裁判所は、裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて、被告人を召喚することができる。
裁判所は、次の場合には、被告人を勾引することができる。被告人が定まつた住居を有しないとき。被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるとき。
1 被告人が定まつた住居を有しないとき。
2 被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるとき。
この条文の過去問 1問
正しい。出題当時の152条は、召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときに勾引を認めていたので、出頭しないおそれだけでは勾引できなかった。現在は平成28年改正により、証人も応じないおそれがあれば勾引でき、本肢の後半は誤りとなる。
被告人については、58条2号が、正当な理由がなく召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときに勾引できると定め、出題当時もおそれがあれば勾引できた。これに対し、出題当時の152条は、召喚を受けた証人が正当な理由がなく現に出頭しない場合に勾引を認めるにとどまっていた。被告人は公判に出頭しなければ原則として開廷できない(286条)から出頭の確保が強く求められるのに対し、証人はまず召喚に応じる機会を与えるべき第三者だからである。したがって出題当時は、証人について出頭しないおそれがあるだけでは勾引できず、本肢は正しかった。その後、平成28年改正で152条は、証人が正当な理由がなく召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは勾引できると改められ、被告人と同じ要件になった。現行法では、本肢の後半は誤りとなる。

裁判所は、証人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは、その証人を勾引することができる。
| 事項 | 原則 | 例外 |
|---|---|---|
| 宣誓(154条・155条1項) | 宣誓をさせなければならない | 宣誓の趣旨を理解できない者は宣誓をさせないで尋問する |
| 供述の範囲(156条1項) | 実験した事実を供述する | 実験した事実により推測した事項も供述させることができる |
| 近親者に関する証言(147条) | 証言義務がある | 配偶者・三親等内の血族・二親等内の姻族等が訴追・有罪判決を受けるおそれのある証言は拒める |
| 業務上の秘密(149条) | 医師・弁護士等は他人の秘密に関する証言を拒める | 本人の承諾、権利の濫用等があれば拒めない |
| 勾引(152条) | 召喚に応じないときは勾引できる | 平成28年改正後は応じないおそれがあるときも勾引できる |
勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられたときは、この限りでない。
この条文の過去問 1問
正しい。被告人が任意に供述する場合には、裁判員は裁判長に告げて、いつでも裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができ(裁判員法59条)、犯罪事実の認定はその判断に含まれる。
裁判員法59条は、刑訴法311条の規定により被告人が任意に供述をする場合には、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができると定める。裁判員が関与する判断は、事実の認定、法令の適用、刑の量定であり(裁判員法6条1項)、犯罪事実の認定に関する事項はまさに裁判員の関与する判断に必要な事項に当たる。裁判長に告げれば、裁判長を通さずに裁判員自身が被告人に質問できる。裁判員に事実の認定を担わせながら、自分で疑問を確かめる手段を与えなければ、裁判員は裁判官の質問の結果を聞くだけになり、国民が判断に加わる意味が薄れる。同じ趣旨から、裁判員は裁判長に告げて、裁判員の関与する判断に必要な事項について証人その他の者を尋問することもできる(56条)。もっとも被告人には黙秘権があり(刑訴法311条1項)、裁判員の質問も被告人が任意に供述する場合に限って認められるにとどまる。本肢は、犯罪事実の認定に関する事項について、裁判長に告げて被告人に直接質問できるとしており、59条のとおりである。

刑事訴訟法第三百十一条の規定により被告人が任意に供述をする場合には、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができる。
- 公判前整理手続:対象事件は必ず付す(裁判員法49条)
- 選任手続:非公開(33条1項)。理由を示さない不選任請求は各4人まで(36条1項)
- 裁判員の質問:裁判長に告げて証人尋問(56条)・被告人への質問(59条)ができる
- 区分審理:併合事件の一部を区分して順次審理し、部分判決を言い渡す(71条1項)
- 控訴:通常どおりできる。検察官の量刑不当控訴もできる
1裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。被告人が定まつた住居を有しないとき。被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
1 被告人が定まつた住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
3三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
この条文の過去問 22問
正しい。公訴提起後の私選弁護人の選任は弁護人となろうとする者と被告人とが連署した書面でしなければならず、氏名を記載できない合理的な理由がないのに被告人の署名を欠く選任届による選任は無効である(最決昭40.7.20)。
私選弁護人の選任は被告人又は被疑者と弁護人となろうとする者との合意に基づく訴訟行為であるが(30条1項)、その存否を手続上明確にし訴訟手続の安定を確保するため、方式が法定されている。公訴提起後の選任は、刑訴規則18条により、弁護人となろうとする者と被告人とが連署した書面を差し出してしなければならない。連署とは、公務員以外の者が作成する書類に署名押印を求める規則60条に照らし、それぞれが自己の氏名を自書して押印することをいう。最決昭40.7.20は、弁護人選任届の被告人の署名欄に「氏名不詳」と記載されているだけで被告人自身の署名がなかった事案で、連署の意義をこのように示したうえ、被告人に氏名を記載できない合理的な理由が認められない以上、その選任届による私選弁護人の選任は効力を生じないとした。方式に反する選任は無効であり、その者がした上訴申立て等も弁護人の行為としての効力をもたない。肢は合理的な理由がない場合を前提にしており、判例の立場と一致する。

公訴提起後における私選弁護人の選任は、弁護人になろうとする者と被告人とが連署した書面を差し出してしなければならないことは、刑訴法30条1項、刑訴規則18条の明定するところであり、ここに連署とは、弁護人になろうとする者と被告人とがそれぞれ自己の氏名を自書し押印することであることは、同規則60条によつて明らか
- 本人はいつでも弁護人を選任できる(30条1項)。法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹は本人の意思にかかわらず独立して選任できる(30条2項)
- 弁護人は弁護士の中から選任する(31条1項)。特別の事情があれば裁判所の許可を得て弁護士でない者を選任できる(同条2項)
- 方式は弁護人と連署した書面である。合理的な理由なく被告人の署名を欠く選任届による選任は無効である(最決昭40.7.20)
- 数の制限は規則の定めによる。被告人の弁護人は特別の事情があるときに限り3人まで(35条・規則26条1項)
- 起訴前の選任は第一審でも効力をもち(32条1項)、起訴後の選任は審級ごとに行う(32条2項)
正しい。30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる事件では、被疑者が定まった住居を有しない場合に限って勾留できる(60条3項・207条1項)。
勾留の実体的な要件は、60条1項柱書の罪を犯したことについての相当な理由(嫌疑の相当性)と、同項各号が定める勾留の理由、つまり住居不定(1号)、罪証隠滅のおそれ(2号)、逃亡のおそれ(3号)のいずれかであり、207条1項により被疑者の勾留にも準用される。もっとも60条3項は、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については当分の間2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、定まった住居を有しない場合に限り1項を適用すると定める。軽微な事件に身体拘束という重大な処分を用いるのは釣り合いを失するので、勾留を住居不定の場合に絞った比例原則の具体化である。肢の事件は刑法の罪で30万円以下の罰金に当たる事件であるから同項の適用対象であり、嫌疑の相当性が認められ、3号の逃亡のおそれがあっても、被疑者の住居が不定でない限り勾留できない。肢は条文どおりで正しい。現行犯逮捕にも同じ軽微事件の制限がある(217条)。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
- 相当な理由: 被疑者が罪を犯したことについての相当な理由(60条1項柱書)
- 勾留の理由(いずれか一つ): 定まった住居を有しない/罪証隠滅のおそれ/逃亡のおそれ(60条1項各号)
- 勾留の必要性: 勾留の理由があっても、拘束を続ける必要がなければ勾留できない(87条1項参照)
- 軽微事件の特則: 30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる事件は、定まった住居を有しない場合に限る(60条3項)。少年はやむを得ない場合に限る(少年法48条1項)
- 「定まった住居」は現実の生活の本拠で判断し、住民票の住所があるだけでは足りない
誤り。違うのは「その勾留を継続する必要があると認めるときは、被告人が逃亡した場合を除き、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行わなければならない」の部分であり、勾留のまま起訴された場合に改めて勾留質問は要らない。
勾留されている被疑者がその被疑事実と同一の事実で公訴を提起されると、被疑者の勾留は当然に被告人の勾留に切り替わり、勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月となる(60条2項前段。208条1項は公訴を提起しないときの釈放を定めるので、その反面である)。このとき裁判官や裁判所が改めて被告人に被告事件を告げて陳述を聴かなければならないとする規定はない。61条の勾留質問は、身体拘束を始める前に本人の弁解を聴いて勾留の理由と必要性を審査し、防御の機会を与える手続であるが、被疑者の勾留の際に207条1項本文・61条の勾留質問がすでに行われ、公訴事実もそこで告げた被疑事実と同一であるから、その趣旨はすでに満たされている。新たに身体拘束を始めるわけでもない以上、重ねて勾留質問をする必要はない。起訴後に別の事実で新たに勾留するなら、その事実について勾留質問が要る点とは区別される。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
正しい。勾留をする裁判所がすでに被告事件の審理の際に被告事件に関する陳述を聴いている場合には、改めて61条の勾留質問をしなければならないものではない(最決昭41.10.19)。
61条本文は、被告人の勾留は被告事件を告げてこれに関する陳述を聴いた後でなければできないと定めるが、判例は、勾留をする裁判所がすでに被告事件の審理の際に被告事件に関する陳述を聴いている場合には、改めて61条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではないとして、この場合の省略を認めた(最決昭41.10.19)。61条の趣旨は、身体拘束の前に被告人本人に被告事件について弁解する機会を与え、裁判所が勾留の理由(60条1項)と必要性を実質的に判断できるようにする点にある。公判期日の罪状認否や被告人質問を通じて、その裁判所がすでに被告事件に関する被告人の陳述を直接聴いているなら、勾留質問という別の手続を重ねなくてもこの趣旨は実質的に達せられている。したがって、勾留されていない被告人を裁判所が勾留する場面でも、審理の際に陳述を聴いていれば改めて勾留質問を行う必要はなく、肢は判例のとおりで正しい。

本件のように、勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
誤り。違うのは「勾留期間の更新の裁判をするに当たり、被告人が逃亡した場合を除き、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行わなければならない」の部分であり、更新の裁判に勾留質問を求める規定はない。
被告人の勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月であり、特に継続の必要がある場合には、具体的に理由を付した決定で1か月ごとに更新できる(60条2項)。この更新の裁判に当たって改めて被告人に被告事件を告げて陳述を聴かなければならないとする規定は置かれていない。61条が勾留質問を要求するのは、新たに身体拘束を始める勾留の裁判についてであり、事前に本人の弁解を聴いて勾留の理由と必要性を審査し、防御の機会を保障するためである。更新は、すでに勾留質問などを経て適法に始まった勾留を続けるにすぎず、被告事件の内容も当初の手続で告知済みであるから、重ねて陳述を聴く手続は要求されない。更新決定には具体的な理由を付すことが求められ(60条2項後段)、被告人側は勾留の取消請求(87条)や保釈請求(88条以下)で争えるから、被告人の保護に欠けるところもない。肢は更新の裁判に勾留質問を要するとする点で誤っている。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
正しい。60条3項(207条1項で準用)は、30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる事件では、定まった住居を有しない場合に限って1項の規定を適用するとしており、罪証隠滅や逃亡のおそれがあっても住居不定でなければ勾留できない。
60条3項は、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については当分の間2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まった住居を有しない場合に限り、同条1項の規定を適用すると定め、この規定は207条1項本文により被疑者の勾留にも準用される。同項が制限しているのは1項3号の逃亡のおそれだけではなく、1項の規定の全体である。したがって、軽微事件では定まった住居を有しないことが勾留の前提条件になり、被疑者が罪を犯したことについて相当な理由があり、罪証隠滅のおそれ(1項2号)や逃亡のおそれ(1項3号)が認められても、定まった住居を有する限り勾留することはできない。身体拘束という重大な権利の制約と、事件の軽微さから予想される刑の軽さとの均衡を図る趣旨である。同じ趣旨の制限は軽微事件の逮捕にも置かれている(199条1項ただし書・217条)。肢はこの帰結をそのまま述べたものである。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
- 相当な理由:被疑者が罪を犯したことについて(中略)相当な理由があること(60条1項柱書)
- 勾留の理由(いずれか一つ):①定まった住居を有しない ②罪証を隠滅する(中略)相当な理由がある ③逃亡し又は逃亡する(中略)相当な理由がある(60条1項各号)
- 勾留の必要性:勾留の理由があっても、拘束を続ける必要がなければ勾留できない(87条1項参照)
- 軽微事件の特則:30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる事件は、定まった住居を有しない場合に限る(60条3項)。罪証隠滅・逃亡のおそれがあっても足りない
- 少年の特則:やむを得ない場合でなければ勾留を請求できず、勾留状も発せられない(少年法43条3項・48条1項)
誤り。違うのは「告げれば足りる」の部分である。勾留の理由には60条1項各号の事由が含まれ、犯罪事実と嫌疑の相当性だけを告げるのでは足りない。
84条1項は、法廷において裁判長は勾留の理由を告げなければならないと定める(被疑者勾留には207条1項本文で準用)。ここでいう勾留の理由とは、勾留の基礎になっている犯罪事実に加えて、60条1項各号に定める勾留の理由に当たる事由をいう。60条1項は、勾留の要件として、柱書で罪を犯したことについての嫌疑の相当性を求めたうえで、各号で、定まった住居を有しないこと(1号)、罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があること(2号)、逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があること(3号)のいずれかに当たることを求めている。開示制度の趣旨が、拘禁が正当な理由に基づくことを公開の場で明らかにさせる点にある以上(憲法34条後段)、嫌疑の存在だけを告げるのでは足りず、なぜ身柄を拘束する必要があるのかという各号該当の事由まで告げなければ制度の目的を達せられない。したがって犯罪事実と嫌疑の相当性を告げれば足りるとする肢は、60条1項各号の事由の告知を欠く点で誤っている。

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
誤り。違うのは「検察官の請求がなければ」の部分である。被告人の勾留は裁判所が職権で行い、検察官の請求は要件でない(60条1項)。
被告人の勾留は、公訴提起後の訴訟を主宰する裁判所が職権で行うものであり、検察官の請求は要件とされていない。60条1項は、裁判所は被告人が罪を犯したことについて相当な理由がある場合で各号のいずれかに当たるときはこれを勾留することができると定めるだけで、請求権者について何の規定も置いていない。被告人勾留は裁判所の判断に委ねられており、検察官の請求は職権の発動を促す端緒になり得るにとどまる。裁判所は勾留に先立って被告事件を告げ、これに関する陳述を聴く勾留質問(61条)を行い、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれ(60条1項1号から3号)の有無を自ら審査する。これに対し被疑者の勾留は検察官の請求に基づいて裁判官が行うものであり(207条1項本文・204条1項・205条1項)、請求がなければ裁判官が職権で被疑者を勾留することはできない。捜査段階では捜査機関の請求を待って司法審査が及ぶという令状主義の構造が採られているからである。肢はこの被疑者勾留の規律を被告人勾留に取り違えており、誤っている。

裁判所は、被告人が罪を犯したことを(中略)相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。一 被告人が定まつた住居を有しないとき。二 被告人が罪証を隠滅すると(中略)相当な理由があるとき。三 被告人が逃亡し又は逃亡すると(中略)相当な理由があるとき。
| 項目 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 誰が決めるか | 検察官の請求を受けた裁判官(207条1項) | 裁判所の職権。第1回公判期日までは裁判官(280条1項)。検察官の請求は要らない |
| 要件 | 60条1項(嫌疑の相当性+住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれか)と勾留の必要性 | 同じ |
| 期間 | 請求した日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴の提起があった日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 保釈 | なし(207条1項ただし書) | あり(88条以下) |
| 接見指定 | あり(39条3項「公訴の提起前に限り」) | なし |
| 取消し・執行停止・理由開示・接見等禁止 | あり(207条1項で準用) | あり(87条・95条・82条・81条) |
誤り。違うのは「公訴の提起があった日から1か月」の部分である。被告人の勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月であり、1か月は更新の単位である(60条2項)。
被告人勾留の期間は、公訴の提起があった日から2か月である(60条2項本文)。特に継続の必要がある場合には、具体的にその理由を付した決定で1か月ごとに更新することができ、更新は原則として1回に限られるが、89条1号・3号・4号・6号に当たる場合には更に更新を重ねることができる(60条2項ただし書)。被疑者として勾留されている者について公訴が提起された場合には、新たな勾留状の発付や特段の手続を要することなく当然に被告人勾留に切り替わり、その期間は起訴の日から起算して2か月になる。勾留質問も改めて要らない。肢のいう1か月は、更新の単位と期間そのものを取り違えたものである。なお被疑者勾留は原則10日、やむを得ない事由があるときは通じて10日を超えない範囲で延長でき(208条1項・2項)、内乱罪などの一定の罪については更に5日以内の延長ができる(208条の2)から、被疑者の側にも1か月という期間は条文上ない。肢は誤っている。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 項目 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 誰が決めるか | 検察官の請求を受けた裁判官(207条1項) | 裁判所の職権。第1回公判期日までは裁判官(280条1項)。検察官の請求は要らない |
| 要件 | 60条1項(嫌疑の相当性+住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれか)と勾留の必要性 | 同じ |
| 期間 | 請求した日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴の提起があった日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 保釈 | なし(207条1項ただし書) | あり(88条以下) |
| 接見指定 | あり(39条3項「公訴の提起前に限り」) | なし |
| 取消し・執行停止・理由開示・接見等禁止 | あり(207条1項で準用) | あり(87条・95条・82条・81条) |
誤り。( )内に入るのは b の「2」であり、a の「1」ではない。被告人の勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月である(60条2項)。
60条2項は、勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月とすると定め、特に継続の必要がある場合には具体的にその理由を附した決定で1か月ごとに更新でき、更新は89条1号・3号・4号・6号に当たる場合を除いて1回に限るとする。「1か月」は更新の単位であって期間そのものではない。被告人の勾留は、受訴裁判所が公判の審理を見通して職権で行うものなので、起訴前の勾留より長い2か月を基本にしつつ、更新のたびに理由を付した決定を要求して長期化を抑えている。被疑者の勾留が勾留を請求した日から10日で、延長も通じて10日までである(208条)のとは対照的であり、207条1項により被疑者の勾留にも裁判官が裁判所と同一の権限をもつが、期間は208条が特則を置くので60条2項の2か月は被疑者の勾留には及ばない。被疑者が勾留のまま起訴されると、その日から被告人の勾留として2か月の期間が走り始める。本肢の a は更新の単位を期間と取り違えている。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 | |
|---|---|---|
| 起算 | 勾留を請求した日(208条1項) | 公訴の提起があった日(60条2項) |
| 期間 | 10日 | 2か月 |
| 延長・更新 | やむを得ない事由があれば通じて10日まで延長(208条2項)。内乱等はさらに通じて5日(208条の2) | 特に継続の必要があれば1か月ごとに更新。更新は原則1回(60条2項ただし書) |
正しい。「被疑者を勾留することができる要件」には法定刑の軽重による差異が設けられている。30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件は、定まった住居を有しない場合に限り勾留できる(60条3項・207条1項)。
被疑者の勾留には、207条1項により被告人の勾留の規定が準用され、罪を犯したことについて相当な理由があることに加え、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかが必要である(60条1項)。ところが60条3項は、30万円(刑法などの罪以外は、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、定まった住居を有しない場合に限り、同条1項を適用するとしている。軽微な事件では、罪証隠滅や逃亡のおそれがあっても、住居が定まっていれば勾留することができず、要件が明らかに加重されている。勾留は原則10日、延長を含めれば通じて20日に及び得る身体拘束であり(208条)、軽い罪について長期の拘束をすることは釣り合わないからである。趣旨は現行犯逮捕についての217条と同じである。したがって、勾留の要件には法定刑の軽重による差異が設けられている。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
| 制度 | 差異 | 根拠 |
|---|---|---|
| 現行犯逮捕の要件 | あり(30万円以下の罰金・拘留・科料の罪は住居氏名不明か逃亡のおそれが要る) | 217条 |
| 被疑者勾留の要件 | あり(同じ軽微事件は住居不定に限る) | 60条3項・207条1項 |
| 告訴権者の範囲 | なし(被害者との関係で決まる) | 230条〜234条 |
| 公訴時効の期間 | あり(法定刑の刑種・刑期で段階的) | 250条 |
| 心情等の意見陳述を申し出られる被害者等 | なし(罪名を問わない) | 292条の2第1項 |
誤り。違うのは「裁判所は保釈を許さなければならない」の部分である。逃亡のおそれは権利保釈の除外事由ではないが、勾留の理由とは別に89条1号などの除外事由に当たることはあり得るから、必ず許さなければならないとはいえない。
89条は、保釈の請求があったときは、同条各号の場合を除いて保釈を許さなければならないと定める(権利保釈)。除外事由は、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるとき(1号)、長期10年を超える拘禁刑に当たる罪の前科があるとき(2号)、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(3号)、罪証隠滅のおそれ(4号)、被害者等への加害・畏怖のおそれ(5号)、氏名又は住居が分からないとき(6号)である。逃亡のおそれは勾留の理由(60条1項3号)ではあるが、除外事由には挙がっていない。保証金で出頭を確保するのが保釈だからである。しかし、除外事由に当たるかどうかは勾留の理由とは別に判断されるから、逃亡のおそれだけを理由に勾留されている被告人でも、たとえば短期1年以上の拘禁刑に当たる罪で起訴されていれば1号に当たる。本肢の事情だけでは、権利保釈を許さなければならないとは決まらない。その場合も裁量保釈(90条)の余地はある。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。(後略)
- 対象:起訴後の被告人の勾留だけ。被疑者勾留には保釈が無い(207条1項ただし書)
- 権利保釈(89条):請求があれば、6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由に無いが、1号(短期1年以上の罪)などには当たり得る
- 意見聴取(92条1項):許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く
- 保証金(93条1項):保釈を許すときは必ず保証金額を定める。条件の付加(93条3項)は保証金に代わらない
- 実刑の宣告(343条):拘禁刑以上の刑の宣告で保釈は失効し、新たな保釈がなければ確定前でも収容される
正しい。「被疑者を勾留することができる要件」には法定刑の軽重による差異が設けられている。30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件は、定まった住居を有しない場合に限り勾留できる(60条3項・207条1項)。
被疑者の勾留には、207条1項により被告人の勾留の規定が準用され、罪を犯したことについて相当な理由があることに加え、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかが必要である(60条1項)。ところが60条3項は、30万円(刑法などの罪以外は、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、定まった住居を有しない場合に限り、同条1項を適用するとしている。軽微な事件では、罪証隠滅や逃亡のおそれがあっても、住居が定まっていれば勾留することができず、要件が明らかに加重されている。勾留は原則10日、延長を含めれば通じて20日に及び得る身体拘束であり(208条)、軽い罪について長期の拘束をすることは釣り合わないからである。趣旨は現行犯逮捕についての217条と同じである。したがって、勾留の要件には法定刑の軽重による差異が設けられている。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
| 制度 | 差異 | 根拠 |
|---|---|---|
| 現行犯逮捕の要件 | あり(30万円以下の罰金・拘留・科料の罪は住居氏名不明か逃亡のおそれが要る) | 217条 |
| 被疑者勾留の要件 | あり(同じ軽微事件は住居不定に限る) | 60条3項・207条1項 |
| 告訴権者の範囲 | なし(被害者との関係で決まる) | 230条〜234条 |
| 公訴時効の期間 | あり(法定刑の刑種・刑期で段階的) | 250条 |
| 心情等の意見陳述を申し出られる被害者等 | なし(罪名を問わない) | 292条の2第1項 |
正しい。逮捕を経た軽犯罪法違反の事実について勾留の要件が備わっていれば、逮捕を経ていない窃盗の事実を付け加えて併せて勾留を請求することができる。
被疑者の勾留は逮捕に引き続いてしなければならず(逮捕前置主義)、逮捕を経ていない別の事実だけを理由に勾留を請求することはできない。逮捕と勾留の二段階で裁判官の審査を受けさせ、身体拘束を慎重にする趣旨である。もっとも、逮捕を経たA事実に、逮捕を経ていないB事実を付け加えて勾留を請求することは許されると解されている。勾留の理由の一部であるA事実については逮捕が先行しているうえ、B事実について改めて逮捕からやり直すよりも、身体拘束の期間が全体として短くなり、被疑者にとってかえって利益になるからである。ただし、A事実それ自体について勾留の要件が備わっていることが前提となる。本件の軽犯罪法1条3号の罪は拘留又は科料に当たるから、定まった住居を有しない場合に限って勾留できるが(60条3項)、甲は住居を一切答えず判明していないから、この要件を満たす。したがって、軽犯罪法違反に窃盗を併せて勾留を請求することができる。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
- 拘束の開始:平成22年4月1日午前10時(現行犯逮捕)
- 送致:同月3日午前9時30分(拘束から48時間以内。216条・203条1項)
- 勾留請求の期限:受取りから24時間(4日午前10時30分)と拘束から72時間(4日午前10時)の早い方=4日午前10時(205条1項・2項)
- 併せ勾留:逮捕された軽犯罪法違反に窃盗を加えて勾留を請求できる(逮捕事実に勾留の要件があること)
- 時間内に公訴を提起すれば勾留請求は要らず、身柄は裁判官の判断に移る(205条3項・280条2項)
- 管轄:軽犯罪法違反(簡裁専属)と窃盗(競合)は関連事件として地裁にまとめて起訴できる(3条1項・9条1項1号)
正しい。逮捕を経た軽犯罪法違反の事実について勾留の要件が備わっていれば、逮捕を経ていない窃盗の事実を付け加えて併せて勾留を請求することができる。
被疑者の勾留は逮捕に引き続いてしなければならず(逮捕前置主義)、逮捕を経ていない別の事実だけを理由に勾留を請求することはできない。逮捕と勾留の二段階で裁判官の審査を受けさせ、身体拘束を慎重にする趣旨である。もっとも、逮捕を経たA事実に、逮捕を経ていないB事実を付け加えて勾留を請求することは許されると解されている。勾留の理由の一部であるA事実については逮捕が先行しているうえ、B事実について改めて逮捕からやり直すよりも、身体拘束の期間が全体として短くなり、被疑者にとってかえって利益になるからである。ただし、A事実それ自体について勾留の要件が備わっていることが前提となる。本件の軽犯罪法1条3号の罪は拘留又は科料に当たるから、定まった住居を有しない場合に限って勾留できるが(60条3項)、甲は住居を一切答えず判明していないから、この要件を満たす。したがって、軽犯罪法違反に窃盗を併せて勾留を請求することができる。

