放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
この条文の過去問 45問
正しい。犯人だけが住む家屋は非現住建造物であり、自己所有でも保険に付したものは他人の物を焼損した者の例によるから(115条)、109条1項の罪が成立する。
108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」にいう「人」は、犯人以外の者をいう(最判昭32.6.21)。同条が重く処罰するのは建造物内の人の生命・身体に危険が及ぶからであり、犯人自身はその保護の対象にならないからである。甲は自己所有の家屋に一人で居住していたので、この家屋は108条の客体に当たらず、109条の非現住建造物である。自己の所有に係る非現住建造物の放火は、本来は109条2項により軽く処罰され、公共の危険が生じたことを要する。しかし115条は、109条1項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、保険に付したものであるときは、他人の物を焼損した者の例によると定める。保険に付した物を焼損すれば保険会社の財産的利益が害されるので、他人の所有物と同じに扱うのである。本件家屋には火災保険が掛けられているから、甲には他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立し、公共の危険が生じたことは成否に影響しない。

第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
- ["108条 現住建造物等放火", "現住・現在の建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑。死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑。未遂・予備を罰する"]
- ["109条1項 他人所有非現住建造物等放火", "非現住かつ非現在の建造物、艦船、鉱坑。二年以上の有期拘禁刑。未遂・予備を罰する"]
- ["109条2項 自己所有非現住建造物等放火", "六月以上七年以下の拘禁刑。公共の危険を生じなかったときは罰しない。未遂・予備の処罰なし"]
- ["110条1項 他人所有建造物等以外放火", "焼損し、よって公共の危険を生じさせたとき。一年以上十年以下の拘禁刑。未遂・予備の処罰なし"]
- ["110条2項 自己所有建造物等以外放火", "一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金。未遂・予備の処罰なし"]
正しい。犯人だけが住む家屋は非現住建造物であり、自己所有でも保険に付したものは他人の物を焼損した者の例によるから(115条)、109条1項の罪が成立する。
108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」にいう「人」は、犯人以外の者をいう(最判昭32.6.21)。同条が重く処罰するのは建造物内の人の生命・身体に危険が及ぶからであり、犯人自身はその保護の対象にならないからである。甲は自己所有の家屋に一人で居住していたので、この家屋は108条の客体に当たらず、109条の非現住建造物である。自己の所有に係る非現住建造物の放火は、本来は109条2項により軽く処罰され、公共の危険が生じたことを要する。しかし115条は、109条1項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、保険に付したものであるときは、他人の物を焼損した者の例によると定める。保険に付した物を焼損すれば保険会社の財産的利益が害されるので、他人の所有物と同じに扱うのである。本件家屋には火災保険が掛けられているから、甲には他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立し、公共の危険が生じたことは成否に影響しない。

第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
- ["108条 現住建造物等放火", "現住・現在の建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑。死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑。未遂・予備を罰する"]
- ["109条1項 他人所有非現住建造物等放火", "非現住かつ非現在の建造物、艦船、鉱坑。二年以上の有期拘禁刑。未遂・予備を罰する"]
- ["109条2項 自己所有非現住建造物等放火", "六月以上七年以下の拘禁刑。公共の危険を生じなかったときは罰しない。未遂・予備の処罰なし"]
- ["110条1項 他人所有建造物等以外放火", "焼損し、よって公共の危険を生じさせたとき。一年以上十年以下の拘禁刑。未遂・予備の処罰なし"]
- ["110条2項 自己所有建造物等以外放火", "一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金。未遂・予備の処罰なし"]
誤り。違うのは「甲には2個の現住建造物等放火罪が成立し、これらは観念的競合となる」の部分である。放火罪の罪数は生じた公共の危険の数で決まり、1個の放火行為で複数の現住建造物を焼損しても1個の現住建造物等放火罪が成立するにとどまる(大判大2.3.7)。
観念的競合(54条1項前段)は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、数個の罪が成立することを前提にしている。1個の行為から複数の結果が生じても、侵害された法益が実質的に1個であれば、成立する罪は1個である。放火罪は、焼損された建造物という個々の財産だけでなく、不特定又は多数の人の生命・身体・財産の安全を保護する公共危険罪であるから、その罪数は、焼損した建造物の数や所有者の数ではなく、生じた公共の危険の数によって決まる。判例も、1個の放火行為で複数の現住建造物を焼損しても、生じた公共の危険が1個であれば、1個の現住建造物等放火罪が成立するにとどまるとしている(大判大2.3.7)。甲は、A所有の家屋に放火し、その火を隣接するB所有の家屋に燃え移らせて両方を全焼させているが、これによって生じた公共の危険は1個である。したがって、甲には108条の罪が1個成立するのであり、2個の罪の観念的競合になるのではない。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
誤り。違うのは「建物Aに延焼しなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない」の部分である。建物AとBは全体が一個の現住建造物であり、その一部である建物Bを焼損した時点で既遂になる(最決平元.7.14)。
複数の建物から成る建造物の全体を一個の現住建造物と扱えるかについて、判例は、木造の回廊で接続された神社の社殿の一部に放火した事案で、社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたとして、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が一個の現住建造物であったとした(最決平元.7.14)。108条が重く処罰されるのは、建造物の中にいる人の生命・身体に危険が及ぶからであり、人のいる部分に火が及ぶ可能性があり、人が行き来する構造であれば、無人の部分への放火にも同じ危険があるからである。建物AとBは木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来があるから、全体が一個の現住建造物に当たる。甲はこれらの事実を認識して建物Bを焼損しているので、建物Aに延焼しなくても、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

右社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が一個の現住建造物であつたと認めるのが相当である
- ["物理的一体性", "構造上の接続と延焼可能性。木造の回廊・渡り廊下で接続され、一部に放火されれば全体に危険が及ぶ構造"]
- ["機能的一体性", "全体が一体として人の起居に利用されていること。宿直員の巡回、居住者の日常の利用"]
誤り。違うのは「甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない」の部分である。居住者が旅行中で不在でも、住居としての使用形態に変更はなく、「現に人が住居に使用」する建造物に当たる(最決平9.10.21)。
108条は、「現に人が住居に使用し」ている建造物と、「現に人がいる」建造物とを「又は」で並べている。前者は、人が起臥寝食の場所として日常使用している建造物をいい、放火の時に中に人がいることを要しない。住居は、いつ人が戻ってくるか分からず、人が中にいる可能性が類型的に高いので、現に人がいる建造物と同じく重く処罰されるのである。判例は、従業員を交替で泊まり込ませていた家屋について、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、放火に先立って従業員らを旅行に連れ出していても、その使用形態に変更はなかったとして、現住建造物に当たるとした(最決平9.10.21)。Vとその家族は1泊2日の旅行に出ているだけで、帰れば再びこの家屋で生活するのであるから、住居としての使用は続いている。甲が不在を認識していても、住居であることの認識に欠けるところはないから、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
正しい。108条の「人」は犯人以外の者をいうから(最判昭32.6.21)、犯人が単独で居住し、他に誰もいない家屋は現住建造物にも現在建造物にも当たらない。
108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」にいう「人」とは、犯人以外の者をいう(最判昭32.6.21)。同条が死刑を含む重い刑を定めているのは、建造物の中にいる人、又はいる可能性の高い人の生命・身体を保護するためであり、放火する犯人自身はその保護の対象にならないからである。犯人の家族や同居人は「人」に含まれるが、犯人だけが居住し、放火の時に他に誰もいない建造物は、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物であり、109条の非現住建造物に当たる。甲は自己が単独で居住し、誰も現在しない家屋に放火しているから、甲に現住建造物等放火既遂罪は成立しない。この家屋は甲の所有であっても、保険に付したものであるから、115条により他人の物を焼損した者の例によることになり、甲には109条1項の非現住建造物等放火罪が成立する。この場合、公共の危険が生じたことは要件にならない。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
誤り。違うのは「建物Aに延焼しなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない」の部分である。建物AとBは全体が一個の現住建造物であり、その一部である建物Bを焼損した時点で既遂になる(最決平元.7.14)。
複数の建物から成る建造物の全体を一個の現住建造物と扱えるかについて、判例は、木造の回廊で接続された神社の社殿の一部に放火した事案で、社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたとして、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が一個の現住建造物であったとした(最決平元.7.14)。108条が重く処罰されるのは、建造物の中にいる人の生命・身体に危険が及ぶからであり、人のいる部分に火が及ぶ可能性があり、人が行き来する構造であれば、無人の部分への放火にも同じ危険があるからである。建物AとBは木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来があるから、全体が一個の現住建造物に当たる。甲はこれらの事実を認識して建物Bを焼損しているので、建物Aに延焼しなくても、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

