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法定刑の軽重で結論が変わる制度の一覧(横断)とは

ほうていけいのけいちょうでけつろんがかわるせいどのいちらん

刑事訴訟法 公判手続と公判前整理手続

法定刑の軽重で結論が変わる制度の一覧とは、刑事訴訟法が「死刑又は無期若しくは長期3年以上の拘禁刑に当たる罪」「30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪」のように、その事件の法定刑を基準にして可否や要件を変えている制度と、法定刑を基準にしていない制度を並べた整理です。緊急逮捕、軽微事件の現行犯逮捕と勾留、権利保釈の除外、必要的弁護、被告人の出頭義務、即決裁判と簡易公判、公訴時効は法定刑で変わり、勾留の執行停止、第1回公判期日前の証人尋問、起訴猶予、保証金の没取、公判前整理手続に付す決定、告訴権者、被害者の意見陳述は変わりません。

刑事訴訟法は、同じ手続でも罪の重さによって扱いを変えることがあります。重い罪では令状なしの緊急逮捕を認め、弁護人なしの開廷を禁じ、権利としての保釈を外します。軽い罪では現行犯逮捕や勾留に住居不定などの条件を足し、被告人の出頭義務を外し、略式や即決といった簡単な手続を使えるようにします。基準は宣告される刑ではなく、その罪に法律が定めている刑、つまり法定刑です。制度ごとに条文がどの線で区切っているか、あるいは区切っていないかを一覧で持っておくと迷いません。

大学の教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ場面。黒板に横一本の目盛り線「法定刑」を引き、左端に「科料・拘留・30万円以下の罰金」、中央に「長期3年」、右端に「短期1年以上・無期・死刑」の目印。左の目印の下に札「現行犯逮捕・

法定刑を基準に可否や要件が変わる制度は、重い罪で強制を広げる系統と、軽い罪で手続を簡略にする系統に分かれます

重い罪の側では、緊急逮捕は死刑又は無期若しくは長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限られ(刑事訴訟法210条1項)、必要的弁護事件は死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件です(289条1項)。緊急逮捕が「3年以上」で必要的弁護が「3年を超える」という線の違いは条文のとおりです。権利保釈は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(89条1号)と、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき(同条3号)が除外事由です。即決裁判手続の申立ては死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件ではできず(350条の16第1項ただし書)、簡易公判手続の決定も同じ事件ではできません(291条の2ただし書)。公訴時効の期間は法定刑の種類と長期で段階的に決まります(250条)。軽い罪の側では、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯は、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は逃亡するおそれがある場合に限って逮捕でき(217条)、同じ罪の通常逮捕も住居不定又は正当な理由のない出頭拒否の場合に限られ(199条1項ただし書)、同じ事件の勾留は住居不定の場合に限られます(60条3項)。50万円以下の罰金又は科料に当たる事件の被告人は公判期日に出頭することを要せず(284条)、拘留に当たる事件と長期3年以下の拘禁刑又は50万円を超える罰金に当たる事件では、冒頭手続と判決宣告のとき以外は裁判所が出頭しないことを許せます(285条)。略式命令は100万円以下の罰金又は科料を科す場合に限られ(461条)、簡易裁判所の事物管轄は罰金以下の刑に当たる罪などで決まります(裁判所法33条)。通信傍受の対象犯罪は法定刑ではなく通信傍受法の別表に掲げる罪で限定しているので、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役に当たる刑法上の犯罪に限定している」という肢は誤りです。

  • 緊急逮捕(210条1項)死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に限る
  • 必要的弁護(289条1項)死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑に当たる事件
  • 権利保釈の除外(89条1号・3号)死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪/常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪
  • 即決裁判手続(350条の16第1項ただし書)・簡易公判手続(291条の2ただし書)死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑に当たる事件は不可
  • 公訴時効(250条)法定刑の種類と長期で期間が変わる。人を死亡させた死刑に当たる罪は時効なし
  • 軽微事件の現行犯逮捕(217条)・通常逮捕(199条1項ただし書)・勾留(60条3項)30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる罪は住居不定などの場合に限る
  • 被告人の出頭義務(284条・285条)50万円以下の罰金・科料は出頭不要。拘留・長期3年以下の拘禁刑・50万円超の罰金は冒頭手続と判決宣告以外で不出頭を許せる
  • 略式命令(461条)・簡易裁判所の事物管轄(裁判所法33条)100万円以下の罰金・科料/罰金以下の刑に当たる罪など
同じ教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)が黒板の右半分を指している場面。黒板の左に見出し「法定刑で変わる」の下に札「緊急逮捕」「必要的弁護」「権利保釈」「即決・簡易公判」「公訴時効」「軽微事件の逮捕・勾留」「出頭義務」、右に見出し「法定刑