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
- 拘束の開始:平成22年4月1日午前10時(現行犯逮捕)
- 送致:同月3日午前9時30分(拘束から48時間以内。216条・203条1項)
- 勾留請求の期限:受取りから24時間(4日午前10時30分)と拘束から72時間(4日午前10時)の早い方=4日午前10時(205条1項・2項)
- 併せ勾留:逮捕された軽犯罪法違反に窃盗を加えて勾留を請求できる(逮捕事実に勾留の要件があること)
- 時間内に公訴を提起すれば勾留請求は要らず、身柄は裁判官の判断に移る(205条3項・280条2項)
- 管轄:軽犯罪法違反(簡裁専属)と窃盗(競合)は関連事件として地裁にまとめて起訴できる(3条1項・9条1項1号)
誤り。違うのは「保釈を許さなければならない」の部分である。懲役(現在は拘禁刑)以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈を定めた89条は適用されない(344条1項)。
344条1項は、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は、60条2項ただし書及び89条の規定は適用しないと定める。出題当時は「禁錮以上の刑」と定められており、懲役に処する実刑判決はこれに当たっていた。有罪の実刑判決が宣告されれば無罪の推定が事実上弱まり、刑の執行を免れようとして逃亡するおそれも高まるから、判決前と同じように請求があれば原則として許すという権利保釈を維持する理由がなくなる。そこで実刑判決の宣告後は、保釈は90条の裁量保釈によってのみ許される。本肢の被告人は窃盗罪により懲役に処する実刑判決の宣告を受けているから、罪証隠滅のおそれに相当な理由がなくても、裁判所は保釈を許さなければならないわけではない。本肢はその点で誤っている。現在は344条2項により、実刑判決の宣告後の裁量保釈は、身体拘束による不利益の程度が著しく高い場合などに限られている。

拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項ただし書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
誤り。違うのは、罪証隠滅のおそれ「かつ」逃亡のおそれがあるときに限るとする部分である。勾留の理由は、罪を犯したことについての相当な理由に加え、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれか一つがあれば足りる(207条1項・60条1項)。
60条1項は、裁判所は、被告人が罪を犯したことについて相当な理由がある場合で、同項各号の一にあたるときは勾留することができると定め、1号で定まった住居を有しないとき、2号で罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるとき、3号で逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があるときを挙げる。この規定は207条1項により被疑者の勾留に準用される。各号は「一にあたるとき」とされているから、いずれか一つに当たれば勾留の理由がある。被疑者に定まった住居があっても、罪証隠滅のおそれか逃亡のおそれのどちらかがあれば勾留できるのであって、両方がそろうことは要件ではない。そのうえで、勾留の必要性(87条1項参照)が認められれば勾留が許される。本肢は、住居がある場合には罪証隠滅のおそれと逃亡のおそれの両方が必要であるとする点で誤っている。30万円以下の罰金等に当たる軽微な事件では、住居不定の場合に限られる(60条3項)。

裁判所は、被告人が罪を犯したことを…相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。一 被告人が定まつた住居を有しないとき。二 被告人が罪証を隠滅すると…相当な理由があるとき。三 被告人が逃亡し又は逃亡すると…相当な理由があるとき。
誤り。違うのは「現実にどこで起臥寝食しているかにかかわらず」の部分である。「定まつた住居」の有無は実質的に判断され、居住する正当な権原や住民票の記載は判断要素の一つにすぎない。
60条1項1号は、被告人が定まった住居を有しないことを勾留の理由とし、207条1項により被疑者の勾留に準用される。住居不定が勾留の理由とされるのは、住居が定まっていなければ召喚状などの送達ができず、出頭を確保できないからである。そうであれば、問題となるのは被疑者が現実に一定の場所で生活し、そこで連絡がつくかどうかであり、その場所に住む法律上の権原があるかどうかではない。そのため、定まった住居の有無は形式でなく実質で判断され、住居の種類、居住期間、住民登録の有無といった住居自体の安定性や、被疑者の地位・職業・家族関係の安定性を考え合わせて決められる。住民票の記載や所有権・賃借権は判断要素の一つにとどまる。本肢は、居住の権原があれば現実の起臥寝食の場所を問わずに住民票上の住所を定まった住居とする点で誤っている。

被告人が定まつた住居を有しないとき。
| 事由 | 判断の仕方 | 考慮される事情 |
|---|---|---|
| 定まった住居を有しない(1号) | 形式でなく実質で判断する | 住居の種類・居住期間・住民登録の有無、地位・職業・家族関係の安定性 |
| 罪証隠滅の相当な理由(2号) | 主観的な意図に加え、隠滅の客観的可能性と実効性が要る | 隠滅の対象・態様(第三者に指示してさせる場合を含む)・余地 |
| 逃亡の相当な理由(3号) | 所在不明となる可能性を具体的に判断する | 生活の不安定(職を転々・単身)、処罰を免れる動機(罪責の重大さ・前科前歴・余罪・執行猶予中) |
誤り。違うのは「告げれば足りる」の部分である。開示では、勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号のどの事由に当たるかも告げなければならない。
84条1項は、勾留理由開示の法廷において、裁判長は勾留の理由を告げなければならないと定める。勾留は、罪を犯したことについて相当な理由があるだけではできず、60条1項各号の住居不定・罪証隠滅の相当な理由・逃亡の相当な理由のいずれかがあって初めて許される。そうであれば、勾留の理由を示すというためには、勾留の基礎となっている犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、各号のどの事由に当たるのかを告げなければ、なぜ身体を拘束されているのかが本人に伝わらない。そのため、開示の対象は、被疑事実(公訴事実)と60条1項各号所定の事由であると解されている。拘禁の理由を公開の法廷で示させる憲法34条後段の趣旨からも、各号の事由を伏せた開示では足りない。本肢は、犯罪事実と相当な理由を告げれば足りるとする点で誤っている。

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
誤り。違うのは「勾留請求権に基づいて,裁判官にその勾留を請求することができる」の部分である。被告人の勾留は裁判所(裁判官)が職権で行うものであり(60条1項)、検察官に被告人の勾留を請求する権限はない。
被疑者の勾留は検察官の請求を受けて裁判官が行う(207条1項)が、被告人の勾留は、60条1項が「裁判所は、…これを勾留することができる」と定めるとおり、裁判所の職権によるものであり、検察官に勾留請求権は認められていない。被告人を勾留するのは、裁判所の審判に被告人の出頭を確保するためであり、その理由と必要性は審判をする裁判所の側が判断すべきだからである。第1回公判期日までは、裁判官が勾留に関する処分をする(280条1項)。逮捕も勾留もされていない被疑者を起訴する場合に、検察官が身体拘束を求めるときは、実務上、起訴状に「求令状」と記載して裁判官の職権の発動を促すが、これは請求権の行使ではない。なお、被疑者勾留中に同じ事実で起訴されれば、特別の手続なしに被告人勾留に切り替わる。本肢は誤っている。

裁判所は、被告人が罪を犯したこと(中略)相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
| 事項 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 誰の発意で | 検察官の請求を受けた裁判官(207条1項) | 裁判所の職権(60条1項)。検察官に請求権はない |
| 期間 | 請求した日から10日。やむを得ない事由があれば通じて10日まで延長、回数の制限なし(208条) | 公訴提起の日から2か月、1か月ごとに更新、原則1回(60条2項) |
| 罪証隠滅の対象 | 犯罪の成否に関する事実のほか、動機など重要な情状事実も含む | 同左 |
| 少年 | やむを得ない場合でなければ勾留できない(少年法43条3項・48条1項) | 同左(少年法48条1項) |
正しい。被疑者の勾留は勾留請求を受けた裁判官が判断し(207条1項)、被告人の勾留は受訴裁判所が判断するが、第1回公判期日までは裁判官が行う(280条1項)。
被疑者の勾留については、207条1項が、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有すると定め、裁判官を勾留の判断者としている。憲法33条の令状を発する司法官憲は裁判官に限られるという理解に基づくものである。被告人の勾留は、60条1項が「裁判所は」と定めるとおり受訴裁判所が行うのが原則である。しかし、280条1項は、公訴の提起があった後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うと定める。第1回公判期日前に受訴裁判所が勾留の判断のために捜査資料に触れると、事件について予断を抱くおそれがあり、起訴状一本主義の趣旨に反するからである。したがって、勾留状を発するかどうかを判断するのは、被疑者の勾留では裁判官、被告人の勾留では第1回公判期日までの間を除き受訴裁判所であり、本肢は正しい。

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
| 事項 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 判断者 | 勾留請求を受けた裁判官(207条1項) | 受訴裁判所。第1回公判期日までは裁判官(280条1項) |
| 期間 | 請求の日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴提起の日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 勾留理由開示 | できる(207条1項で82条を準用) | できる(82条) |
| 保釈 | ない(207条1項ただし書) | ある(88条以下) |
誤り。違うのは、被告人の勾留の期間を「公訴の提起があった日から1か月である」とする部分である。被告人の勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月であり(60条2項)、1か月は更新の単位である。
被疑者の勾留については、208条1項が、勾留の請求をした日から10日以内に公訴を提起しないときは、検察官は直ちに被疑者を釈放しなければならないと定めており、延長されない限り勾留請求の日から10日である。本肢の前段は正しい。これに対し、被告人の勾留については、60条2項が、勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月とし、特に継続の必要がある場合には、具体的にその理由を付した決定で1か月ごとに更新することができると定める。1か月は更新の単位であって、勾留期間そのものではない。被疑者の勾留が短いのは、起訴までに主要な捜査を終えることが予定されているからであり、被告人の勾留は公判の審理の間の出頭確保のためであるから、期間の定め方が異なる。更新は、89条1号・3号・4号・6号に当たる場合を除いて1回に限られる。本肢は後段が誤っている。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 事項 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 判断者 | 勾留請求を受けた裁判官(207条1項) | 受訴裁判所。第1回公判期日までは裁判官(280条1項) |
| 期間 | 請求の日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴提起の日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 勾留理由開示 | できる(207条1項で82条を準用) | できる(82条) |
| 保釈 | ない(207条1項ただし書) | ある(88条以下) |
被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
この条文の過去問 7問
正しい。勾留の請求を受けた裁判官は裁判所と同一の権限を有し(207条1項本文)、61条が準用されるから、被疑者が逃亡した場合を除き勾留質問を経なければ勾留できない。
61条本文は、被告人の勾留は被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければすることができないと定め、ただし書で被告人が逃亡した場合を例外とする。被疑者の勾留については、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有するとされ(207条1項本文)、被告人の勾留の規定である61条が被疑者の勾留にも準用される。身体拘束という重い処分を課す前に、裁判官が被疑者本人から直接弁解を聴いて勾留の理由(60条1項)と必要性を実質的に判断し、被疑者に防御の機会を保障するためである。逃亡した場合が除かれるのは、この手続を行うことが事実上できないからである。肢は207条1項本文・61条の定めるとおりであり、正しい。裁判官はこの告知の際に弁護人選任権と国選弁護人の選任請求権も告げなければならない(207条2項)。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
誤り。違うのは「勾留期間の延長の裁判をするに当たり、被疑者が逃亡した場合を除き、被疑者に対し被疑事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行わなければならない」の部分であり、延長の裁判に勾留質問を求める規定はない。
被疑者の勾留期間は勾留の請求をした日から10日であり、裁判官はやむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により通じて10日を超えない範囲でこれを延長できる(208条1項・2項)。この延長の裁判に当たって改めて被疑者に被疑事件を告げて陳述を聴かなければならないとする規定は置かれていない。61条の勾留質問は207条1項本文により被疑者の勾留に準用されるが、それは身体拘束を新たに始める場面の規律である。延長は、すでに勾留質問を経て適法に始まった勾留の期間を延ばすにすぎず、被疑事実は当初の勾留質問で告知済みであるから、重ねて弁解の機会を与えることまでは要求されない。延長の裁判は捜査状況を示す疎明資料による書面審査で行われ、被疑者を裁判官の面前に引致することもない。肢は延長の裁判に勾留質問を要するとする点で誤っている。

裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
誤り。違うのは「その勾留を継続する必要があると認めるときは、被告人が逃亡した場合を除き、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行わなければならない」の部分であり、勾留のまま起訴された場合に改めて勾留質問は要らない。
勾留されている被疑者がその被疑事実と同一の事実で公訴を提起されると、被疑者の勾留は当然に被告人の勾留に切り替わり、勾留の期間は公訴の提起があった日から2か月となる(60条2項前段。208条1項は公訴を提起しないときの釈放を定めるので、その反面である)。このとき裁判官や裁判所が改めて被告人に被告事件を告げて陳述を聴かなければならないとする規定はない。61条の勾留質問は、身体拘束を始める前に本人の弁解を聴いて勾留の理由と必要性を審査し、防御の機会を与える手続であるが、被疑者の勾留の際に207条1項本文・61条の勾留質問がすでに行われ、公訴事実もそこで告げた被疑事実と同一であるから、その趣旨はすでに満たされている。新たに身体拘束を始めるわけでもない以上、重ねて勾留質問をする必要はない。起訴後に別の事実で新たに勾留するなら、その事実について勾留質問が要る点とは区別される。

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
正しい。勾留をする裁判所がすでに被告事件の審理の際に被告事件に関する陳述を聴いている場合には、改めて61条の勾留質問をしなければならないものではない(最決昭41.10.19)。
61条本文は、被告人の勾留は被告事件を告げてこれに関する陳述を聴いた後でなければできないと定めるが、判例は、勾留をする裁判所がすでに被告事件の審理の際に被告事件に関する陳述を聴いている場合には、改めて61条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではないとして、この場合の省略を認めた(最決昭41.10.19)。61条の趣旨は、身体拘束の前に被告人本人に被告事件について弁解する機会を与え、裁判所が勾留の理由(60条1項)と必要性を実質的に判断できるようにする点にある。公判期日の罪状認否や被告人質問を通じて、その裁判所がすでに被告事件に関する被告人の陳述を直接聴いているなら、勾留質問という別の手続を重ねなくてもこの趣旨は実質的に達せられている。したがって、勾留されていない被告人を裁判所が勾留する場面でも、審理の際に陳述を聴いていれば改めて勾留質問を行う必要はなく、肢は判例のとおりで正しい。

本件のように、勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない。
| 勾留質問が要る | 勾留質問が要らない |
|---|---|
| 被疑者の勾留(207条1項・61条) | 勾留期間の延長(208条2項) |
| 逮捕中に起訴された未勾留の被告人の勾留(280条2項) | 勾留中に起訴された後の勾留の継続 |
| 勾留されていない被告人の勾留(61条。ただし審理で陳述を聴いていれば不要=最決昭41.10.19) | 被告人の勾留期間の更新(60条2項) |
| 被疑者・被告人が逃亡した場合(61条ただし書) |
誤り。違うのは「どちらも」令状の執行後に告知と弁解の機会を要するとする部分である。執行後の告知と弁解の機会は逮捕についての定め(203条1項・204条1項)であり、起訴前の勾留では勾留状を発する前に裁判官が勾留質問をする(207条1項・61条)。
司法警察員が逮捕状により被疑者を逮捕したとき又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げたうえ、弁解の機会を与えなければならない(203条1項)。検察官についても同様である(204条1項)。逮捕状の発付は捜査機関の請求に基づく書面審査であり、被疑者の言い分は聴かれていないので、執行の後に捜査機関が弁解を聴き、留置の必要を判断する。これに対して、起訴前の勾留では、勾留の請求を受けた裁判官が、勾留状を発する前に被疑者に被疑事件を告げてこれに関する陳述を聴く(207条1項・61条)。弁護人選任権と国選弁護人の選任請求権の告知も、このとき裁判官が行う(207条2項)。勾留では令状の発付前に裁判官自身が被疑者の言い分を聴いているから、勾留状の執行後に改めて犯罪事実の要旨を告げて弁解の機会を与える旨の規定はない。本肢は、逮捕の手続を起訴前の勾留にも当てはめている点で誤っている。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
誤り。違うのは「どちらも」令状の執行後に告知と弁解の機会を要するとする部分である。執行後の告知と弁解の機会は逮捕についての定め(203条1項・204条1項)であり、起訴前の勾留では勾留状を発する前に裁判官が勾留質問をする(207条1項・61条)。
司法警察員が逮捕状により被疑者を逮捕したとき又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げたうえ、弁解の機会を与えなければならない(203条1項)。検察官についても同様である(204条1項)。逮捕状の発付は捜査機関の請求に基づく書面審査であり、被疑者の言い分は聴かれていないので、執行の後に捜査機関が弁解を聴き、留置の必要を判断する。これに対して、起訴前の勾留では、勾留の請求を受けた裁判官が、勾留状を発する前に被疑者に被疑事件を告げてこれに関する陳述を聴く(207条1項・61条)。弁護人選任権と国選弁護人の選任請求権の告知も、このとき裁判官が行う(207条2項)。勾留では令状の発付前に裁判官自身が被疑者の言い分を聴いているから、勾留状の執行後に改めて犯罪事実の要旨を告げて弁解の機会を与える旨の規定はない。本肢は、逮捕の手続を起訴前の勾留にも当てはめている点で誤っている。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
誤り。違うのは「裁判官は,改めて,被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴かなければならない」の部分である。被疑者の勾留は同一事実での起訴により被告人の勾留に切り替わるが、勾留質問は被疑者の段階で済んでいるから、改めて行う必要はない。
61条本文は、被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければすることができないと定め、この手続は207条1項により被疑者の勾留にも準用される。勾留は比較的長期間身体を拘束する裁判であるから、裁判官が本人から直接弁解を聴き、勾留の判断に誤りがないようにするための手続である。被疑者として勾留されている事実と同一の事実で公訴が提起されると、勾留状はそのまま効力を持ち続け、被疑者の勾留は起訴の日から2か月の被告人の勾留に切り替わる(60条2項・208条1項参照)。この場合、同じ事実について被疑者の段階で既に勾留質問が行われ、裁判官は本人の弁解を直接聴いているから、61条の趣旨は満たされている。新たに身体拘束を始めるわけでもない。したがって、改めて被告事件を告げて陳述を聴く必要はなく、本肢の後半は誤っている。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
被告人の召喚、勾引又は勾留は、召喚状、勾引状又は勾留状を発してこれをしなければならない。
この条文の過去問 2問
正しい。裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断に委ねられる(裁判員法62条)。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律62条は、裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねると定める。本肢はこの条文のとおりである。刑事訴訟法318条は、証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねるとして自由心証主義を定めているが、裁判員法62条は、その評価の権限が裁判官だけでなく裁判員にも等しく与えられることを明らかにしたものである。裁判員は、事実の認定、法令の適用及び刑の量定について裁判官とともに判断する立場にあり、証拠をどう評価するかについても対等の立場で判断する。もっとも、自由な判断といっても恣意的な判断が許されるわけではなく、論理則や経験則に従った合理的なものでなければならない点は裁判官と同じである。また、証拠能力の有無や訴訟手続についての判断は裁判官だけが行い、自白の補強法則や伝聞法則も裁判員裁判に当然に適用される。

裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。
- 基準:合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証(最決平19.10.16)
- 意味:反対事実の疑いを全く残さないことではない。抽象的な可能性が残っても、健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がなければ有罪にできる
- 直接証拠でも情況証拠でも同じ基準(同決定)。情況証拠だけで犯人性を認めるには、犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が要る(最判平22.4.27)
- 略式手続・即決裁判手続でも同じ。証拠の優越は民事の基準である
- 証明力の評価は自由心証(318条)。裁判員裁判では裁判官と裁判員それぞれの自由な判断(裁判員法62条)
正しい。裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断に委ねられる(裁判員法62条)。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律62条は、裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねると定める。本肢はこの条文のとおりである。刑事訴訟法318条は、証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねるとして自由心証主義を定めているが、裁判員法62条は、その評価の権限が裁判官だけでなく裁判員にも等しく与えられることを明らかにしたものである。裁判員は、事実の認定、法令の適用及び刑の量定について裁判官とともに判断する立場にあり、証拠をどう評価するかについても対等の立場で判断する。もっとも、自由な判断といっても恣意的な判断が許されるわけではなく、論理則や経験則に従った合理的なものでなければならない点は裁判官と同じである。また、証拠能力の有無や訴訟手続についての判断は裁判官だけが行い、自白の補強法則や伝聞法則も裁判員裁判に当然に適用される。

裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。
- 基準:合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証(最決平19.10.16)
- 意味:反対事実の疑いを全く残さないことではない。抽象的な可能性が残っても、健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がなければ有罪にできる
- 直接証拠でも情況証拠でも同じ基準(同決定)。情況証拠だけで犯人性を認めるには、犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が要る(最判平22.4.27)
- 略式手続・即決裁判手続でも同じ。証拠の優越は民事の基準である
- 証明力の評価は自由心証(318条)。裁判員裁判では裁判官と裁判員それぞれの自由な判断(裁判員法62条)
召喚状には、被告人の氏名及び住居、罪名、出頭すべき年月日時及び場所並びに正当な理由がなく出頭しないときは勾引状を発することがある旨その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
1勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。
3被告人の住居が明らかでないときは、これを記載することを要しない。
この条文の過去問 1問
正しい。令状主義の核心は裁判官が被疑事実と証拠物存在の蓋然性を事前に審査することにあり、被疑者が特定できていなくてもその審査はできるから、被疑者不詳のままでも捜索差押許可状を発付できる。
捜索差押許可状には被疑者の氏名を記載しなければならず(219条1項)、氏名が明らかでないときは、同条4項が準用する64条2項により、人相・体格その他被疑者を特定するに足りる事項で被疑者を指示すれば足りる。もっとも、これらは被疑者が特定されているか特定に足りる事項が分かっている場合の記載の方法を定めたにとどまり、被疑者がおよそ特定できていない段階での令状の発付を禁じる趣旨ではない。令状主義(憲法35条1項・218条1項)の核心は、裁判官が正当な理由、つまり被疑事実の存在と、捜索すべき場所に差し押さえるべき物が存在する蓋然性を、捜査機関から独立して事前に審査する点にある。被疑者が分かっていなくても、犯罪の嫌疑と証拠物存在の蓋然性、処分の必要性を審査することはできる。したがって、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官は被疑者不詳のままでも捜索差押許可状を発付することができ、実務でも被疑者不詳と記載した令状が発付されている。肢は正しい。

被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。
- 金庫・押入れ・引き出し、敷地内の自動車・物置:捜索できる(場所の管理権に服する物)
- 居合わせた居住者が携帯するバッグ:捜索できる(最決平6.9.8)
- 執行中に配達され受領した荷物:捜索できる。令状審査時にあった物に限られない(最決平19.2.8)
- 居合わせた者の身体そのもの:場所の令状では捜索できない。被疑者以外の者の身体は押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が要る(102条2項)
- 被疑者が特定できていない段階:被疑者不詳のままでも、嫌疑と証拠物存在の蓋然性を審査できれば令状を発付できる(219条4項・64条2項)
1召喚状は、これを送達する。
2被告人から期日に出頭する旨を記載した書面を差し出し、又は出頭した被告人に対し口頭で次回の出頭を命じたときは、召喚状を送達した場合と同一の効力を有する。口頭で出頭を命じた場合には、その旨を調書に記載しなければならない。
3裁判所に近接する刑事施設にいる被告人に対しては、刑事施設職員(刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員をいう。以下同じ。)に通知してこれを召喚することができる。この場合には、被告人が刑事施設職員から通知を受けた時に召喚状の送達があつたものとみなす。
1裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。
2受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
3受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
4嘱託又は移送を受けた裁判官は、勾引状を発しなければならない。
5第六十四条の規定は、前項の勾引状についてこれを準用する。この場合においては、勾引状に嘱託によつてこれを発する旨を記載しなければならない。
1前条の場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人を引致した時から二十四時間以内にその人違でないかどうかを取り調べなければならない。
2被告人が人違でないときは、速やかに且つ直接これを指定された裁判所に送致しなければならない。この場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人が指定された裁判所に到着すべき期間を定めなければならない。
3前項の場合には、第五十九条の期間は、被告人が指定された裁判所に到着した時からこれを起算する。
この条文の過去問 2問
正しい。裁判員の関与する判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によるから(裁判員法67条1項)、裁判員だけが有罪の意見であれば有罪とはできず、被告人は無罪となる。
裁判員法67条1項は、裁判員の関与する判断は、裁判所法77条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によると定める。9人の合議体であれば5人以上の多数が必要であるうえ、その多数の中に裁判官と裁判員がそれぞれ少なくとも1人ずつ含まれていなければならない。法律の専門家である裁判官の判断と国民の判断を協働させ、どちらか一方だけの意見で被告人を有罪とすることを避ける趣旨である。そのため、裁判員6人全員が有罪の意見で、裁判官3人全員が無罪の意見であるときは、有罪の意見は人数では過半数に達していても裁判官の意見を含まないから、合議体の判断とすることはできない。有罪の判断ができない以上、犯罪の証明がないものとして無罪が言い渡される(刑訴法336条)。逆に、裁判官だけが有罪の意見である場合も有罪とはできない。本肢は67条1項のとおりである。