右社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が一個の現住建造物であつたと認めるのが相当である
- ["物理的一体性", "構造上の接続と延焼可能性。木造の回廊・渡り廊下で接続され、一部に放火されれば全体に危険が及ぶ構造"]
- ["機能的一体性", "全体が一体として人の起居に利用されていること。宿直員の巡回、居住者の日常の利用"]
誤り。違うのは「甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない」の部分である。居住者が旅行中で不在でも、住居としての使用形態に変更はなく、「現に人が住居に使用」する建造物に当たる(最決平9.10.21)。
108条は、「現に人が住居に使用し」ている建造物と、「現に人がいる」建造物とを「又は」で並べている。前者は、人が起臥寝食の場所として日常使用している建造物をいい、放火の時に中に人がいることを要しない。住居は、いつ人が戻ってくるか分からず、人が中にいる可能性が類型的に高いので、現に人がいる建造物と同じく重く処罰されるのである。判例は、従業員を交替で泊まり込ませていた家屋について、人の起居の場所として日常使用されていたものであり、放火に先立って従業員らを旅行に連れ出していても、その使用形態に変更はなかったとして、現住建造物に当たるとした(最決平9.10.21)。Vとその家族は1泊2日の旅行に出ているだけで、帰れば再びこの家屋で生活するのであるから、住居としての使用は続いている。甲が不在を認識していても、住居であることの認識に欠けるところはないから、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
正しい。108条の「人」は犯人以外の者をいうから(最判昭32.6.21)、犯人が単独で居住し、他に誰もいない家屋は現住建造物にも現在建造物にも当たらない。
108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」にいう「人」とは、犯人以外の者をいう(最判昭32.6.21)。同条が死刑を含む重い刑を定めているのは、建造物の中にいる人、又はいる可能性の高い人の生命・身体を保護するためであり、放火する犯人自身はその保護の対象にならないからである。犯人の家族や同居人は「人」に含まれるが、犯人だけが居住し、放火の時に他に誰もいない建造物は、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物であり、109条の非現住建造物に当たる。甲は自己が単独で居住し、誰も現在しない家屋に放火しているから、甲に現住建造物等放火既遂罪は成立しない。この家屋は甲の所有であっても、保険に付したものであるから、115条により他人の物を焼損した者の例によることになり、甲には109条1項の非現住建造物等放火罪が成立する。この場合、公共の危険が生じたことは要件にならない。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
誤り。違うのは「作為可能性を必要としない場合がある」の部分である。不真正不作為犯の成立には、作為義務に加えて、その作為が可能かつ容易であったことが常に必要である。
不真正不作為犯が成立するには、結果の発生を防止すべき作為義務があることに加えて、その作為をすることが可能であり、かつ容易であったことが必要である。法は不可能を強いることができず、およそ履行することのできない行為を義務として課し、それをしなかったことを作為による実行行為と同視して処罰することはできないからである。判例も、残業中に自分の過失で机などを燃やした者について、自ら消火するか宿直員の協力を得れば容易に消火できたことを認定したうえで、不作為による放火罪の成立を認めている(最判昭33.9.9)。泳げない者が溺れている子を助けに飛び込まなかった場合のように、作為の可能性がない場合には、作為義務を負う立場にある者であっても、不真正不作為犯は成立しない。なお、作為可能性は、その作為をしていれば結果を防ぐことができたかという結果回避可能性とは別の問題であり、後者は不作為と結果との因果関係の問題として扱われる。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「甲には2個の現住建造物等放火罪が成立し、これらは観念的競合となる」の部分である。放火罪の罪数は生じた公共の危険の数で決まり、1個の放火行為で複数の現住建造物を焼損しても1個の現住建造物等放火罪が成立するにとどまる(大判大2.3.7)。
観念的競合(54条1項前段)は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、数個の罪が成立することを前提にしている。1個の行為から複数の結果が生じても、侵害された法益が実質的に1個であれば、成立する罪は1個である。放火罪は、焼損された建造物という個々の財産だけでなく、不特定又は多数の人の生命・身体・財産の安全を保護する公共危険罪であるから、その罪数は、焼損した建造物の数や所有者の数ではなく、生じた公共の危険の数によって決まる。判例も、1個の放火行為で複数の現住建造物を焼損しても、生じた公共の危険が1個であれば、1個の現住建造物等放火罪が成立するにとどまるとしている(大判大2.3.7)。甲は、A所有の家屋に放火し、その火を隣接するB所有の家屋に燃え移らせて両方を全焼させているが、これによって生じた公共の危険は1個である。したがって、甲には108条の罪が1個成立するのであり、2個の罪の観念的競合になるのではない。