法定刑を基準にしていない制度は、裁量や別の基準で決まるので、重い罪でも軽い罪でも結論は同じです

勾留の執行停止は、裁判所が適当と認めるときに決定でするもので、法定刑は要件になっていません(95条1項)。検察官が第1回公判期日前に裁判官に請求する証人尋問は、取調べに対する出頭・供述の拒否(226条)や供述の変遷のおそれと犯罪の証明に欠くことができないこと(227条)が要件で、法定刑を問いません。「勾留の執行停止」と「検察官による第1回公判期日前の証人尋問請求」の可否は法定刑の軽重により異ならないという肢は、どちらも正しいです。起訴猶予は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮する検察官の裁量で(248条)、法定刑は考慮事情の一つにすぎず、法律上当然に結論が決まるものではありません。保釈保証金の没取は、保釈を取り消す場合に裁判所の裁量で(96条2項)、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告後に逃亡したときは必要的に(同条5項)行いますが、基準は宣告された刑と逃亡という事情であって法定刑ではありません。公判前整理手続に付す決定は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときにでき(316条の2第1項)、法定刑による区別はありません。付さなければならないのは裁判員の対象事件で、それは裁判員法2条が法定合議事件のうち故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪などとして定めるものです。告訴をすることができる者の範囲は、被害者とその法定代理人、死亡した被害者の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹などで決まり(230条〜233条)、罪の軽重では変わりません。被害に関する心情その他の意見を陳述したい旨の申出ができる被害者の範囲も、被害者等又はその法定代理人であればよく(292条の2第1項)、法定刑による限定はありません。問題文が「差異が設けられていないもの」を選ばせるか「異なるもの」を選ばせるかで答えの組合せが逆になるので、各肢は中身で判断します。現行犯逮捕の要件、被疑者を勾留できる要件、公訴時効の期間は差異があり、告訴権者の範囲と意見陳述を申し出られる被害者の範囲は差異がありません。必要的弁護事件かどうか、簡易裁判所が専属的に管轄する事件かどうか、第一審の公判期日における被告人の出頭義務の有無は法定刑によって結論が異なり、起訴猶予の可否、保釈保証金の没取決定の可否、公判前整理手続に付する決定の可否は異なりません。

  • 勾留の執行停止(95条)裁判所の裁量。法定刑を問わない
  • 第1回公判期日前の証人尋問請求(226条・227条)出頭・供述拒否、供述変遷のおそれと不可欠性が要件。法定刑を問わない
  • 起訴猶予(248条)検察官の裁量。法定刑は考慮事情の一つ
  • 保釈保証金の没取(96条)保釈取消しに伴う裁量、判決宣告後の逃亡なら必要的。宣告刑と逃亡が基準で法定刑ではない
  • 公判前整理手続に付す決定(316条の2)必要があると認めるとき。裁判員対象事件は必ず付すが、それは裁判員法2条の対象事件の定義による
  • 告訴権者(230条〜233条)・被害者等の意見陳述(292条の2)被害者との関係で決まる。法定刑を問わない

被疑者国選弁護は、出題当時は長期3年を超える事件に限られていましたが、現行法では勾留状が発せられた全事件なので法定刑で変わりません

被疑者に対して勾留状が発せられている場合に、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官はその請求により弁護人を付さなければなりません(37条の2第1項)。平成30年6月からは法定刑の限定がなくなり、勾留された全事件が対象です。平成28年までの出題では、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に限られていたので、「被疑者の国選弁護人選任請求権の有無」は法定刑によって結論が異なる事項として出題されました。現行法では異ならないので、この肢を今読むなら結論が逆になります。身体を拘束されていない被疑者には現行法でも請求権がないので、「身体を拘束されていない被疑者が,貧困により弁護人を選任することができないときは,裁判官は,その請求により,被疑者のため弁護人を付さなければならない」という肢は、出題当時も現在も誤りです。裁判員の対象事件は、死刑又は無期拘禁刑に当たる罪や法定合議事件のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件なので、89条1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪」に当たり権利保釈は認められませんが、裁判所は90条により職権で保釈を許すことができます。「裁判員裁判対象事件は,刑事訴訟法第89条第1号の…に該当するから,保釈は認められない」という肢は、裁量保釈を見落としているので誤りです。

刑事訴訟法210条1項

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

刑事訴訟法217条

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。

刑事訴訟法60条3項

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

刑事訴訟法350条の16第1項

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。

試験ではこう問われる

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