であるから、甲には事後強盗未遂罪が成立する。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
正しい。タンスの引き出しを開けて物色した甲には窃盗罪の着手があるが財物を得ておらず窃盗は未遂であり、事後強盗罪の既遂・未遂は窃盗の既遂・未遂によって決まるので、逮捕を免れるために脅迫した甲には事後強盗未遂罪が成立する。
甲は乙の住居内でタンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探しており、財物に対する占有を侵害する現実的な危険のある物色行為を始めているので、窃盗罪(235条)の実行の着手がある。しかし、目的物を見付けられず占有を取得していないので、窃盗は未遂にとどまる。事後強盗罪(238条)は、「窃盗」が財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をしたときに強盗として論じるものであり、ここにいう窃盗には窃盗未遂の犯人も含まれる。甲は逮捕を免れるために乙に包丁を示して脅迫しており、事後強盗罪の要件を充たす。そこで既遂か未遂かが問題になるが、判例は、事後強盗罪も財物の取得を内容とする強盗罪の一類型である以上、その既遂・未遂は先行する窃盗の既遂・未遂によって決まるとして、窃盗未遂の犯人が事後強盗の行為をした場合は事後強盗未遂で処断すべきであるとしている(最判昭24.7.9)。甲の窃盗は未遂であるから、甲には事後強盗未遂罪が成立する。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
正しい。現金自動預払機内の現金は金融機関が占有しており、権限のない甲がその意思に反して現金を取得する行為は窃取に当たるから、金融機関に対する窃盗罪が成立する。
窃盗罪の窃取とは、他人の財物を占有者の意思に反してその占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいい、手段や方法に限定はない。現金自動預払機の中の現金は、設置した金融機関が占有している。金融機関が機械を通じて払戻しに応じるのは、正当な権限のある者が自己のカードを使う場合に限られ、他人のカードを無断で使う者に現金を渡す意思はない。甲は、乙名義のカードと暗証番号を使って機械を操作し、払戻権限がないのに現金50万円を取得しており、金融機関の意思に反してその占有を自己に移したといえる。機械は人ではないから錯誤に陥ることがなく、詐欺罪は成立しない。また甲が得たのは現金そのものであって預金残高という財産上の利益ではないから、電子計算機使用詐欺罪でもない。したがって、払戻しを受けた行為には金融機関を被害者とする窃盗罪が成立する。この罪は、カードを乙から持ち出した窃盗罪とは被害者も客体も異なる別個の罪である。本肢は正しい。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- ["窓口で払戻しを受ける", "告知義務に反して係員を欺いている。詐欺罪(246条1項)"]
- ["ATMで現金を引き出す", "機械は欺けない。ATM内の現金に対する銀行の占有を奪う。窃盗罪(235条)"]
- ["ATM・インターネットバンキングで振替送金をする", "現金を得ていない。口座の残高という財産上の利益を得る。電子計算機使用詐欺罪(246条の2)"]
誤り。違うのは「横領罪が成立する」の部分である。客室備付けのドライヤーの占有はホテルにあり、宿泊客の甲との間に委託信任関係に基づく占有はないから、成立するのは窃盗罪である。
横領罪(252条1項)の客体は自己の占有する他人の物であり、その占有は委託信任関係に基づくものでなければならない。これに対し、他人が占有する物をその意思に反して自己の占有に移せば窃盗罪(235条)となる。両罪を分けるのは、行為者がその物を任されて占有していたかどうかである。客室備付けのドライヤーは、宿泊客が客室内で使うことを許されているにすぎず、ホテルは客室の設備として引き続き管理している。宿泊客が客室内で手に取って使えることは、ホテルから保管を任されたことを意味せず、ドライヤーの占有はホテルにある。甲は、ホテルの占有するドライヤーを自宅で使うつもりで勝手に持ち帰り、ホテルの意思に反してその占有を自己に移しているから、窃取に当たる。したがって甲に成立するのは窃盗罪であり、横領罪は成立しない。本肢は誤りである。