前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
- 対象事件:死刑又は無期拘禁刑に当たる罪の事件、法定合議事件のうち故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件(裁判員法2条1項)
- 除外:裁判員等への危害のおそれ(3条1項)や審判の著しい長期化(3条の2)があれば裁判官の合議体で扱う。被告人の選択権はない
- 合議体:原則 裁判官3人・裁判員6人。争いのない事件は裁判官1人・裁判員4人も可(2条2項・3項)
- 判断の分担:事実の認定・法令の適用・刑の量定は合議(6条1項)。法令の解釈・訴訟手続の判断は裁判官だけ(6条2項)
- 評決:構成裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数(67条1項)
正しい。裁判員の関与する判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によるから(裁判員法67条1項)、裁判員だけが有罪の意見であれば有罪とはできず、被告人は無罪となる。
裁判員法67条1項は、裁判員の関与する判断は、裁判所法77条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によると定める。9人の合議体であれば5人以上の多数が必要であるうえ、その多数の中に裁判官と裁判員がそれぞれ少なくとも1人ずつ含まれていなければならない。法律の専門家である裁判官の判断と国民の判断を協働させ、どちらか一方だけの意見で被告人を有罪とすることを避ける趣旨である。そのため、裁判員6人全員が有罪の意見で、裁判官3人全員が無罪の意見であるときは、有罪の意見は人数では過半数に達していても裁判官の意見を含まないから、合議体の判断とすることはできない。有罪の判断ができない以上、犯罪の証明がないものとして無罪が言い渡される(刑訴法336条)。逆に、裁判官だけが有罪の意見である場合も有罪とはできない。本肢は67条1項のとおりである。

前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
- 対象事件:死刑又は無期拘禁刑に当たる罪の事件、法定合議事件のうち故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件(裁判員法2条1項)
- 除外:裁判員等への危害のおそれ(3条1項)や審判の著しい長期化(3条の2)があれば裁判官の合議体で扱う。被告人の選択権はない
- 合議体:原則 裁判官3人・裁判員6人。争いのない事件は裁判官1人・裁判員4人も可(2条2項・3項)
- 判断の分担:事実の認定・法令の適用・刑の量定は合議(6条1項)。法令の解釈・訴訟手続の判断は裁判官だけ(6条2項)
- 評決:構成裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数(67条1項)
裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じないときは、その場所に勾引することができる。この場合には、第五十九条の期間は、被告人をその場所に引致した時からこれを起算する。
この条文の過去問 1問
正しい。少年法61条は、本肢のとおり、少年の審判事件や少年のとき犯した罪で起訴された者について推知報道を禁じている。現在は令和3年改正により、18歳・19歳の特定少年のとき犯した罪で起訴された場合は、略式手続を除き禁止が解除され(68条)、本肢は一律には当てはまらない。
少年法61条は、家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならないと定める。実名や写真の報道によって少年が社会から排除されれば、立ち直りが妨げられるから、少年の名誉とプライバシーを守り、健全な成長を図るために報道機関に抑制を求めたのである。逆送されて公開の法廷で刑事裁判を受ける場合にも、この禁止は及ぶ。出題当時は例外がなく、本肢は正しかった。その後、令和3年改正で18歳・19歳の者は特定少年とされ、68条により、特定少年のとき犯した罪で公訴を提起された場合には、略式手続によるときを除いて61条が適用されないことになった。現行法では、本肢のように一律に掲載が禁じられるとはいえない。

家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
| 事項 | 出題当時(平成22年) | 現在 |
|---|---|---|
| 検察官の送致(少年法42条1項) | 嫌疑があれば全件を家庭裁判所に送致 | 同じ |
| 逆送(20条1項) | 死刑、懲役又は禁錮に当たる罪 | 拘禁刑に当たる罪 |
| 審判への検察官関与(22条の2第1項) | 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役・禁錮に当たる罪 | 死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる罪(平成26年改正) |
| 不定期刑(52条1項) | 長期3年以上の有期の懲役・禁錮で処断するとき、その刑の範囲内で長期と短期 | 有期拘禁刑で処断するとき、長期を定め、長期の2分の1(長期10年未満なら長期から5年を減じた期間)を下回らない範囲で短期(平成26年改正)。特定少年には適用しない |
| 推知報道の禁止(61条) | 少年の審判事件・少年のとき犯した罪で起訴された者 | 特定少年のとき犯した罪で起訴された場合は、略式手続を除き禁止が解除(68条、令和3年改正) |
裁判長は、急速を要する場合には、第五十七条乃至第六十二条、第六十五条、第六十六条及び前条に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
1勾引状又は勾留状は、検察官の指揮によつて、検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。但し、急速を要する場合には、裁判長、受命裁判官又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官は、その執行を指揮することができる。
2刑事施設にいる被告人に対して発せられた勾留状は、検察官の指揮によつて、刑事施設職員がこれを執行する。
この条文の過去問 2問
誤り。違うのは「どちらも」令状の執行後に告知と弁解の機会を要するとする部分である。執行後の告知と弁解の機会は逮捕についての定め(203条1項・204条1項)であり、起訴前の勾留では勾留状を発する前に裁判官が勾留質問をする(207条1項・61条)。
司法警察員が逮捕状により被疑者を逮捕したとき又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げたうえ、弁解の機会を与えなければならない(203条1項)。検察官についても同様である(204条1項)。逮捕状の発付は捜査機関の請求に基づく書面審査であり、被疑者の言い分は聴かれていないので、執行の後に捜査機関が弁解を聴き、留置の必要を判断する。これに対して、起訴前の勾留では、勾留の請求を受けた裁判官が、勾留状を発する前に被疑者に被疑事件を告げてこれに関する陳述を聴く(207条1項・61条)。弁護人選任権と国選弁護人の選任請求権の告知も、このとき裁判官が行う(207条2項)。勾留では令状の発付前に裁判官自身が被疑者の言い分を聴いているから、勾留状の執行後に改めて犯罪事実の要旨を告げて弁解の機会を与える旨の規定はない。本肢は、逮捕の手続を起訴前の勾留にも当てはめている点で誤っている。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
誤り。違うのは「どちらも」令状の執行後に告知と弁解の機会を要するとする部分である。執行後の告知と弁解の機会は逮捕についての定め(203条1項・204条1項)であり、起訴前の勾留では勾留状を発する前に裁判官が勾留質問をする(207条1項・61条)。
司法警察員が逮捕状により被疑者を逮捕したとき又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げたうえ、弁解の機会を与えなければならない(203条1項)。検察官についても同様である(204条1項)。逮捕状の発付は捜査機関の請求に基づく書面審査であり、被疑者の言い分は聴かれていないので、執行の後に捜査機関が弁解を聴き、留置の必要を判断する。これに対して、起訴前の勾留では、勾留の請求を受けた裁判官が、勾留状を発する前に被疑者に被疑事件を告げてこれに関する陳述を聴く(207条1項・61条)。弁護人選任権と国選弁護人の選任請求権の告知も、このとき裁判官が行う(207条2項)。勾留では令状の発付前に裁判官自身が被疑者の言い分を聴いているから、勾留状の執行後に改めて犯罪事実の要旨を告げて弁解の機会を与える旨の規定はない。本肢は、逮捕の手続を起訴前の勾留にも当てはめている点で誤っている。

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
検察事務官又は司法警察職員は、必要があるときは、管轄区域外で、勾引状若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官若しくは司法警察職員にその執行を求めることができる。
1被告人の現在地が判らないときは、裁判長は、検事長にその捜査及び勾引状又は勾留状の執行を嘱託することができる。
2嘱託を受けた検事長は、その管内の検察官に捜査及び勾引状又は勾留状の執行の手続をさせなければならない。
1勾引状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに且つ直接、指定された裁判所その他の場所に引致しなければならない。第六十六条第四項の勾引状については、これを発した裁判官に引致しなければならない。
2勾留状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに、かつ、直接、指定された刑事施設に引致しなければならない。
3勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「以後も被疑者に逮捕状を示す必要はない」の部分であり、緊急執行をしたときも令状はできる限り速やかに示さなければならない(201条2項・73条3項ただし書)。
逮捕状により被疑者を逮捕するには逮捕状を被疑者に示さなければならないのが原則である(201条1項)。同条2項は勾引状・勾留状の執行に関する73条3項を準用しており、令状を所持しないため示すことができない場合に急速を要するときは、被疑事実の要旨と令状が発せられている旨を告げて執行できる(緊急執行)。肢の前半はこのとおりである。しかし73条3項ただし書は、令状はできる限り速やかにこれを示さなければならないと定めており、緊急執行は呈示の時期を後にずらすことを認めるにとどまる。令状の呈示は、裁判官の事前の司法審査を経た処分であることを被処分者に明らかにし、執行の対象や範囲を確認させて不服申立ての機会を保障する手続的保障の中核であるから、終局的に免除する趣旨とは解せない。したがって緊急執行の後も速やかに逮捕状を示す義務があり、以後も示す必要はないとする肢は73条3項ただし書に反する。急速を要するときとは、令状の到着を待っていては被疑者が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれがあるなど、執行の機会を失う具体的な事情がある場合をいう。

勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
- 逮捕状の請求:検察官と指定司法警察員(警部以上)。発付は裁判官で、相当な理由があっても明らかに逮捕の必要がなければ発しない(199条2項)
- 執行:逮捕状を被疑者に示す(201条1項)。検察事務官・司法巡査も執行できる
- 緊急執行:逮捕状を所持しないため示せない場合に急速を要するときは、被疑事実の要旨と令状が発せられている旨を告げて逮捕できる。ただし令状はできる限り速やかに示さなければならない(201条2項・73条3項)
- 逮捕状の発付に準抗告はできない(最決昭57.8.27)
誤り。違うのは「被疑事実の要旨と捜索差押許可状が発付されている旨を告げて,捜索差押えを行うことができる」の部分である。令状を所持しない場合の緊急執行(73条3項)は勾引状・勾留状と逮捕状にしか認められず、捜索差押許可状には準用がない。
令状が発付されているが執行者がこれを所持していないため示すことができない場合に、急速を要するときは、公訴事実の要旨と令状が発せられている旨を告げて執行できるという扱いを緊急執行という。これは勾引状・勾留状の執行について定められ(73条3項)、逮捕状による逮捕に準用されている(201条2項)。しかしこれらは身体の拘束に関する令状の規律であり、捜索差押許可状の執行を規律する222条1項は73条を準用していない。捜索差押えについては、差押状又は捜索状は処分を受ける者にこれを示さなければならないとする110条が222条1項により準用されるにとどまり、原則として執行に着手する前に令状を呈示することが必要である。事前の呈示は、裁判官の審査を経た処分であることを明らかにして手続の公正を担保し、処分を受ける者の権利を保護するためである。したがって令状を所持していない場合に告知だけで捜索差押えをすることはできない。判例が呈示に先立つホテル客室の解錠を必要な処分として適法とした(最決平14.10.4)のも、呈示を不要にする趣旨ではない。

差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。
| 令状 | 所持しないときの執行 |
|---|---|
| 勾引状・勾留状 | 急速を要するときは公訴事実の要旨と令状が発せられている旨を告げて執行できる。できる限り速やかに示す(73条3項) |
| 逮捕状 | 同じ(201条2項で73条3項を準用) |
| 捜索差押許可状 | 緊急執行の準用なし。処分を受ける者に示さなければならない(110条・222条1項)。破棄隠匿のおそれがあるときは入室の直後の呈示でよい(最決平14.10.4) |
正しい。201条2項が準用する73条3項により、逮捕状を所持しないため示すことができない場合に急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕できる(逮捕状の緊急執行)。
201条1項は、逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならないと定める。被疑者に身体拘束の根拠と理由を知らせ、令状に基づく処分であることを明らかにするためである。もっとも同条2項は73条3項を準用しており、同項は、令状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて執行することができ、ただし令状はできる限り速やかに示さなければならないと定める。逮捕状の場合は、被疑者に被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げることになる。指名手配中の被疑者を偶然発見したような場合に、逮捕状が手元にないというだけで逮捕できないのは不合理であり、裁判官の審査は既に経ているから、事後の呈示で足りるとしたのである。本肢はこの緊急執行の内容どおりであり、正しい。

勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
誤り。違うのは「逮捕の着手に先立って必ず」の部分である。逮捕状を所持していないために示すことができない場合で急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕し、その後できる限り速やかに示せばよい(201条2項・73条3項)。
201条1項は、逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならないと定める。逮捕状の呈示は、司法審査を経た令状に基づく逮捕であることと逮捕の理由を被疑者に知らせるためのものである。しかし、同条2項は73条3項を準用しており、逮捕状を所持しないためこれを示すことができない場合において急速を要するときは、被疑者に対し被疑事実の要旨及び逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕することができ、逮捕状はできる限り速やかに示せばよい(逮捕状の緊急執行)。被疑者の立ち回り先すべてに逮捕状を用意することは現実的でなく、たまたま逮捕状を持たないときに被疑者を発見して逮捕できないとすれば捜査の実効性が損なわれるからである。指名手配による逮捕もこの規定による。本肢は、常に着手前の呈示を要するとする点で誤っている。

勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
- 逮捕状の発付:相当な理由があっても、明らかに逮捕の必要がないときは発しない(199条2項ただし書)
- 権限:逮捕状の請求は検察官と司法警察員(警察官は警部以上の指定を受けた者)。逮捕状による逮捕は司法巡査・検察事務官もできる(199条1項・2項、202条)
- 逮捕状の呈示:原則として示すが、所持していない急速の場合は被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕し、後に速やかに示す(201条、73条3項)
- 緊急逮捕の告知:被疑事実の要旨と急速を要する事情の両方を告げる(210条1項、最大判昭和24年12月14日)
- 令状によらない捜索・差押え:検察官・検察事務官・司法警察職員だけ。私人にはできない(220条1項)
勾引状又は勾留状の執行を受けた被告人を護送する場合において必要があるときは、仮に最寄りの刑事施設にこれを留置することができる。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「起訴前に,被疑者の勾留状の謄本の交付を請求することはできない」の部分である。弁護人は起訴前でも被疑者の勾留状の謄本の交付を請求できる。
刑訴規則302条1項は、被告人その他の訴訟関係人が裁判書又は裁判を記載した調書の謄本・抄本の交付を請求できると定め、同規則74条により勾留状についても謄本等の交付請求が認められている。被疑者の勾留については207条1項本文が勾留に関する規定を準用するから、公訴提起前の段階でも勾留状の謄本の交付を請求することができる。弁護人は被疑者の正当な利益の擁護者としての地位に基づき、被疑者本人が行える訴訟行為について包括的な代理権を持つと解されており(最大決昭63.2.17参照)、被疑者本人が請求できる勾留状謄本の交付についても、弁護人が自ら請求することができる。勾留状には被疑事実の要旨と60条1項各号のどの事由に当たるかが記載されており(64条1項・規則70条)、その内容の把握は、勾留理由開示の請求、勾留取消しの請求、勾留の裁判に対する準抗告といった防御活動の前提として欠かせない。起訴前に限ってこれを否定する理由はなく、肢は誤っている。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
- 保釈の請求(88条)・勾留の取消しの請求(87条)・勾留理由開示の請求(82条2項)
- 勾留・勾留延長・接見指定などの裁判や処分に対する準抗告(429条・430条)
- 証拠調べの請求(298条1項)・証拠保全の請求(179条)
- 勾留状の謄本の交付請求(規則302条1項・74条。起訴前でもできる)
- 被告人の明示の意思に反してできないもの:証拠とすることの同意(326条1項)・上訴(356条)
勾引状の執行を受けた被告人を引致した場合において必要があるときは、これを刑事施設に留置することができる。
1被告人を勾引したときは、直ちに被告人に対し、公訴事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨並びに貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
2前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、弁護士、弁護士法人(弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。以下同じ。)又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
3第一項の告知及び前項の教示は、合議体の構成員又は裁判所書記官にこれをさせることができる。
4第六十六条第四項の規定により勾引状を発した場合には、第一項の告知及び第二項の教示は、その勾引状を発した裁判官がこれをしなければならない。ただし、裁判所書記官にその告知及び教示をさせることができる。
1被告人を勾留するには、被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
2前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被告人は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
3第六十一条ただし書の場合には、被告人を勾留した後直ちに、第一項に規定する事項及び公訴事実の要旨を告げるとともに、前項に規定する事項を教示しなければならない。ただし、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
4前条第三項の規定は、第一項の告知、第二項の教示並びに前項の告知及び教示についてこれを準用する。
1勾引又は勾留された被告人は、裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者に弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
2前項の申出を受けた裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者は、直ちに被告人の指定した弁護士、弁護士法人又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。被告人が二人以上の弁護士又は二以上の弁護士法人若しくは弁護士会を指定して前項の申出をしたときは、そのうちの一人の弁護士又は一の弁護士法人若しくは弁護士会にこれを通知すれば足りる。
被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならない。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「被疑者を逮捕したときは,直ちに,弁護人にその旨を通知しなければならず」の部分である。弁護人等への通知の規定(79条)は勾留についてのもので、被疑者には207条1項で準用されるが、逮捕の段階で司法警察員に通知を義務づける規定はない。
79条は、被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならず、弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならないと定める。この規定は、207条1項により被疑者の勾留にも準用され、勾留状を発した裁判官が通知をする。勾留は最長20日に及ぶ継続的な身体拘束であるから、弁護人や家族が拘束の事実を知り、防御や生活の手当てをできるようにしたのである。これに対し、逮捕については、司法警察員が被疑者を逮捕したときに弁護人や親族に通知することを義務づけた規定はない。逮捕後に司法警察員がすべきことは、犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げて弁解の機会を与え、留置の要否を判断することである(203条1項)。本肢は、逮捕の段階で司法警察員に通知義務があるとする点で誤っている。

被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならない。
勾留されている被告人は、第三十九条第一項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置されている被告人も、同様である。
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
この条文の過去問 8問
誤り。違うのは「被疑者の弁護人であっても、被疑者と接見することはできない」の部分である。接見等禁止の対象は39条1項に規定する者以外の者であり、弁護人との接見は禁じることができない(81条)。
81条本文は、裁判所は、逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と39条1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又は授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押さえることができると定める。39条1項に規定する者とは弁護人又は弁護人を選任できる者の依頼により弁護人となろうとする者であり、条文上これらの者は接見禁止の対象から明文で除外されている。身体を拘束された被疑者・被告人が弁護人と立会人なくして接見し書類等を授受する権利は、憲法34条前段が保障する弁護人の援助を受ける権利に由来する重要な権利であり(最大判平11.3.24)、罪証隠滅の防止という勾留の目的のためにこれを遮断することは許されないからである。したがって、接見禁止の裁判がされても弁護人の接見交通権は制限されず、肢は誤りである。捜査機関が捜査の必要により日時・場所・時間を指定する接見指定(39条3項)は、これとは別の制度である。

…検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。
- 主体は、被告人勾留では裁判所、被疑者勾留では裁判官である(81条・207条1項)
- 要件は、逃亡又は罪証隠滅のおそれについての相当な理由である
- 検察官の請求により又は職権でする
- 対象は、弁護人・弁護人となろうとする者以外の者との接見と、書類その他の物の授受(検閲・禁止・差押え)である
- 弁護人との接見の禁止と、糧食の授受の禁止・差押えはできない
- 被疑者の勾留と被告人の勾留の双方にあり、逮捕の段階にはない
正しい。接見等禁止の裁判は検察官の請求により又は職権でできるので(81条)、被疑者の勾留について裁判所と同一の権限をもつ裁判官(207条1項)は、検察官の請求がなくても職権で接見禁止の裁判ができる。
81条本文は、逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と39条1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又は書類その他の物の授受を禁ずるなどの措置を採ることができると定めており、検察官の請求は接見禁止の裁判の必須の前提ではなく、職権による発動が条文上明示されている。そして被疑者の勾留についても、207条1項本文により、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限をもつので(保釈の権限だけが同項ただし書で除かれる)、被疑者に対する接見禁止の裁判も裁判官が職権で行うことができる。したがって、検察官の請求がなくても裁判官が職権で接見禁止の裁判をすることができるとする肢は正しい。もっとも、接見禁止は被疑者の防御活動や家族との交通を広く制約するので、要件の該当性は慎重に判断されるべきであり、実務でも一部解除の申立てなどにより対象者や範囲を限定する運用がされている。弁護人又は弁護人となろうとする者が禁止の対象外である点はエのとおりである。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
- 主体は、被告人勾留では裁判所、被疑者勾留では裁判官である(81条・207条1項)
- 要件は、逃亡又は罪証隠滅のおそれについての相当な理由である
- 検察官の請求により又は職権でする
- 対象は、弁護人・弁護人となろうとする者以外の者との接見と、書類その他の物の授受(検閲・禁止・差押え)である
- 弁護人との接見の禁止と、糧食の授受の禁止・差押えはできない
- 被疑者の勾留と被告人の勾留の双方にあり、逮捕の段階にはない
誤り。違うのは「接見禁止決定がされている場合は、被疑者と接見できない」の部分であり、接見等禁止は39条1項の弁護人等以外の者との接見を禁じるものであって、弁護人の接見は禁じられない(81条)。
身体の拘束を受けている被疑者・被告人は、弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができる(39条1項)。肢の前半はこのとおりである。しかし、接見等禁止の決定はこの弁護人との接見交通権を制限するものではない。81条は、逃亡又は罪証隠滅の相当な理由があるときに、勾留されている被告人と「第39条第1項に規定する者以外の者」との接見を禁じ、書類その他の物の授受を禁じ又は差し押さえることができると定め、被疑者の勾留にも207条1項本文で準用される。条文が対象を39条1項の者以外に限っている以上、接見等禁止の決定で弁護人の接見を禁じることはできない。弁護人の接見交通権は憲法34条前段の弁護人依頼権に由来する重要な権利であり(最大判平11.3.24)、捜査機関がこれを制約できるのは39条3項の接見指定という限られた場面だけである。接見禁止決定中でも弁護人は被疑者と接見できるから、肢の後半は誤っている。

(前略)検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 固有権(弁護人自身の権利) | 被告人の権利とは別に弁護人に認められる | 接見交通(39条1項)、書類・証拠物の閲覧謄写(40条)、証人尋問・鑑定・裁判所の検証や捜索差押えへの立会い(157条・170条・142条・113条) |
| 独立代理権(被告人の明示の意思に反してもできる) | 被告人の権利を弁護人が独立して行使する | 保釈の請求(88条)、勾留取消しの請求(87条)、勾留理由開示の請求(82条2項)、証拠調べの請求(298条1項)、証拠保全の請求(179条)、勾留・接見指定などに対する準抗告(429条・430条) |
| 被告人の意思に従う代理権 | 被告人の明示の意思に反してはできない | 証拠とすることの同意(326条1項。同意権者は検察官と被告人)、上訴(355条・356条) |
| 弁護人だけの権利ではないもの | 被告人自身もできる | 証拠意見・証拠の同意、共同被告人への質問(311条3項)、証拠保全の請求 |
正しい。裁判所は、勾留されている被告人と39条1項の者以外の者との接見を禁じ、書類その他の物の授受を禁じ又は差し押さえることができるが、糧食の授受は禁じることも差し押さえることもできない(81条)。
81条本文は、裁判所は逃亡又は罪証隠滅の相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と39条1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押さえることができると定める。禁止の対象から除かれる39条1項に規定する者とは弁護人又は弁護人となろうとする者であり、これらの者との接見交通は憲法34条前段に由来する権利であるから、接見等禁止の対象にはできない。肢が弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁じ得るとする点はこの規律に合う。また81条ただし書は、糧食の授受を禁じ又は差し押さえることはできないと定める。糧食は被告人の生存に直結し、遮断することは身体拘束に伴う受忍の限度を超えるからである。肢が糧食を除く書類その他の物の授受を禁止・差押えの対象にしている点もただし書と整合しており、肢は正しい。

(前略)検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
- 接見交通権(39条1項):身体の拘束を受けている被告人・被疑者が、弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、書類・物の授受をする権利。拘束の根拠は逮捕・勾留・勾引・鑑定留置を問わない
- 鑑定留置中:勾留の規定が準用され(167条5項)、弁護人と立会人なく接見できる。保釈はできない
- 接見等禁止(81条・207条1項):逃亡又は罪証隠滅の相当な理由があるとき、検察官の請求又は職権で、39条1項の者以外の者との接見を禁じ、書類その他の物の授受を禁じ又は差し押さえる。糧食の授受は禁じられない
- 弁護人との接見は接見等禁止の対象にならず、制限は39条3項の接見指定だけである
誤り。違うのは「勾留されている被疑者と弁護人との接見を禁じることができる」の部分である。接見等禁止の対象は弁護人・弁護人となろうとする者以外の者との接見に限られる。
81条は、裁判所が、逃亡又は罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるときに、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と39条1項に規定する者、すなわち弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁じ、あるいは書類・物の授受を禁じることができると定める。被疑者の勾留には207条1項本文によりこれが準用され、裁判官が同じ処分をすることができるが、禁止の対象から弁護人と弁護人となろうとする者が除かれている点は変わらない。逃亡・罪証隠滅の防止という勾留の目的のために外部との交通を遮断する場合でも、弁護人との接見交通だけは制限の対象外とされているのである。39条1項の接見交通権は、憲法34条前段の弁護人依頼権を実質的に担保するものであり、身体を拘束された被疑者が弁護人から助言と援助を受ける機会は防御の中核をなすからである(最大判平11.3.24)。捜査の必要による調整は、捜査機関による接見の日時・場所・時間の指定(39条3項)という限度にとどまる。肢は弁護人との接見自体を禁じられるとする点で誤っている。

裁判所は、(中略)相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。
誤り。違うのは「勾留されている被告人と弁護人との接見を禁じることができる」の部分である。接見等禁止の対象は弁護人・弁護人となろうとする者以外の者との接見に限られる(81条本文)。
81条本文は、裁判所は、逃亡又は罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と39条1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押さえることができると定める。ここで除かれている39条1項に規定する者とは、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者である。したがって接見等禁止の決定によっても、被告人と弁護人との接見を禁じることはできない。身体を拘束された被告人・被疑者が弁護人と立会人なしに接見し書類・物の授受をする権利(39条1項)は、憲法34条前段の弁護人依頼権を実質的に保障するための基幹的な権利だからである(最大判平11.3.24)。接見等禁止の決定がされた場合でも、糧食の授受を禁じ又は差し押さえることはできない(81条ただし書)。肢は弁護人との接見まで禁じられるとする点で誤っている。

