即決裁判手続の申立てがあつた場合において、被告人に弁護人がないときは、裁判長は、できる限り速やかに、職権で弁護人を付さなければならない。
検察官は、即決裁判手続の申立てをした事件について、被告人又は弁護人に対し、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類を閲覧する機会その他の同項に規定する機会を与えるべき場合には、できる限り速やかに、その機会を与えなければならない。
1裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、弁護人が即決裁判手続によることについてその意見を留保しているとき、又は即決裁判手続の申立てがあつた後に弁護人が選任されたときは、弁護人に対し、できる限り速やかに、即決裁判手続によることについて同意をするかどうかの確認を求めなければならない。
2弁護人は、前項の同意をするときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
裁判長は、即決裁判手続の申立てがあつたときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、その申立て後(前条第一項に規定する場合においては、同項の同意があつた後)、できる限り早い時期の公判期日を定めなければならない。
裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、第二百九十一条第五項の手続に際し、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときは、次に掲げる場合を除き、即決裁判手続によつて審判をする旨の決定をしなければならない。第三百五十条の十六第二項又は第四項の同意が撤回されたとき。第三百五十条の二十第一項に規定する場合において、同項の同意がされなかつたとき、又はその同意が撤回されたとき。前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
1 第三百五十条の十六第二項又は第四項の同意が撤回されたとき。
2 第三百五十条の二十第一項に規定する場合において、同項の同意がされなかつたとき、又はその同意が撤回されたとき。
3 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
4 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「有罪である旨の陳述をしたときは,被疑者及び弁護人の意見を聴き,有罪である旨の陳述をした訴因に限り」の部分である。即決裁判手続の申立ての要件は被疑者の同意等であり、有罪である旨の陳述を要件とするのは裁判所が決定する簡易公判手続(291条の2)である。
350条の16第1項は、検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白かつ軽微で、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に書面により即決裁判手続の申立てをすることができると定め、同条2項は被疑者の同意がなければ申立てができないとし、4項は弁護人がある場合にはその同意又は意見の留保を要するとする。申立ての段階では被疑者はまだ起訴されていないから、起訴状の訴因について有罪である旨を陳述することはありえない。本肢の「起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述」「意見を聴き」「陳述をした訴因に限り」という要素は、被告人が冒頭手続で有罪である旨を陳述したときに裁判所が決定する簡易公判手続(291条の2)の要件である。本肢は即決裁判手続と簡易公判手続を混同しており、誤っている。

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。(2項)前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
| 略式命令の請求 | 即決裁判手続の申立て | |
|---|---|---|
| 被疑者の意思の確認 | 手続を説明し通常の審判を受けられる旨を告げ、異議がないことを書面で明らかにする(461条の2) | 手続を説明し、被疑者の同意(弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保)を書面で明らかにする(350条の16第2項〜5項) |
| 時期と方式 | 公訴の提起と同時に書面で(462条1項) | 公訴の提起と同時に書面で(350条の16第1項) |
| 対象 | 簡易裁判所の管轄事件で100万円以下の罰金・科料を科す事件(461条) | 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を除く |
| 有罪である旨の陳述 | 要件でない | 要件でない(有罪の陳述を要件とするのは裁判所が決定する簡易公判手続。291条の2) |
前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない。
この条文の過去問 2問
正しい。即決裁判手続による公判期日は、弁護人がないときは開くことができない(350条の23)。
350条の23は、前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができないと定める。前条の手続とは、冒頭手続で被告人が有罪である旨の陳述をしたときに、裁判所が即決裁判手続によって審判をするかを決める手続である。即決裁判手続では、証拠調べが相当と認める方法で簡略に行われ、原則として即日判決が言い渡されるうえ、罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴もできなくなる(403条の2第1項)。被告人がこのような不利益を伴う手続で審判を受ける以上、弁護人の関与によって防御を制度的に補う必要がある。そのため、事件の法定刑にかかわらず、即決裁判手続による公判期日は弁護人がいなければ開けないとされている。申立ての段階でも、被疑者に弁護人がなく、貧困などの理由で自ら選任できないときは、裁判官が職権で弁護人を付す仕組みが置かれている。本肢は350条の23のとおりである。