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
誤り。違うのは「甲には,延焼罪は成立しない」の部分である。延焼罪は自己所有物に対する放火罪の結果的加重犯であり、延焼についての認識がなくても成立する。
111条1項は、109条2項又は110条2項の罪を犯し、よって108条又は109条1項に規定する物に延焼させたときに延焼罪が成立すると定めている。延焼罪は、自己の所有する物に対する放火罪を基本の罪とし、その結果として他人の建造物などに燃え移ったことを重く処罰する結果的加重犯である。結果的加重犯では、重い結果についての故意は不要であり、「よって」という文言は、基本の罪と重い結果との間の因果関係を求めるにとどまる。甲は、自己が所有する無人の木造倉庫に放火してこれを焼損し、公共の危険を生じさせているから、109条2項の罪が成立する。そして、その結果、Aが居住する木造家屋、すなわち108条の物に延焼させている。延焼についての認識がなかったことは、延焼罪の成立を妨げない。かえって、延焼の認識があれば、Aの家屋に対する現住建造物等放火罪の故意があることになり、延焼罪ではなく108条の罪が成立する。延焼罪は、延焼の認識がない場合のための規定である。したがって、甲には延焼罪が成立する。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
- 111条1項:109条2項又は110条2項の罪 → 108条又は109条1項の物に延焼。三月以上十年以下の拘禁刑
- 111条2項:110条2項の罪 → 110条1項の物に延焼。三年以下の拘禁刑
- 基本となる罪:自己所有物への放火罪に限る。公共の危険の発生が必要
- 延焼の認識:認識がないことが前提。認識があれば延焼先の物に対する放火罪
誤り。違うのは「甲には,現住建造物等放火未遂罪は成立しない」の部分である。現住建造物を焼損する目的で隣接する物に放火し、延焼の危険を生じさせた場合には、現住建造物等放火罪の実行の着手があり、未遂罪が成立する(大判昭8.7.27)。
判例は、現住建造物を焼損する目的で、これに接近した便所に放火したが、現住建造物を焼損するに至らなかった事案で、109条や110条の罪ではなく、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立するとしている(大判昭8.7.27)。放火罪の実行の着手は、目的物を直接焼損する行為を始めた時点に限られず、目的物に火が燃え移る現実的な危険を生じさせる行為を始めた時点に認められる。燃え移ることを狙って隣接する物に火を放つ行為は、目的物を焼損するための手段そのものであるから、その時点で目的物に対する放火の実行行為が始まっている。甲は、Aが居住する木造家屋を焼損しようと考え、そこから1メートルしか離れていない自己所有の木造倉庫に放火して焼損し、家屋に延焼する危険を生じさせている。甲には現住建造物を焼損する故意があり、その危険を現に生じさせたのであるから、現住建造物等放火罪の実行の着手が認められ、家屋が焼損しなかった以上、同罪の未遂罪が成立する。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
正しい。所有者の承諾を得て燃やした家具は自己所有物に準じて110条2項の罪となり、その結果として現住建造物のひさしを焼損させたのであるから、延焼の認識がなくても延焼罪(111条1項)が成立する。
延焼罪(111条1項)は、109条2項又は110条2項の罪を犯し、よって108条又は109条1項に規定する物に延焼させたときに成立する。甲が燃やした大型家具は乙の所有物であるが、所有者である乙に頼まれて燃やしている。自己所有物の放火が軽く扱われるのは他人の財産を害していないからであり、所有者が承諾した場合もこの点は同じである。そこで、所有者の承諾がある場合は「自己の所有に係るとき」に準じて110条2項が適用されると解されている。甲は、丙が居住する家屋に近接する畑地で家具を燃やし、火の粉が飛び散って家屋に飛び火する事態を生じさせているから、公共の危険が生じており、110条2項の罪が成立する。公共の危険の認識は不要である(最判昭60.3.28)。そして、その結果、丙の居住する家屋のひさしが焼損しており、108条の物に延焼させたことになる。飛び火が甲の予期に反していたことは、結果的加重犯である延焼罪の成立を妨げない。したがって、甲には延焼罪が成立する。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
- 111条1項:109条2項又は110条2項の罪 → 108条又は109条1項の物に延焼。三月以上十年以下の拘禁刑
- 111条2項:110条2項の罪 → 110条1項の物に延焼。三年以下の拘禁刑
- 基本となる罪:自己所有物への放火罪に限る。公共の危険の発生が必要
- 延焼の認識:認識がないことが前提。認識があれば延焼先の物に対する放火罪
正しい。所有者の承諾を得て燃やした家具は自己所有物に準じて110条2項の罪となり、その結果として現住建造物のひさしを焼損させたのであるから、延焼の認識がなくても延焼罪(111条1項)が成立する。
延焼罪(111条1項)は、109条2項又は110条2項の罪を犯し、よって108条又は109条1項に規定する物に延焼させたときに成立する。甲が燃やした大型家具は乙の所有物であるが、所有者である乙に頼まれて燃やしている。自己所有物の放火が軽く扱われるのは他人の財産を害していないからであり、所有者が承諾した場合もこの点は同じである。そこで、所有者の承諾がある場合は「自己の所有に係るとき」に準じて110条2項が適用されると解されている。甲は、丙が居住する家屋に近接する畑地で家具を燃やし、火の粉が飛び散って家屋に飛び火する事態を生じさせているから、公共の危険が生じており、110条2項の罪が成立する。公共の危険の認識は不要である(最判昭60.3.28)。そして、その結果、丙の居住する家屋のひさしが焼損しており、108条の物に延焼させたことになる。飛び火が甲の予期に反していたことは、結果的加重犯である延焼罪の成立を妨げない。したがって、甲には延焼罪が成立する。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
- 111条1項:109条2項又は110条2項の罪 → 108条又は109条1項の物に延焼。三月以上十年以下の拘禁刑
- 111条2項:110条2項の罪 → 110条1項の物に延焼。三年以下の拘禁刑
- 基本となる罪:自己所有物への放火罪に限る。公共の危険の発生が必要
- 延焼の認識:認識がないことが前提。認識があれば延焼先の物に対する放火罪
正しい。110条1項の「公共の危険」は、108条・109条1項の建造物等への延焼の危険に限られず、不特定又は多数の人の生命、身体又はそれ以外の財産に対する危険を含む(最決平15.4.14)。
判例は、市街地の駐車場で自動車に放火し、隣接する2台の自動車に延焼の危険を及ぼした事案で、110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとした(最決平15.4.14)。放火罪が公共危険罪とされるのは、火力が不特定又は多数の人の生命・身体・財産を脅かすからであり、その危険が建造物等に燃え移る形で現れるか、駐車中の自動車や通行人に及ぶ形で現れるかで区別する理由は無い。建造物等への延焼の危険に限る限定説は、108条・109条1項の客体に燃え移る危険が無ければ公共の危険を否定することになるが、判例はこれを採らなかった。したがって、本肢の記述は判例の定義そのものであり、正しい。

刑法110条1項にいう「公共の危険」は,必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる
誤り。違うのは「「現に人が住居に使用し」の「人」には犯人が含まれる」の部分である。108条にいう「人」は、どちらも犯人以外の者を指す(最判昭32.6.21)。
判例は、108条にいう「人」とは犯人以外の者を指すとしている(最判昭32.6.21)。現住建造物等放火罪が放火罪の中で最も重く処罰されるのは、その建造物の中にいる人や、そこを生活の場としている人の生命・身体に危険が及ぶからであり、犯人自身が危険にさらされることは重い処罰の理由にならない。この理屈は「現に人が住居に使用し」の「人」にも「現に人がいる」の「人」にも等しく当てはまるから、両者を区別する理由は無い。したがって、犯人が一人で住む家に、ほかに誰もいない状態で火を付けても、「現に人が住居に使用し」ている建造物には当たらず、非現住建造物等放火罪(109条)の問題になる。他方、犯人の家族や同居人は犯人以外の者であるから、犯人が家族と同居する家に放火すれば、放火の時に家族が留守でも現住建造物に当たる。本肢は、住居使用の「人」に犯人を含める点で判例と食い違っている。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
正しい。110条1項の「公共の危険」は、108条・109条1項の建造物等への延焼の危険に限られず、不特定又は多数の人の生命、身体又はそれ以外の財産に対する危険を含む(最決平15.4.14)。
判例は、市街地の駐車場で自動車に放火し、隣接する2台の自動車に延焼の危険を及ぼした事案で、110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとした(最決平15.4.14)。放火罪が公共危険罪とされるのは、火力が不特定又は多数の人の生命・身体・財産を脅かすからであり、その危険が建造物等に燃え移る形で現れるか、駐車中の自動車や通行人に及ぶ形で現れるかで区別する理由は無い。建造物等への延焼の危険に限る限定説は、108条・109条1項の客体に燃え移る危険が無ければ公共の危険を否定することになるが、判例はこれを採らなかった。したがって、本肢の記述は判例の定義そのものであり、正しい。

刑法110条1項にいう「公共の危険」は,必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる
誤り。違うのは「「現に人が住居に使用し」の「人」には犯人が含まれる」の部分である。108条にいう「人」は、どちらも犯人以外の者を指す(最判昭32.6.21)。
判例は、108条にいう「人」とは犯人以外の者を指すとしている(最判昭32.6.21)。現住建造物等放火罪が放火罪の中で最も重く処罰されるのは、その建造物の中にいる人や、そこを生活の場としている人の生命・身体に危険が及ぶからであり、犯人自身が危険にさらされることは重い処罰の理由にならない。この理屈は「現に人が住居に使用し」の「人」にも「現に人がいる」の「人」にも等しく当てはまるから、両者を区別する理由は無い。したがって、犯人が一人で住む家に、ほかに誰もいない状態で火を付けても、「現に人が住居に使用し」ている建造物には当たらず、非現住建造物等放火罪(109条)の問題になる。他方、犯人の家族や同居人は犯人以外の者であるから、犯人が家族と同居する家に放火すれば、放火の時に家族が留守でも現住建造物に当たる。本肢は、住居使用の「人」に犯人を含める点で判例と食い違っている。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- ["現住建造物", "現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい"]
- ["現在建造物", "現に人がいる建造物。住居でなくてもよい"]
- ["「人」", "どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる"]
- ["居住者全員の死亡後", "住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)"]
誤り。違うのは「甲には他人所有建造物等以外放火罪(刑法第110条第1項)は成立しない」の部分である。判例は、110条1項の公共の危険は建造物等への延焼の危険に限られず、不特定又は多数の人の生命、身体又は建造物等以外の財産に対する危険も含むとしており、付近の自動車3台に燃え移りかねない状態は公共の危険に当たる。
駐車中の自動車は108条・109条の客体である建造物等に当たらないから、110条の「前二条に規定する物以外の物」であり、乙所有の他人の物であるから110条1項の客体になる。110条1項は公共の危険の発生を要件とする具体的危険犯である。最決平15.4.14は、本肢と同じく住宅街の駐車場で他人の自動車に放火し、付近の別の自動車への延焼のおそれを生じさせた事案で、110条1項にいう公共の危険は必ずしも108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとして、同罪の成立を認めた。放火罪が守るのは不特定多数人の生命・身体・財産の安全一般であるから、危険の対象を建造物等に限る理由は無いのである。本肢では、所有者を異にする自動車3台に燃え移りかねない状態が生じており、不特定又は多数の人の財産に対する危険があるから、公共の危険が発生しており、甲には他人所有建造物等以外放火罪が成立する。