裁判所は、(中略)相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。
- 主体は、被告人勾留では裁判所、被疑者勾留では裁判官である(81条・207条1項)
- 要件は、逃亡し又は罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があることである
- 検察官の請求により、又は職権で行う
- 対象は、弁護人・弁護人となろうとする者以外の者との接見と、書類その他の物の授受(検閲・禁止・差押え)である
- 弁護人との接見の禁止、糧食の授受の禁止・差押えはできない
誤り。違うのは「立会人が付いた接見である」の部分である。接見禁止の裁判は弁護人以外の者との接見を禁じるものであり(81条)、弁護人は立会人なくして接見できる(39条1項)。
81条は、逃亡又は罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるときは、裁判所は、勾留されている被告人と「第三十九条第一項に規定する者以外の者」との接見を禁じることができると定める。接見禁止の裁判の対象は、はじめから弁護人・弁護人となろうとする者以外の者に限られている。そして39条1項は、身体の拘束を受けている被告人は、弁護人と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定める。立会人なしの接見は、憲法34条の弁護人依頼権を実質的に保障するため、被告人が捜査機関や施設職員に内容を知られずに弁護人と相談できるようにしたものであり、接見禁止の裁判によってもこの秘密性は奪われない。本肢の接見は勾留中の被告人と弁護人Aとの接見であるから、接見禁止の裁判を受けていても立会人は付かない。弁護人との接見を制限できるのは、捜査のため必要があるときの接見指定(39条3項)に限られ、これも起訴後の被告人には及ばない。

裁判所は、…検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、…ることができる。
誤り。違うのは「裁判官からその接見を禁じられたときには,被疑者と接見することができない」の部分である。接見等禁止(207条1項・81条)で禁じられるのは弁護人等以外の者との接見であり、弁護人との接見は禁止できない。
39条1項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、書類若しくは物の授受をすることができると定める。そして81条は、裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるときは、勾留されている被告人と「第三十九条第一項に規定する者以外の者」との接見を禁じることができると定め、この規定は207条1項により被疑者の勾留にも準用される。接見等禁止は、家族や知人などを通じた口裏合わせや逃亡の手配を防ぐための制度であり、弁護人との接見は、はじめから禁止の対象から外されている。弁護人との接見交通権は憲法34条の弁護人依頼権に由来する最も重要な権利であり、接見禁止によって奪うことは許されないからである。弁護人との接見を制限できるのは、捜査のため必要があるときの接見指定(39条3項)に限られる。本肢は誤っている。

裁判所は、…検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、…ることができる。
1勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
2勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
3前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。
この条文の過去問 7問
正しい。82条2項は弁護人も勾留理由開示を請求できると定め、207条1項本文により被疑者の勾留にも準用されるから、被疑者の弁護人は裁判官に開示を請求できる。
勾留理由開示は、憲法34条後段が、抑留・拘禁された者について、要求があればその理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定めることを受けて設けられた制度であり、82条以下に規定されている。勾留されている被告人は勾留の理由の開示を請求することができ(82条1項)、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も同様に請求することができる(同条2項)。被疑者の勾留については207条1項本文が勾留に関するこれらの規定を準用するため、勾留されている被疑者の弁護人も裁判官に勾留の理由の開示を請求することができる。弁護人の請求は被疑者の意思にかかわらずできる独立代理権の一つである。開示は公開の法廷で行われ(83条1項)、裁判官が勾留の理由を告げたうえで(84条1項)、検察官、被疑者、弁護人等が意見を述べることができる(同条2項)。この手続で得られた情報は、勾留取消しの請求(207条1項・87条)や勾留の裁判に対する準抗告(429条1項2号)の資料にもなる。

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。2 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
- 保釈の請求(88条)・勾留の取消しの請求(87条)・勾留理由開示の請求(82条2項)
- 勾留・勾留延長・接見指定などの裁判や処分に対する準抗告(429条・430条)
- 証拠調べの請求(298条1項)・証拠保全の請求(179条)
- 勾留状の謄本の交付請求(規則302条1項・74条。起訴前でもできる)
- 被告人の明示の意思に反してできないもの:証拠とすることの同意(326条1項)・上訴(356条)
誤り。違うのは「被疑者及びその弁護人に限り」の部分である。法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人も請求できる(82条2項)。
勾留理由開示の請求権者は、被疑者本人とその弁護人に限られない。法は、勾留されている被告人自身に請求権を認めたうえで(82条1項)、勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人にも請求権を認めている(同条2項)。被疑者勾留の段階でも、207条1項本文により裁判官は裁判所又は裁判長と同一の権限を持つとされ、82条以下の規定がそのまま準用されるから、請求権者の範囲は被告人勾留の場合と変わらない。この制度は、憲法34条後段が、要求があれば拘禁の理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定めたことを受けて設けられたものであるが、刑訴法は憲法が例示する本人・弁護人よりも請求権者を広げ、身柄を拘束された者と密接な関係にある者や利害関係人にも開示を求める道を開いた。したがって請求権者を被疑者とその弁護人に限る肢は、82条2項を見落としており誤っている。

勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
誤り。違うのは「釈放された後であっても」勾留理由の開示を請求できるとする部分である。開示を請求できるのは勾留されている被疑者とその弁護人などであり(207条1項・82条1項・2項)、釈放されれば請求は効力を失う(82条3項)。
勾留理由開示は、憲法34条後段が、要求があればその理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示さなければならないとしたことを受けた制度である。82条1項は、勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができると定め、同条2項は、勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も請求できるとする。これらは207条1項により被疑者の勾留にも準用される。いずれも勾留されていることが前提であり、さらに82条3項は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消しがあったとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、請求はその効力を失うと定める。勾留理由開示は、現に身体を拘束されている者のために拘束の理由を公開の法廷で明らかにさせる制度であるから、拘束が解かれればその必要はなくなるのである。したがって、被疑者が釈放された後は、弁護人の選任の効力が残っていても、弁護人は勾留理由の開示を請求することができない。

前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。
| 立会権あり | 立会権なし |
|---|---|
| 裁判所の捜索・差押え(113条)、裁判所の検証(142条) | 捜査機関の捜索・差押え(222条1項は113条を準用しない) |
| 証人尋問(157条)、鑑定(170条) | 第1回公判期日前の証人尋問(228条2項は裁判官の裁量) |
| 勾留理由開示(83条) | 勾留質問 |
誤り。「勾留理由開示の請求」は、起訴前は認められているが起訴後は認められていないものには当たらない。勾留理由開示は起訴後の被告人に認められ(82条)、被疑者の勾留にも準用される(207条1項)。
憲法34条後段は、何人も正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定める。これを受けて82条1項は、勾留されている被告人は裁判所に勾留の理由の開示を請求することができるとし、同条2項は、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人にも請求を認めている。開示は公開の法廷で行われる(83条1項)。被疑者の勾留については、207条1項により82条以下の規定が準用されるから、起訴前でも勾留理由開示を請求することができる。憲法34条後段は、むしろ捜査段階の身体拘束を主に想定した規定であり、被疑者について開示を認めない理由はない。このように勾留理由開示の請求は起訴前にも起訴後にも認められるから、本肢は設問の「起訴前は認められているが、起訴後は認められていないもの」に当たらない。

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
| 行為 | 起訴前 | 起訴後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 勾留の取消し請求 | ○ | ○ | 87条1項・207条1項 |
| 勾留理由開示の請求 | ○ | ○ | 82条・207条1項 |
| 保釈の請求 | × | ○ | 88条1項・207条1項ただし書 |
| 接見の日時の指定 | ○ | ×(被告事件について) | 39条3項「公訴の提起前に限り」 |
| 告訴の取消し | ○ | × | 237条1項「公訴の提起があるまで」 |
誤り。違うのは「勾留の理由の開示を請求することはできない」の部分である。82条1項は、勾留されている被告人が裁判所に勾留の理由の開示を請求できると定めており、勾留理由開示はもともと被告人の勾留について置かれた制度である。
憲法34条後段は、何人も正当な理由がなければ拘禁されず、要求があればその理由は直ちに本人及び弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定める。これを受けて、刑事訴訟法82条1項は、勾留されている被告人は裁判所に勾留の理由の開示を請求することができると定め、同条2項は弁護人や配偶者などの利害関係人にも請求を認める。被疑者の勾留については207条1項がこれらの規定を準用しており、条文の構造としては、被告人の勾留が本則で、被疑者の勾留が準用である。起訴後の勾留も身体の拘束であることに変わりはなく、拘禁の理由を公開の法廷で示させるという憲法の要請は被告人にも及ぶ。本肢は、被告人の勾留について勾留理由開示を請求できないとする点で誤っている。勾留理由開示は鑑定留置にも準用される(167条5項)。

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
誤り。違うのは「勾留の理由の開示を請求することができる」の部分である。請求できるのは勾留の裁判によって現実に身体を拘束されている被疑者であり、勾留の執行停止があれば請求は効力を失う(82条3項)。
82条1項は、請求権者を「勾留されている被告人」と定め、207条1項により被疑者の勾留に準用される。ここにいう勾留されている者とは、勾留の裁判によって現実に身体を拘束されている者をいうと解されている。勾留理由開示は、現に拘禁されている者について、その拘禁の理由を公開の法廷で示させる制度であり、身体の拘束が解かれていれば、理由を示させる必要がなくなるからである。82条3項が、開示の請求は保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消しがあったとき、又は勾留状の効力が消滅したときはその効力を失うと定めているのも、この趣旨による。勾留の執行停止で釈放されている被疑者は、勾留状の効力が残っていても現実の拘束を受けていないから、請求することはできない。本肢は、執行停止中の被疑者も請求できるとする点で誤っている。

前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
誤り。違うのは「被告人の勾留に限って認められている」の部分である。82条の勾留理由開示は207条1項により被疑者の勾留にも準用され、被疑者も勾留の理由の開示を請求することができる。
82条1項は、勾留されている被告人は裁判所に勾留の理由の開示を請求することができると定め、207条1項は、勾留の請求を受けた裁判官が裁判所又は裁判長と同一の権限を有するとしてこの規定を被疑者の勾留に準用している。勾留理由開示は、憲法34条後段が、何人も正当な理由がなければ拘禁されず、要求があればその理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定めるのを具体化したものである。憲法が「何人も」としているように、拘禁の理由を公開の法廷で示させる要請は、起訴前の被疑者にも及ぶ。勾留期間が短いからといって、身体拘束の理由を明らかにさせる必要が小さくなるわけではない。本肢は、被告人の勾留に限るとする点で誤っている。

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
| 事項 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 判断者 | 勾留請求を受けた裁判官(207条1項) | 受訴裁判所。第1回公判期日までは裁判官(280条1項) |
| 期間 | 請求の日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴提起の日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 勾留理由開示 | できる(207条1項で82条を準用) | できる(82条) |
| 保釈 | ない(207条1項ただし書) | ある(88条以下) |
1勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
2法廷は、裁判官及び裁判所書記が列席してこれを開く。
3被告人及びその弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない。但し、被告人の出頭については、被告人が病気その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。
この条文の過去問 3問
正しい。勾留の理由の開示は公開の法廷で行わなければならない(83条1項。被疑者勾留には207条1項で準用)。
83条1項は、勾留の理由の開示は公開の法廷でこれをしなければならないと定め、開示の手続を公開の法廷で行うことを求めている。同条2項により、その法廷は裁判官と裁判所書記官が列席して開かれる。被疑者勾留についても207条1項本文を通じて83条が準用されるから、捜査段階の勾留についても公開の法廷で理由が開示される。公開が求められるのは、この制度が憲法34条後段の要請を具体化したものだからである。同条後段は、拘禁の理由が公開の法廷で示されるべきことを明文で求めており、身柄拘束の理由を国民の監視のもとで明らかにさせることで不当な拘禁を抑え、拘束された者の防御の機会を確保しようとする趣旨である。裁判の公開を定める憲法82条とは別に、身柄を拘束された者の保護という観点から独自に公開が義務づけられている。したがって公開の法廷で行わなければならないとする肢は正しい。

勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
誤り。違うのは「検察官が出頭しないときは,勾留理由開示の法廷を開くことはできない」の部分である。開廷できないのは被告人及びその弁護人が出頭しないときであり(83条3項)、検察官の出頭は要件でない。
開廷の要件について法が定めるのは、83条3項本文が、被告人及びその弁護人が出頭しないときは開廷することはできないとする点である。同項ただし書は、被告人が病気その他やむを得ない事由で出頭できず本人に異議がないとき、弁護人については被告人に異議がないときは、その出頭を要しないとする。開廷が妨げられるのは被疑者・被告人の側が出頭しない場合であって、検察官の出頭を開廷の要件とする規定は置かれていない。これは、勾留理由開示が検察官と被疑者が攻防を繰り広げる対審の手続ではなく、裁判官が勾留の理由を告知する手続だからである。法廷を構成するのは裁判官と裁判所書記官であり(83条2項)、理由を告げるのも裁判長であるから(84条1項)、検察官の関与がなくても手続の目的は達せられる。検察官は意見を述べることができるにとどまる(84条2項本文)。したがって検察官が出頭しなくても勾留理由開示の法廷を開くことはでき、肢は誤っている。

被告人及びその弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない。但し、被告人の出頭については、被告人が病気その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
正しい。83条1項は、勾留の理由の開示は公開の法廷でしなければならないと定めている。
憲法34条後段は、拘禁の理由は要求があれば直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定める。刑事訴訟法83条1項はこれを受けて、勾留の理由の開示は公開の法廷でこれをしなければならないと定め、同条2項は法廷は裁判官及び裁判所書記官が列席して開くとする。公開の法廷で行うのは、身体拘束の理由を本人だけでなく社会の目にもさらすことで、裁判官による理由のない拘禁を抑止するためである。開示の手続は、被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できない(83条3項)が、検察官の出頭は開廷の要件とされていない。被疑者の勾留についても207条1項により83条が準用されるから、被疑者の勾留理由開示も公開の法廷で行われる。したがって、本肢は正しい。

勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
1法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
2検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「告げれば足りる」の部分である。勾留の理由には60条1項各号の事由が含まれ、犯罪事実と嫌疑の相当性だけを告げるのでは足りない。
84条1項は、法廷において裁判長は勾留の理由を告げなければならないと定める(被疑者勾留には207条1項本文で準用)。ここでいう勾留の理由とは、勾留の基礎になっている犯罪事実に加えて、60条1項各号に定める勾留の理由に当たる事由をいう。60条1項は、勾留の要件として、柱書で罪を犯したことについての嫌疑の相当性を求めたうえで、各号で、定まった住居を有しないこと(1号)、罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があること(2号)、逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があること(3号)のいずれかに当たることを求めている。開示制度の趣旨が、拘禁が正当な理由に基づくことを公開の場で明らかにさせる点にある以上(憲法34条後段)、嫌疑の存在だけを告げるのでは足りず、なぜ身柄を拘束する必要があるのかという各号該当の事由まで告げなければ制度の目的を達せられない。したがって犯罪事実と嫌疑の相当性を告げれば足りるとする肢は、60条1項各号の事由の告知を欠く点で誤っている。

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
正しい。検察官又は被告人及び弁護人並びにその他の請求者は、開示の法廷で意見を述べることができる(84条2項本文。被疑者勾留には207条1項で準用)。
84条2項本文は、検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は意見を述べることができると定めており、被疑者勾留にも207条1項本文により準用される。したがって開示の法廷に出頭した被疑者とその弁護人は、勾留の理由や必要性について意見を述べることができる。もっとも意見の陳述は無制限ではなく、同項ただし書により、裁判長は相当と認めるときは意見の陳述に代えて意見を記載した書面を差し出すよう命じることができる。また勾留理由開示は裁判官が勾留の理由を告げる手続であって、勾留の当否そのものを争って取消しを求める手続ではないから、開示の法廷での意見陳述が直ちに勾留の効力を左右するわけではない。勾留に不服があるときは、勾留取消請求(87条)や準抗告(429条1項2号)という別の手段によることになる。それでも公開の場で身柄拘束の不当さを主張する機会が保障されている点に、この制度の実際上の意義がある。肢は正しい。

検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
- 請求権者は、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人である(82条1項・2項)。被疑者勾留にも207条1項で準用される
- 公開の法廷で、裁判官と裁判所書記官が列席して開く(83条1項・2項)
- 被告人及びその弁護人が出頭しないときは原則として開廷できない(83条3項)。検察官の出頭は開廷の要件でない
- 裁判長が告げる勾留の理由は、犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、60条1項各号の事由である(84条1項)
- 検察官・被告人・弁護人・その他の請求者は意見を述べられる。裁判長は書面の提出を命じることができる(84条2項)
- 保釈・勾留の執行停止・勾留の取消しがあれば請求は効力を失う(82条3項)
誤り。違うのは「告げれば足りる」の部分である。開示では、勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号のどの事由に当たるかも告げなければならない。
84条1項は、勾留理由開示の法廷において、裁判長は勾留の理由を告げなければならないと定める。勾留は、罪を犯したことについて相当な理由があるだけではできず、60条1項各号の住居不定・罪証隠滅の相当な理由・逃亡の相当な理由のいずれかがあって初めて許される。そうであれば、勾留の理由を示すというためには、勾留の基礎となっている犯罪事実と嫌疑の相当性に加えて、各号のどの事由に当たるのかを告げなければ、なぜ身体を拘束されているのかが本人に伝わらない。そのため、開示の対象は、被疑事実(公訴事実)と60条1項各号所定の事由であると解されている。拘禁の理由を公開の法廷で示させる憲法34条後段の趣旨からも、各号の事由を伏せた開示では足りない。本肢は、犯罪事実と相当な理由を告げれば足りるとする点で誤っている。

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
誤り。違うのは「意見を述べることはできない」の部分である。84条2項は被告人が意見を述べることができると定め、207条1項により被疑者の勾留理由開示にも準用されるから、被疑者も意見を述べることができる。
84条2項は、勾留理由開示の法廷において、検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は意見を述べることができると定める。ただし、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代えて意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。207条1項は、被疑者の勾留について被告人の勾留に関する規定を準用するから、被疑者の勾留理由開示でも、被疑者は勾留の理由について意見を述べることができる。勾留理由開示は、裁判長が勾留の理由を示すだけでなく、拘束されている本人や弁護人がその理由に対する意見を公開の法廷で述べ、不当な拘束を正すきっかけとする手続でもあるから、本人に意見を述べる機会を与えることはその中心にある。本肢は、被疑者が意見を述べることはできないとする点で誤っている。

検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
- 請求権者:現実に勾留されている本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹その他利害関係人(82条1項・2項)
- 請求の失効:保釈・勾留の執行停止・勾留の取消し・勾留状の失効があれば請求は効力を失う(82条3項)
- 場所:公開の法廷。被告人(被疑者)と弁護人が出頭しなければ原則として開廷できないが、検察官の出頭は要件でない(83条)
- 告げる内容:勾留の基礎となる犯罪事実と相当な理由に加え、60条1項各号の事由(84条1項)
- 意見:検察官・被告人(被疑者)・弁護人・その他の請求者が述べられる。書面の提出を命じられることがある(84条2項)
勾留の理由の開示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
同一の勾留について第八十二条の請求が二以上ある場合には、勾留の理由の開示は、最初の請求についてこれを行う。その他の請求は、勾留の理由の開示が終つた後、決定でこれを却下しなければならない。
この条文の過去問 1問
誤り。「勾留理由開示の請求」は、起訴前は認められているが起訴後は認められていないものには当たらない。勾留理由開示は起訴後の被告人に認められ(82条)、被疑者の勾留にも準用される(207条1項)。
憲法34条後段は、何人も正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定める。これを受けて82条1項は、勾留されている被告人は裁判所に勾留の理由の開示を請求することができるとし、同条2項は、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人にも請求を認めている。開示は公開の法廷で行われる(83条1項)。被疑者の勾留については、207条1項により82条以下の規定が準用されるから、起訴前でも勾留理由開示を請求することができる。憲法34条後段は、むしろ捜査段階の身体拘束を主に想定した規定であり、被疑者について開示を認めない理由はない。このように勾留理由開示の請求は起訴前にも起訴後にも認められるから、本肢は設問の「起訴前は認められているが、起訴後は認められていないもの」に当たらない。

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
| 行為 | 起訴前 | 起訴後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 勾留の取消し請求 | ○ | ○ | 87条1項・207条1項 |
| 勾留理由開示の請求 | ○ | ○ | 82条・207条1項 |
| 保釈の請求 | × | ○ | 88条1項・207条1項ただし書 |
| 接見の日時の指定 | ○ | ×(被告事件について) | 39条3項「公訴の提起前に限り」 |
| 告訴の取消し | ○ | × | 237条1項「公訴の提起があるまで」 |
1勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
2第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
この条文の過去問 5問
正しい。勾留の理由又は必要がなくなったときは、検察官も勾留の取消しを請求することができる(87条1項)。
87条1項は、勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定をもって勾留を取り消さなければならないと定める。請求権者の最初に検察官が掲げられているから、勾留の必要がなくなったときに検察官が勾留の取消しを請求できることは条文上明らかである。検察官は被告人に不利な方向だけで活動するのではなく、公益の代表者として身体拘束が適正かどうかについても職責を負うからである。勾留の理由や必要が後に消えた以上、拘束を続ける根拠はないので、条文は「取り消さなければならない」として裁判所に取消しを義務づけている。肢は87条1項のとおりである。検察官の請求による取消しでは、92条2項の検察官の意見の聴取は要らない。

勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
| 保釈(88条以下) | 勾留の取消し(87条) | 勾留の執行停止(95条) | |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 請求による(被告人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)。裁量保釈は職権でもできる | 請求(左の者に加えて検察官)又は職権 | 職権のみ。申立ては職権の発動を促すだけで、裁判の義務はない(最判昭24.2.17) |
| 要件と効果 | 除外事由がなければ許さなければならない(89条)。あっても裁量で許せる(90条) | 理由又は必要がなくなれば取り消さなければならない | 適当と認めるときにできる |
| 検察官の意見 | 許す決定も却下する決定も聴く(92条1項) | 検察官の請求による場合を除き聴く。急速を要するときは不要(92条2項) | 刑訴規則で聴く。急速を要するときは不要 |
| 保証金 | 必ず定め、納付後に釈放(93条・94条) | — | 要らない |
| 取消し | 検察官の請求又は職権で取り消すことができる(96条1項) | — | 保釈と同じ(96条1項) |
正しい。勾留状の効力は令状に記載された窃盗の事実にしか及ばないから、窃盗について勾留の理由又は必要がなくなれば勾留は取り消されなければならず(87条1項・207条1項)、詐欺の捜査の必要を理由に勾留を続けることはできない。
逮捕・勾留の効力は令状に記載された被疑事実についてのみ及ぶ(事件単位の原則)。207条1項により被疑者の勾留に準用される87条1項は、勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判官が検察官等の請求により又は職権で決定をもって勾留を取り消さなければならないと定めており、裁量ではなく義務的な取消しである。本事例で勾留状が発せられているのは窃盗の事実だけであるから、窃盗について勾留の理由(60条1項)又は必要が失われた以上、勾留は取り消されなければならない。詐欺の事実については逮捕も勾留もされておらず、発せられている勾留状の効力はその事実に及んでいないので、詐欺の捜査の必要があることは窃盗を被疑事実とする勾留を維持する根拠にならない。これを認めれば、逮捕・勾留の理由を欠く事実について実質的に身体拘束を続けることになり、事件単位の原則にも逮捕前置主義にも反する。詐欺について身体拘束が必要なら、別途その事実で逮捕の手続を経たうえで勾留を請求すべきである。

勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
| 場面 | 結論 |
|---|---|
| 逮捕を経ていない事実だけを理由に勾留を請求する | できない(逮捕前置主義) |
| 逮捕事実と同一性のある事実で罪名だけ変わった | 勾留を請求できる |
| 逮捕した事実に逮捕していない事実を併せて勾留を請求する | できる。裁判官は両方の事実で勾留状を発せられる |
| 勾留事実について理由・必要がなくなった | 余罪の捜査の必要を理由に勾留を続けられない(事件単位の原則・87条1項) |
| 先行する逮捕が違法 | 勾留請求は却下される |
誤り。違うのは「検察官自らの裁量により、勾留の執行を停止することができる」の部分である。勾留の執行停止をするのは裁判所であり、被疑者の勾留では裁判官である(95条1項・207条1項)。
95条1項は、裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定める。被疑者の勾留には207条1項によりこの規定が準用され、勾留に関する処分をする裁判官が執行停止をする。勾留の執行停止は、勾留の効力を保ったまま執行だけを一時的に止める裁判であり、勾留の裁判をした裁判機関の権限に属するから、検察官が自らの裁量で行うことはできない。検察官は、勾留の理由や必要がなくなったと考えるときは、勾留の取消しを請求することができ(87条1項・207条1項)、取消しの裁判を待たずに自ら被疑者を釈放することもできると解されている。しかし、これは勾留の効力を保ったまま執行だけを止める執行停止とは性質の異なるものである。したがって、検察官が自らの裁量で勾留の執行を停止できるとする本肢は誤っている。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
誤り。「勾留の取消し請求」は、起訴前は認められているが起訴後は認められていないものには当たらない。勾留の取消し請求は起訴後に認められ(87条1項)、被疑者の勾留にも準用される(207条1項)。
87条1項は、勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定をもって勾留を取り消さなければならないと定める。これは起訴後の被告人の勾留についての規定である。そして207条1項は、勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有するとして、被告人の勾留に関する規定を被疑者の勾留に準用し、ただし書で保釈だけを除いている。したがって、87条は被疑者の勾留にも準用され、被疑者や弁護人なども勾留の取消しを請求することができる。勾留の取消しは、勾留の要件が後から消えた場合に身体の拘束を将来に向かって解く制度であり、起訴の前後で必要性に違いはない。勾留の取消し請求は起訴前にも起訴後にも認められるから、本肢は設問の「起訴前は認められているが、起訴後は認められていないもの」に当たらない。

勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
| 行為 | 起訴前 | 起訴後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 勾留の取消し請求 | ○ | ○ | 87条1項・207条1項 |
| 勾留理由開示の請求 | ○ | ○ | 82条・207条1項 |
| 保釈の請求 | × | ○ | 88条1項・207条1項ただし書 |
| 接見の日時の指定 | ○ | ×(被告事件について) | 39条3項「公訴の提起前に限り」 |
| 告訴の取消し | ○ | × | 237条1項「公訴の提起があるまで」 |
誤り。違うのは「検察官自らの裁量により、勾留の執行を停止することができる」の部分である。勾留の執行停止をするのは裁判所であり、被疑者の勾留では裁判官である(95条1項・207条1項)。
95条1項は、裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定める。被疑者の勾留には207条1項によりこの規定が準用され、勾留に関する処分をする裁判官が執行停止をする。勾留の執行停止は、勾留の効力を保ったまま執行だけを一時的に止める裁判であり、勾留の裁判をした裁判機関の権限に属するから、検察官が自らの裁量で行うことはできない。検察官は、勾留の理由や必要がなくなったと考えるときは、勾留の取消しを請求することができ(87条1項・207条1項)、取消しの裁判を待たずに自ら被疑者を釈放することもできると解されている。しかし、これは勾留の効力を保ったまま執行だけを止める執行停止とは性質の異なるものである。したがって、検察官が自らの裁量で勾留の執行を停止できるとする本肢は誤っている。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
1勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
2第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
この条文の過去問 14問
誤り。違うのは「勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈の請求をすることができる」の部分である。保釈は勾留されている被告人のための制度であり(88条1項)、被疑者の勾留には保釈の規定が準用されない(207条1項ただし書)。
保釈は、保証金の納付等を条件に勾留の執行を解く制度であり、その請求権者は勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹である(88条1項)。権利保釈・裁量保釈・義務的保釈の規定(89条〜91条)もいずれも被告人を対象にする。被疑者の勾留については、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限をもつとされる一方、保釈についてはこの限りでないと明文で除かれている(207条1項ただし書)。つまり起訴前の被疑者勾留には保釈制度は準用されておらず、被疑者の段階で保釈を請求することはできない。被疑者の身体拘束を解く手段は、勾留の理由・必要が消えた場合の勾留の取消し(87条1項・207条1項本文)、勾留の執行停止(95条1項・207条1項本文)、勾留理由開示の請求(82条以下・207条1項本文)などによるほかない。したがって、勾留されている被疑者の弁護人が裁判官に保釈を請求することはできず、肢は誤りである。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 | |
|---|---|---|
| 勾留の取消し(87条) | ○ | ○ |
| 執行停止(95条) | ○ | ○ |
| 勾留理由開示(82条) | ○ | ○ |
| 接見等禁止(81条) | ○ | ○ |
| 保釈(88条以下) | ×(207条1項ただし書) | ○ |
| 検察官の勾留請求(204条〜206条) | ○ | ×(職権) |
正しい。保釈は勾留されている被告人の制度であり、被疑者勾留には保釈の規定が準用されない(207条1項ただし書)。
保釈は、勾留されている被告人について、身体拘束を解いて公判への出頭を保証金で担保する制度であり、権利保釈(89条)、裁量保釈(90条)、義務的保釈(91条)のいずれも被告人を対象にする(88条1項)。これに対し、起訴前の被疑者勾留については、207条1項本文が被告人の勾留に関する規定を準用しつつ、同項ただし書が「保釈については、この限りでない」として保釈の規定の準用を明示的に除いている。現行法は被疑者の保釈という制度を用意していないのである。その趣旨は、捜査の初期段階では罪証隠滅や通謀の危険が類型的に高いこと、被疑者勾留は原則10日、延長を含めても原則20日という短い期間に限られており(208条1項・2項)、長期の身体拘束からの解放を図る保釈になじまないことに求められる。したがって被疑者とその弁護人は保釈の請求をすることができない。被疑者の段階で身体拘束を争う手段は、勾留の裁判に対する準抗告(429条1項2号)、勾留理由開示の請求(82条・207条1項)、勾留取消しの請求(87条・207条1項)などによる。肢は正しい。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
正しい。配偶者は、被告人と独立して保釈の請求をすることができる(88条1項)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定める。配偶者などに与えられているのは被告人の代理人としての地位ではなく、自らの名で行使できる請求権であるから、被告人とは別に、独立して保釈を請求することができる。身体を拘束された被告人が自分で適時に請求をするのは事実上難しいので、身近な者にも請求を認めて、拘束から解放される機会を実質的に保障する趣旨である。請求を受けた裁判所は、89条の除外事由に当たらない限り保釈を許さなければならず、除外事由があっても90条により裁量で許すことができる。肢は88条1項のとおりである。勾留の取消しの請求権者(87条1項)もほぼ同じ範囲であるが、こちらには検察官が加わる。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
| 保釈(88条以下) | 勾留の取消し(87条) | 勾留の執行停止(95条) | |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 請求による(被告人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)。裁量保釈は職権でもできる | 請求(左の者に加えて検察官)又は職権 | 職権のみ。申立ては職権の発動を促すだけで、裁判の義務はない(最判昭24.2.17) |
| 要件と効果 | 除外事由がなければ許さなければならない(89条)。あっても裁量で許せる(90条) | 理由又は必要がなくなれば取り消さなければならない | 適当と認めるときにできる |
| 検察官の意見 | 許す決定も却下する決定も聴く(92条1項) | 検察官の請求による場合を除き聴く。急速を要するときは不要(92条2項) | 刑訴規則で聴く。急速を要するときは不要 |
| 保証金 | 必ず定め、納付後に釈放(93条・94条) | — | 要らない |
| 取消し | 検察官の請求又は職権で取り消すことができる(96条1項) | — | 保釈と同じ(96条1項) |
正しい。被疑者の勾留については保釈の規定が準用されず(207条1項ただし書)、逮捕にも保釈の制度はないから、どちらも保釈は認められない。
保釈は、勾留されている被告人について、保証金の納付を条件として勾留の執行を停止する制度である(88条以下)。207条1項は、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有すると定めて被告人の勾留の規定を被疑者の勾留に準用しつつ、ただし書で、保釈については、この限りでないとしている。起訴前の勾留は原則10日、延長しても通じて20日(208条)と短く、保釈で解放する必要は乏しい。また、捜査の初期の段階では証拠の収集が終わっておらず、保証金による出頭の確保だけでは罪証隠滅の防止に足りない。そのため被疑者の勾留には保釈がない。逮捕は勾留とは別の短時間の拘束であり、保釈の規定を当てはめる余地はそもそもない。被疑者の身体拘束を解く方法は、勾留の取消し(207条1項・87条)、勾留の執行停止(207条1項・95条)、準抗告(429条1項2号)である。したがって、逮捕状による逮捕にも起訴前の勾留にも保釈は認められない。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
誤り。違うのは「勾留されている被告人及びその弁護人のみ」の部分である。被告人と弁護人のほか、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も保釈の請求をすることができる(88条1項)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定める。被告人本人と弁護人に限らず、被告人と一定の身分関係にある者にも、それぞれ独立して保釈を請求する権利が認められている。身体を拘束されている被告人は自分で手続を進めることが難しく、弁護人が付いていないこともあるので、被告人の身近にいる者が身体拘束からの解放を求める道を開いたのである。勾留の取消しの請求(87条1項)も、検察官のほか同じ範囲の者ができる。もっとも保釈は起訴後の被告人の勾留についての制度であり、被疑者の勾留には準用されない(207条1項ただし書)から、起訴前には誰も保釈を請求することはできない。本肢は、請求権者を被告人と弁護人に限っている点で88条1項に反している。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
- 請求権者:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。起訴前に選任された弁護人も第一審の弁護人として請求できる(32条1項)
- 判断者:公訴の提起後第1回公判期日までは裁判官(280条1項)で、事件の審判に関与すべき裁判官は除かれる(規則187条1項ただし書)。その後は受訴裁判所
- 検察官の意見:保釈を許す決定・請求を却下する決定のいずれにも聴く(92条1項)
- 不服申立て:第1回公判期日前の裁判官の裁判には準抗告(429条1項2号)、受訴裁判所の決定には抗告(420条2項)
誤り。違うのは「改めて第一審の弁護人として選任されない限り」の部分である。公訴の提起前にした弁護人の選任は第一審においても効力を有する(32条1項)から、被疑者の国選弁護人はそのまま被告人の弁護人として保釈を請求できる。
32条1項は、公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有すると定める。被疑者に対して裁判官が付した国選弁護人(37条の2・37条の4)もこの規定の適用を受け、被疑者が勾留されたまま起訴されれば、改めて選任の手続をしなくても、そのまま第一審の被告人の弁護人となる。捜査段階から事件に関わってきた弁護人が起訴後も引き続き弁護をすることが被告人の利益になり、起訴の時点で弁護人が不在になる空白も避けられるからである。したがって、被疑者の国選弁護人は、起訴後は被告人の弁護人として、88条1項により保釈を請求することができる。もっとも、裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは効力を失う(38条の2本文)。勾留の執行停止による釈放であれば失効しない(同条ただし書)。本肢は勾留されている被告人の保釈を前提にしているから、選任は失効しておらず、32条1項によって弁護人の地位は当然に続いている。

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。
- 請求権者:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。起訴前に選任された弁護人も第一審の弁護人として請求できる(32条1項)
- 判断者:公訴の提起後第1回公判期日までは裁判官(280条1項)で、事件の審判に関与すべき裁判官は除かれる(規則187条1項ただし書)。その後は受訴裁判所
- 検察官の意見:保釈を許す決定・請求を却下する決定のいずれにも聴く(92条1項)
- 不服申立て:第1回公判期日前の裁判官の裁判には準抗告(429条1項2号)、受訴裁判所の決定には抗告(420条2項)
正しい。被疑者の勾留については保釈の規定が準用されず(207条1項ただし書)、逮捕にも保釈の制度はないから、どちらも保釈は認められない。
保釈は、勾留されている被告人について、保証金の納付を条件として勾留の執行を停止する制度である(88条以下)。207条1項は、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有すると定めて被告人の勾留の規定を被疑者の勾留に準用しつつ、ただし書で、保釈については、この限りでないとしている。起訴前の勾留は原則10日、延長しても通じて20日(208条)と短く、保釈で解放する必要は乏しい。また、捜査の初期の段階では証拠の収集が終わっておらず、保証金による出頭の確保だけでは罪証隠滅の防止に足りない。そのため被疑者の勾留には保釈がない。逮捕は勾留とは別の短時間の拘束であり、保釈の規定を当てはめる余地はそもそもない。被疑者の身体拘束を解く方法は、勾留の取消し(207条1項・87条)、勾留の執行停止(207条1項・95条)、準抗告(429条1項2号)である。したがって、逮捕状による逮捕にも起訴前の勾留にも保釈は認められない。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 逮捕状による逮捕 | 起訴前の勾留 | |
|---|---|---|
| 令状の請求 | 検察官又は司法警察員(警部以上)(199条2項) | 検察官だけ(204条1項・205条1項) |
| 告知と弁解 | 執行後に司法警察員・検察官が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与える(203条1項・204条1項) | 発付前に裁判官が被疑事件を告げて陳述を聴く勾留質問(207条1項・61条) |
| 国選弁護人 | 付さない | 勾留状が発せられた被疑者・勾留を請求された被疑者(37条の2・37条の4) |
| 不服申立て | 準抗告の対象にならない(最決昭57.8.27) | 準抗告ができる(429条1項2号) |
| 保釈 | ない | ない(207条1項ただし書) |
誤り。違うのは「勾留されている被告人及びその弁護人のみ」の部分である。被告人と弁護人のほか、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も保釈の請求をすることができる(88条1項)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定める。被告人本人と弁護人に限らず、被告人と一定の身分関係にある者にも、それぞれ独立して保釈を請求する権利が認められている。身体を拘束されている被告人は自分で手続を進めることが難しく、弁護人が付いていないこともあるので、被告人の身近にいる者が身体拘束からの解放を求める道を開いたのである。勾留の取消しの請求(87条1項)も、検察官のほか同じ範囲の者ができる。もっとも保釈は起訴後の被告人の勾留についての制度であり、被疑者の勾留には準用されない(207条1項ただし書)から、起訴前には誰も保釈を請求することはできない。本肢は、請求権者を被告人と弁護人に限っている点で88条1項に反している。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
- 請求権者:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。起訴前に選任された弁護人も第一審の弁護人として請求できる(32条1項)
- 判断者:公訴の提起後第1回公判期日までは裁判官(280条1項)で、事件の審判に関与すべき裁判官は除かれる(規則187条1項ただし書)。その後は受訴裁判所
- 検察官の意見:保釈を許す決定・請求を却下する決定のいずれにも聴く(92条1項)
- 不服申立て:第1回公判期日前の裁判官の裁判には準抗告(429条1項2号)、受訴裁判所の決定には抗告(420条2項)
誤り。違うのは「改めて第一審の弁護人として選任されない限り」の部分である。公訴の提起前にした弁護人の選任は第一審においても効力を有する(32条1項)から、被疑者の国選弁護人はそのまま被告人の弁護人として保釈を請求できる。
32条1項は、公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有すると定める。被疑者に対して裁判官が付した国選弁護人(37条の2・37条の4)もこの規定の適用を受け、被疑者が勾留されたまま起訴されれば、改めて選任の手続をしなくても、そのまま第一審の被告人の弁護人となる。捜査段階から事件に関わってきた弁護人が起訴後も引き続き弁護をすることが被告人の利益になり、起訴の時点で弁護人が不在になる空白も避けられるからである。したがって、被疑者の国選弁護人は、起訴後は被告人の弁護人として、88条1項により保釈を請求することができる。もっとも、裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは効力を失う(38条の2本文)。勾留の執行停止による釈放であれば失効しない(同条ただし書)。本肢は勾留されている被告人の保釈を前提にしているから、選任は失効しておらず、32条1項によって弁護人の地位は当然に続いている。

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。
- 請求権者:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。起訴前に選任された弁護人も第一審の弁護人として請求できる(32条1項)
- 判断者:公訴の提起後第1回公判期日までは裁判官(280条1項)で、事件の審判に関与すべき裁判官は除かれる(規則187条1項ただし書)。その後は受訴裁判所
- 検察官の意見:保釈を許す決定・請求を却下する決定のいずれにも聴く(92条1項)
- 不服申立て:第1回公判期日前の裁判官の裁判には準抗告(429条1項2号)、受訴裁判所の決定には抗告(420条2項)
正しい。保釈の請求は、勾留されている被告人と弁護人のほか、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹もすることができる(88条1項)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定める。身体を拘束されている被告人が自ら適時に権利を行使することは事実上難しい場合があるため、被告人と密接な関係にある者にも請求権を認め、身体の拘束から解放される機会を実質的に確保しようとするものである。配偶者や直系の親族は、被告人の意思と独立して保釈を請求することができる。同じ範囲の者には、勾留の取消しの請求権も認められている(87条1項)。もっとも、勾留理由開示の請求(82条2項)は「その他利害関係人」まで請求権者を広げているのに対し、保釈の請求にはその定めがないから、利害関係人は保釈を請求することができない。なお、裁判所は保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない(92条1項)。本肢は88条1項の列挙どおりである。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
正しい。保釈の請求は、勾留されている被告人と弁護人のほか、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹もすることができる(88条1項)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定める。身体を拘束されている被告人が自ら適時に権利を行使することは事実上難しい場合があるため、被告人と密接な関係にある者にも請求権を認め、身体の拘束から解放される機会を実質的に確保しようとするものである。配偶者や直系の親族は、被告人の意思と独立して保釈を請求することができる。同じ範囲の者には、勾留の取消しの請求権も認められている(87条1項)。もっとも、勾留理由開示の請求(82条2項)は「その他利害関係人」まで請求権者を広げているのに対し、保釈の請求にはその定めがないから、利害関係人は保釈を請求することができない。なお、裁判所は保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない(92条1項)。本肢は88条1項の列挙どおりである。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
誤り。「保釈の請求」は、起訴前は認められているが起訴後は認められていないものには当たらない。保釈は逆に、起訴後の被告人には認められ(88条1項)、被疑者の勾留には準用されない(207条1項ただし書)。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができると定め、権利保釈(89条)、裁量保釈(90条)、義務的保釈(91条)が用意されている。これに対し、被疑者の勾留については、207条1項が被告人の勾留に関する規定を準用しつつ、ただし書で「保釈については、この限りでない」として準用を明文で除いている。そのため、起訴前の被疑者には保釈の制度がない。起訴前の勾留は捜査のための身体拘束であり、期間も原則10日、延長しても通じて20日までに限られていること(208条)から、保釈を設けないこととされたのである。このように保釈の請求は、設問とはちょうど逆に、起訴後には認められるが起訴前には認められていない。したがって、本肢は設問の「起訴前は認められているが、起訴後は認められていないもの」に当たらない。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 行為 | 起訴前 | 起訴後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 勾留の取消し請求 | ○ | ○ | 87条1項・207条1項 |
| 勾留理由開示の請求 | ○ | ○ | 82条・207条1項 |
| 保釈の請求 | × | ○ | 88条1項・207条1項ただし書 |
| 接見の日時の指定 | ○ | ×(被告事件について) | 39条3項「公訴の提起前に限り」 |
| 告訴の取消し | ○ | × | 237条1項「公訴の提起があるまで」 |
正しい。355条は、原審における代理人又は弁護人は被告人のため上訴をすることができると定めているから、第一審の私選弁護人は改めて選任されなくても控訴することができる。
355条は、原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができると定める。公訴の提起後の弁護人の選任は審級ごとにしなければならない(32条2項)が、上訴するかどうかの判断には原審の審理を知る弁護人の意見が重要であり、判決の宣告によって直ちに弁護人がいなくなると、14日の上訴期間内に上訴の機会を逃すおそれがある。そこで、原審の弁護人に、改めて選任されなくても被告人のために上訴を申し立てる権限を認めた。この権限は被告人のための独立代理権と解されている。もっとも、356条により、被告人の明示した意思に反して上訴することはできない。上訴の申立て後に控訴審で弁護活動をするには、改めて控訴審の弁護人として選任される必要がある。第一審で有罪判決を受けた被告人の私選弁護人は、改めて選任されなくても控訴することができる。本肢は正しい。

原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。
| 場面 | 結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 国選弁護人の辞任の申出 | 裁判所(裁判長・裁判官)が解任するまで地位を失わない | 最判昭和54年7月24日、38条の3 |
| 配偶者が選任した私選弁護人と本人の別の選任 | 配偶者は独立して選任できる。本人が別に選任しても当然には地位を失わない | 30条2項 |
| 原審の弁護人の上訴 | 改めて選任されなくても被告人のため上訴できる。被告人の明示の意思には反せない | 355条・356条 |
| 保釈の請求 | 弁護人は被告人の明示の意思に反しても請求できる(独立代理権) | 88条1項・41条 |
正しい。88条1項は弁護人を保釈の請求権者として定めており、この請求権は弁護人の独立代理権であるから、被告人の明示の意思に反しても保釈の請求をすることができる。
41条は、弁護人は、この法律に特別の定めのある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができると定める。88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は保釈の請求をすることができると定め、弁護人を請求権者として明記している。このように法が弁護人自身に請求権を与えている行為は、弁護人が被告人の意思から独立して行うことができる独立代理権に当たり、被告人の明示の意思に反しても行使することができる。身体拘束からの解放は被告人の利益に直結するものであり、被告人が自暴自棄になって保釈を望まないような場合でも、弁護人の判断で請求できるようにしておくことが被告人の保護になるからである。これに対し、証拠とすることの同意(326条1項)や上訴(356条)は、被告人の明示の意思に反してはできない。本肢は正しい。

勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
| 場面 | 結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 国選弁護人の辞任の申出 | 裁判所(裁判長・裁判官)が解任するまで地位を失わない | 最判昭和54年7月24日、38条の3 |
| 配偶者が選任した私選弁護人と本人の別の選任 | 配偶者は独立して選任できる。本人が別に選任しても当然には地位を失わない | 30条2項 |
| 原審の弁護人の上訴 | 改めて選任されなくても被告人のため上訴できる。被告人の明示の意思には反せない | 355条・356条 |
| 保釈の請求 | 弁護人は被告人の明示の意思に反しても請求できる(独立代理権) | 88条1項・41条 |
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。被告人の氏名又は住居が分からないとき。
1 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
2 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
3 被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
4 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
5 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
6 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
この条文の過去問 23問
誤り。違うのは「勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈の請求をすることができる」の部分である。保釈は勾留されている被告人のための制度であり(88条1項)、被疑者の勾留には保釈の規定が準用されない(207条1項ただし書)。
保釈は、保証金の納付等を条件に勾留の執行を解く制度であり、その請求権者は勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹である(88条1項)。権利保釈・裁量保釈・義務的保釈の規定(89条〜91条)もいずれも被告人を対象にする。被疑者の勾留については、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限をもつとされる一方、保釈についてはこの限りでないと明文で除かれている(207条1項ただし書)。つまり起訴前の被疑者勾留には保釈制度は準用されておらず、被疑者の段階で保釈を請求することはできない。被疑者の身体拘束を解く手段は、勾留の理由・必要が消えた場合の勾留の取消し(87条1項・207条1項本文)、勾留の執行停止(95条1項・207条1項本文)、勾留理由開示の請求(82条以下・207条1項本文)などによるほかない。したがって、勾留されている被疑者の弁護人が裁判官に保釈を請求することはできず、肢は誤りである。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 | |
|---|---|---|
| 勾留の取消し(87条) | ○ | ○ |
| 執行停止(95条) | ○ | ○ |
| 勾留理由開示(82条) | ○ | ○ |
| 接見等禁止(81条) | ○ | ○ |
| 保釈(88条以下) | ×(207条1項ただし書) | ○ |
| 検察官の勾留請求(204条〜206条) | ○ | ×(職権) |
誤り。「必要的保釈(権利保釈)」の可否は法定刑の軽重により異なる。89条1号・3号は、死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪や、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を除外事由にしている。
権利保釈(必要的保釈)について89条は、保釈の請求があったときは次の場合を除いてこれを許さなければならないと定め、除外事由を限定して列挙する。そのうち1号は被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき、3号は被告人が常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるときであり、いずれも起訴された罪の法定刑の軽重そのものを基準にして権利保釈の可否を分けている。したがって権利保釈の可否は法定刑の軽重により異なる。もっとも、89条各号の除外事由に当たる場合でも、裁判所は適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条。裁量保釈)、裁量保釈には法定刑による限定がない。また、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は89条が適用されず(344条1項)、権利保釈は認められなくなる。令和5年改正で保釈中の逃亡を防ぐ監督者や位置測定端末の制度が整えられたが、89条が法定刑を基準に権利保釈を制限する構造は維持されている。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。(中略)三 被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
| 法定刑で変わる | 法定刑で変わらない |
|---|---|
| 緊急逮捕(210条1項):死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限る | 勾留の執行停止(95条):裁判所が適当と認めるとき。法定刑を問わない |
| 権利保釈の除外(89条1号・3号):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 第1回公判期日前の証人尋問請求(226条・227条):出頭・供述拒否や供述変遷のおそれと不可欠性が要件 |
| 即決裁判手続(350条の16第1項ただし書)・簡易公判手続(291条の2ただし書):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は不可 | 起訴猶予(248条):検察官の裁量。法定刑は考慮事情の一つ |
| 必要的弁護(289条1項):死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件 | 被疑者国選弁護(37条の2):現行法では勾留状が発せられた全事件(出題当時は長期3年を超える事件に限られていた) |
| 公訴時効(250条)・軽微事件の逮捕・勾留(199条1項ただし書・217条・60条3項)・出頭義務(284条・285条) | 公判前整理手続に付す決定(316条の2):必要があると認めるとき |
誤り。違うのは「保釈は一切許されない」の部分である。罪証隠滅のおそれは権利保釈の除外事由(89条4号)にすぎず、裁量保釈(90条)は許される。
被告人が罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるときは、89条4号により権利保釈(必要的保釈)の除外事由とされるにとどまり、保釈が一切許されなくなるわけではない。同条は、保釈の請求があったときは各号の場合を除いてこれを許さなければならないという形で裁判所の許可義務を定めた規定であり、除外事由に当たれば許可義務が外れるにすぎない。89条各号に当たる場合でも、裁判所は裁量保釈を許すことができる(90条)。令和5年改正後の90条は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができると定め、考慮事情を明文にしている。さらに勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で保釈を許さなければならない義務的保釈(91条1項)もある。したがって罪証隠滅のおそれがあっても保釈の余地は残っており、肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
- 権利保釈(89条)は、請求があれば6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるときは除外事由(4号)である
- 裁量保釈(90条)は、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束の継続による不利益の程度などを考慮して、職権で許すことができる。除外事由に当たっても許せる
- 義務的保釈(91条)は、勾留による拘禁が不当に長くなったときに、請求又は職権で勾留の取消し又は保釈を許さなければならない
- 拘禁刑以上の実刑判決の宣告後は89条が適用されず、90条の保釈も限られた場合だけになる(344条)
正しい。保釈の請求があったときは、89条各号の除外事由がある場合を除いて、これを許さなければならない(89条柱書、権利保釈)。
89条柱書は、保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許さなければならないと定める。これが権利保釈であり、除外事由がなければ裁判所に裁量はなく、保釈を許す義務がある。除外事由は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(1号)、前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪で有罪の宣告を受けたことがあるとき(2号)、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(3号)、罪証隠滅のおそれ(4号)、被害者その他事件の審判に必要な知識を持つ者やその親族への加害・畏怖のおそれ(5号)、氏名又は住居が分からないとき(6号)である。被告人は無罪の推定を受ける立場にあり、勾留を続けることは例外であるべきだから、類型的に保釈が適さない場合を除いて保釈を権利として保障したのである。逃亡のおそれは除外事由に含まれず、保証金による出頭の確保と90条の裁量判断で扱われる。第1回公判期日の後は受訴裁判所が保釈について判断する。出題当時の条文は「懲役若しくは禁錮」であったが、現在は拘禁刑であり結論は変わらない。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条、裁量保釈)、請求がない場合にも、89条各号の除外事由がある場合にも保釈を許せる。
90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。89条が保釈の請求があったときを前提にしているのと異なり、90条は職権による保釈を明示しているので、請求がなくても保釈を許すことができる。また、90条は89条各号の除外事由がある場合に適用を外すという限定を置いていないから、権利保釈が認められない場合であっても、個別の事情から身体拘束の必要性が低いと判断すれば保釈を許すことができる。権利保釈の除外事由は類型的な判断であるので、それに当たる事件でも事案に応じて柔軟に身体拘束を解けるよう、裁量保釈が補っているのである。考慮すべき事情は平成28年改正で明文化されたが、出題当時から、請求がない場合や除外事由がある場合でも職権で保釈を許せるという結論は同じである。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈の規定(89条)は適用されない(344条1項)。
344条1項は、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は、60条2項ただし書及び89条の規定は適用しないと定める。89条は、除外事由に当たらない限り保釈の請求があれば保釈を許さなければならないとする権利保釈(必要的保釈)の規定であるから、実刑の判決が宣告された後は、被告人に保釈を受ける権利はなく、保釈は裁判所の裁量による保釈(90条)として判断されることになる。60条2項ただし書の適用も外れるので、勾留期間の更新の回数の制限もなくなる。実刑の判決が宣告されると、無罪推定が働く度合いが弱まるうえ、刑の執行を免れるための逃亡のおそれが高まるから、保釈を権利として保障する前提が失われると考えられたのである。344条1項は宣告された刑の長さや罪名を区別していないので、道路交通法違反の事件で懲役6月という比較的軽い実刑であっても同じである。肢は344条1項のとおりである。令和5年改正で、宣告後の裁量保釈も一定の場合に限られている(同条2項)。

拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項ただし書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。
| 345条 | 343条・344条 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 無罪・免訴・刑の免除・刑の全部の執行猶予・公訴棄却(338条4号を除く)・罰金・科料の裁判の告知 | 拘禁刑以上の刑に処する判決(全部執行猶予でないもの)の宣告 |
| 失効するもの | 勾留状 | 保釈・勾留の執行停止(勾留状は生きている) |
| その後 | 被告人は釈放される | 新たな保釈等の決定がなければ収容される。権利保釈(89条)は適用されず、裁量保釈も不利益が著しく高い場合などに限られる(344条) |
| 時点 | 告知の時。確定を待たない | 宣告の時。確定を待たない |
正しい。保釈の請求があったときは、89条各号の除外事由がある場合を除いて、これを許さなければならない(89条柱書、権利保釈)。
89条柱書は、保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許さなければならないと定める。これが権利保釈であり、除外事由がなければ裁判所に裁量はなく、保釈を許す義務がある。除外事由は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(1号)、前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪で有罪の宣告を受けたことがあるとき(2号)、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(3号)、罪証隠滅のおそれ(4号)、被害者その他事件の審判に必要な知識を持つ者やその親族への加害・畏怖のおそれ(5号)、氏名又は住居が分からないとき(6号)である。被告人は無罪の推定を受ける立場にあり、勾留を続けることは例外であるべきだから、類型的に保釈が適さない場合を除いて保釈を権利として保障したのである。逃亡のおそれは除外事由に含まれず、保証金による出頭の確保と90条の裁量判断で扱われる。第1回公判期日の後は受訴裁判所が保釈について判断する。出題当時の条文は「懲役若しくは禁錮」であったが、現在は拘禁刑であり結論は変わらない。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条、裁量保釈)、請求がない場合にも、89条各号の除外事由がある場合にも保釈を許せる。
90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。89条が保釈の請求があったときを前提にしているのと異なり、90条は職権による保釈を明示しているので、請求がなくても保釈を許すことができる。また、90条は89条各号の除外事由がある場合に適用を外すという限定を置いていないから、権利保釈が認められない場合であっても、個別の事情から身体拘束の必要性が低いと判断すれば保釈を許すことができる。権利保釈の除外事由は類型的な判断であるので、それに当たる事件でも事案に応じて柔軟に身体拘束を解けるよう、裁量保釈が補っているのである。考慮すべき事情は平成28年改正で明文化されたが、出題当時から、請求がない場合や除外事由がある場合でも職権で保釈を許せるという結論は同じである。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。適法な在留資格がないことは権利保釈の除外事由(89条各号)に当たらないので、保釈を許すことは違法ではない。
89条は、保釈の請求があったときは、同条1号から6号までの除外事由に当たる場合を除いて保釈を許さなければならないと定める。除外事由は、一定の重い罪の事件であること、重い罪の前科があること、常習として一定の罪を犯したこと、罪証を隠滅するおそれがあること、被害者等に害を加えるおそれがあること、氏名又は住居が分からないことであり、被告人が日本に適法に在留する資格を有しないことはどの号にも挙げられていない。したがって、在留資格がないというだけで保釈を拒むことはできず、他の除外事由に当たらなければ権利保釈として保釈を許さなければならない。除外事由に当たる場合でも、裁判所は事情を考慮して裁量で保釈を許すことができる(90条)。在留資格がないことは、退去強制の手続で国外に出てしまうおそれなど、逃亡のおそれの判断で考慮され得る事情にとどまり、保釈を許すこと自体を違法にするものではない。肢は正しい。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
- 陳述をさせるとき:通訳人に通訳をさせなければならない(175条)。判決の宣告にも通訳人を付す(最判昭和30年2月15日)
- 手続の言語:裁判所では日本語を用いる(裁判所法74条)。当事者に異議がなく裁判所が許可しても外国語では進められない
- 供述録取書:通訳を介して聴き取った供述を日本語で録取してよい
- 逮捕状の呈示:外国人でも必要(201条1項)。翻訳文の添付や通訳の同道で被疑事実を理解させる
- 保釈:在留資格がないことは権利保釈の除外事由(89条各号)に当たらず、保釈を許しても違法でない
誤り。違うのは「保釈は認められない」の部分である。裁判員裁判対象事件が89条1号に当たるのは正しいが、同条は権利保釈の除外事由にすぎず、裁量保釈(90条)は許すことができる。
裁判員裁判の対象事件は、死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件と、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である(裁判員法2条1項)。いずれも死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるから、89条1号に当たるという前段は正しい。しかし、89条は、保釈の請求があったときは同条各号の場合を除いて許さなければならないとする権利保釈の規定であり、各号に当たれば請求権としての保釈が認められないというにとどまる。90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。したがって、裁判員裁判対象事件でも裁量保釈は可能であり、保釈は認められないとする本肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 性質 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 請求があり、1号〜6号の除外事由に当たらない | 許さなければならない |
| 裁量保釈(90条) | 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益などを考慮し適当と認める | 職権で許すことができる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなった | 勾留の取消し又は保釈をしなければならない |
誤り。違うのは「保釈は認められない」の部分である。裁判員裁判対象事件が89条1号に当たるのは正しいが、同条は権利保釈の除外事由にすぎず、裁量保釈(90条)は許すことができる。
裁判員裁判の対象事件は、死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件と、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である(裁判員法2条1項)。いずれも死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるから、89条1号に当たるという前段は正しい。しかし、89条は、保釈の請求があったときは同条各号の場合を除いて許さなければならないとする権利保釈の規定であり、各号に当たれば請求権としての保釈が認められないというにとどまる。90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。したがって、裁判員裁判対象事件でも裁量保釈は可能であり、保釈は認められないとする本肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 性質 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 請求があり、1号〜6号の除外事由に当たらない | 許さなければならない |
| 裁量保釈(90条) | 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益などを考慮し適当と認める | 職権で許すことができる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなった | 勾留の取消し又は保釈をしなければならない |
誤り。違うのは「準抗告をすることができる」の部分である。第1回公判期日後の保釈請求を却下するのは受訴裁判所の決定であるから、不服申立ては準抗告ではなく抗告による(420条2項)。
準抗告は裁判官がした裁判に対する不服申立てである(429条1項)。公訴の提起後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うから(280条1項)、その時期の保釈請求の却下に対しては準抗告をすることになる。これに対し、第1回公判期日の後は、保釈に関する判断は受訴裁判所が行い、保釈請求を却下する裁判は裁判所の決定である。裁判所の決定に対する不服申立ては抗告であり、判決前の訴訟手続に関する決定には原則として抗告できないが(420条1項)、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定などには抗告をすることができる(同条2項)。したがって、第1回公判期日後の保釈請求却下に対しては、高等裁判所に抗告をすることになり、準抗告をすることはできない。不服申立ての種類は、裁判官一人の裁判か、裁判所の決定かによって分かれるのである。本肢は、準抗告ができるとしている点で誤っている。

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
| 不服の対象 | 不服申立て | 申立先 |
|---|---|---|
| 裁判官の勾留・保釈・押収・押収物の還付・鑑定留置などの裁判(429条1項) | 準抗告 | その裁判官所属の裁判所(簡裁の裁判官なら管轄地裁) |
| 逮捕状の発付など逮捕に関する裁判 | できない(最決昭57.8.27) | ― |
| 捜査機関の接見指定・押収・押収物の還付(430条) | 準抗告 | 検察庁に対応する裁判所/職務執行地の地裁・簡裁 |
| 供述録取書への署名、差し押さえるべき物でない物の写真撮影 | できない(押収に関する処分でない。最決平2.6.27) | ― |
| 第1回公判期日後に受訴裁判所がした保釈却下 | 抗告(420条2項) | 高等裁判所 |
誤り。違うのは「裁判所は保釈を許さなければならない」の部分である。逃亡のおそれは権利保釈の除外事由ではないが、勾留の理由とは別に89条1号などの除外事由に当たることはあり得るから、必ず許さなければならないとはいえない。
89条は、保釈の請求があったときは、同条各号の場合を除いて保釈を許さなければならないと定める(権利保釈)。除外事由は、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるとき(1号)、長期10年を超える拘禁刑に当たる罪の前科があるとき(2号)、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(3号)、罪証隠滅のおそれ(4号)、被害者等への加害・畏怖のおそれ(5号)、氏名又は住居が分からないとき(6号)である。逃亡のおそれは勾留の理由(60条1項3号)ではあるが、除外事由には挙がっていない。保証金で出頭を確保するのが保釈だからである。しかし、除外事由に当たるかどうかは勾留の理由とは別に判断されるから、逃亡のおそれだけを理由に勾留されている被告人でも、たとえば短期1年以上の拘禁刑に当たる罪で起訴されていれば1号に当たる。本肢の事情だけでは、権利保釈を許さなければならないとは決まらない。その場合も裁量保釈(90条)の余地はある。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。(後略)
- 対象:起訴後の被告人の勾留だけ。被疑者勾留には保釈が無い(207条1項ただし書)
- 権利保釈(89条):請求があれば、6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由に無いが、1号(短期1年以上の罪)などには当たり得る
- 意見聴取(92条1項):許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く
- 保証金(93条1項):保釈を許すときは必ず保証金額を定める。条件の付加(93条3項)は保証金に代わらない
- 実刑の宣告(343条):拘禁刑以上の刑の宣告で保釈は失効し、新たな保釈がなければ確定前でも収容される
誤り。違うのは「準抗告をすることができる」の部分である。第1回公判期日後の保釈請求を却下するのは受訴裁判所の決定であるから、不服申立ては準抗告ではなく抗告による(420条2項)。
準抗告は裁判官がした裁判に対する不服申立てである(429条1項)。公訴の提起後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うから(280条1項)、その時期の保釈請求の却下に対しては準抗告をすることになる。これに対し、第1回公判期日の後は、保釈に関する判断は受訴裁判所が行い、保釈請求を却下する裁判は裁判所の決定である。裁判所の決定に対する不服申立ては抗告であり、判決前の訴訟手続に関する決定には原則として抗告できないが(420条1項)、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定などには抗告をすることができる(同条2項)。したがって、第1回公判期日後の保釈請求却下に対しては、高等裁判所に抗告をすることになり、準抗告をすることはできない。不服申立ての種類は、裁判官一人の裁判か、裁判所の決定かによって分かれるのである。本肢は、準抗告ができるとしている点で誤っている。

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
| 不服の対象 | 不服申立て | 申立先 |
|---|---|---|
| 裁判官の勾留・保釈・押収・押収物の還付・鑑定留置などの裁判(429条1項) | 準抗告 | その裁判官所属の裁判所(簡裁の裁判官なら管轄地裁) |
| 逮捕状の発付など逮捕に関する裁判 | できない(最決昭57.8.27) | ― |
| 捜査機関の接見指定・押収・押収物の還付(430条) | 準抗告 | 検察庁に対応する裁判所/職務執行地の地裁・簡裁 |
| 供述録取書への署名、差し押さえるべき物でない物の写真撮影 | できない(押収に関する処分でない。最決平2.6.27) | ― |
| 第1回公判期日後に受訴裁判所がした保釈却下 | 抗告(420条2項) | 高等裁判所 |
誤り。違うのは「保釈を許すことができない」の部分である。罪証隠滅のおそれは権利保釈の除外事由(89条4号)にとどまり、その場合でも裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができる(90条)。
89条は、保釈の請求があったときは、同条各号の場合を除いては保釈を許さなければならないと定め、同条4号は除外事由として被告人が罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるときを挙げる。したがって罪証隠滅のおそれがあれば、権利保釈として保釈を許さなければならない義務はなくなる。しかし90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。権利保釈の除外事由に当たっても、おそれの程度と拘束による不利益を比べて保釈を許す余地を残したのである。本肢は、罪証隠滅のおそれがあれば保釈を許すことができないとする点で誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
誤り。違うのは「保釈を許さなければならない」の部分である。懲役(現在は拘禁刑)以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈を定めた89条は適用されない(344条1項)。
344条1項は、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は、60条2項ただし書及び89条の規定は適用しないと定める。出題当時は「禁錮以上の刑」と定められており、懲役に処する実刑判決はこれに当たっていた。有罪の実刑判決が宣告されれば無罪の推定が事実上弱まり、刑の執行を免れようとして逃亡するおそれも高まるから、判決前と同じように請求があれば原則として許すという権利保釈を維持する理由がなくなる。そこで実刑判決の宣告後は、保釈は90条の裁量保釈によってのみ許される。本肢の被告人は窃盗罪により懲役に処する実刑判決の宣告を受けているから、罪証隠滅のおそれに相当な理由がなくても、裁判所は保釈を許さなければならないわけではない。本肢はその点で誤っている。現在は344条2項により、実刑判決の宣告後の裁量保釈は、身体拘束による不利益の程度が著しく高い場合などに限られている。

拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項ただし書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
誤り。違うのは「被告人の前科を考慮することは許されない」の部分である。前科は権利保釈の除外事由として条文上考慮が予定され(89条2号)、裁量保釈の判断でも、勾留状に記載された事実以外の事実を一資料として考慮することは禁じられない(最決昭和44年7月14日)。
89条は、保釈の請求があったときは除外事由がない限り保釈を許さなければならないと定め、その2号で、被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるときを挙げている。前科は、権利保釈の許否を決める際に法律自体が考慮を求める事情である。また、90条の裁量保釈は、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、身体拘束による不利益の程度その他の事情を総合して判断するものである。最決昭和44年7月14日は、甲・乙・丙の3つの公訴事実で起訴され、甲事実だけで勾留状が発せられている場合に、裁量保釈が適当かを審査するには、甲事実の内容・性質や被告人の経歴、行状、性格等の事情も考察する必要があり、その一資料として乙・丙事実を考慮することを禁ずべき理由はないとした。したがって、前科を考慮することは許され、本肢は誤っている。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。…二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 同種前科で詐欺の故意を認定 | 最決昭和41年11月22日 | 客観的要素が他の証拠で認められれば、主観的要素の認定に用いてよい |
| 同種前科で犯人性を立証 | 最判平成24年9月7日 | 顕著な特徴があり起訴事実と相当程度類似する場合に限る |
| 累犯加重の理由となる前科の認定 | 最大決昭和33年2月26日 | 証拠により、証拠書類は305条の取調べを経て認定する |
| 裁量保釈の判断で勾留状記載外の事実を考慮 | 最決昭和44年7月14日 | 一資料として考慮してよい |
| 起訴状への前科の記載 | 最大判昭和27年3月5日 | 原則として許されないが、構成要件や犯罪の手段方法となっている前科は記載できる |
正しい。Ⅰの考え方では、a事件の勾留の効力は包括一罪の関係にあるb事件にも当然に及ぶから、b事件に89条4号の事由があれば権利保釈は認められない。
権利保釈の除外事由(89条各号)は、被告人が勾留されている事件について判断するのが原則である。そこで、勾留理由とされていない余罪の事情を考慮できるかは、その余罪に勾留の効力が及んでいるかによって決まる。Ⅰの考え方は、一罪の一部を構成する可罰的行為についての勾留の効力は、起訴の有無にかかわらず当然に他の部分に及ぶとする。事例のa事件とb事件は包括一罪の関係にあるから、Ⅰに立てば、a事件の勾留の効力は、まだ起訴されていないb事件にも当然に及ぶ。b事件は表面上は勾留理由とされていないが、潜在的には勾留の根拠となっているのであり、権利保釈の判断でもb事件の事情を考慮することができる。したがって、a事件について罪証隠滅の相当な理由がなくても、b事件についてそれがあれば、89条4号の除外事由に当たり、権利保釈は認められない。本肢は正しい。

被告人が罪証を隠滅すると(中略)相当な理由があるとき。
| 考慮する余罪の事情 | 見解Ⅰ(一罪の他の部分に及ぶ) | 見解Ⅱ(及ばない) |
|---|---|---|
| b事件(a事件と包括一罪)の罪証隠滅 | 考慮できる。権利保釈は認められない | 考慮できない。これを理由に権利保釈は否定されない |
| c事件(a事件と併合罪)の罪証隠滅 | 考慮できない(勾留の効力が及ばない) | 考慮できない |
| 常習性(89条3号)の判断資料としてのb事件・c事件 | 考慮できる | 考慮できる(勾留の効力の範囲とは無関係) |
正しい。Ⅱの考え方では、包括一罪の関係にあってもa事件の勾留の効力はb事件に及ばないから、a事件に89条4号の事由がなければ、b事件にそれがあっても、この点を理由に権利保釈は否定されない。
Ⅱの考え方は、一罪の一部を構成する可罰的行為についての勾留の効力は、起訴の有無にかかわらず他の部分に及ばないとする。勾留は、勾留状に記載された被疑事実・公訴事実について、その事実ごとに勾留の理由と必要性を審査して認められるものであり、審査を経ていない部分にまで効力を広げるべきではないという考え方である。これに立てば、事例のa事件とb事件が包括一罪の関係にあっても、a事件の勾留の効力はb事件には及ばず、b事件は表面的にも潜在的にも勾留の根拠となっていない。権利保釈の除外事由は勾留の効力が及ぶ事件について判断するから、勾留の根拠となっていないb事件の事情を考慮することはできない。したがって、a事件について罪証隠滅の相当な理由がなければ、b事件についてそれがあっても、89条4号を理由に権利保釈が否定されることはない。本肢は正しい。

被告人が罪証を隠滅すると(中略)相当な理由があるとき。
| 考慮する余罪の事情 | 見解Ⅰ(一罪の他の部分に及ぶ) | 見解Ⅱ(及ばない) |
|---|---|---|
| b事件(a事件と包括一罪)の罪証隠滅 | 考慮できる。権利保釈は認められない | 考慮できない。これを理由に権利保釈は否定されない |
| c事件(a事件と併合罪)の罪証隠滅 | 考慮できない(勾留の効力が及ばない) | 考慮できない |
| 常習性(89条3号)の判断資料としてのb事件・c事件 | 考慮できる | 考慮できる(勾留の効力の範囲とは無関係) |
誤り。違うのは「同条による保釈を許可することはできない」の部分である。逃亡のおそれは89条の権利保釈の除外事由に挙げられていないから、それだけでは権利保釈を拒むことはできない。
89条は、保釈の請求があったときは、1号から6号までの場合を除いては、これを許さなければならないと定める。除外事由は、重い罪(1号)、重い罪の前科(2号)、常習(3号)、罪証隠滅の相当な理由(4号)、被害者等への加害・畏怖の相当な理由(5号)、氏名又は住居が分からないこと(6号)であり、逃亡の相当な理由は挙げられていない。勾留の理由(60条1項)には逃亡の相当な理由が含まれているのと対照的である。保釈は、保証金の没取という経済的な負担を課すことで被告人の出頭を確保する制度であり、逃亡のおそれへの対応はまさに保証金が担う役割であるから、逃亡のおそれを理由に保釈を拒むことは制度の趣旨と合わない。そのため、傷害罪で勾留中の甲に逃亡のおそれがあっても、他の除外事由がなければ、裁判所は権利保釈を許さなければならない。本肢は誤っている。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。(後略)
| 事由 | 権利保釈の除外事由 | 勾留の理由 |
|---|---|---|
| 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪 | 1号 | ― |
| 死刑・無期・長期10年超の拘禁刑に当たる罪の有罪宣告の前科 | 2号 | ― |
| 常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 3号 | ― |
| 罪証隠滅の相当な理由 | 4号 | 2号 |
| 被害者等への加害・畏怖させる行為の相当な理由 | 5号 | ― |
| 氏名又は住居が分からない(住居不定を含む) | 6号 | 1号(住居不定) |
| 逃亡の相当な理由 | なし | 3号 |
正しい。89条5号は、被告人が被害者等を畏怖させる行為をすることについて相当な理由があるときを除外事由としているから、被害者乙を畏怖させる行為のおそれがある甲には権利保釈は許されない。
89条5号は、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすることについて相当な理由があるときを、権利保釈の除外事由とする。保釈によって身体拘束が解かれた被告人が、被害者や証人に対して報復や威迫をすれば、被害者等の安全が脅かされるだけでなく、証人が真実を述べられなくなり、公正な審理が害される。そこで、このような加害や畏怖させる行為のおそれがある場合には、権利保釈を認めないこととした。事例の甲は被害者乙に対する傷害罪で勾留されており、乙を畏怖させる行為をすることについて相当な理由があるのであるから、5号に当たる。したがって、裁判所は89条による保釈を許可することはできない。本肢は正しい。

被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると(中略)相当な理由があるとき。
| 事由 | 権利保釈の除外事由 | 勾留の理由 |
|---|---|---|
| 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪 | 1号 | ― |
| 死刑・無期・長期10年超の拘禁刑に当たる罪の有罪宣告の前科 | 2号 | ― |
| 常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 3号 | ― |
| 罪証隠滅の相当な理由 | 4号 | 2号 |
| 被害者等への加害・畏怖させる行為の相当な理由 | 5号 | ― |
| 氏名又は住居が分からない(住居不定を含む) | 6号 | 1号(住居不定) |
| 逃亡の相当な理由 | なし | 3号 |
正しい。89条6号は被告人の氏名又は住居が分からないときを除外事由としており、定まった住居を有しない場合もこれに当たるから、権利保釈は許されない。
89条6号は、被告人の氏名又は住居が分からないときを権利保釈の除外事由とする。保釈の際には住居の制限などの条件を付することができ(93条3項)、被告人を召喚して出頭させるためにも、被告人の所在が明らかであることが前提となる。定まった住居を有しない被告人は、住居が分からない場合と同じく、召喚状の送達や所在の確認ができず、保釈後の出頭を確保する手掛かりがない。そのため、住居不定も6号の住居が分からないときに含まれると解されている。勾留の理由でも住居不定は60条1項1号に挙げられており、身体拘束を続ける理由として共通している。事例の甲は傷害罪で勾留中であり、1号から5号には当たらないとしても、定まった住居を有しないのであれば6号に当たり、裁判所は89条による保釈を許可することはできない。本肢は正しい。