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
- ["共同で保管している現金", "共同占有。1人が無断で全部を持ち出せば窃盗罪(最判昭25.6.6)"]
- ["レジ係のアルバイトとレジ内の売上金", "占有は店長にある。持ち出せば窃盗罪"]
- ["施錠されたスーツケースの中身", "中身の占有は委託者にある。開錠して取り出せば窃盗罪"]
- ["客室備付けのドライヤー", "占有はホテルにある。持ち帰れば窃盗罪"]
- ["誤って配達された他人あての荷物", "委託信任関係がない。領得すれば遺失物等横領罪"]
誤り。違うのは「乙に是非善悪の判断能力があると認められる以上,甲には窃盗罪の共同正犯が成立する」の部分である。判例は、日ごろの暴行で意思を抑圧されている者を利用した場合には、その者に是非善悪の判断能力があっても窃盗罪の間接正犯が成立するとしている。
間接正犯は、他人を道具として利用し、自ら手を下したのと同視できる形で犯罪を実現した場合に成立する。被利用者が刑事未成年者であっても、是非善悪の判断能力があれば道具とはいえないようにも見えるが、判例は、日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせていた12歳の養女に窃盗を命じて行わせた事案で、養女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人は自己の日ごろの言動に畏怖し意思を抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったと認められるから、窃盗の間接正犯が成立するとした(最決昭58.9.21)。被利用者が自らの意思で犯罪を決意したといえないほどに意思を抑圧されていれば、判断能力の有無にかかわらず、利用者がその行為を一方的に支配しているからである。本肢の乙は、甲の日ごろの言動に畏怖して意思を抑圧されたまま甲の指示どおりに窃盗をしており、判例の事案と同じである。したがって甲に成立するのは窃盗罪の間接正犯であり、判断能力があることを理由に共同正犯とする本肢は誤りである。

たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立する
- ["故意のない者の利用", "事情を知らない買主に他人の物を搬出させる場合である。被利用者に過失があっても間接正犯が成立する"]
- ["是非を弁別する能力のない者の利用", "幼児や重い精神の障害がある者に物を取って来させる場合である"]
- ["意思を抑圧された者の利用", "日頃の暴行で逆らえなくなっている者に命じて窃盗をさせる場合である"]
- ["被害者自身の行為の利用", "被害者を他の行為を選択することができない精神状態に陥らせ、自らを死亡させる危険の高い行為をさせる場合である"]
- ["適法行為の利用", "医師の正当な治療行為や緊急避難に当たる行為を利用して結果を生じさせる場合である"]
誤り。違うのは「甲は乙の「直系血族」であるので,刑が免除される」の部分である。親族相盗例の適用には、犯人と委託者だけでなく所有者との間にも親族関係が必要であり、所有者の丙と甲は親族でないから刑は免除されない。
横領罪には255条により244条の親族相盗例が準用され、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で横領罪を犯した者はその刑が免除される。この特例は、親族間の財産に関する犯罪については国家が刑罰権の行使を差し控え、親族内部の自律に委ねる方が望ましいという政策的な考慮に基づく。横領の事例で、犯人が委託者とは親族であるが所有者とは親族でない場合に特例が適用されるかについて、判例は、親族関係は犯人と委託者との間だけでなく、犯人と所有者との間にも存在しなければならないとしている。窃盗についても判例は、親族関係が占有者との間のみならず所有者との間にも存することを要するとしており(最決平6.7.19)、親族でない者の財産まで親族内部の問題として処罰を控える理由はないからである。甲は、委託者の乙とは直系血族の関係にあるが、刀剣の所有者である丙とは親族関係がない。したがって甲の横領罪に親族相盗例は適用されず、刑は免除されない。本肢は誤りである。

