第1条過去問 4
この法律は、平成十三年四月一日から施行する。
この条文の過去問 4問
日本国憲法が被疑者・被告人の権利を保障する諸規定を置いたのを受けて,刑事訴訟法第1条は,同法の目的として,「適正手続の保障」と「人権の尊重」を掲げる一方,「事案の真相の解明」については明文に掲げなかった。
解説
本肢は誤り。刑事訴訟法1条は、同法の目的として「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする」と定める。すなわち、同条は①公共の福祉の維持と②個人の基本的人権の保障という二つの要請を全うしつつ、③事案の真相の解明と④刑罰法令の適正迅速な適用実現を図ることを目的として掲げており、「事案の真相を明らかにし」という文言によって真実発見を明文で目的に据えている。したがって、「事案の真相の解明」を明文に掲げなかったとする本肢は、条文の文言に真っ向から反する。
沿革的にみても、現行刑事訴訟法は日本国憲法31条以下の被疑者・被告人の権利保障規定を受けて当事者主義的構造を採用したが、それは真実発見という刑事訴訟の目的を放棄したことを意味しない。むしろ1条は、適正手続と人権保障という枠の中で真実発見を追求すべきことを示したものであり、この二つの要請の調和が刑事訴訟法全体の解釈指針となる。例えば違法収集証拠排除法則が、真実発見の要請と適正手続の保障との衡量として論じられるのも、1条がこの両者を並列的に掲げていることの現れである。本肢は真実発見の目的を明文から排除する点で誤りである。
裁判所は,丁につき,強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていないことから,有罪の言渡しをする余地はない。
解説
本肢は誤り。裁判所は訴因として掲げられた事実の範囲内でしか有罪認定をすることができないが、認定しようとする事実が訴因に記載された事実に包含され、かつ被告人の防御にとって実質的な不利益を生じない場合、いわゆる縮小認定として訴因変更の手続を経ずに認定することが許される。強盗罪(刑法236条1項)の訴因は、その手段としての暴行の事実を当然に含んでいるところ、本件の公訴事実には甲乙丙丁戊が共謀の上で数人共同してVの顔面を多数回殴打した旨が具体的に記載されている。そうすると、暴力行為等処罰に関する法律1条が定める数人共同しての暴行(刑法208条)の事実は、強盗の訴因の中に既に現れており、丁は公判廷で暴行の事実自体を認めて財物奪取の共謀のみを争っているのであるから、訴因変更をしなくても防御上の不意打ちにはならない。判例も、起訴状の罰条の記載は訴因を一層特定して被告人の防御に不足を生じさせないためのものであって裁判所の法令適用を拘束するものではないとし、訴因により公訴事実が明確にされ被告人の防御に実質的不利益が生じない限り、罰条変更の手続を経ずに起訴状記載外の罰条を適用できるとして、暴行の訴因につき暴力行為等処罰に関する法律1条を適用した原判断を是認している(最決昭和53年2月16日)。したがって、丁について訴因変更手続を経ていなくても同法1条違反の共同正犯として有罪を言い渡す余地はあり、その余地はないとする本肢は誤りである。なお、同条の法定刑中の懲役は、令和4年改正(令和7年6月1日施行)により拘禁刑に改められている。
裁判所は,丁につき,強盗罪の訴因から暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の訴因に変更する手続を採っていないことから,有罪の言渡しをする余地はない。
解説
本肢は誤り。訴因変更(刑訴法312条1項)が必要となるのは、認定しようとする事実が訴因として掲げられた事実と実質的に異なり、審判対象の画定に必要な事項に変動を生じさせる場合、又は被告人の防御に実質的な不利益を生じさせるおそれがある場合である(訴因変更の要否につき最決平成13年4月11日刑集55巻3号127頁参照)。これに対し、認定事実が訴因に記載された事実に包含され、その一部にとどまるいわゆる縮小認定の場合には、大は小を兼ねる関係にあり、被告人としては当初の訴因に対する防御を尽くせば足りるから、訴因変更の手続を経ることなくその限度で有罪の認定をすることができる。本問の強盗罪の訴因には、その手段として甲、乙及び丙と共同してVの顔面を多数回殴打するなどの暴行を加えた事実が記載されているところ、暴力行為等処罰に関する法律1条違反(数人共同しての暴行)の事実は、まさにこの訴因記載の暴行の事実に包含されるものであって、強取の意思及び共謀という加重要素を除いた縮小認定にほかならない。しかも丁自身が公判廷で暴行の事実を認めた上で強盗の共謀のみを争っているのであるから、この認定が不意打ちとなり防御に実質的不利益を生じさせるおそれもない。したがって、訴因変更手続を採っていないことを理由に有罪の言渡しをする余地がないとする本肢は誤りである。なお、同法1条の法定刑は、令和4年改正(令和7年施行)による拘禁刑への一本化を受け、現行法では3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金である。
再審の請求は,刑の執行が終わり,又はその執行を受けることがないようになったときには,これをすることができない。
解説
本肢は誤り。刑訴法441条は「再審の請求は、刑の執行が終り、又はその執行を受けることがないようになつたときでも、これをすることができる」と明文で定めている。したがって、刑の執行終了後はもとより、刑の時効の完成、恩赦、あるいは刑の執行猶予期間の経過によって刑の言渡しが効力を失った場合(刑法27条)であっても、再審の請求は妨げられない。
その趣旨は、再審制度が単に現に受けている刑の執行からの解放を目的とするものではなく、誤った有罪判決そのものを取り消して無辜の名誉を回復することをも目的とする点にある。有罪判決を受けたという事実は、刑の執行が終わった後も、社会的評価の低下や各種資格制限といった不利益として残り続けるから、これを是正する利益は失われないのである。現に、服役を終えた者やすでに死亡した者について再審無罪が言い渡された例(いわゆる吉田岩窟王事件など)がある。
関連して、有罪の言渡しを受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態にある場合には配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が再審請求をすることができ(439条1項4号)、これらの場合や請求者の死亡後に手続を承継する者がないときの審判の特則も定められている(451条2項等)。また442条は、再審の請求が刑の執行を停止する効力を有しないと定めており、請求時期に制限がないこととは区別して理解する必要がある。