被告人の氏名又は住居が分からないとき。
| 事由 | 権利保釈の除外事由 | 勾留の理由 |
|---|---|---|
| 死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪 | 1号 | ― |
| 死刑・無期・長期10年超の拘禁刑に当たる罪の有罪宣告の前科 | 2号 | ― |
| 常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 3号 | ― |
| 罪証隠滅の相当な理由 | 4号 | 2号 |
| 被害者等への加害・畏怖させる行為の相当な理由 | 5号 | ― |
| 氏名又は住居が分からない(住居不定を含む) | 6号 | 1号(住居不定) |
| 逃亡の相当な理由 | なし | 3号 |
正しい。88条以下の保釈は被告人の勾留についての制度であり、207条1項ただし書が保釈を準用から除いているから、被疑者の勾留には保釈がない。
88条1項は、勾留されている被告人又はその弁護人などは保釈の請求をすることができると定め、89条以下が権利保釈・裁量保釈などを定める。他方、207条1項は、被疑者の勾留について、勾留の請求を受けた裁判官が裁判所又は裁判長と同一の権限を有すると定めつつ、ただし書で保釈についてはこの限りでないとし、保釈の規定を被疑者の勾留に準用していない。被疑者の勾留は、起訴するかどうかを決めるための捜査の期間として10日、延長しても通算20日に限られており(208条)、その短い期間に保証金による身体拘束の解放を認める必要は乏しいと考えられているからである。起訴前の段階で身体拘束を解く手段としては、勾留の取消し(87条)や勾留の執行停止(95条)が被疑者の勾留にも準用される。本肢は正しい。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 事項 | 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 |
|---|---|---|
| 判断者 | 勾留請求を受けた裁判官(207条1項) | 受訴裁判所。第1回公判期日までは裁判官(280条1項) |
| 期間 | 請求の日から10日。延長は通じて10日まで(208条) | 公訴提起の日から2か月。1か月ごとに更新(60条2項) |
| 勾留理由開示 | できる(207条1項で82条を準用) | できる(82条) |
| 保釈 | ない(207条1項ただし書) | ある(88条以下) |
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
この条文の過去問 11問
誤り。「必要的保釈(権利保釈)」の可否は法定刑の軽重により異なる。89条1号・3号は、死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪や、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を除外事由にしている。
権利保釈(必要的保釈)について89条は、保釈の請求があったときは次の場合を除いてこれを許さなければならないと定め、除外事由を限定して列挙する。そのうち1号は被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき、3号は被告人が常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるときであり、いずれも起訴された罪の法定刑の軽重そのものを基準にして権利保釈の可否を分けている。したがって権利保釈の可否は法定刑の軽重により異なる。もっとも、89条各号の除外事由に当たる場合でも、裁判所は適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条。裁量保釈)、裁量保釈には法定刑による限定がない。また、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は89条が適用されず(344条1項)、権利保釈は認められなくなる。令和5年改正で保釈中の逃亡を防ぐ監督者や位置測定端末の制度が整えられたが、89条が法定刑を基準に権利保釈を制限する構造は維持されている。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。(中略)三 被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
| 法定刑で変わる | 法定刑で変わらない |
|---|---|
| 緊急逮捕(210条1項):死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限る | 勾留の執行停止(95条):裁判所が適当と認めるとき。法定刑を問わない |
| 権利保釈の除外(89条1号・3号):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 第1回公判期日前の証人尋問請求(226条・227条):出頭・供述拒否や供述変遷のおそれと不可欠性が要件 |
| 即決裁判手続(350条の16第1項ただし書)・簡易公判手続(291条の2ただし書):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は不可 | 起訴猶予(248条):検察官の裁量。法定刑は考慮事情の一つ |
| 必要的弁護(289条1項):死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件 | 被疑者国選弁護(37条の2):現行法では勾留状が発せられた全事件(出題当時は長期3年を超える事件に限られていた) |
| 公訴時効(250条)・軽微事件の逮捕・勾留(199条1項ただし書・217条・60条3項)・出頭義務(284条・285条) | 公判前整理手続に付す決定(316条の2):必要があると認めるとき |
誤り。違うのは「勾留中の被疑者を保釈することができる」の部分である。保釈は勾留されている被告人の制度であり、被疑者勾留には認められていない(207条1項ただし書)。
保釈は、勾留されている被告人について、保証金の納付などを条件に勾留の執行を解く制度であり、被疑者の勾留には認められていない。207条1項本文は、勾留の請求を受けた裁判官がその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有すると定めつつ、ただし書で保釈についてはこの限りでないとして、88条以下の保釈の規定が被疑者に及ばないことを明示している。肢が挙げる勾留の継続により受ける健康上又は社会生活上の不利益は、90条の裁量保釈の考慮事情であるが、90条は被告人に関する規定であって被疑者には適用されない。被疑者の段階では、捜査の初期に罪証隠滅や逃亡の危険が類型的に高く、勾留期間も原則10日・延長を含め最長20日(208条)と短いことから、保釈の制度は用意されていない。被疑者が身体拘束からの解放を求める手段は、勾留の裁判に対する準抗告(429条1項2号)、勾留の理由又は必要が消滅した場合の勾留の取消し(207条1項本文・87条)、勾留の執行停止(同・95条)である。鑑定留置中の被告人にも保釈の規定は準用されない(167条5項ただし書)。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
誤り。違うのは「保釈は一切許されない」の部分である。罪証隠滅のおそれは権利保釈の除外事由(89条4号)にすぎず、裁量保釈(90条)は許される。
被告人が罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるときは、89条4号により権利保釈(必要的保釈)の除外事由とされるにとどまり、保釈が一切許されなくなるわけではない。同条は、保釈の請求があったときは各号の場合を除いてこれを許さなければならないという形で裁判所の許可義務を定めた規定であり、除外事由に当たれば許可義務が外れるにすぎない。89条各号に当たる場合でも、裁判所は裁量保釈を許すことができる(90条)。令和5年改正後の90条は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができると定め、考慮事情を明文にしている。さらに勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で保釈を許さなければならない義務的保釈(91条1項)もある。したがって罪証隠滅のおそれがあっても保釈の余地は残っており、肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
- 権利保釈(89条)は、請求があれば6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるときは除外事由(4号)である
- 裁量保釈(90条)は、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束の継続による不利益の程度などを考慮して、職権で許すことができる。除外事由に当たっても許せる
- 義務的保釈(91条)は、勾留による拘禁が不当に長くなったときに、請求又は職権で勾留の取消し又は保釈を許さなければならない
- 拘禁刑以上の実刑判決の宣告後は89条が適用されず、90条の保釈も限られた場合だけになる(344条)
正しい。裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条、裁量保釈)、請求がない場合にも、89条各号の除外事由がある場合にも保釈を許せる。
90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。89条が保釈の請求があったときを前提にしているのと異なり、90条は職権による保釈を明示しているので、請求がなくても保釈を許すことができる。また、90条は89条各号の除外事由がある場合に適用を外すという限定を置いていないから、権利保釈が認められない場合であっても、個別の事情から身体拘束の必要性が低いと判断すれば保釈を許すことができる。権利保釈の除外事由は類型的な判断であるので、それに当たる事件でも事案に応じて柔軟に身体拘束を解けるよう、裁量保釈が補っているのである。考慮すべき事情は平成28年改正で明文化されたが、出題当時から、請求がない場合や除外事由がある場合でも職権で保釈を許せるという結論は同じである。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができ(90条、裁量保釈)、請求がない場合にも、89条各号の除外事由がある場合にも保釈を許せる。
90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。89条が保釈の請求があったときを前提にしているのと異なり、90条は職権による保釈を明示しているので、請求がなくても保釈を許すことができる。また、90条は89条各号の除外事由がある場合に適用を外すという限定を置いていないから、権利保釈が認められない場合であっても、個別の事情から身体拘束の必要性が低いと判断すれば保釈を許すことができる。権利保釈の除外事由は類型的な判断であるので、それに当たる事件でも事案に応じて柔軟に身体拘束を解けるよう、裁量保釈が補っているのである。考慮すべき事情は平成28年改正で明文化されたが、出題当時から、請求がない場合や除外事由がある場合でも職権で保釈を許せるという結論は同じである。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 請求の要否 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 89条1号〜6号の除外事由(重い罪、重い前科、常習、罪証隠滅のおそれ、被害者等への加害・畏怖のおそれ、氏名・住居不明)に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由でない | 請求が必要 |
| 裁量保釈(90条) | 除外事由があっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき | 職権でできる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなったとき(勾留の取消しか保釈かを選ぶ) | 請求又は職権 |
正しい。適法な在留資格がないことは権利保釈の除外事由(89条各号)に当たらないので、保釈を許すことは違法ではない。
89条は、保釈の請求があったときは、同条1号から6号までの除外事由に当たる場合を除いて保釈を許さなければならないと定める。除外事由は、一定の重い罪の事件であること、重い罪の前科があること、常習として一定の罪を犯したこと、罪証を隠滅するおそれがあること、被害者等に害を加えるおそれがあること、氏名又は住居が分からないことであり、被告人が日本に適法に在留する資格を有しないことはどの号にも挙げられていない。したがって、在留資格がないというだけで保釈を拒むことはできず、他の除外事由に当たらなければ権利保釈として保釈を許さなければならない。除外事由に当たる場合でも、裁判所は事情を考慮して裁量で保釈を許すことができる(90条)。在留資格がないことは、退去強制の手続で国外に出てしまうおそれなど、逃亡のおそれの判断で考慮され得る事情にとどまり、保釈を許すこと自体を違法にするものではない。肢は正しい。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
- 陳述をさせるとき:通訳人に通訳をさせなければならない(175条)。判決の宣告にも通訳人を付す(最判昭和30年2月15日)
- 手続の言語:裁判所では日本語を用いる(裁判所法74条)。当事者に異議がなく裁判所が許可しても外国語では進められない
- 供述録取書:通訳を介して聴き取った供述を日本語で録取してよい
- 逮捕状の呈示:外国人でも必要(201条1項)。翻訳文の添付や通訳の同道で被疑事実を理解させる
- 保釈:在留資格がないことは権利保釈の除外事由(89条各号)に当たらず、保釈を許しても違法でない
誤り。違うのは「保釈は認められない」の部分である。裁判員裁判対象事件が89条1号に当たるのは正しいが、同条は権利保釈の除外事由にすぎず、裁量保釈(90条)は許すことができる。
裁判員裁判の対象事件は、死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件と、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である(裁判員法2条1項)。いずれも死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるから、89条1号に当たるという前段は正しい。しかし、89条は、保釈の請求があったときは同条各号の場合を除いて許さなければならないとする権利保釈の規定であり、各号に当たれば請求権としての保釈が認められないというにとどまる。90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。したがって、裁判員裁判対象事件でも裁量保釈は可能であり、保釈は認められないとする本肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 性質 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 請求があり、1号〜6号の除外事由に当たらない | 許さなければならない |
| 裁量保釈(90条) | 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益などを考慮し適当と認める | 職権で許すことができる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなった | 勾留の取消し又は保釈をしなければならない |
誤り。違うのは「職権で保釈を許すことができる」の部分である。鑑定留置には勾留に関する規定が準用されるが、保釈に関する規定は準用されない(167条5項ただし書)。
167条5項は、勾留に関する規定は、特別の定めのある場合を除いて鑑定留置に準用するが、ただし保釈に関する規定はこの限りでないと定める。鑑定留置は、被告人を病院などに留置して身体の自由を奪う点で勾留と共通するので、勾留の取消しや勾留理由の開示、接見交通などの規定が準用される。しかし、鑑定留置の目的は、心神や身体の状態を継続的に観察して鑑定をすることにあり、逃亡や罪証隠滅の防止を目的とする勾留とは性質が異なる。保釈によって被告人を解放すれば、鑑定に必要な観察ができなくなり、留置の目的そのものが失われる。そこで、保釈の規定だけは準用から外したのである。したがって、鑑定留置中の被告人については、請求による保釈も職権による保釈(90条)も許されない。鑑定の必要がなくなれば、留置を取り消すことで解放されることになる。肢は職権保釈ができるとしている点で167条5項ただし書に反する。

勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。但し、保釈に関する規定は、この限りでない。
- 鑑定留置の主体:被告人は裁判所(167条)。被疑者は捜査機関の請求で裁判官(224条)
- 請求の要否:嘱託鑑定で留置を必要とするときに請求する。嘱託すれば必ず請求するわけではない
- 勾留との関係:勾留の規定を準用するが、保釈の規定は準用しない(167条5項)。未決勾留日数の算入では勾留とみなす(同条6項)
- 身体検査・血液採取:鑑定留置状では強制できない。鑑定受託者は裁判官の許可(鑑定処分許可状)を受けて168条1項の処分をする(225条)。拒まれても直接強制はできない
- 鑑定書:伝聞証拠。検察官と被告人の双方の同意(326条1項)がなければ、作成者の真正作成の供述が要る(321条4項)
誤り。違うのは「保釈は認められない」の部分である。裁判員裁判対象事件が89条1号に当たるのは正しいが、同条は権利保釈の除外事由にすぎず、裁量保釈(90条)は許すことができる。
裁判員裁判の対象事件は、死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件と、短期1年以上の拘禁刑に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である(裁判員法2条1項)。いずれも死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪であるから、89条1号に当たるという前段は正しい。しかし、89条は、保釈の請求があったときは同条各号の場合を除いて許さなければならないとする権利保釈の規定であり、各号に当たれば請求権としての保釈が認められないというにとどまる。90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。したがって、裁判員裁判対象事件でも裁量保釈は可能であり、保釈は認められないとする本肢は誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
| 要件 | 性質 | |
|---|---|---|
| 権利保釈(89条) | 請求があり、1号〜6号の除外事由に当たらない | 許さなければならない |
| 裁量保釈(90条) | 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度、拘束の継続による不利益などを考慮し適当と認める | 職権で許すことができる |
| 義務的保釈(91条1項) | 勾留による拘禁が不当に長くなった | 勾留の取消し又は保釈をしなければならない |
誤り。違うのは「保釈を許すことができない」の部分である。罪証隠滅のおそれは権利保釈の除外事由(89条4号)にとどまり、その場合でも裁判所は、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができる(90条)。
89条は、保釈の請求があったときは、同条各号の場合を除いては保釈を許さなければならないと定め、同条4号は除外事由として被告人が罪証を隠滅するおそれについて相当な理由があるときを挙げる。したがって罪証隠滅のおそれがあれば、権利保釈として保釈を許さなければならない義務はなくなる。しかし90条は、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると定める。権利保釈の除外事由に当たっても、おそれの程度と拘束による不利益を比べて保釈を許す余地を残したのである。本肢は、罪証隠滅のおそれがあれば保釈を許すことができないとする点で誤っている。

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
誤り。違うのは「被告人の前科を考慮することは許されない」の部分である。前科は権利保釈の除外事由として条文上考慮が予定され(89条2号)、裁量保釈の判断でも、勾留状に記載された事実以外の事実を一資料として考慮することは禁じられない(最決昭和44年7月14日)。
89条は、保釈の請求があったときは除外事由がない限り保釈を許さなければならないと定め、その2号で、被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるときを挙げている。前科は、権利保釈の許否を決める際に法律自体が考慮を求める事情である。また、90条の裁量保釈は、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、身体拘束による不利益の程度その他の事情を総合して判断するものである。最決昭和44年7月14日は、甲・乙・丙の3つの公訴事実で起訴され、甲事実だけで勾留状が発せられている場合に、裁量保釈が適当かを審査するには、甲事実の内容・性質や被告人の経歴、行状、性格等の事情も考察する必要があり、その一資料として乙・丙事実を考慮することを禁ずべき理由はないとした。したがって、前科を考慮することは許され、本肢は誤っている。

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。…二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 同種前科で詐欺の故意を認定 | 最決昭和41年11月22日 | 客観的要素が他の証拠で認められれば、主観的要素の認定に用いてよい |
| 同種前科で犯人性を立証 | 最判平成24年9月7日 | 顕著な特徴があり起訴事実と相当程度類似する場合に限る |
| 累犯加重の理由となる前科の認定 | 最大決昭和33年2月26日 | 証拠により、証拠書類は305条の取調べを経て認定する |
| 裁量保釈の判断で勾留状記載外の事実を考慮 | 最決昭和44年7月14日 | 一資料として考慮してよい |
| 起訴状への前科の記載 | 最大判昭和27年3月5日 | 原則として許されないが、構成要件や犯罪の手段方法となっている前科は記載できる |
1勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
2第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
この条文の過去問 3問
誤り。違うのは「勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈の請求をすることができる」の部分である。保釈は勾留されている被告人のための制度であり(88条1項)、被疑者の勾留には保釈の規定が準用されない(207条1項ただし書)。
保釈は、保証金の納付等を条件に勾留の執行を解く制度であり、その請求権者は勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹である(88条1項)。権利保釈・裁量保釈・義務的保釈の規定(89条〜91条)もいずれも被告人を対象にする。被疑者の勾留については、勾留の請求を受けた裁判官はその処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限をもつとされる一方、保釈についてはこの限りでないと明文で除かれている(207条1項ただし書)。つまり起訴前の被疑者勾留には保釈制度は準用されておらず、被疑者の段階で保釈を請求することはできない。被疑者の身体拘束を解く手段は、勾留の理由・必要が消えた場合の勾留の取消し(87条1項・207条1項本文)、勾留の執行停止(95条1項・207条1項本文)、勾留理由開示の請求(82条以下・207条1項本文)などによるほかない。したがって、勾留されている被疑者の弁護人が裁判官に保釈を請求することはできず、肢は誤りである。

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
| 被疑者の勾留 | 被告人の勾留 | |
|---|---|---|
| 勾留の取消し(87条) | ○ | ○ |
| 執行停止(95条) | ○ | ○ |
| 勾留理由開示(82条) | ○ | ○ |
| 接見等禁止(81条) | ○ | ○ |
| 保釈(88条以下) | ×(207条1項ただし書) | ○ |
| 検察官の勾留請求(204条〜206条) | ○ | ×(職権) |
誤り。違うのは「準抗告をすることができる」の部分である。第1回公判期日後の保釈請求を却下するのは受訴裁判所の決定であるから、不服申立ては準抗告ではなく抗告による(420条2項)。
準抗告は裁判官がした裁判に対する不服申立てである(429条1項)。公訴の提起後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うから(280条1項)、その時期の保釈請求の却下に対しては準抗告をすることになる。これに対し、第1回公判期日の後は、保釈に関する判断は受訴裁判所が行い、保釈請求を却下する裁判は裁判所の決定である。裁判所の決定に対する不服申立ては抗告であり、判決前の訴訟手続に関する決定には原則として抗告できないが(420条1項)、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定などには抗告をすることができる(同条2項)。したがって、第1回公判期日後の保釈請求却下に対しては、高等裁判所に抗告をすることになり、準抗告をすることはできない。不服申立ての種類は、裁判官一人の裁判か、裁判所の決定かによって分かれるのである。本肢は、準抗告ができるとしている点で誤っている。

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
| 不服の対象 | 不服申立て | 申立先 |
|---|---|---|
| 裁判官の勾留・保釈・押収・押収物の還付・鑑定留置などの裁判(429条1項) | 準抗告 | その裁判官所属の裁判所(簡裁の裁判官なら管轄地裁) |
| 逮捕状の発付など逮捕に関する裁判 | できない(最決昭57.8.27) | ― |
| 捜査機関の接見指定・押収・押収物の還付(430条) | 準抗告 | 検察庁に対応する裁判所/職務執行地の地裁・簡裁 |
| 供述録取書への署名、差し押さえるべき物でない物の写真撮影 | できない(押収に関する処分でない。最決平2.6.27) | ― |
| 第1回公判期日後に受訴裁判所がした保釈却下 | 抗告(420条2項) | 高等裁判所 |
誤り。違うのは「準抗告をすることができる」の部分である。第1回公判期日後の保釈請求を却下するのは受訴裁判所の決定であるから、不服申立ては準抗告ではなく抗告による(420条2項)。
準抗告は裁判官がした裁判に対する不服申立てである(429条1項)。公訴の提起後第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うから(280条1項)、その時期の保釈請求の却下に対しては準抗告をすることになる。これに対し、第1回公判期日の後は、保釈に関する判断は受訴裁判所が行い、保釈請求を却下する裁判は裁判所の決定である。裁判所の決定に対する不服申立ては抗告であり、判決前の訴訟手続に関する決定には原則として抗告できないが(420条1項)、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定などには抗告をすることができる(同条2項)。したがって、第1回公判期日後の保釈請求却下に対しては、高等裁判所に抗告をすることになり、準抗告をすることはできない。不服申立ての種類は、裁判官一人の裁判か、裁判所の決定かによって分かれるのである。本肢は、準抗告ができるとしている点で誤っている。

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
| 不服の対象 | 不服申立て | 申立先 |
|---|---|---|
| 裁判官の勾留・保釈・押収・押収物の還付・鑑定留置などの裁判(429条1項) | 準抗告 | その裁判官所属の裁判所(簡裁の裁判官なら管轄地裁) |
| 逮捕状の発付など逮捕に関する裁判 | できない(最決昭57.8.27) | ― |
| 捜査機関の接見指定・押収・押収物の還付(430条) | 準抗告 | 検察庁に対応する裁判所/職務執行地の地裁・簡裁 |
| 供述録取書への署名、差し押さえるべき物でない物の写真撮影 | できない(押収に関する処分でない。最決平2.6.27) | ― |
| 第1回公判期日後に受訴裁判所がした保釈却下 | 抗告(420条2項) | 高等裁判所 |
1裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
2検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項と同様である。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
この条文の過去問 3問
誤り。違うのは「保釈の請求を却下するときには,検察官の意見を聴かなくてもよい」の部分である。保釈を許す決定だけでなく、請求を却下する決定をするときも検察官の意見を聴かなければならない(92条1項)。
92条1項は、裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならないと定める。意見を聴く義務は許可と却下の双方にかかっている。逃亡や罪証隠滅のおそれ、被害者や証人への働きかけの危険といった事情は、捜査と公判を担当する検察官が最もよく把握しているから、許否のどちらの判断にもその資料を裁判所に提供させる趣旨である。もっとも裁判所は検察官の意見に拘束されず、反対の意見が出ても保釈を許すことができる。肢は却下の場合には意見を聴かなくてよいとする点で誤っている。例外が置かれているのは勾留の取消しであり、92条2項は、検察官の請求による場合を除いて勾留を取り消す決定をするときも検察官の意見を聴くとしつつ、急速を要する場合を除いている。保釈の92条1項にはこのようなただし書はない。

裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
| 保釈(88条以下) | 勾留の取消し(87条) | 勾留の執行停止(95条) | |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 請求による(被告人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)。裁量保釈は職権でもできる | 請求(左の者に加えて検察官)又は職権 | 職権のみ。申立ては職権の発動を促すだけで、裁判の義務はない(最判昭24.2.17) |
| 要件と効果 | 除外事由がなければ許さなければならない(89条)。あっても裁量で許せる(90条) | 理由又は必要がなくなれば取り消さなければならない | 適当と認めるときにできる |
| 検察官の意見 | 許す決定も却下する決定も聴く(92条1項) | 検察官の請求による場合を除き聴く。急速を要するときは不要(92条2項) | 刑訴規則で聴く。急速を要するときは不要 |
| 保証金 | 必ず定め、納付後に釈放(93条・94条) | — | 要らない |
| 取消し | 検察官の請求又は職権で取り消すことができる(96条1項) | — | 保釈と同じ(96条1項) |
正しい。92条1項は、保釈を許す決定だけでなく保釈の請求を却下する決定をするときも、検察官の意見を聴かなければならないと定める。
92条1項は、裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならないと定めており、許す場合と却下する場合のどちらでも検察官の意見を聴くことが必要である。保釈の許否は、被告人を身体拘束から解放する利益と、公判への出頭の確保や罪証隠滅の防止という要請とを調整する判断であり、証拠関係や被告人の身上、余罪の状況を最もよく知る訴追側の意見を判断の資料にする必要があるからである。却下する場合でも、検察官が保釈に異議を述べないこともあり得るから、意見を聴く手続を省いてよい理由はない。同条2項は、検察官の請求によらずに勾留を取り消す決定をするときも検察官の意見を聴くべきものとするが、急速を要する場合の例外を置いており、保釈の場合にはその例外がない。裁判所は検察官の意見に拘束されるわけではない。

裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
- 対象:起訴後の被告人の勾留だけ。被疑者勾留には保釈が無い(207条1項ただし書)
- 権利保釈(89条):請求があれば、6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由に無いが、1号(短期1年以上の罪)などには当たり得る
- 意見聴取(92条1項):許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く
- 保証金(93条1項):保釈を許すときは必ず保証金額を定める。条件の付加(93条3項)は保証金に代わらない
- 実刑の宣告(343条):拘禁刑以上の刑の宣告で保釈は失効し、新たな保釈がなければ確定前でも収容される
正しい。92条1項は、裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならないと定めている。
92条1項は、保釈を許す決定と保釈の請求を却下する決定のいずれをする場合にも、裁判所は検察官の意見を聴かなければならないと定める。保釈は、勾留されている被告人を保証金の納付を条件に釈放する制度であり、その許否は、逃亡や罪証隠滅の防止という公益と、身体拘束からの解放という被告人の利益との調整にかかわる。そこで法は、公益の代表者である検察官に、保釈を許すべきでない事情や保証金額・条件についての意見を述べる機会を与え、裁判所の判断に反映させようとした。意見を聴くことは手続上の義務であるが、裁判所は検察官の意見に拘束されない。却下する場合にも意見を聴くのは、許否のいずれの判断にも検察官の意見を資料とするためである。したがって本肢は正しい。同条2項は、検察官の請求によらずに勾留を取り消す決定をするときも、急速を要する場合を除き、同様に検察官の意見を聴くと定めている。

裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
1保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
2保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
3保釈を許す場合には、被告人の住居を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
4裁判所は、前項の規定により被告人の住居を制限する場合において、必要と認めるときは、裁判所の許可を受けないでその指定する期間を超えて当該住居を離れてはならない旨の条件を付することができる。
5前項の期間は、被告人の生活の状況その他の事情を考慮して指定する。
6第四項の許可をする場合には、同項の住居を離れることを必要とする理由その他の事情を考慮して、当該住居を離れることができる期間を指定しなければならない。
7裁判所は、必要と認めるときは、前項の期間を延長することができる。
8裁判所は、第四項の許可を受けた被告人について、同項の住居を離れることができる期間として指定された期間の終期まで当該住居を離れる必要がなくなつたと認めるときは、当該期間を短縮することができる。
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「保証金額を定めずに保釈を許可することができる」の部分である。保釈を許す場合には、必ず保証金額を定めなければならない(93条1項)。
93条1項は、保釈を許す場合には保証金額を定めなければならないと定める。保釈は、逃亡すれば保証金が没取されるという心理的な強制によって被告人の出頭を確保しつつ、身体の拘束を解く制度であり、保証金はその担保として制度の中心にある。そのため、保釈を許す決定は保証金の納付があった後でなければ執行することができないとされている(94条1項)。本肢の挙げる「犯罪の性質や情状」は、93条2項が、保証金額は犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとして掲げる考慮事情であり、金額をいくらにするかを決める際の事情である。金額を定めなくてよい場合を認める根拠にはならない。本肢は、金額を決めるときの考慮事情を、金額の定めを不要とする事情にすり替えている点で誤っている。

保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。/保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
誤り。違うのは「保証金額を定めずに保釈を許可することができる」の部分である。保釈を許す場合には、必ず保証金額を定めなければならない(93条1項)。
93条1項は、保釈を許す場合には保証金額を定めなければならないと定める。保釈は、逃亡すれば保証金が没取されるという心理的な強制によって被告人の出頭を確保しつつ、身体の拘束を解く制度であり、保証金はその担保として制度の中心にある。そのため、保釈を許す決定は保証金の納付があった後でなければ執行することができないとされている(94条1項)。本肢の挙げる「犯罪の性質や情状」は、93条2項が、保証金額は犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとして掲げる考慮事情であり、金額をいくらにするかを決める際の事情である。金額を定めなくてよい場合を認める根拠にはならない。本肢は、金額を決めるときの考慮事情を、金額の定めを不要とする事情にすり替えている点で誤っている。

保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。/保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
誤り。違うのは「保証金額を定めないことができる」の部分である。93条1項は、保釈を許す場合には保証金額を定めなければならないとしている。
93条1項は、保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならないと定め、保証金額の決定を欠かせないものとしている。保釈は、被告人が逃亡したり召喚に応じなかったりすれば保証金を没取されるという心理的な強制によって出頭を確保する制度であり(96条)、保証金はその中心にあるからである。保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない(93条2項)。裁判所は、住居の制限その他適当と認める条件を付けることもできるが(同条3項)、これは保証金と並んで出頭や罪証隠滅の防止を図る手段であり、保証金額を定めないことの根拠にはならない。他の手段で出頭を確保できると考えたとしても、保証金額を定めずに保釈を許すことはできない。