配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
正しい。甲が免れたのは料金の支払という財産上の利益であり、欺く行為も暴行・脅迫もなく従業員に気付かれないまま立ち去っただけであるから、利益窃盗として不可罰であり、刑法上の財産犯は成立しない。
甲は、借り受けた時点では返還する意思も料金を支払う意思も持っていたから、引渡しの時点で詐欺罪は成立しない。返還期日に自動車を乙会社に返還しているから、自動車そのものについて横領罪や窃盗罪が成立する余地もない。甲が得たのは、料金の支払を免れたという財産上の利益である。財産上の利益を客体とする罪は、強盗利得罪(236条2項)、詐欺利得罪(246条2項)、恐喝利得罪(249条2項)に限られ、暴行・脅迫や欺く行為を手段とせずに財産上の利益を得る行為、すなわち利益窃盗を処罰する規定は刑法にない。甲は、乙会社従業員が気付かないうちに自動車を返還し、従業員に対して支払うと偽ったり支払を免除させるように仕向けたりする欺く行為をすることなく、そのまま行方をくらましている。従業員は錯誤に陥って支払を免除する処分行為をしたわけではないから詐欺利得罪は成立せず、暴行・脅迫もないから強盗・恐喝の利得罪も成立しない。したがって、甲の行為は利益窃盗として刑法上は不可罰であり、料金の支払は民事上の債務として残るにとどまる。本肢は正しい。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
- ["強盗利得罪(236条2項)", "暴行・脅迫を用いて財産上不法の利益を得る"]
- ["詐欺利得罪(246条2項)", "人を欺いて財産上不法の利益を得る"]
- ["恐喝利得罪(249条2項)", "人を恐喝して財産上不法の利益を得る"]
- ["利益窃盗", "これらの手段によらずに財産上の利益を得る行為。処罰規定がなく不可罰"]
誤り。違うのは「甲に窃盗罪が成立する」の部分である。甲が10万円を自分のものにしようと思い立った時点では、現金は前の客の占有を離れ、甲が自宅で保管していて乙会社の占有にもないから、成立するのは遺失物等横領罪である。
窃盗罪(235条)は、他人が占有する財物をその意思に反して奪う罪であり、領得の時点で財物に他人の占有がなければ、窃盗罪ではなく遺失物等横領罪(254条)が問題になる。前の客が自動車内に忘れた一万円札10枚は、前の客の占有を離れた物であり、自動車内にある間は自動車を管理する乙会社の占有に属する余地があるが、甲は従業員に渡すつもりで現金を自動車から持ち出して自ら保管しており、この時点では領得の意思がないから窃盗罪は成立しない。甲が自宅で保管している間、現金は乙会社の事実上の支配の及ばないところにあり、乙会社は現金の存在すら知らないから、乙会社の占有は認められない。甲が返還のために現金を自動車に乗せて乙会社に赴いたとしても、乙会社が知らないうちに乙会社の占有が回復することはない。甲が自分のものにしようと思い立って持ち帰った時点で、現金は誰の占有にも属さず、甲が事実上所持しているだけの占有離脱物である。したがって甲に成立するのは遺失物等横領罪であり、窃盗罪ではない。本肢は誤りである。

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
正しい。事例Ⅰでは窃盗罪と傷害罪が成立して併合罪となり、最も重い傷害罪の長期15年に2分の1を加えた22年6月が処断刑の上限となるから、懲役22年を言い渡すことができる。
甲はおにぎりを窃取しており窃盗罪(235条)が成立する。その後、捕まるのを免れる目的で店員乙に暴行を加えているが、この暴行は反抗を抑圧するに至らない程度のものであるから、事後強盗罪(238条)は成立せず、強盗致傷罪(240条)も成立しない。暴行によって加療約1週間の傷害を負わせているので傷害罪(204条)が成立する。窃盗罪と傷害罪は、窃取と暴行という別個の行為によるものであり、手段と結果の関係にもないから、併合罪(45条前段)となる。併合罪のうち二個以上の罪について有期の自由刑に処するときは、47条により、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とし、各罪の長期の合計を超えることはできない。最も重い傷害罪の長期は15年であり、これに2分の1を加えると22年6月になる。各罪の長期の合計は窃盗罪10年と傷害罪15年を足した25年であり、22年6月はこれを超えない。したがって処断刑の上限は22年6月であり、懲役22年を言い渡すことができる。出題当時の懲役は現行法では拘禁刑であるが、計算は同じである。本肢は正しい。

