1検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。
2前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
3検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。
4被疑者に弁護人がある場合には、第一項の申立ては、被疑者が第二項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。
5被疑者が第二項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
6第一項の書面には、前項の書面を添付しなければならない。
この条文の過去問 8問
誤り。「即決裁判手続の申立て」の可否は法定刑の軽重により異なる。350条の16第1項ただし書は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を対象から除いている。
即決裁判手続の申立ては、350条の16第1項本文により、検察官が、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮して相当と認めるときに、公訴の提起と同時に書面でするものであるが、同項ただし書は死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を対象から除いている。したがって即決裁判手続の申立ての可否は法定刑の軽重により異なる。この手続は争いのない軽微な事件について審理を簡略にして迅速に処理するものであるため、被告人の防御の観点から、被疑者の書面による同意(同条2項・3項)が欠かせず、弁護人があるときは弁護人が同意し又は意見を留保していることが必要とされる(同条4項)。手続の効果として、判決は原則として即日言い渡され(350条の28)、拘禁刑を言い渡すときは必ず刑の全部の執行猶予を付さなければならず(350条の29)、事実誤認(382条)を理由とする控訴が制限される(403条の2第1項)。出題当時の条文は懲役若しくは禁錮であり、令和4年改正で拘禁刑に一本化されたが、結論は変わらない。

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。
| 法定刑で変わる | 法定刑で変わらない |
|---|---|
| 緊急逮捕(210条1項):死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限る | 勾留の執行停止(95条):裁判所が適当と認めるとき。法定刑を問わない |
| 権利保釈の除外(89条1号・3号):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 第1回公判期日前の証人尋問請求(226条・227条):出頭・供述拒否や供述変遷のおそれと不可欠性が要件 |
| 即決裁判手続(350条の16第1項ただし書)・簡易公判手続(291条の2ただし書):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は不可 | 起訴猶予(248条):検察官の裁量。法定刑は考慮事情の一つ |
| 必要的弁護(289条1項):死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件 | 被疑者国選弁護(37条の2):現行法では勾留状が発せられた全事件(出題当時は長期3年を超える事件に限られていた) |
| 公訴時効(250条)・軽微事件の逮捕・勾留(199条1項ただし書・217条・60条3項)・出頭義務(284条・285条) | 公判前整理手続に付す決定(316条の2):必要があると認めるとき |
正しい。即決裁判手続の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければすることができない(350条の16第2項)。
350条の16第1項は、検察官は、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることなどを考慮して相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面で即決裁判手続の申立てをすることができると定め、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を除いている。そのうえで同条2項は、この申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければすることができないと定める。即決裁判手続は証拠調べを簡略にし、原則として即日判決を言い渡す手続であり、被告人が通常の公判で争う機会を事実上手放すことになるから、本人の同意を欠かせない要件としたのである。同意の確認は書面で行い、被疑者に弁護人があるときは、弁護人が同意し又は意見を留保していることも必要である(同条3項・4項)。出題当時は350条の2に置かれていた規定で、内容は変わっていない。

前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
誤り。違うのは「強盗事件について」即決裁判手続の申立てができるとする部分である。死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は申立ての対象外であり(350条の16第1項ただし書)、5年以上の有期拘禁刑に当たる強盗罪はこれに当たる。
350条の16第1項本文は、検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができると定める。しかし、同項ただし書は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件についてはこの限りでないとして、対象を法定刑で限っている。強盗罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり、短期1年以上の拘禁刑に当たる事件であるから、事案が明白で証拠調べが速やかに終わる見込みであっても、即決裁判手続の申立てはできない。即決裁判手続は、原則として即日判決を言い渡す簡略な手続であり、重大な事件をその枠内で処理するのは相当でないからである。本肢は、条文が求める「軽微であること」の要件も落としている。出題当時の条文は「懲役若しくは禁錮」と表記していたが、現行法では拘禁刑であり、結論は変わらない。

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
誤り。違うのは「被疑者の同意がなくても、即決裁判手続の申立てをすることができる」の部分である。即決裁判手続の申立ては、被疑者の同意がなければすることができない(350条の16第2項)。
350条の16第2項は、即決裁判手続の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができないと定める。被疑者の同意は申立ての要件そのものである。同意を確かめるときは、検察官は書面で求め、被疑者に即決裁判手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない(同条3項)。被疑者に弁護人があるときは、被疑者の同意に加えて、弁護人が同意し又は意見を留保していることが必要であり(同条4項)、これらは書面で明らかにしなければならない(同条5項)。即決裁判手続では証拠調べが簡略になり、罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴もできなくなるから(403条の2第1項)、被疑者がその不利益を理解したうえで自ら選ぶことが必要とされているのである。したがって、被疑者の同意がないのに申立てをすることはできず、本肢は誤っている。