必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる
- ["108条・109条1項", "条文に公共の危険の定めが無い(抽象的危険犯)。未遂・予備を罰する"]
- ["109条2項", "自己所有の非現住建造物等である。公共の危険を生じなかったときは罰しない。未遂・予備の処罰は無い"]
- ["110条1項・2項", "建造物等以外の物である。焼損し、よって公共の危険を生じさせたことが要件であり、未遂・予備の処罰は無い"]
誤り。違うのは「建造物等以外放火罪の予備罪が成立する」の部分である。放火予備罪(113条)は108条又は109条1項の罪を犯す目的の場合に限られ、建造物等以外放火罪の予備は処罰されない。
113条は、108条又は109条1項の罪を犯す目的で、その予備をした者を2年以下の拘禁刑に処すると定める。放火予備罪が成立するのは、現住建造物等放火罪か他人所有非現住建造物等放火罪を犯す目的で準備をした場合だけであり、自己所有非現住建造物等放火罪(109条2項)や建造物等以外放火罪(110条)を犯す目的で準備をしても、これを処罰する規定はない。予備罪は実行の着手より前の準備行為を処罰するものであるから、特に重大な罪についてだけ、条文で個別に定められている。甲が燃やそうとした乙所有の自動車は建造物等以外の物であり、甲が犯そうとしていたのは他人所有建造物等以外放火罪(110条1項)である。甲が灯油とライターを用意して駐車場に向かった行為は同罪の準備ではあるが、同罪には予備罪の規定がないので、交通事故で放火に至らなかった甲は不可罰である。したがって、建造物等以外放火罪の予備罪が成立するとする本肢は誤りである。

第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
| 客体 | 条文 | 公共の危険 | 未遂・予備 |
|---|---|---|---|
| 現住・現在の建造物等 | 108条 | 要件でない | どちらも罰する |
| 他人所有の非現住建造物等 | 109条1項 | 要件でない | どちらも罰する |
| 自己所有の非現住建造物等 | 109条2項 | 生じなかったときは罰しない | 処罰なし |
| 建造物等以外の物 | 110条1項・2項 | 生じさせたことが要件 | 処罰なし |
誤り。違うのは「現住建造物等放火罪が成立する」の部分である。唯一の居住者である乙を殺害した後の家屋は現に人が住居に使用する建造物に当たらず、他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立する。
108条の「現に人が住居に使用し」とは、犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用していることをいい、「現に人がいる」の人も犯人以外の者を指す。放火の時に居住者が不在でも、住居としての使用形態が変わっていなければ現住性は失われないが、居住者の全員が死亡していれば、その建造物を住居に使用する者はもはや存在しない。判例は、居住者全員を殺害してからその家屋を焼損した場合には、現在者がいない限り非現住建造物放火罪が成立するとしている。本肢の家屋は乙が一人で居住していたものであり、甲が放火した時点で乙は既に殺害されているから、同家屋は現に人が住居に使用する建造物ではなく、人がいなかった以上、現に人がいる建造物でもない。家屋は丙の所有であるから、甲に成立するのは他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)であり、現住建造物等放火罪は成立しない。乙の殺害については別に殺人罪が成立する。したがって本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
- 現住建造物:現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい
- 現在建造物:現に人がいる建造物。住居でなくてもよい
- 「人」:どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる
- 居住者全員の死亡後:住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)
誤り。違うのは「建造物等以外放火罪のみが成立する」の部分である。現住建造物を燃やす意思で隣接する自動車に放火し、家屋に燃え移らなかった場合は、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。
甲は乙の居住する家屋を燃やそうと考え、その手段として家屋の壁際の自動車に放火している。現住建造物等放火罪の実行の着手は、客体である建造物そのものに点火したときに限らず、建造物を焼損する切迫した危険を生じさせる行為を始めたときに認められる。家屋の壁際に駐車された自動車に放火して延焼の危険を生じさせた以上、甲は現住建造物等放火罪の実行に着手しており、通行人に消し止められて家屋に燃え移らなかったので、同罪の未遂罪(112条・108条)が成立する。次に、自動車を焼損して延焼の危険を生じさせた部分について建造物等以外放火罪(110条1項)が別に成立するかが問題になるが、放火罪は公共の安全を保護法益とし、罪数は発生した公共の危険の個数で決まる。判例は、108条の客体に放火する意思で110条の物に放火して焼損したが108条の客体に延焼しなかった場合には、現住建造物等放火未遂罪のみが成立するとしている。自動車の焼損は現住建造物等放火未遂罪の中で評価されるので、建造物等以外放火罪のみが成立するとする本肢は誤りである。

第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
誤り。違うのは「A家屋に対する現住建造物等放火未遂罪の教唆犯のみが成立する」の部分である。A家屋とB家屋はどちらも現住建造物であり、甲にはB家屋に対する現住建造物等放火既遂罪の教唆犯が成立する。
甲が認識したのは現住建造物であるA家屋に放火するという事実であり、乙が実行したのは現住建造物であるB家屋に放火して焼損するという事実である。両者は現住建造物等放火罪(108条)の構成要件の範囲で一致しているので、客体の違いは故意を否定せず(最判昭25.7.11)、甲にはB家屋に対する現住建造物等放火既遂罪の教唆犯が成立する。次に、A家屋に燃え移らなかった点について、A家屋に対する未遂罪が別に成立するかが問題になるが、放火罪は公共の安全を保護法益とする罪であり、その罪数は発生した公共の危険の個数によって決まる。乙はA家屋に延焼させる目的でB家屋に放火したのであり、B家屋の焼損とA家屋への延焼の危険は一個の放火行為から生じた一個の公共の危険であるから、成立するのは一個の現住建造物等放火罪である。したがって、甲にはB家屋に対する現住建造物等放火既遂罪の教唆犯が成立するのであって、A家屋に対する未遂罪の教唆犯のみとする本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
正しい。112条が未遂を罰するのは108条と109条1項の罪だけであり、建造物等以外放火罪(110条)の未遂を罰する規定はない。
未遂を罰する場合は各本条で定める(44条)。放火の罪について未遂処罰を定めるのは112条であり、同条は108条及び109条1項の罪の未遂を罰すると定めている。現住建造物等放火罪と他人所有非現住建造物等放火罪については、人の生命・身体に対する危険が大きいので、焼損に至らなくても未遂として処罰し、さらに113条で予備も処罰している。これに対し、自己所有非現住建造物等放火罪(109条2項)と建造物等以外放火罪(110条)は112条に挙げられておらず、未遂も予備も処罰されない。これらの罪は公共の危険の発生を要件とする具体的危険犯であり、公共の危険が生じて初めて処罰に値するとされているので、焼損に至らない段階や公共の危険が生じない段階を処罰することは予定されていない。したがって、他人の自動車に放火したが焼損に至らなかった場合や、焼損したが公共の危険が生じなかった場合には、建造物等以外放火罪は未遂としても処罰されず、器物損壊罪などの成否が問題になるにとどまる。建造物等以外放火罪に未遂処罰規定がないとする本肢は正しい。

