1刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。
2被告人の責に帰すべき事由によつて生じた費用は、刑の言渡をしない場合にも、被告人にこれを負担させることができる。
3検察官のみが上訴を申し立てた場合において、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない。ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。
4公訴が提起されなかつた場合において、被疑者の責めに帰すべき事由により生じた費用があるときは、被疑者にこれを負担させることができる。
この条文の過去問 2問
誤り。違うのは「被害者の兄弟姉妹は,被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることはできない」の部分である。被害者が死亡した場合の兄弟姉妹は「被害者等」に含まれ、申出ができる。
被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(290条の2第1項)のきっかけになる申出ができるのは、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士である。ここでいう被害者等とは、被害者本人のほか、被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう(現行法では201条の2第1項1号ハ(1)の定義が290条の2にも及ぶ。出題当時は290条の2第1項柱書の括弧書に同じ定義があった)。被害者が生存して心身にも重大な故障がなければ申出権者は本人と法定代理人に限られるが、被害者が死亡した事案では遺族である兄弟姉妹にも固有の申出権がある。肢の強制わいせつ致死(刑法181条1項。令和5年改正後は不同意わいせつ致死で条文番号は同じ)は290条の2第1項1号が列挙する対象事件であり、被害者は死亡しているから、その兄弟姉妹は被害者等として秘匿の申出をすることができる。肢は兄弟姉妹の申出を否定する点で条文に反している。

裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
- 対象事件(1項):1号=不同意わいせつ・不同意性交等(刑法176条〜179条・181条・182条)やわいせつ目的の略取誘拐などの性犯罪、2号=児童福祉法・児童買春等の罪、3号=そのほか名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件(傷害などの罪名でも可)
- 申出権者(1項):被害者等(被害者、及び被害者が死亡し又は心身に重大な故障がある場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)、被害者の法定代理人、これらの者から委託を受けた弁護士。申出はあらかじめ検察官にする(2項)
- 職権の決定(3項):被害者や親族への加害・畏怖・困惑のおそれがある事件では、申出がなくても検察官と被告人・弁護人の意見を聴いて決定できる
- 効果:起訴状の朗読は被害者特定事項を明らかにしない方法で行い(291条2項)、裁判長は被害者特定事項にわたる尋問・陳述を制限することが「できる」(295条3項。犯罪の証明に重大な支障や被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除く)。遮へい措置(157条の5)が義務になるわけではない
- 不服申立て:判決前の訴訟手続に関する決定であり、抗告はできない(420条1項)
正しい。181条1項は、刑の言渡しをしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならず、ただし被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときはこの限りでないと定めている。
181条1項本文は、刑の言渡しをしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならないと定める。訴訟費用とは、証人の旅費・日当や国選弁護人の報酬など、訴訟のために国が支出した費用をいう。被告人が罪を犯したことによって訴訟が必要になり費用が生じたのであるから、刑を言い渡す場合には、原則としてその費用を被告人に負担させることにした。もっとも同項ただし書は、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでないとする。資力のない被告人に負担させても実際に納付できず、生活をさらに困難にするだけだからである。本肢は、この本文とただし書の内容どおりであり、正しい。刑の言渡しをしない場合でも、被告人の責めに帰すべき事由によって生じた費用は負担させることができる(同条2項)。

刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。