前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
誤り。違うのは「強盗事件について」即決裁判手続の申立てができるとする部分である。死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は申立ての対象外であり(350条の16第1項ただし書)、5年以上の有期拘禁刑に当たる強盗罪はこれに当たる。
350条の16第1項本文は、検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができると定める。しかし、同項ただし書は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件についてはこの限りでないとして、対象を法定刑で限っている。強盗罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり、短期1年以上の拘禁刑に当たる事件であるから、事案が明白で証拠調べが速やかに終わる見込みであっても、即決裁判手続の申立てはできない。即決裁判手続は、原則として即日判決を言い渡す簡略な手続であり、重大な事件をその枠内で処理するのは相当でないからである。本肢は、条文が求める「軽微であること」の要件も落としている。出題当時の条文は「懲役若しくは禁錮」と表記していたが、現行法では拘禁刑であり、結論は変わらない。

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
誤り。違うのは「被疑者の同意がなくても、即決裁判手続の申立てをすることができる」の部分である。即決裁判手続の申立ては、被疑者の同意がなければすることができない(350条の16第2項)。
350条の16第2項は、即決裁判手続の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができないと定める。被疑者の同意は申立ての要件そのものである。同意を確かめるときは、検察官は書面で求め、被疑者に即決裁判手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない(同条3項)。被疑者に弁護人があるときは、被疑者の同意に加えて、弁護人が同意し又は意見を留保していることが必要であり(同条4項)、これらは書面で明らかにしなければならない(同条5項)。即決裁判手続では証拠調べが簡略になり、罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴もできなくなるから(403条の2第1項)、被疑者がその不利益を理解したうえで自ら選ぶことが必要とされているのである。したがって、被疑者の同意がないのに申立てをすることはできず、本肢は誤っている。

前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
- 申立て:事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わる見込みの事件。死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑の事件は不可(350条の16第1項)
- 同意:被疑者の同意が必要。弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保も要る(同条2項・4項)
- 必要的弁護:弁護人がなければ公判期日を開けない(350条の23)
- 判決:原則即日。拘禁刑なら必ず刑の全部の執行猶予(350条の29)
- 控訴:罪となるべき事実の事実誤認を理由とする控訴はできない。量刑不当などの控訴はできる(403条の2第1項)
誤り。違うのは「有罪である旨の陳述をしたときは,被疑者及び弁護人の意見を聴き,有罪である旨の陳述をした訴因に限り」の部分である。即決裁判手続の申立ての要件は被疑者の同意等であり、有罪である旨の陳述を要件とするのは裁判所が決定する簡易公判手続(291条の2)である。
350条の16第1項は、検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白かつ軽微で、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に書面により即決裁判手続の申立てをすることができると定め、同条2項は被疑者の同意がなければ申立てができないとし、4項は弁護人がある場合にはその同意又は意見の留保を要するとする。申立ての段階では被疑者はまだ起訴されていないから、起訴状の訴因について有罪である旨を陳述することはありえない。本肢の「起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述」「意見を聴き」「陳述をした訴因に限り」という要素は、被告人が冒頭手続で有罪である旨を陳述したときに裁判所が決定する簡易公判手続(291条の2)の要件である。本肢は即決裁判手続と簡易公判手続を混同しており、誤っている。

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。(2項)前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
| 略式命令の請求 | 即決裁判手続の申立て | |
|---|---|---|
| 被疑者の意思の確認 | 手続を説明し通常の審判を受けられる旨を告げ、異議がないことを書面で明らかにする(461条の2) | 手続を説明し、被疑者の同意(弁護人があれば弁護人の同意又は意見留保)を書面で明らかにする(350条の16第2項〜5項) |
| 時期と方式 | 公訴の提起と同時に書面で(462条1項) | 公訴の提起と同時に書面で(350条の16第1項) |
| 対象 | 簡易裁判所の管轄事件で100万円以下の罰金・科料を科す事件(461条) | 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件を除く |
| 有罪である旨の陳述 | 要件でない | 要件でない(有罪の陳述を要件とするのは裁判所が決定する簡易公判手続。291条の2) |
誤り。違うのは「いわゆる証拠の優越で足りる」の部分である。即決裁判手続でも罪となるべき事実を認定して有罪とする以上、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明が必要であり、証明の程度を軽減する規定はない。
即決裁判手続は、事案が明白かつ軽微で証拠調べが速やかに終わると見込まれる事件について、被疑者の同意を得て、簡易な方法による証拠調べ、伝聞法則の適用除外、即日の判決言渡しなどの特則により、簡易・迅速に公判を行う手続である(350条の16以下)。しかし、これらの特則は証拠調べの方式や証拠能力の範囲を緩めるものであり、有罪を認定するために必要な心証の程度を下げる規定は置かれていない。刑事裁判で罪となるべき事実を認定するには、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信、すなわち合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明が必要であり、手続が簡易であることはこの要求を変える理由にならない。存在を肯定する証拠が否定する証拠を上回れば足りるという証拠の優越は民事裁判の基準である。本肢は、即決裁判手続では証拠の優越で足りるとする点で誤っている。

刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨である。