第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
誤り。違うのは「延焼罪が成立する」の部分である。延焼罪(111条)の基本となる罪は自己所有物に対する放火罪(109条2項・110条2項)に限られ、他人所有の空き家への放火から燃え移っても延焼罪は成立しない。
111条1項は、109条2項又は110条2項の罪を犯し、よって108条又は109条1項に規定する物に延焼させたときに成立し、同条2項は、110条2項の罪を犯し、よって110条1項に規定する物に延焼させたときに成立する。延焼罪は、自己所有の非現住建造物等や自己所有の建造物等以外の物に放火して公共の危険を生じさせた者が、その結果として予期せずより重い客体に燃え移らせた場合を加重処罰する結果的加重犯であり、基本となる罪は自己所有物に対する放火罪に限られている。他人所有の空き家は109条1項の客体であり、これに放火して焼損すれば、それだけで2年以上の有期拘禁刑という重い他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。この罪は延焼罪の基本となる罪に含まれていないので、火が現に人が居住する隣家に燃え移って焼損しても、延焼罪は成立しない。隣家への延焼を予期していなかった以上、隣家について現住建造物等放火罪の故意もなく、延焼の点は109条1項の罪の中で評価されるにとどまる。したがって本肢は誤りである。延焼の認識があれば、延焼罪ではなく延焼先の物に対する放火罪が成立する。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
- 111条1項:109条2項又は110条2項の罪 → 108条又は109条1項の物に延焼。3月以上10年以下の拘禁刑
- 111条2項:110条2項の罪 → 110条1項の物に延焼。3年以下の拘禁刑
- 基本となる罪:自己所有物への放火罪に限る。公共の危険の発生が必要
- 延焼の認識:認識がないことが前提。認識があれば延焼先の物に対する放火罪
誤り。違うのは「建造物等以外放火罪が成立する」の部分である。客を乗せて航行中のフェリーは108条の「現に人がいる艦船」に当たり、現住建造物等放火罪が成立する。
108条は、放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者を処罰する。客体は建造物に限られず、汽車、電車、艦船、鉱坑も含まれ、艦船とは軍艦その他の船舶をいう。「現に人がいる」とは、放火の時に犯人以外の者がその中にいることをいい、住居として使用されている必要はない。客を乗せて航行中のフェリーは艦船であり、犯人以外の者である客が現に乗っているので、現に人がいる艦船に当たる。これに放火して焼損すれば現住建造物等放火罪が成立し、法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑である。110条の建造物等以外放火罪は、108条・109条に規定する物以外の物を客体とするので、108条の客体である現在艦船に放火した場合には成立しない。本肢は、フェリーが船舶であることから建造物等以外の物と考えたものであるが、艦船は108条・109条に明文で挙げられており、人がいれば108条、人がいなければ109条の客体になる。したがって本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
- 現住建造物:現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい
- 現在建造物:現に人がいる建造物。住居でなくてもよい
- 「人」:どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる
- 客体は建造物のほか、汽車、電車、艦船、鉱坑。人のいる艦船は108条、人のいない艦船は109条
誤り。違うのは「非現住建造物等放火罪(刑法第109条第2項)の未遂罪が成立する」の部分である。未遂が罰せられるのは108条と109条1項の罪だけであり(112条)、自己所有の非現住建造物等放火罪に未遂処罰はない。
放火罪の未遂を罰するのは112条であり、同条は「第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する」と定めている。これらの罪は公共の危険の発生を問わずに成立する抽象的危険犯であり、客体自体の危険性が高いので、未遂の段階から処罰される。これに対し、自己所有の非現住建造物等放火罪(109条2項)は、「公共の危険を生じなかったときは、罰しない」とされる具体的危険犯であり、自己の物を燃やす行為は公共の危険が現実に生じてはじめて処罰に値するという考え方に立っている。そのため、公共の危険の発生を要件とする109条2項と110条の罪については、未遂も予備も処罰されない。本肢のAは、自己所有の無人の倉庫に灯油をまいてライターで火をつけたが、炎は燃え上がらず燃焼に至っていない。焼損がない以上109条2項の既遂は成立せず、未遂処罰の規定もないので、Aには非現住建造物等放火罪の未遂罪は成立しない。倉庫が他人所有であれば109条1項の未遂罪が成立する。

第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
| 条文 | 客体 | 公共の危険 | 未遂・予備 |
|---|---|---|---|
| 108条 | 現住・現在の建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑 | 不要(抽象的危険犯) | 未遂・予備を罰する |
| 109条1項 | 他人所有の非現住建造物等(115条により保険等が付された自己所有物を含む) | 不要(抽象的危険犯) | 未遂・予備を罰する |
| 109条2項 | 自己所有の非現住建造物等 | 必要(生じなかったときは罰しない) | 処罰なし |
| 110条1項・2項 | 建造物等以外の物(他人所有・自己所有) | 必要 | 処罰なし |
正しい。判例は、女性をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階で既に強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるとして着手を認めており、V女を失神させてダンプカーに乗せて発進させた甲には実行の着手が認められる。
判例は、通行中の女性をダンプカーの運転席に引きずり込み、約5000メートル離れた場所で姦淫した事案について、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階において既に強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であるとし、引きずり込む際の暴行による傷害について強姦致傷罪の成立を認めた(最決昭45.7.28)。犯行計画に照らして、姦淫の場所へ連れ去る行為が姦淫に密接な行為であり、結果に至る客観的な危険性が認められるからである。本肢の甲は、約5キロメートル先の工事現場に連れ込んで強姦することを決意し、V女を殴って失神させたうえダンプカーの助手席に乗せて発進させており、判例の事案で着手が認められた引きずり込む段階を既に越えている。したがって甲には強姦罪の実行の着手が認められる。出題当時の強姦罪は、現行法では不同意性交等罪(177条)であり、結論は変わらない。

被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があつたと解するのが相当
誤り。違うのは「非現住建造物等放火罪(刑法第109条第2項)の未遂罪が成立する」の部分である。未遂が罰せられるのは108条と109条1項の罪だけであり(112条)、自己所有の非現住建造物等放火罪に未遂処罰はない。
放火罪の未遂を罰するのは112条であり、同条は「第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する」と定めている。これらの罪は公共の危険の発生を問わずに成立する抽象的危険犯であり、客体自体の危険性が高いので、未遂の段階から処罰される。これに対し、自己所有の非現住建造物等放火罪(109条2項)は、「公共の危険を生じなかったときは、罰しない」とされる具体的危険犯であり、自己の物を燃やす行為は公共の危険が現実に生じてはじめて処罰に値するという考え方に立っている。そのため、公共の危険の発生を要件とする109条2項と110条の罪については、未遂も予備も処罰されない。本肢のAは、自己所有の無人の倉庫に灯油をまいてライターで火をつけたが、炎は燃え上がらず燃焼に至っていない。焼損がない以上109条2項の既遂は成立せず、未遂処罰の規定もないので、Aには非現住建造物等放火罪の未遂罪は成立しない。倉庫が他人所有であれば109条1項の未遂罪が成立する。

