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用語集 / 刑事訴訟法 / 勾留の取消し・執行停止と勾留に対する準抗告

勾留の取消し・執行停止と勾留に対する準抗告(87条・95条・429条)とは

こうりゅうのとりけししっこうていしとこうりゅうにたいするじゅんこうこく

刑事訴訟法 逮捕・勾留

勾留の取消しとは、勾留の理由又は必要がなくなったときに裁判所・裁判官が請求又は職権で勾留を取り消す決定で(刑事訴訟法87条)、勾留の執行停止とは、勾留の効力を残したまま職権で執行を一時的に止める決定です(95条)。勾留に対する準抗告とは、裁判官がした勾留に関する裁判の取消し又は変更を裁判官所属の裁判所に請求する不服申立てです(429条1項2号)。

勾留は一度決まったら期限まで解けないわけではありません。被害弁償がすんで証拠隠しのおそれが消えたなど勾留の理由や必要がなくなれば、裁判官は勾留を取り消さなければなりません。親の葬儀や手術のために一時的に外に出す必要があれば、勾留の効力は残したまま執行だけを止める執行停止があります。勾留の裁判そのものがおかしいと思えば準抗告で争います。保釈だけは被告人にしかなく、被疑者の身体を解く手段はこの三つです。

裁判官室の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で机に座り、机の上に「勾留取消請求書(弁護人)」と、添付の「示談書」「被害弁償の領収書」がある。机の前に弁護士の男性(札「弁護人」)が立っている。先生の吹き出し「被害弁償がすんで、証拠を隠すおそ

勾留の理由又は必要がなくなったときは、請求又は職権で勾留を取り消さなければならず、被疑者・被告人の双方にあります

勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定をもって勾留を取り消さなければなりません(刑事訴訟法87条1項)。「できる」ではなく「取り消さなければならない」と定められた義務的な取消しです。207条1項により被疑者の勾留にも準用されるので、勾留の取消しは被疑者の勾留と被告人の勾留のいずれについても認められ、「勾留の取消し請求」は起訴前は認められるが起訴後は認められないものには当たりません。検察官も請求でき、「勾留の必要がなくなったとき,検察官は,裁判所に対し,被告人の勾留の取消しを請求することができる」という肢は正しいです。逮捕直後に選任された弁護人による「起訴後における甲の勾留の取消請求」は法令上の根拠がある活動です。勾留事実について理由や必要がなくなった場合に余罪の捜査を理由に勾留を続けられないことは、事件単位の原則の語で扱います。勾留による拘禁が不当に長くなったときも、裁判所は請求又は職権で勾留を取り消し、又は保釈を許さなければなりません(91条1項)。

執行停止は裁判官・裁判所の職権で行い、申立権はなく、検察官が自ら執行を停止することはできません

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができます(95条1項)。勾留の裁判の効力は残したまま執行だけを止める処分で、保釈と違って保証金は要りません。207条1項により被疑者の勾留にも準用され、被疑者には保釈がないので、一時的に身体を解く手段として使われます。執行停止は職権によるもので、請求権者を定めた規定はありません。被告人からの申立ては職権の発動を促すにとどまり、「被告人から勾留執行停止の申立てがあった場合,裁判所は,勾留の執行を停止するか否かの裁判をしなければならない」という肢は誤りです。検察官が自ら執行を停止することもできません。執行停止の可否は法定刑の軽重によって異なりません。勾留の執行停止により釈放された場合、被疑者国選弁護人の選任は効力を失わず(38条の2但書)、他方で勾留理由開示の請求は効力を失います(82条3項)。令和5年改正により、執行停止の期間を指定するときは終期の日時と出頭すべき場所を指定することとされ(95条3項)、正当な理由なく出頭しない被告人・被疑者には罰則が設けられました(95条の2・208条の3)。

  • 勾留の取消し(87条)理由又は必要がなくなったとき。請求(検察官・本人・弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)又は職権。義務的。被疑者・被告人の双方
  • 勾留の執行停止(95条)適当と認めるとき。職権のみ、申立権なし、保証金不要。被疑者・被告人の双方。法定刑による差異なし
  • 勾留理由開示(82条)被疑者・被告人の双方
  • 接見等禁止(81条)被疑者・被告人の双方
  • 保釈(88条以下)被告人のみ。被疑者にはない(207条1項但書)
  • 検察官による勾留請求(204条〜206条)被疑者のみ。被告人勾留は職権
大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に二列の表。左列の見出し「被疑者の勾留」、右列の見出し「被告人の勾留」。行は上から「勾留の取消し:○/○」「執行停止:○/○」「理由開示:○/○」「接見等禁止:○/○」

勾留の裁判・却下・延長には裁判官所属の地方裁判所に準抗告でき、検察官も却下に準抗告できます

裁判官がした勾留に関する裁判に不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所に、その裁判の取消し又は変更を請求することができます(429条1項2号)。これが準抗告で、請求を受けた地方裁判所は合議体で決定します(429条4項)。勾留状を発する裁判に対して被疑者は「同裁判所に対し,その裁判を取り消して勾留請求を却下するよう請求することができる」のであり、この肢は正しいです。勾留請求を却下する裁判も勾留に関する裁判なので、検察官も準抗告できます。罪証隠滅のおそれがないことを理由に却下された場合に「その裁判を取り消して甲を勾留するよう請求することは許されない」という肢は誤りです。申立先は裁判官所属の地方裁判所であって高等裁判所ではなく、「高等裁判所に準抗告をすることができる」という肢は誤りです。勾留期間を延長する裁判にも、やむを得ない事由がないことを理由に準抗告できます。これに対し、逮捕状を発付した裁判には準抗告できません(最決昭和57年8月27日)。勾留に対する不服申立てには一つ制限があり、犯罪の嫌疑がないことを理由とすることはできません(429条2項・420条3項)。犯罪の嫌疑が認められないとして勾留請求が却下された場合に検察官が準抗告すること自体は妨げられず、「犯罪の嫌疑が認められないものとして勾留請求を却下した場合,これに不服があるときでも,…請求することは許されない」という肢は誤りです。被告人の勾留の更新は受訴裁判所の決定なので抗告によりますが(420条2項)、「被告人に犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることができる」という肢は誤りです(420条3項)。第1回公判期日前の被告人の勾留に関する処分は裁判官が行うので準抗告、第1回公判期日後は受訴裁判所の決定なので抗告になります。準抗告の対象の一覧は抗告・即時抗告・準抗告の語と捜査段階の準抗告の語で扱います。

刑事訴訟法87条1項

勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

刑事訴訟法95条1項

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。この場合においては、適当と認める条件を付することができる。

刑事訴訟法429条1項2号(抜粋)

裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。(二)勾留、保釈、押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。)を含む。)、押収物の還付、電磁的記録提供命令(同号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。)又は第百二十三条の二第一項(第五百十三条第十項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による複写に関する裁判

刑事訴訟法420条3項(429条2項が準抗告に準用)

勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。

論文ではこう使う

論文では、勾留された被疑者の弁護人として何ができるかを問われたときに、勾留の裁判に対する準抗告(429条1項2号)、勾留の取消請求(87条1項・207条1項)、勾留の執行停止の職権発動を促す上申、勾留理由開示請求(82条)を、それぞれの要件と効果を一文ずつ添えて並べます。準抗告では、逮捕の違法や勾留の理由の不存在を主張できるが犯罪の嫌疑がないことは理由にできないこと(429条2項・420条3項)を押さえ、取消請求では事後に理由や必要が消滅した事情を具体的に書きます。被告人になった後は保釈請求が加わることを一言添えます。

試験ではこう問われる

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