保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。/保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
- 対象:起訴後の被告人の勾留だけ。被疑者勾留には保釈が無い(207条1項ただし書)
- 権利保釈(89条):請求があれば、6つの除外事由に当たらない限り許さなければならない。逃亡のおそれは除外事由に無いが、1号(短期1年以上の罪)などには当たり得る
- 意見聴取(92条1項):許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く
- 保証金(93条1項):保釈を許すときは必ず保証金額を定める。条件の付加(93条3項)は保証金に代わらない
- 実刑の宣告(343条):拘禁刑以上の刑の宣告で保釈は失効し、新たな保釈がなければ確定前でも収容される
誤り。違うのは「被害者との接触を禁止する旨の条件を付することができない」の部分である。保釈を許す場合には、住居の制限その他適当と認める条件を付することができ(93条3項)、被害者との接触の禁止もこれに当たる。
93条3項は、保釈を許す場合には、被告人の住居を制限し、その他適当と認める条件を付することができると定める。保釈の条件は、保証金による心理的強制とあわせて、被告人の逃亡や罪証隠滅を防ぎ、公判への出頭を確保するために付けられるものであり、条件を守らせることで勾留の目的を達することができるなら、なるべく広く保釈を許そうという考えに基づいている。適当と認める条件とは、逃亡と罪証隠滅を防止するのに必要かつ有効な条件をいい、住居の制限のほか、旅行の制限や被害者・証人等との接触の禁止がこれに当たる。被害者との接触は、供述を変えるよう働きかけるなど罪証隠滅につながりやすいからである。したがって裁判所は被害者との接触を禁止する条件を付けることができ、本肢は誤っている。条件に違反したときは、保釈を取り消すことができる(96条1項6号)。

保釈を許す場合には、被告人の住居を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
1保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
2裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。
3裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。
この条文の過去問 2問
正しい。保釈を許す決定は、保証金(又はこれに代えることを許された有価証券・保証書)の納付があった後でなければ執行できないから(94条1項・3項)、納付がなければ被告人は釈放されない。
94条1項は、保釈を許す決定は保証金の納付があった後でなければ執行することができないと定める。保釈許可決定が出されただけでは被告人は釈放されず、保証金の納付が決定を執行して釈放するための要件となる。保釈は、逃亡すれば保証金が没取されるという不利益を予告することで被告人の出頭を確保する制度であり、納付の前に釈放すれば担保のないまま身体の拘束を解くことになってしまうからである。もっとも、保証金は被告人本人や保釈請求者が現金で納める必要はなく、裁判所は保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができ(同条2項)、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書をもって保証金に代えることを許すこともできる(同条3項)。本肢の括弧書きはこの代替を指しており、これらの納付又は差出しがあって初めて釈放されるという点も条文どおりである。

保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。/裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
正しい。保釈を許す決定は、保証金(又はこれに代えることを許された有価証券・保証書)の納付があった後でなければ執行できないから(94条1項・3項)、納付がなければ被告人は釈放されない。
94条1項は、保釈を許す決定は保証金の納付があった後でなければ執行することができないと定める。保釈許可決定が出されただけでは被告人は釈放されず、保証金の納付が決定を執行して釈放するための要件となる。保釈は、逃亡すれば保証金が没取されるという不利益を予告することで被告人の出頭を確保する制度であり、納付の前に釈放すれば担保のないまま身体の拘束を解くことになってしまうからである。もっとも、保証金は被告人本人や保釈請求者が現金で納める必要はなく、裁判所は保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができ(同条2項)、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書をもって保証金に代えることを許すこともできる(同条3項)。本肢の括弧書きはこの代替を指しており、これらの納付又は差出しがあって初めて釈放されるという点も条文どおりである。

保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。/裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
1裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
2前項前段の決定をする場合には、勾留の執行停止をする期間を指定することができる。
3前項の期間を指定するに当たつては、その終期を日時をもつて指定するとともに、当該日時に出頭すべき場所を指定しなければならない。
4裁判所は、必要と認めるときは、第二項の期間を延長することができる。この場合においては、前項の規定を準用する。
5裁判所は、期間を指定されて勾留の執行停止をされた被告人について、当該期間の終期として指定された日時まで勾留の執行停止を継続する必要がなくなつたと認めるときは、当該期間を短縮することができる。この場合においては、第三項の規定を準用する。
6第九十三条第四項から第八項までの規定は、第一項前段の規定により被告人の住居を制限する場合について準用する。
この条文の過去問 4問
正しい。勾留の執行停止の可否は法定刑の軽重により異ならない。95条1項の要件は裁判所が適当と認めることだけで、法定刑は要件になっていない。
勾留の執行停止は、95条1項により、裁判所が適当と認めるときに、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限してすることができる制度である。勾留そのものの効力は維持したまま執行だけを一時的に止める点で、勾留の取消し(87条)や保釈(88条以下)とは性質が異なる。条文上の要件は裁判所の裁量による適当性の判断だけであり、対象事件の法定刑の軽重は要件とされていない。近親者の葬儀への参列、病気の治療、入学試験の受験など、一時的に身体拘束を解く必要が生じた場面で、罪名や法定刑を問わずに用いられている。勾留の執行停止は被疑者の勾留についても認められる(207条1項)。したがって、勾留の執行停止の可否は法定刑の軽重により異ならない。令和5年改正で、執行停止の期間の指定・延長や、期間満了時の出頭義務とその違反への制裁など逃亡防止の規律が整えられたが、その適用も法定刑の軽重で分かれるものではない。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
| 法定刑で変わる | 法定刑で変わらない |
|---|---|
| 緊急逮捕(210条1項):死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限る | 勾留の執行停止(95条):裁判所が適当と認めるとき。法定刑を問わない |
| 権利保釈の除外(89条1号・3号):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪 | 第1回公判期日前の証人尋問請求(226条・227条):出頭・供述拒否や供述変遷のおそれと不可欠性が要件 |
| 即決裁判手続(350条の16第1項ただし書)・簡易公判手続(291条の2ただし書):死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は不可 | 起訴猶予(248条):検察官の裁量。法定刑は考慮事情の一つ |
| 必要的弁護(289条1項):死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件 | 被疑者国選弁護(37条の2):現行法では勾留状が発せられた全事件(出題当時は長期3年を超える事件に限られていた) |
| 公訴時効(250条)・軽微事件の逮捕・勾留(199条1項ただし書・217条・60条3項)・出頭義務(284条・285条) | 公判前整理手続に付す決定(316条の2):必要があると認めるとき |
誤り。違うのは「勾留の執行を停止するか否かの裁判をしなければならない」の部分である。勾留の執行停止は職権で行うものであり、被告人の申立ては職権の発動を促すにすぎないから、裁判をする義務はない(最判昭24.2.17)。
95条1項は、裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定めるにとどまり、保釈の88条1項や勾留の取消しの87条1項のように請求権者を定めていない。勾留の執行停止は裁判所の職権によってだけ行われるのであり、被告人やその関係者に申立権はない。したがって被告人からの申立ては職権の発動を促す事実上の働きかけにすぎず、裁判所はこれに応じて許否の裁判をする義務を負わない。判例も、勾留の執行停止の申立てに対して裁判をしなくても違法ではないとした(最判昭24.2.17)。肢は裁判をしなければならないとする点で誤っている。これに対して保釈は請求権が法定されているから、裁判所は許可か却下の裁判をしなければならず、却下に対しては抗告ができる。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
| 保釈(88条以下) | 勾留の取消し(87条) | 勾留の執行停止(95条) | |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 請求による(被告人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)。裁量保釈は職権でもできる | 請求(左の者に加えて検察官)又は職権 | 職権のみ。申立ては職権の発動を促すだけで、裁判の義務はない(最判昭24.2.17) |
| 要件と効果 | 除外事由がなければ許さなければならない(89条)。あっても裁量で許せる(90条) | 理由又は必要がなくなれば取り消さなければならない | 適当と認めるときにできる |
| 検察官の意見 | 許す決定も却下する決定も聴く(92条1項) | 検察官の請求による場合を除き聴く。急速を要するときは不要(92条2項) | 刑訴規則で聴く。急速を要するときは不要 |
| 保証金 | 必ず定め、納付後に釈放(93条・94条) | — | 要らない |
| 取消し | 検察官の請求又は職権で取り消すことができる(96条1項) | — | 保釈と同じ(96条1項) |
誤り。違うのは「検察官自らの裁量により、勾留の執行を停止することができる」の部分である。勾留の執行停止をするのは裁判所であり、被疑者の勾留では裁判官である(95条1項・207条1項)。
95条1項は、裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定める。被疑者の勾留には207条1項によりこの規定が準用され、勾留に関する処分をする裁判官が執行停止をする。勾留の執行停止は、勾留の効力を保ったまま執行だけを一時的に止める裁判であり、勾留の裁判をした裁判機関の権限に属するから、検察官が自らの裁量で行うことはできない。検察官は、勾留の理由や必要がなくなったと考えるときは、勾留の取消しを請求することができ(87条1項・207条1項)、取消しの裁判を待たずに自ら被疑者を釈放することもできると解されている。しかし、これは勾留の効力を保ったまま執行だけを止める執行停止とは性質の異なるものである。したがって、検察官が自らの裁量で勾留の執行を停止できるとする本肢は誤っている。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
誤り。違うのは「検察官自らの裁量により、勾留の執行を停止することができる」の部分である。勾留の執行停止をするのは裁判所であり、被疑者の勾留では裁判官である(95条1項・207条1項)。
95条1項は、裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができると定める。被疑者の勾留には207条1項によりこの規定が準用され、勾留に関する処分をする裁判官が執行停止をする。勾留の執行停止は、勾留の効力を保ったまま執行だけを一時的に止める裁判であり、勾留の裁判をした裁判機関の権限に属するから、検察官が自らの裁量で行うことはできない。検察官は、勾留の理由や必要がなくなったと考えるときは、勾留の取消しを請求することができ(87条1項・207条1項)、取消しの裁判を待たずに自ら被疑者を釈放することもできると解されている。しかし、これは勾留の効力を保ったまま執行だけを止める執行停止とは性質の異なるものである。したがって、検察官が自らの裁量で勾留の執行を停止できるとする本肢は誤っている。

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。
期間を指定されて勾留の執行停止をされた被告人が、正当な理由がなく、当該期間の終期として指定された日時に、出頭すべき場所として指定された場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
1裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
2前項の被告人が、裁判所の許可を受けて同項の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないときも、同項と同様とする。
1裁判所は、被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するため必要があると認めるときは、保釈を許す決定又は第九十五条第一項前段の決定を受けた被告人に対し、その住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて、次に掲げるところに従つて報告をすることを命ずることができる。裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
1 裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。
2 当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
2裁判所は、前項の場合において、必要と認めるときは、同項の被告人に対し、同項の規定による報告を裁判所の指定する日時及び場所に出頭してすることを命ずることができる。
3裁判所は、第一項の規定による報告があつたときはその旨及びその報告の内容を、同項(第一号に係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたとき又は同項(第二号に係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたことを知つたときはその旨及びその状況を、それぞれ速やかに検察官に通知しなければならない。
1裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。被告人が、正当な理由がなく前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
1 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
2 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
4 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
5 被告人が、正当な理由がなく前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
6 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
2前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取することができる。
3保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときも、前項と同様とする。
4拘禁刑以上の刑に処する判決(拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しをしないものに限る。以下同じ。)の宣告を受けた後、保釈又は勾留の執行停止をされている被告人が逃亡したときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消さなければならない。
5前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
6保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しない場合又は逃亡した場合において、その者が拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者であるときは、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。ただし、第四項の規定により保釈を取り消された者が逃亡したときは、この限りでない。
7保釈された者が、拘禁刑以上の刑に処する判決又は拘留に処する判決の宣告を受けた後、第三百四十三条の二(第四百四条(第四百十四条において準用する場合を含む。第九十八条の十七第一項第二号及び第四号において同じ。)において準用する場合を含む。)の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき又は逃亡したとき(保釈されている場合及び保釈を取り消された後、逃亡した場合を除く。)は検察官の請求により又は職権で、刑の執行のため呼出しを受け正当な理由がなく出頭しないときは検察官の請求により、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
この条文の過去問 5問
正しい。裁判所は、取消事由があれば、検察官の請求により又は職権で、保釈を取り消すことができる(96条1項)。
96条1項は、裁判所は、各号のいずれかに当たる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができると定める。取消しの端緒として検察官の請求と裁判所の職権が並べて掲げられているから、検察官の請求がなくても裁判所は職権で保釈を取り消すことができる。取消事由は、正当な理由なく召喚に応じないこと、逃亡や罪証隠滅のおそれ、被害者や証人などへの加害や畏怖させる行為、報告命令への違反、住居の制限その他の条件への違反などである。保釈は保証金と条件によって被告人の出頭と罪証隠滅の防止を担保する制度であり、その前提が崩れたときに、公判を主宰し被告人の出頭を確保する責任を負う裁判所が自ら取消しを判断できるのは当然だからである。肢は96条1項のとおりである。拘禁刑以上の実刑判決の宣告後に保釈中の被告人が逃亡したときは、取り消さなければならない(同条4項)。

裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
| 保釈(88条以下) | 勾留の取消し(87条) | 勾留の執行停止(95条) | |
|---|---|---|---|
| 始まり方 | 請求による(被告人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)。裁量保釈は職権でもできる | 請求(左の者に加えて検察官)又は職権 | 職権のみ。申立ては職権の発動を促すだけで、裁判の義務はない(最判昭24.2.17) |
| 要件と効果 | 除外事由がなければ許さなければならない(89条)。あっても裁量で許せる(90条) | 理由又は必要がなくなれば取り消さなければならない | 適当と認めるときにできる |
| 検察官の意見 | 許す決定も却下する決定も聴く(92条1項) | 検察官の請求による場合を除き聴く。急速を要するときは不要(92条2項) | 刑訴規則で聴く。急速を要するときは不要 |
| 保証金 | 必ず定め、納付後に釈放(93条・94条) | — | 要らない |
| 取消し | 検察官の請求又は職権で取り消すことができる(96条1項) | — | 保釈と同じ(96条1項) |
誤り。違うのは「他の罪を犯した場合、保釈を取り消さなければならない」の部分である。他の罪を犯したことは96条1項の取消事由に挙げられておらず、同項の事由があっても取消しは「できる」にとどまる。
96条1項は、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき、逃亡し又は逃亡のおそれについて相当な理由があるとき、罪証を隠滅し又は罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるとき、被害者などに害を加え又は畏怖させる行為をしたとき、正当な理由がなく報告をしないとき、住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したときに、保釈を取り消すことができると定める。いずれも当該事件の審理と出頭の確保に関わる事由であり、保釈中に他の罪を犯したこと自体は取消事由とされていない。他の罪を犯したという事情が逃亡や罪証隠滅のおそれを根拠づけ、各号に当たると判断されることはあるが、それは事情を評価した結果である。また、同項は「取り消すことができる」として取消しを裁判所の裁量に委ねている。令和5年改正で、拘禁刑以上の実刑判決の宣告を受けた後に逃亡したときは取り消さなければならないとされたが(同条4項)、他の罪を犯した場合はこれにも当たらない。

裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。(後略)
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
誤り。違うのは「他の罪を犯した場合、保釈を取り消さなければならない」の部分である。他の罪を犯したことは96条1項の取消事由に挙げられておらず、同項の事由があっても取消しは「できる」にとどまる。
96条1項は、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき、逃亡し又は逃亡のおそれについて相当な理由があるとき、罪証を隠滅し又は罪証隠滅のおそれについて相当な理由があるとき、被害者などに害を加え又は畏怖させる行為をしたとき、正当な理由がなく報告をしないとき、住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したときに、保釈を取り消すことができると定める。いずれも当該事件の審理と出頭の確保に関わる事由であり、保釈中に他の罪を犯したこと自体は取消事由とされていない。他の罪を犯したという事情が逃亡や罪証隠滅のおそれを根拠づけ、各号に当たると判断されることはあるが、それは事情を評価した結果である。また、同項は「取り消すことができる」として取消しを裁判所の裁量に委ねている。令和5年改正で、拘禁刑以上の実刑判決の宣告を受けた後に逃亡したときは取り消さなければならないとされたが(同条4項)、他の罪を犯した場合はこれにも当たらない。

裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。(後略)
- 請求:勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(88条1項)。利害関係人は含まれない
- 意見聴取:許す決定も却下する決定も、検察官の意見を聴く(92条1項)
- 保証金:許す場合は必ず金額を定める(93条1項)。条件も付けられる(93条3項)
- 執行:保証金の納付があった後でなければ執行できない。有価証券・保証書で代えられる(94条1項・3項)
- 取消し:96条1項の事由があれば取り消すことが『できる』。実刑判決の宣告後に逃亡したときは取り消さなければならない(96条4項)
正しい。96条1項は、被告人が逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があるときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、保釈を取り消すことができると定めている(同項2号)。
96条1項柱書は、裁判所は各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができると定め、同項2号は、被告人が逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があるときを挙げる。保釈は、保証金の没取という心理的強制によって被告人の出頭を確保できる見込みがあるからこそ許されるものであり、被告人が逃亡し、又はそのおそれが生じれば、保釈を続ける前提が失われる。そこで法は、保釈を許した裁判所自身が、検察官の請求を待たずに職権で取り消すこともできるとした。本肢は、検察官の請求がなくても、逃亡し又は逃亡するおそれについて相当な理由があるときに保釈を取り消すことができるとしており、正しい。保釈を取り消す場合には、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる(同条2項)。

裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。…二 被告人が逃亡し又は逃亡すると…相当な理由があるとき。
- 権利保釈(89条):請求があれば、1号〜6号の除外事由に当たらない限り許さなければならない。罪証隠滅のおそれは4号の除外事由である
- 裁量保釈(90条):除外事由に当たっても、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と身体拘束による不利益の程度等を考慮し、適当と認めるときは職権で許すことができる
- 検察官の意見(92条1項):保釈を許す決定も請求を却下する決定も、検察官の意見を聴いてする
- 条件(93条3項):住居の制限その他適当と認める条件を付けることができる
- 取消し(96条1項):召喚に応じない、逃亡し又は逃亡するおそれ、罪証隠滅のおそれ、加害・畏怖行為、条件違反などがあれば、検察官の請求又は職権で取り消すことができる
- 実刑判決の宣告後(344条):89条は適用されず、裁量保釈だけになる
誤り。「保釈保証金の没取決定の可否」は、法定刑によって法律上当然に結論が異なる事項ではない。没取は保釈の取消しに伴う裁量か、宣告刑と逃亡を基準とする必要的没取であり、法定刑を基準にしていない。
96条2項は、保釈を取り消す場合には、裁判所は決定で保証金の全部又は一部を没取することができると定め、取消しの事由(同条1項各号)も召喚への不出頭、逃亡、罪証隠滅などの被告人の行動であって、事件の法定刑を問わない。令和5年改正で加わった同条4項・5項は、拘禁刑以上の刑に処する判決(全部執行猶予のものを除く)の宣告を受けた後に保釈中の被告人が逃亡したときは、保釈を必ず取り消し、保証金を必ず没取すると定める。これにより没取が必要的になる場面が生じたが、その基準は言い渡された刑と逃亡という事実であり、その罪に法律が定めた刑ではない。重い法定刑の罪でも罰金や執行猶予が言い渡されれば同項は適用されない。したがって、現在も、没取決定の可否は法定刑によって法律上当然に結論が異なるものではなく、本肢を法定刑で結論が分かれる事項とすることはできない。

前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取することができる。
| 事項 | 法定刑で | 基準 |
|---|---|---|
| 被疑者国選弁護人の選任請求(37条の2) | 現在は変わらない | 勾留状が発せられた被疑者すべて(平成28年改正前は長期3年超などに限定) |
| 起訴猶予(248条) | 変わらない | 犯人の性格・犯罪の軽重・情状などによる検察官の裁量 |
| 簡易裁判所の専属管轄(裁判所法33条1項2号・24条2号) | 変わる | 罰金以下の刑に当たる罪は簡易裁判所だけ |
| 必要的弁護(289条1項) | 変わる | 死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件 |
| 保釈保証金の没取(96条) | 変わらない | 保釈取消しに伴う裁量。必要的没取は宣告刑と逃亡が基準 |
| 公判前整理手続に付する決定(316条の2) | 変わらない | 必要があると認めるとき |
| 被告人の出頭義務(284条・285条) | 変わる | 50万円以下の罰金・科料は不要、拘留・長期3年以下などは一部免除 |
1上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて、勾留の期間を更新し、勾留を取り消し、又は保釈若しくは勾留の執行停止をし、若しくはこれを取り消すべき場合には、原裁判所が、その決定をしなければならない。
2上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて前項の決定をすべき裁判所は、裁判所の規則の定めるところによる。
3前二項の規定は、勾留の理由の開示をすべき場合にこれを準用する。
1保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。
2前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈若しくは勾留の執行停止が取り消された旨又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
3第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。
検察官は、保釈又は勾留の執行停止を取り消す決定があつた場合において、被告人が刑事施設に収容されていないときは、被告人に対し、指定する日時及び場所に出頭することを命ずることができる。
保釈又は勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被告人が、正当な理由がなく、指定された日時及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
1裁判所は、保釈を許し、又は勾留の執行停止をする場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができる。
2裁判所は、前項の同意を得るに当たつては、あらかじめ、監督者として選任する者に対し、次項及び第四項に規定する監督者の責務並びに第九十八条の八第二項、第九十八条の十一及び第九十八条の十八第三項の規定による監督保証金の没取の制度を理解させるために必要な事項を説明しなければならない。
3監督者は、被告人の逃亡を防止し、及び公判期日への出頭を確保するために必要な監督をするものとする。
4裁判所は、監督者に対し、次の各号に掲げる事項のいずれか又は全てを命ずるものとする。被告人が召喚を受けたときその他この法律又は他の法律の規定により被告人が出頭しなければならないときは、その出頭すべき日時及び場所に、被告人と共に出頭すること。被告人の住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて、次に掲げるところに従つて報告をすること。裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
1 被告人が召喚を受けたときその他この法律又は他の法律の規定により被告人が出頭しなければならないときは、その出頭すべき日時及び場所に、被告人と共に出頭すること。
2 被告人の住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて、次に掲げるところに従つて報告をすること。裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
ア 裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。
ィ 当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
1監督者を選任する場合には、監督保証金額を定めなければならない。
2監督保証金額は、監督者として選任する者の資産及び被告人との関係その他の事情を考慮して、前条第四項の規定により命ずる事項及び被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
1監督者を選任した場合には、保釈を許す決定は、第九十四条第一項の規定にかかわらず、保証金及び監督保証金の納付があつた後でなければ、執行することができない。
2監督者を選任した場合には、第九十五条第一項前段の決定は、監督保証金の納付があつた後でなければ、執行することができない。
3第九十四条第二項及び第三項の規定は、監督保証金の納付について準用する。この場合において、同条第二項中「保釈請求者でない者」とあるのは「監督者でない者(被告人を除く。)」と、同条第三項中「被告人」とあるのは「被告人及び監督者」と読み替えるものとする。
1裁判所は、監督者を選任した場合において、被告人の召喚がされたときその他この法律又は他の法律の規定により被告人が指定の日時及び場所に出頭しなければならないこととされたときは、速やかに、監督者に対し、その旨並びに当該日時及び場所を通知しなければならない。
2裁判所は、第九十八条の四第四項(第一号に係る部分に限る。)の規定による出頭があつたときはその旨を、同項(第二号に係る部分に限る。)の規定による報告があつたときはその旨及びその報告の内容を、同項(第一号に係る部分に限る。)の規定による出頭若しくは同項(第二号イに係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたとき又は同項(第二号ロに係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたことを知つたときはその旨及びその状況を、それぞれ速やかに検察官に通知しなければならない。
1裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、監督者を解任することができる。監督者が、正当な理由がなく、第九十八条の四第四項の規定による命令に違反したとき。心身の故障その他の事由により、監督者が第九十八条の四第四項の規定により命ぜられた事項をすることができない状態になつたとき。監督者から解任の申出があつたとき。
1 監督者が、正当な理由がなく、第九十八条の四第四項の規定による命令に違反したとき。
2 心身の故障その他の事由により、監督者が第九十八条の四第四項の規定により命ぜられた事項をすることができない状態になつたとき。
3 監督者から解任の申出があつたとき。
2前項(第一号に係る部分に限る。)の規定により監督者を解任する場合には、裁判所は、決定で、監督保証金の全部又は一部を没取することができる。
1裁判所は、監督者を解任した場合又は監督者が死亡した場合には、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消さなければならない。
2裁判所は、前項に規定する場合において、相当と認めるときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める措置をとることができる。この場合においては、同項の規定は、適用しない。被告人が保釈されている場合新たに適当と認める者を監督者として選任し、又は保証金額を増額すること。被告人が勾留の執行停止をされている場合新たに適当と認める者を監督者として選任すること。
1 被告人が保釈されている場合新たに適当と認める者を監督者として選任し、又は保証金額を増額すること。
2 被告人が勾留の執行停止をされている場合新たに適当と認める者を監督者として選任すること。
3裁判所は、前項前段の規定により監督者を選任する場合には、監督保証金を納付すべき期限を指定しなければならない。
4裁判所は、やむを得ない事由があると認めるときは、前項の期限を延長することができる。
5裁判所は、第三項の期限までに監督保証金の納付がなかつたときは、監督者を解任しなければならない。
6裁判所は、第二項前段(第一号に係る部分に限る。次項において同じ。)の規定により監督者を選任する場合において、相当と認めるときは、保証金額を減額することができる。
7裁判所は、第二項前段の規定により保証金額を増額する場合には、増額分の保証金を納付すべき期限を指定しなければならない。この場合においては、第四項の規定を準用する。
8第九十四条第二項及び第三項の規定は、前項に規定する場合における増額分の保証金の納付について準用する。この場合において、同条第二項中「保釈請求者」とあるのは、「被告人」と読み替えるものとする。
9裁判所は、第七項の期限までに増額分の保証金の納付がなかつたときは、決定で、保釈を取り消さなければならない。
1被告人は、第九十八条の八第一項第二号に該当すること又は監督者が死亡したことを知つたときは、速やかに、その旨を裁判所に届け出なければならない。
2裁判所は、前項の規定による届出がなかつたときは、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
3前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取することができる。
監督者が選任されている場合において、第九十六条第一項(第一号、第二号及び第五号(第九十五条の四第二項の規定による出頭をしなかつたことにより適用される場合に限る。)に係る部分に限る。)の規定により保釈又は勾留の執行停止を取り消すときは、裁判所は、決定で、監督保証金の全部又は一部を没取することができる。