第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
| 条文 | 客体 | 公共の危険 | 未遂・予備 |
|---|---|---|---|
| 108条 | 現住・現在の建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑 | 不要(抽象的危険犯) | 未遂・予備を罰する |
| 109条1項 | 他人所有の非現住建造物等(115条により保険等が付された自己所有物を含む) | 不要(抽象的危険犯) | 未遂・予備を罰する |
| 109条2項 | 自己所有の非現住建造物等 | 必要(生じなかったときは罰しない) | 処罰なし |
| 110条1項・2項 | 建造物等以外の物(他人所有・自己所有) | 必要 | 処罰なし |
誤り。違うのは「建造物等以外放火既遂罪は成立しない」の部分である。駐車場の他の自動車10台に延焼する危険は、不特定又は多数の人の財産に対する危険として110条1項の「公共の危険」に当たり、建造物に延焼する危険がなくても同罪は既遂になる(最決平15.4.14)。
最決平15.4.14は、110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとした。放火罪が守るのは不特定又は多数の人の生命・身体・財産の安全であり、建造物に火が及ばなくても、周囲の多数の財物に延焼して多くの人の財産を害するおそれがあれば、公共の安全はすでに脅かされているからである。甲はV所有の自動車にガソリンをかけて火をつけて焼損させ、同じ駐車場に駐車されていた第三者所有の自動車10台に延焼する危険を生じさせている。住宅その他の建物に延焼する危険がなかったとしても、他人の自動車10台に対する危険は不特定又は多数の人の財産に対する危険であり、公共の危険が生じたといえる。したがって、甲には他人所有の建造物等以外放火罪(110条1項)が既遂で成立し、「成立しない」とする本肢は誤りである。

刑法110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる
- 108条・109条1項:条文に公共の危険の定めがない(抽象的危険犯)。未遂・予備を罰する
- 109条2項:自己所有の非現住建造物等。公共の危険を生じなかったときは罰しない。未遂・予備の処罰なし
- 110条1項・2項:建造物等以外の物。焼損し、よって公共の危険を生じさせたことが要件。未遂・予備の処罰なし
誤り。違うのは「現住建造物等放火既遂罪が成立する」の部分である。108条の「人」は犯人以外の者を指し、唯一の同居人である妻を殺害した後の家屋は現に人が住居に使用する建造物ではないので、成立するのは非現住建造物等放火既遂罪である。
108条の現住建造物とは現に人が住居に使用している建造物をいい、判例は、ここにいう「人」とは犯人以外の者を指称するとしている(最判昭32.6.21)。犯人自身の生命・身体は犯人が自ら危険にさらすものであって、放火罪が守る対象ではないからである。そして判例は、居住者全員を殺害した後にその家屋に放火した場合には、放火の時点で住居に使用する犯人以外の者がいなくなっているので、非現住建造物等放火罪が成立するとしている。甲は妻と二人で暮らしており、犯人以外の居住者は妻だけである。甲が妻を殺害した後の家屋には住居に使用する犯人以外の者がおらず、殺害の直後であっても現住性は失われているので、同家屋は現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物に当たる。したがって、甲が同家屋に火をつけて全焼させた行為には非現住建造物等放火罪(109条1項)の既遂が成立し、現住建造物等放火既遂罪が成立するとする本肢は誤りである。居住者が旅行で一時不在にしているにすぎない場合に現住性が失われないのとは異なり、本肢では住居に使用する者がいなくなっている。

刑法108条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する
- 現住建造物:現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい
- 現在建造物:現に人がいる建造物。住居でなくてもよい
- 「人」:どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる
- 居住者全員の死亡後:住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)
誤り。違うのは「建造物等以外放火既遂罪は成立しない」の部分である。駐車場の他の自動車10台に延焼する危険は、不特定又は多数の人の財産に対する危険として110条1項の「公共の危険」に当たり、建造物に延焼する危険がなくても同罪は既遂になる(最決平15.4.14)。
最決平15.4.14は、110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとした。放火罪が守るのは不特定又は多数の人の生命・身体・財産の安全であり、建造物に火が及ばなくても、周囲の多数の財物に延焼して多くの人の財産を害するおそれがあれば、公共の安全はすでに脅かされているからである。甲はV所有の自動車にガソリンをかけて火をつけて焼損させ、同じ駐車場に駐車されていた第三者所有の自動車10台に延焼する危険を生じさせている。住宅その他の建物に延焼する危険がなかったとしても、他人の自動車10台に対する危険は不特定又は多数の人の財産に対する危険であり、公共の危険が生じたといえる。したがって、甲には他人所有の建造物等以外放火罪(110条1項)が既遂で成立し、「成立しない」とする本肢は誤りである。

刑法110条1項にいう「公共の危険」は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる
- 108条・109条1項:条文に公共の危険の定めがない(抽象的危険犯)。未遂・予備を罰する
- 109条2項:自己所有の非現住建造物等。公共の危険を生じなかったときは罰しない。未遂・予備の処罰なし
- 110条1項・2項:建造物等以外の物。焼損し、よって公共の危険を生じさせたことが要件。未遂・予備の処罰なし
誤り。違うのは「現住建造物等放火既遂罪が成立する」の部分である。108条の「人」は犯人以外の者を指し、唯一の同居人である妻を殺害した後の家屋は現に人が住居に使用する建造物ではないので、成立するのは非現住建造物等放火既遂罪である。
108条の現住建造物とは現に人が住居に使用している建造物をいい、判例は、ここにいう「人」とは犯人以外の者を指称するとしている(最判昭32.6.21)。犯人自身の生命・身体は犯人が自ら危険にさらすものであって、放火罪が守る対象ではないからである。そして判例は、居住者全員を殺害した後にその家屋に放火した場合には、放火の時点で住居に使用する犯人以外の者がいなくなっているので、非現住建造物等放火罪が成立するとしている。甲は妻と二人で暮らしており、犯人以外の居住者は妻だけである。甲が妻を殺害した後の家屋には住居に使用する犯人以外の者がおらず、殺害の直後であっても現住性は失われているので、同家屋は現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物に当たる。したがって、甲が同家屋に火をつけて全焼させた行為には非現住建造物等放火罪(109条1項)の既遂が成立し、現住建造物等放火既遂罪が成立するとする本肢は誤りである。居住者が旅行で一時不在にしているにすぎない場合に現住性が失われないのとは異なり、本肢では住居に使用する者がいなくなっている。

刑法108条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する
- 現住建造物:現に人が住居に使用している建造物。放火の時に居住者が不在でもよい
- 現在建造物:現に人がいる建造物。住居でなくてもよい
- 「人」:どちらも犯人以外の者。犯人の家族・同居人は含まれる
- 居住者全員の死亡後:住居に使用する人がいなくなるので非現住建造物(109条)
正しい。甲は家屋に燃え移ることを認識・認容しているので、現住建造物を焼損した客観的事実について、非現住建造物を焼損する認識で実現したことになり、両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。
甲は、乙所有の自動二輪車に放火するに当たり、火が乙所有の家屋に燃え移ることを認識・認容しているので、自動二輪車への放火は家屋を焼損する手段であり、建造物等以外放火罪(110条1項)ではなく、家屋に対する放火罪の成否が問題になる。判例も、現住建造物を焼損する目的でこれに接する物に放火した事案で、現住建造物等放火罪の着手を認めている。客観的には、乙が単身で居住している家屋を全焼させているので、現住建造物等放火罪(108条)の構成要件に該当する事実が実現している。しかし、甲は家屋を居住者のいない空き家で中に誰もいないと誤信していたので、甲の認識は他人所有の非現住建造物を焼損するという109条1項の事実にとどまる。重い罪に当たる事実を知らなかった者はその重い罪によって処断することはできず(38条2項)、判例は、認識した罪と実現した罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い罪の故意犯の成立を認めている。現住建造物等放火罪と他人所有非現住建造物等放火罪は、他人所有の建造物を焼損する点で重なり合うので、甲には軽い他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
誤り。違うのは「他人所有現住建造物等放火罪が成立する」の部分である。唯一の居住者である乙が共犯者であれば家屋は犯人以外の者が住居に使用する建造物ではなく非現住建造物であり、乙所有で共犯者の所有に属するが保険に付されているので115条により他人所有非現住建造物等放火罪になる。
108条の現住建造物とは、現に犯人以外の者が住居に使用している建造物をいい、判例は、ここにいう「人」は犯人以外の者を指すとしている。家屋に単身で居住する乙が甲と放火を共謀した共犯者である場合、その家屋を住居に使用しているのは犯人自身だけになるので、家屋は現に人が住居に使用せず現に人がいない非現住建造物に当たる。次に、109条の自己所有か他人所有かは、建造物が犯人の所有に属するかで決まり、共犯者の所有に属する場合も自己所有として扱われるので、乙所有の家屋は甲と乙にとって自己の所有に係る非現住建造物である。もっとも、115条は、109条1項の物が自己の所有に係るものであっても保険に付したものである場合にはこれを焼損したときは他人の物を焼損した者の例によると定めている。本肢の家屋には火災保険が掛けられているので、甲と乙には自己所有非現住建造物等放火罪(109条2項)ではなく、他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立する。したがって、他人所有現住建造物等放火罪が成立するとする本肢は誤りである。