併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
- ["事例Ⅰ", "窃盗罪+傷害罪の併合罪。15年×1.5=22年6月(合計25年を超えない)"]
- ["事例Ⅱ", "恐喝罪と傷害罪の観念的競合。重い傷害罪の長期15年"]
- ["事例Ⅲ", "住居侵入罪を要にした窃盗罪・強盗罪のかすがい現象。強盗罪の長期20年"]
誤り。違うのは「懲役23年に処することができる」の部分である。事例Ⅲでは住居侵入罪が窃盗罪とも強盗罪とも牽連犯の関係に立つため全体が科刑上一罪となり、最も重い強盗罪の刑で処断されて、有期刑の上限は加重のない20年にとどまる。
甲は強盗の目的で乙方に立ち入っており住居侵入罪(130条前段)が成立し、現金1万円を窃取した点について窃盗罪(235条)が成立する。その直後に帰宅した乙に暴行を加えて反抗を抑圧し現金3万円を強取した点については強盗罪(236条1項)が成立する。住居侵入罪と窃盗罪、住居侵入罪と強盗罪は、いずれも手段と結果の関係にあり牽連犯(54条1項後段)となる。窃盗罪と強盗罪自体は本来併合罪の関係にあるが、両罪がともに住居侵入罪と牽連犯の関係にあるため、住居侵入罪をかすがいとして全体が一罪として扱われる。これをかすがい現象といい、判例はこの場合に全体を科刑上一罪として最も重い罪の刑で処断している。最も重いのは強盗罪であり、その法定刑は5年以上の有期懲役であるから、処断刑は5年以上20年以下となる。併合罪の加重はされないから、有期刑の上限は12条1項の原則どおり20年であり、懲役23年を言い渡すことはできない。本肢は誤りである。出題当時の懲役は現行法では拘禁刑であるが、結論は変わらない。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
正しい。犯人として追呼されている者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは現行犯人とみなされ(212条2項1号)、現行犯人は何人でも逮捕状なくして逮捕できる(213条)。
212条2項は、同項各号のいずれかに当たる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなすと定め、1号で犯人として追呼されているときを挙げる。いわゆる準現行犯人である。そして213条は、現行犯人は何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができると定め、この規定は準現行犯人にも及ぶ。犯行の直後で、犯人として追いかけられているという外部的な事情があれば、犯罪と犯人の結びつきが明白で誤認逮捕のおそれが小さく、その場で逮捕する必要も高いから、私人にも令状なしの逮捕を認めたのである。本肢の窃盗罪は長期10年の拘禁刑に当たるから、軽微な罪について住居・氏名不明や逃亡のおそれを要求する217条の制限もかからない。したがって、検察官、検察事務官又は司法警察職員以外の私人であっても、本肢の者を逮捕状なくして逮捕でき、本肢は正しい。

左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。一 犯人として追呼されているとき。(213条)現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
正しい。検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に略式手続を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げて異議がないかを確かめ(461条の2第1項)、被疑者は異議がないことを書面で明らかにし(同条2項)、略式命令の請求は公訴の提起と同時に書面でする(462条1項)。
461条の2第1項は、検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければならないと定め、同条2項は、被疑者は異議がないときは書面でその旨を明らかにしなければならないとする。そして462条1項は、略式命令の請求は公訴の提起と同時に書面でしなければならないと定める。略式手続は、公判を開かずに書面審理で罰金や科料を科す手続であり、被告人は公開の法廷で審判を受ける権利を事実上放棄することになるから、その意思を書面で確かめることにした。窃盗罪の法定刑には50万円以下の罰金があり、100万円以下の罰金又は科料を科すことができる事件として略式手続の対象となる(461条)。本肢はこれらの規定どおりであり、正しい。

検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。(2項)被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。(462条1項)略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。
| 略式命令の請求 | 即決裁判手続の申立て | |
|---|---|---|
| 被疑者の意思の確認 | 手続を説明し通常の審判を受けられる旨を告げ、異議がないことを書面で明らかにする(461条の2) | 手続を説明し、被疑者の同意(弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保)を書面で明らかにする(350条の16第2項〜5項) |
| 時期と方式 | 公訴の提起と同時に書面で(462条1項) | 公訴の提起と同時に書面で(350条の16第1項) |
| 対象 | 簡易裁判所の管轄事件で100万円以下の罰金・科料を科す事件(461条) | 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を除く |
| 有罪である旨の陳述 | 要件でない | 要件でない(有罪の陳述を要件とするのは裁判所が決定する簡易公判手続。291条の2) |
正しい。窃盗を教唆した者がその盗品を買い受けた場合、窃盗教唆罪と盗品等有償譲受け罪が成立し、両者は罪質上通常手段と結果の関係にないので、判例は併合罪としている。
本犯を教唆したにとどまる者は自ら財物を領得したわけではないので、本犯の終了後に盗品に関与すれば、別に盗品等関与罪が成立する。甲は、乙を教唆して丙所有の骨董品を盗ませ、その後に乙から骨董品を買い受けているので、窃盗教唆罪と盗品等有償譲受け罪が成立する。問題は両罪の罪数関係である。牽連犯(54条1項後段)になるのは、二つの罪が罪質上通例として手段と結果の関係にある場合に限られ、行為者がたまたま一方を他方の手段にしたというだけでは足りない。判例は、窃盗教唆と盗品の買受けについて、両者の間に通常手段又は結果の関係はないとして併合罪とし(大判明42.3.16)、窃盗教唆と盗品の売却のあっせんについても、二罪が成立して併合罪になるとしている(最判昭24.7.30)。他人に窃盗をさせることと、その盗品を自分が買い取ることは、類型的に結びついた関係ではないからである。したがって、甲の窃盗教唆罪と盗品等有償譲受け罪は併合罪になり、本肢は正しい。

