1裁判所は、証拠の開示の必要性の程度並びに証拠の開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、第三百十六条の十四第一項(第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については検察官の請求により、第三百十六条の十八(第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については被告人又は弁護人の請求により、決定で、当該証拠の開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
2裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。
3第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「第1回公判期日前には証拠の提示を求めることはできない」の部分である。公判前整理手続で証拠開示の裁定をするため必要があるときは、裁判所は当事者に証拠の提示を命じることができる(316条の27第1項)。
公判前整理手続(316条の2以下)は第1回公判期日前に行う争点と証拠の整理手続であり、検察官請求証拠の開示、類型証拠の開示、主張関連証拠の開示が予定されている(316条の14・316条の15・316条の20)。証拠開示の要否・時期・方法について当事者間に争いが生じたときは、裁判所は開示命令や時期・方法の指定などの裁定をすることができ(316条の25・316条の26)、その裁定をするため必要があると認めるときは、検察官、被告人又は弁護人にその証拠の提示を命じることができる(316条の27第1項前段)。この提示命令は公判前整理手続の裁定を前提にする以上、第1回公判期日前に行われるのが通常であり、条文にも期日前を除外する限定はない。実質的にも、起訴状一本主義が防ごうとするのは、検察官が一方的に捜査記録を裁判所に提出して事件の実体について予断を与えることであって、当事者双方の関与のもとで整理のために証拠の存否や内容を確かめることは、この趣旨に反しない。提示された証拠は何人にも閲覧・謄写させてはならず(同項後段)、予断排除への配慮もある。肢は誤りである。

起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
| 違反になる | 違反にならない |
|---|---|
| 詐欺の起訴状への詐欺の前科の記載(執行猶予中でも同じ) | 構成要件になっている前科(常習累犯窃盗)や犯行の手段になっている前科(前科を誇示した恐喝)の記載 |
| 予断を生じさせる書類の添付・内容の引用 | 趣旨の判明に必要な脅迫文書の全文に近い記載 |
| 逮捕状・勾留状の裁判官への差出し(規則167条)/略式請求と同時の書類・証拠物の差出し(規則289条)/証拠開示の裁定のための証拠提示(316条の27) | |
| 違反の効果: 治癒できず、判決で公訴棄却(338条4号) |
誤り。違うのは「不服申立てをすることができない」の部分である。証拠開示に関する裁定と開示命令には、検察官も即時抗告ができる(316条の25第3項・316条の26第3項)。
裁判所は、証拠の開示の必要性の程度と開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、当事者の請求により決定で証拠の開示の時期若しくは方法を指定し又は条件を付することができ(316条の25第1項)、相手方が開示すべき証拠を開示していないときは、請求により決定で開示を命じなければならない(316条の26第1項)。これらの決定に対しては、いずれも即時抗告をすることができると明文で定められている(316条の25第3項・316条の26第3項)。判決前にした訴訟手続に関する決定には原則として抗告ができない(420条1項)が、証拠開示は被告人の防御の準備の基礎であると同時に、開示によって証人威迫や罪証隠滅、関係者の名誉やプライバシーの侵害といった弊害を生じうる事項であり、当事者双方の利害に重大な影響を及ぼす。そこで法は、争点整理の段階で開示の可否を終局的に決める必要から、独立の不服申立手段として即時抗告を認めたのである。検察官も即時抗告の主体から除かれていない。

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
| 決定 | 内容 | 不服申立て |
|---|---|---|
| 開示の裁定(316条の25) | 開示の時期・方法の指定、条件の付加。相手方の意見を聴く | 即時抗告(3項) |
| 開示命令(316条の26) | 開示すべき証拠を開示していないときは請求により開示を命じなければならない | 即時抗告(3項) |
| 通常の証拠決定(420条) | 判決前の訴訟手続に関する決定 | 原則として抗告できない |
誤り。違うのは「検察官は,証拠開示に関する裁判所の決定に対して,不服申立てをすることができない」の部分である。証拠開示の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる(316条の26第3項・316条の25第3項)。
316条の3第1項は、裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において十分な準備が行われるようにするとともに、できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならないと定める。もっとも、証拠開示に関する裁定は、被告人の防御の準備や捜査の秘密・関係者の保護に直接かかわる重要な判断であるから、誤りがあれば是正する手段が必要である。そこで316条の26第3項は、開示命令の請求についてした決定に対しては即時抗告をすることができると定め、316条の25第3項も開示の時期・方法の指定等の決定に対する即時抗告を認めている。即時抗告は提起期間が3日と短く(422条)、手続の迅速という要請にも配慮した不服申立ての方法である。検察官も被告人側も、不利な決定に対して即時抗告ができる。本肢は、不服申立てができないとする点で誤っている。

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
- 検察官請求証拠:請求を待たず速やかに開示(316条の14第1項)。請求があれば保管証拠の一覧表も交付(同条2項)
- 類型証拠:類型に当たり特定の検察官請求証拠の証明力判断に重要なもので、被告人側の請求があり、必要性と弊害を考慮して相当なとき(316条の15)
- 被告人側の主張明示と請求証拠の開示(316条の17・316条の18)
- 主張関連証拠:主張に関連するもので、被告人側の請求があり、必要性と弊害を考慮して相当なとき(316条の20)。主張の相当性は要件でない
- 裁定:開示すべき証拠を開示しないときは、相手方の請求により開示を命じる(316条の26第1項)。決定には即時抗告ができる(同条3項)
正しい。証拠開示をめぐる争いは、裁判所が開示の時期・方法の指定(316条の25)や開示命令(316条の26)の決定で裁定し、これらの決定に対しては即時抗告をすることができる(各条3項)。
公判前整理手続では、検察官請求証拠の開示、類型証拠の開示、主張関連証拠の開示が段階的に行われるが、開示の要否や方法について当事者間に争いが生じることがある。そこで法は裁判所による裁定の制度を設けた。316条の25第1項は、裁判所は、開示の必要性の程度と開示による弊害の内容・程度などを考慮して必要と認めるときは、決定で開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができるとし、316条の26第1項は、開示すべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により決定で開示を命じなければならないとする。いずれの決定にも、相手方の意見を聴くことが求められる(各条2項)。そして、これらの決定に対しては即時抗告をすることができる(各条3項)。開示の可否は防御の準備に大きく影響するため、迅速に上級審の判断を受けられるようにしたのである。本肢は正しい。

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
| 事項 | 規律 | 根拠 |
|---|---|---|
| 目的と性格 | 充実した公判の審理を継続的・計画的・迅速に行うための、争点と証拠を整理する公判準備 | 316条の2第1項 |
| 対象事件 | 必要があると認めるとき。法定刑による限定なし(裁判員対象事件は必ず付す) | 316条の2第1項、裁判員法49条 |
| 内容 | 証拠調べ請求をさせる、証拠調べの決定・却下の決定など | 316条の5第5号・8号 |
| 主宰者 | 受訴裁判所 | 316条の2第1項 |
| 証拠開示の裁定 | 裁判所が決定で裁定。不服は即時抗告 | 316条の25・316条の26(各3項) |

