逮捕後の手続と時間制限(弁解録取・引致・送致48時間・24時間・72時間)とは
たいほごのてつづきとじかんせいげん
逮捕後の手続と時間制限とは、逮捕された被疑者について、司法巡査の引致、司法警察員による犯罪事実の要旨と弁護人選任権の告知と弁解の機会の付与、身体を拘束された時から48時間以内の検察官への送致、検察官による受取りから24時間以内かつ拘束から72時間以内の勾留請求又は公訴提起という流れとその期限のことです(刑事訴訟法202条〜206条)。
逮捕された人は、いつまでも警察署に留め置かれるわけではありません。逮捕は短い身体拘束で、続けて拘束するには裁判官の勾留の判断が要るので、法律は逮捕から勾留請求までの流れを時計で縛っています。警察が逮捕したら、言い分を聴いて、拘束を続けるなら48時間以内に検察官へ送致し、検察官は受け取ってから24時間以内、しかも逮捕から72時間以内に勾留を請求するか起訴します。期限を過ぎれば釈放しなければなりません。事例問題では、逮捕の時刻から「何時までに勾留請求が要るか」を計算させます。
司法巡査は直ちに司法警察員に引致し、司法警察員が犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げて弁解の機会を与えます
司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは直ちに司法警察員に引致し、検察事務官が逮捕したときは直ちに検察官に引致します(刑事訴訟法202条)。これは現行犯逮捕(216条)と緊急逮捕(211条)でも同じで、「司法巡査は,逮捕状により被疑者を逮捕したときだけでなく,現行犯逮捕したとき,又は緊急逮捕したときも,直ちにこれを司法警察員に引致しなければならない」という肢は正しいです。司法警察員は、逮捕したとき又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨と弁護人を選任することができる旨を告げた上で、弁解の機会を与えます(203条1項)。弁解録取は司法警察員と検察官の権限で、司法巡査にはできません。「司法巡査が、被疑者を逮捕した後、弁解録取手続を行った」のは適法となる余地がありません。犯罪事実の要旨の告知は、逮捕状を示していても省けません。「逮捕状を被疑者に示しているから犯罪事実の要旨を告げる必要はなく」という肢は誤りです。弁護人選任権の告知は、弁護人があるときは要りません(203条2項)。告げるに当たっては、弁護士・弁護士法人・弁護士会を指定して選任を申し出ることができる旨と申出先(203条3項)、勾留を請求された場合に貧困等の事由で選任できないときは裁判官に国選弁護人の選任を請求できる旨、請求には資力申告書の提出が要る旨、資力が基準額以上なら先に弁護士会に私選の申出をしていなければならない旨(203条4項)を教示します。弁解録取書を作成して読み聞かせ閲覧させることは、刑事訴訟法の規定上は求められていません。弁解録取書の記載に沿って司法警察員の措置を問う問題では、要旨の告知と弁護人選任権の告知と教示と弁解の機会は法が求めるもので、弁解録取書の作成と読み聞かせは法が求めるものではありません。これらの告知と弁解の機会は逮捕の後の手続であり、勾留状の執行の後に改めて行う規定はありません。「どちらも,令状を執行した後,被疑者に対し,直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上,弁解の機会を与えなければならない」という肢は誤りです。勾留では、裁判官が勾留状を発する前に勾留質問で被疑事件を告げて陳述を聴きます。
司法警察員は、留置の必要がなければ直ちに釈放し、あれば身体を拘束された時から48時間以内に検察官に送致します
司法警察員は、弁解を聴いて留置の必要がないと思料するときは直ちに釈放し、留置の必要があると思料するときは、被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及び証拠物とともに検察官に送致する手続をしなければなりません(203条1項)。「留置の必要がないと判断したときは,被疑者を検察官に送致することなく,直ちに釈放しなければならない」という肢は正しく、「留置の必要がないと思料するときでも,これを釈放することなく」送致しなければならないという肢は誤りです。釈放できるのは司法警察員で、司法巡査が自分の判断で釈放することはできません。「司法巡査が,器物損壊被疑事件の被疑者を現行犯人として逮捕した後,留置の必要がないと考え,すぐに釈放した」のは違法です。48時間の起算点は身体を拘束された時であって、司法警察員が被疑者を受け取った時でも、緊急逮捕の逮捕状が発付された時でもありません。「被疑者を受け取った時から48時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない」という肢は誤りです。司法巡査が午後9時20分に現行犯逮捕し午後10時に引致した事例では、送致の期限は2日後の午後9時20分で、「午後10時までにしなければならない」という肢は誤りです。時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに釈放しなければなりません(203条5項)。送致の後も、司法警察職員が被疑者を取り調べることはできます。