第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
正しい。108条の客体は現に人が住居に使用する建造物又は現に人がいる建造物であり、甲は乙が家屋に居住していることを認識・認容しているので、乙が中にいないと誤信していても現住建造物等放火罪の故意に欠けるところはない。
108条は、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物を客体とし、現住性と現在性のどちらか一方があれば客体になる。現住建造物とは犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用している建造物をいい、放火の時に居住者が外出していて不在でも、使用形態に変更がなければ現住性は失われない。したがって、現住建造物等放火罪の故意としては、現に人が住居に使用している建造物であることの認識があれば足り、放火の時に建物の中に人がいることの認識までは要らない。甲は、火が家屋に燃え移ることと、同家屋に乙が居住していることを認識・認容しているので、現住建造物を焼損することについての故意がある。甲が誤信していたのは、乙が外出中で家屋内に誰もいないという現在性に関する点だけであり、現住性については正しく認識している以上、現実には乙が中にいたという事実との食い違いは108条の構成要件の範囲内のものにとどまり、故意を妨げない。したがって、甲には現住建造物等放火罪が成立し、本肢は正しい。乙が家屋内にいたことによって乙に死傷の結果が生じれば、別に殺人罪や傷害致死罪などの成否が問題になる。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「人が同家屋を訪問する可能性があり,「現に人が住居に使用」する建造物といえるのであるから,現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する」の部分である。唯一の居住者を殺害した後の家屋は現に人が住居に使用する建造物ではなく、非現住建造物等放火罪が成立する。
108条の「現に人が住居に使用し」とは、犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用していることをいう。ここでいう「人」には犯人自身は含まれず、犯人以外の居住者がいることが必要である。判例は、居住者全員を殺害した後にその家屋に放火して焼損した行為について、非現住建造物等放火罪に当たるとしている(大判大6.4.13)。放火の時点で住居として使用する者が誰もいなくなっている以上、人の生命・身体に対する危険という108条の重い刑の根拠が失われているからである。乙はこの家屋に一人で住んでおり、甲が乙を殺害した後は、家屋を住居として使用する者は存在しない。乙の死後に人がこの家屋を訪問する可能性があるとしても、訪問者は家屋を住居として使用する者ではなく、放火の時に現に人がいたわけでもないから、「現に人がいる建造物」にも当たらない。したがって甲に成立するのは、殺人罪のほか、現に人が住居に使用せず現に人がいない他人所有の建造物を焼損した非現住建造物等放火罪(109条1項)であり、現住建造物等放火罪は成立しない。本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「ふすまが独立に燃焼するに至ったのであるから,この段階で,現住建造物等放火罪の既遂罪が成立する」の部分である。ふすまは毀損しなくても取り外せる物で建造物の一部ではないから、ふすまが独立に燃焼しても建造物を焼損したことにならず、既遂にならない。
放火罪の既遂時期について判例は、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に達した時点で焼損があるとする独立燃焼説に立つ(最判昭25.5.25)。しかし、独立に燃焼したのが建造物そのものでなければ、建造物を焼損したことにはならない。判例は、建具その他家屋の従物が建造物である家屋の一部を構成すると認めるには、その物件が家屋の一部に建て付けられているだけでは足りず、これを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするとしている(最判昭25.12.14)。ふすまは、家屋に建て付けられてはいるが、毀損せずに取り外すことができる建具であり、畳や布団と同じく建造物の一部ではない。したがって、新聞紙の火がふすまに燃え移ってふすまが独立に燃焼しても、それは建造物ではない物が燃えたにすぎず、建造物の焼損には至っていない。この段階では現住建造物等放火罪は未遂にとどまり、柱や天井板、床板などの建造物の一部が独立に燃焼して初めて既遂となる。本肢は誤りである。

建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更にこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とする
誤り。違うのは「現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪の各既遂罪が成立し,両者は併合罪となる」の部分である。放火罪は公共危険罪であり、隣接する家屋と物置を同時に焼損して生じた公共の危険は一個であるから、最も重い現住建造物等放火罪の一罪が成立するにとどまる。
放火罪の保護法益は不特定又は多数の人の生命・身体・財産の安全という公共の安全であり、個々の建造物の所有権ではない。そのため放火罪の罪数は、焼損した建造物の個数や所有者の数ではなく、発生した公共の危険の個数によって決まる。判例は、一個の放火行為によって複数の建造物を焼損した場合でも、公共の危険が一個であれば一罪が成立するとし、108条の目的物と109条の目的物を同時に焼損した場合には、最も重い108条の罪のみが成立して109条の罪はこれに吸収されるとしている。本肢では、甲は乙の家屋と丙の物置に別々に放火しているが、両者は隣接しており、同時に焼損されているから、生じた公共の危険は一個である。放火行為が二回あったとしても、同一の機会に隣接する建物を焼損して一個の公共の危険を生じさせたにすぎない以上、公共危険罪としては一罪として評価される。したがって甲には現住建造物等放火罪の一罪が成立し、物置の焼損について非現住建造物等放火罪が別に成立して併合罪になることはない。本肢は誤りである。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
誤り。違うのは「甲には現住建造物等放火罪が成立するが,その刑は非現住建造物等放火罪の刑による」の部分である。現住建造物等放火罪の認識で非現住建造物を焼損した抽象的事実の錯誤では、両罪が重なり合う軽い非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立するのであって、現住建造物等放火罪は成立しない。
甲は、乙が現在していると思って木造家屋に放火したが、実際には誰も現在しない空き家であった。認識した事実は108条、実現した事実は他人所有の非現住建造物等放火罪(109条1項)に当たる抽象的事実の錯誤である。判例の法定的符合説では、認識した罪と実現した罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で、軽い罪の故意犯が成立する。108条と109条1項は、建造物に放火して焼損するという行為態様と公共の安全という保護法益を共通にし、客体に人が現在するかどうかだけが異なるので、軽い109条1項の限度で重なり合う。現住建造物に放火する認識は、非現住建造物に放火する認識を含んでいるからである。したがって、甲には他人所有の非現住建造物等放火罪が成立する。本肢は、重い現住建造物等放火罪が成立したうえで刑だけが軽い罪によるとするが、重い罪に当たる事実は実現しておらず、成立する罪そのものが非現住建造物等放火罪である。