前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
正しい。即決裁判手続による公判期日は、弁護人がないときは開くことができない(350条の23)。
350条の23は、前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができないと定める。前条の手続とは、冒頭手続で被告人が有罪である旨の陳述をしたときに、裁判所が即決裁判手続によって審判をするかを決める手続である。即決裁判手続では、証拠調べが相当と認める方法で簡略に行われ、原則として即日判決が言い渡されるうえ、罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴もできなくなる(403条の2第1項)。被告人がこのような不利益を伴う手続で審判を受ける以上、弁護人の関与によって防御を制度的に補う必要がある。そのため、事件の法定刑にかかわらず、即決裁判手続による公判期日は弁護人がいなければ開けないとされている。申立ての段階でも、被疑者に弁護人がなく、貧困などの理由で自ら選任できないときは、裁判官が職権で弁護人を付す仕組みが置かれている。本肢は350条の23のとおりである。

前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
1第三百五十条の二十二の決定のための審理及び即決裁判手続による審判については、第二百八十四条、第二百八十五条、第二百九十六条、第二百九十七条、第三百条から第三百二条まで及び第三百四条から第三百七条の二までの規定は、これを適用しない。
2即決裁判手続による証拠調べは、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「刑事訴訟法第256条第6項の適用はない」の部分である。即決裁判手続に起訴状一本主義の適用を除く規定はなく、同項の適用がある。
即決裁判手続(350条の16以下)は、事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わると見込まれる事件について、被疑者の同意と弁護人の同意を得て、検察官が公訴の提起と同時に書面で申し立てる簡易迅速な手続である(350条の16)。証拠調べを適当と認める方法で行うことができ(350条の24)、伝聞法則(320条1項)の適用が原則として除かれる(350条の27本文)など、通常の手続の特則が定められている。しかしこれらの特則は条文が明示する範囲に限られ、起訴状一本主義を定める256条6項の適用を除く規定はどこにも置かれていない。即決裁判手続の申立ては起訴状とは別の申立書でされ、被疑者の同意を明らかにする書面などもその申立書に付けられるにすぎないから、起訴状そのものに予断を生じさせる書類を添付・引用してはならないという原則と矛盾しない。公判を開かない略式手続で請求と同時に書類・証拠物を差し出すのとは、ここが異なる。したがって即決裁判手続にも256条6項の適用があり、肢は誤っている。

起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
| 記載・添付 | 256条6項 |
|---|---|
| 詐欺の起訴状への詐欺の前科の記載(執行猶予中でも同じ)(最大判昭27.3.5) | 違反になる |
| 予断を生じさせる書類の添付・内容の引用 | 違反になる |
| 構成要件や犯行の手段になっている前科の記載(常習累犯窃盗、前科を誇示した恐喝) | 違反にならない |
| 趣旨の判明に必要な脅迫文言の全文に近い記載(最判昭33.5.20) | 違反にならない |
| 逮捕状・勾留状を受訴裁判所ではなく裁判官に差し出すこと(刑訴規則167条1項) | 違反にならない |
| 略式請求と同時の書類・証拠物の差出し。即決裁判手続の申立書・同意書 | 違反にならない(即決裁判手続にも256条6項の適用はある) |
| 違反の効果 | 治癒できず、判決で公訴棄却(338条4号) |
1裁判所は、第三百五十条の二十二の決定があつた事件について、次の各号のいずれかに該当することとなつた場合には、当該決定を取り消さなければならない。判決の言渡し前に、被告人又は弁護人が即決裁判手続によることについての同意を撤回したとき。判決の言渡し前に、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述を撤回したとき。前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
1 判決の言渡し前に、被告人又は弁護人が即決裁判手続によることについての同意を撤回したとき。
2 判決の言渡し前に、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述を撤回したとき。
3 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
4 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
2前項の規定により第三百五十条の二十二の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。ただし、検察官及び被告人又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。
即決裁判手続の申立てを却下する決定(第三百五十条の二十二第三号又は第四号に掲げる場合に該当することを理由とするものを除く。)があつた事件について、当該決定後、証拠調べが行われることなく公訴が取り消された場合において、公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときは、第三百四十条の規定にかかわらず、同一事件について更に公訴を提起することができる。前条第一項第一号、第二号又は第四号のいずれかに該当すること(同号については、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述と相反するか又は実質的に異なつた供述をしたことにより同号に該当する場合に限る。)となつたことを理由として第三百五十条の二十二の決定が取り消された事件について、当該取消しの決定後、証拠調べが行われることなく公訴が取り消された場合において、公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときも、同様とする。