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。
| 組合せ | 罪数 | 理由 |
|---|---|---|
| 窃盗教唆と盗品等有償譲受け・有償処分あっせん | 併合罪 | 罪質上通常手段と結果の関係にない |
| 1回の追突で複数の死傷 | 観念的競合 | 社会的見解上1個の行為 |
| 住居侵入と殺人・窃盗・強盗 | 牽連犯 | 侵入は罪質上通例その手段 |
| 殺人と死体遺棄 | 併合罪 | 死体遺棄は殺人に常に伴うものではない |
| カード・通帳の窃盗とこれを用いた詐欺 | 併合罪 | 新たな法益侵害 |
誤り。違うのは「財産上の利益を得たといえるから,甲に電子計算機使用詐欺罪が成立する」の部分である。電子計算機使用詐欺罪(246条の2)は財産上不法の利益を得た場合に限って成立し、現金という財物を手に入れた甲には銀行に対する窃盗罪が成立する。
246条の2は、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録を作るなどして、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者を処罰する。この罪は、機械を相手にすると人を欺くことがなく詐欺罪が成立しない間隙を埋めるために詐欺利得罪(246条2項)の補充類型として設けられたもので、客体は財産上の利益に限られ、機械から財物を取得した場合は窃盗罪(235条)で処罰できるので対象から外されている。甲は盗んだカードで現金自動預払機から現金を払い戻しており、詐欺罪が成立しないという点は正しいが、甲が得たのは現金という財物であって財産上の利益ではないので、電子計算機使用詐欺罪は成立しない。現金自動預払機内の現金は銀行が占有しており、権限のない甲がこれを取り出した行為は、銀行に対する窃盗罪に当たる。したがって、本肢は誤りである。盗んだカードで振替送金をして残高を動かした場合に、財産上の利益を得たものとして電子計算機使用詐欺罪が成立するのと区別される。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
| 行為 | 罪名 | 理由 |
|---|---|---|
| 盗んだカードでATMから現金を引き出す | 銀行に対する窃盗罪 | 現金は財物。電子計算機使用詐欺罪は財産上の利益に限る |
| 偽造書類で登記官に移転登記をさせる | 公正証書原本不実記載罪等 | 登記官に土地を処分する権限がなく、詐欺罪にならない |
| 他人に成り済まして通帳の交付を受ける | 詐欺罪 | 通帳は246条1項の財物(最決平14.10.21) |
| 自己が支配する口座に振り込ませる | 詐欺既遂 | 入金の時点で自由に処分できる状態になる |
| 相手が見破ったが憐れんで渡した | 詐欺未遂 | 錯誤に基づく処分行為がない |
誤り。違うのは「1月以上5年以下」の部分である。従犯の刑は正犯の刑を減軽し(63条)、有期の自由刑の減軽は長期と短期の両方を2分の1にするから(68条3号)、1月以上10年以下の窃盗罪の刑は15日以上5年以下になる。
正犯を幇助した者は従犯であり、従犯の刑は正犯の刑を必ず減軽する(62条1項・63条)。窃盗罪の自由刑は10年以下で、短期は12条1項により1月である。法律上の減軽として有期の自由刑を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずるのであって(68条3号)、長期だけを半分にするのではない。長期10年は5年になり、短期1月は15日になる。有期の自由刑を減軽する場合には1月未満に下げることができると定められているから(14条2項後段)、短期が1月を下回ることも差し支えない。したがって、窃盗の従犯の処断刑は15日以上5年以下であり、短期を1月のままとする本肢は誤りである。本肢は長期の2分の1だけを計算しており、短期も2分の1にする点を落としている。出題当時の懲役刑は現行法では拘禁刑であるが、計算は同じである。

有期拘禁刑を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
| 場面 | 計算 | 処断刑 |
|---|---|---|
| 殺人(有期)+傷害の併合罪 | 重い殺人の長期20年×1.5=30年。各罪の長期の合計35年を超えない。短期は重い殺人の5年 | 5年以上30年以下 |
| 窃盗の従犯(法律上の減軽) | 1月以上10年以下の長期・短期を2分の1。短期は1月未満に下げられる | 15日以上5年以下 |
| 強盗致傷の有期刑を酌量減軽 | 6年以上20年以下の長期・短期を2分の1 | 3年以上10年以下 |
































