重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
誤り。違うのは「甲には延焼罪が成立する」の部分である。延焼罪(111条)は自己所有の物への放火(109条2項・110条2項)から他の物に燃え移った場合の結果的加重犯であり、他人である乙所有の自動車への放火から延焼しても成立しない。
111条1項は、109条2項又は110条2項の罪を犯し、よって108条又は109条1項に規定する物に延焼させたときに延焼罪が成立すると定めている。基本となる罪は、自己所有の非現住建造物等への放火と自己所有の建造物等以外の物への放火に限られている。自己所有物への放火は刑が軽いので延焼した場合に重く処罰する必要があるのに対し、他人の物への放火はそれだけで109条1項や110条1項の重い罪になるから、延焼罪を設ける必要がないという構造である。甲が放火したのは乙所有の自動車であり、他人所有の建造物等以外の物への放火として110条1項の罪に当たる。この罪は111条が掲げる基本の罪ではないので、火が乙の住居に燃え移って全焼させても、延焼罪は成立しない。乙の家屋については放火の故意がないので、現住建造物等放火罪にもならない。したがって、本肢は誤りである。自動車が甲自身の所有物であれば、110条2項の罪から108条の物に延焼させたものとして延焼罪が成立する場合と対比される。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
| 条文 | 客体 | 公共の危険 |
|---|---|---|
| 108条 現住建造物等放火 | 現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等(犯人以外の者が基準) | 要件でない(抽象的危険犯)。未遂を処罰 |
| 109条1項 他人所有非現住建造物等放火 | 人が住居に使用せず人がいない他人所有の建造物等 | 要件でない。未遂を処罰 |
| 109条2項 自己所有非現住建造物等放火 | 同上で自己所有 | 公共の危険を生じなければ罰しない |
| 110条1項 建造物等以外放火 | 前2条以外の物(自動車など) | 要件(よって公共の危険を生じさせた) |
| 111条 延焼 | 109条2項・110条2項の罪(自己所有物)から108条・109条1項の物等へ延焼 | 自己所有物への放火の結果的加重犯 |
正しい。判例は、現住建造物を焼損する目的で隣接する非現住建造物に放火して焼損したが現住建造物に延焼しなかった場合、現住建造物等放火未遂罪で論じるべきであるとしている(大判大15.9.28)。
甲は、乙が住居として使用する木造家屋に延焼させる意思で、これに隣接する丙所有の非現住の家屋に放火し、丙の家屋を全焼させたが、乙の家屋には燃え移らなかった。甲の故意は、現住建造物である乙の家屋を焼損することに向けられており、丙の家屋への放火は、その手段として行われたものである。判例は、現住建造物を焼損する目的で非現住建造物に放火してこれを焼損したものの、現住建造物には延焼しなかった場合について、現住建造物等放火未遂罪(108条・112条)をもって論じるべきであるとしている(大判大15.9.28)。隣接する家屋に火を放つ行為は、延焼させようとした現住建造物を焼損する現実的な危険を含んでおり、現住建造物等放火罪の実行の着手があるといえるからである。この場合、丙の家屋についての他人所有非現住建造物等放火罪(109条1項)の既遂は、より重い現住建造物等放火未遂罪に吸収され、別個に成立しない。したがって、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立し、本肢は正しい。

第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
| 条文 | 客体 | 公共の危険 |
|---|---|---|
| 108条 現住建造物等放火 | 現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等(犯人以外の者が基準) | 要件でない(抽象的危険犯)。未遂を処罰 |
| 109条1項 他人所有非現住建造物等放火 | 人が住居に使用せず人がいない他人所有の建造物等 | 要件でない。未遂を処罰 |
| 109条2項 自己所有非現住建造物等放火 | 同上で自己所有 | 公共の危険を生じなければ罰しない |
| 110条1項 建造物等以外放火 | 前2条以外の物(自動車など) | 要件(よって公共の危険を生じさせた) |
| 111条 延焼 | 109条2項・110条2項の罪(自己所有物)から108条・109条1項の物等へ延焼 | 自己所有物への放火の結果的加重犯 |
正しい。108条の「人」とは犯人以外の者をいい、犯人の家族も含まれるので(最判昭32.6.21)、家族と共に住居として使用する甲所有の家屋は現住建造物であり、108条は公共の危険の発生を要件としないから、現住建造物等放火罪が成立する。
108条の現住建造物等放火罪は、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等を焼損したときに成立する。ここでの「人」は犯人以外の者を意味し、判例は、犯人の家族もこれに当たるとしている(最判昭32.6.21)。108条が重く処罰されるのは、人が生活している建物を燃やせば中にいる人の生命・身体に危険が及ぶからであり、その人が犯人の家族であっても危険は変わらないからである。また、108条の客体は所有者を問わないので、犯人自身の所有する建物であっても、犯人以外の者が住居に使用していれば現住建造物に当たる。そして、108条は公共の危険の発生を要件としておらず、現住建造物を焼損すれば、隣家に燃え移る危険がなくても既遂になる。甲は、家族と共に住居として使用する甲所有の木造家屋に放火して半焼させている。家屋は甲の家族という犯人以外の者が住居に使用する現住建造物であり、半焼によって焼損に至っているので、隣家に燃え移る危険が発生しなかったとしても、現住建造物等放火罪が成立する。したがって、本肢は正しい。

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
| 条文 | 客体 | 公共の危険 |
|---|---|---|
| 108条 現住建造物等放火 | 現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等(犯人以外の者が基準) | 要件でない(抽象的危険犯)。未遂を処罰 |
| 109条1項 他人所有非現住建造物等放火 | 人が住居に使用せず人がいない他人所有の建造物等 | 要件でない。未遂を処罰 |
| 109条2項 自己所有非現住建造物等放火 | 同上で自己所有 | 公共の危険を生じなければ罰しない |
| 110条1項 建造物等以外放火 | 前2条以外の物(自動車など) | 要件(よって公共の危険を生じさせた) |
| 111条 延焼 | 109条2項・110条2項の罪(自己所有物)から108条・109条1項の物等へ延焼 | 自己所有物への放火の結果的加重犯 |
誤り。違うのは「甲に延焼罪が成立する」の部分である。妻と二人で居住する自宅は妻の旅行中も現住建造物であって甲には現住建造物等放火既遂罪が成立し、延焼罪は自己所有の非現住建造物等放火又は建造物等以外放火から延焼した場合に限って成立するから、本肢では成立しない。
108条の「人」とは犯人以外の者をいい、犯人の家族も含まれる。また、現住建造物に当たるかどうかは、放火の時に人が中にいたかではなく、その建造物が犯人以外の者の起居の場所として日常使用されているかで決まり、判例は、居住者が旅行で不在であっても使用形態に変更がなければ現住性は失われないとしている(最決平9.10.21)。甲と妻が二人で居住する自宅は、甲の意図を知らない妻が旅行中であっても、妻が帰れば再びそこで生活するのであるから、現に人が住居に使用する建造物である。したがって、これに放火して全焼させた甲には現住建造物等放火既遂罪(108条)が成立する。延焼罪(111条1項)は、自己所有の非現住建造物等放火(109条2項)又は自己所有の建造物等以外放火(110条2項)の罪を犯し、よって108条又は109条1項の物に延焼させた場合の結果的加重犯であり、基本となる罪はこの二つに限られる。甲の行為は108条の罪であって延焼罪の基本となる罪ではないから、隣家に延焼しても延焼罪は成立せず、延焼の結果は量刑で考慮されるにとどまる。本肢は誤りである。

第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
- ["建造物の一体性", "木造アパートのように物理的・機能的に一体の建物は全体が一個の現住建造物であり、空室部分を焼損しても現住建造物等放火罪の既遂になる(最決平元.7.14)"]
- ["焼損(独立燃焼説)", "火が媒介物を離れて建造物の一部が独立して燃焼を継続する状態になれば既遂。板壁は建造物の一部、布団・カーテン・畳は取り外せるので建造物の一部でなく、それが燃えただけでは未遂(最判昭25.5.25)"]
- ["現住性", "犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用していれば、居住者が旅行中でも現住建造物。居住者全員を殺害した後は非現住建造物(大判大6.4.13)"]
- ["延焼罪(111条)", "基本となる罪は自己所有の非現住建造物等放火(109条2項)と自己所有の建造物等以外放火(110条2項)だけ。現住建造物に放火して延焼しても延焼罪にならない"]