検察官は、受け取った時から24時間以内かつ身体を拘束された時から72時間以内に勾留を請求するか公訴を提起します
送致された被疑者を受け取った検察官は、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちに釈放し、留置の必要があると思料するときは、被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に勾留を請求しなければなりません(205条1項)。この24時間は、被疑者が身体を拘束された時から72時間を超えることができません(205条2項)。二つの制限は重なって働くので、先に来る方が期限です。「被疑者を受け取った時から48時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない」という肢は誤りです。現行犯逮捕が3日午後2時10分で検察官の受取りが5日午後2時35分の事例では、24時間なら6日午後2時35分ですが、72時間の上限が6日午後2時10分に来るので、期限は6日午後2時10分です。「平成25年3月6日午後2時35分までに裁判官に勾留を請求すれば足りる」という肢は誤りです。同じく逮捕が1日午前10時で受取りが3日午前10時30分なら、期限は4日午前10時で、「4日午前10時30分までに行えば足りる」という肢は誤りです。時間で計算する期間は即時から起算します(55条1項)。検察官が自ら逮捕状により逮捕したとき、又は送致によらずに逮捕された被疑者を受け取ったときは、身体を拘束された時から48時間以内に勾留を請求します(204条1項)。「検察官は,逮捕状により被疑者を逮捕したときは,…被疑者が身体を拘束された時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない」という肢は誤りです。勾留請求をせずに釈放することに裁判官の裁判は要りません。
- 司法巡査・検察事務官が逮捕直ちに司法警察員・検察官に引致する(202条)
- 司法警察員要旨と弁護人選任権を告げ弁解の機会を与え、留置の必要がなければ釈放、あれば身体を拘束された時から48時間以内に検察官に送致(203条)
- 検察官(送致を受けた場合)受け取った時から24時間以内、かつ身体を拘束された時から72時間以内に勾留請求か公訴提起(205条)
- 検察官(自ら逮捕した場合)身体を拘束された時から48時間以内に勾留請求か公訴提起(204条)
- 時間の数え方時で計算する期間は即時から起算する(55条1項)
時間内に勾留請求も公訴提起もしなければ釈放しますが、逮捕中に公訴を提起することはできます
時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(204条4項・205条4項)。時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しません(204条1項但書・205条3項)。したがって逮捕中の被疑者を起訴することはでき、「検察官は,逮捕中の被疑者につき,公訴を提起することはできない」という肢と、「逮捕中に公訴を提起することはできず,勾留を請求するか,又は釈放しなければならない」という肢は誤りです。逮捕されている事実で公判請求する場合に、「勾留状が発付されていないので甲を釈放した上で公判請求しなければならない」という肢も誤りです。逮捕中に起訴されると、被告人の身体拘束は裁判官又は裁判所の勾留の判断に移ります(280条)。検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によって時間の制限に従えなかったときは、検察官は裁判官にその事由を疎明して勾留を請求でき、裁判官は遅延がやむを得ない事由に基づく正当なものと認める場合でなければ勾留状を発することができません(206条)。期限が当然に延びるわけではありません。勾留請求を受けた裁判官の手続と勾留期間は、勾留質問の語と勾留期間と延長の語で扱います。任意同行の後の取調べが実質的な逮捕と評価されると、時間制限はその時点から走ります。
刑事訴訟法203条1項
司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
刑事訴訟法205条1項
検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
刑事訴訟法205条2項
前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
刑事訴訟法55条1項
期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。
論文ではこう使う
論文では、逮捕から勾留請求までの手続に違法がないかを時系列で点検する場面で使います。まず身体を拘束された時刻を確定し、任意同行から実質的な逮捕と評価される事案では、その時点を起算点に置き直します。次に、司法警察員の送致が48時間以内か、検察官の勾留請求が受取りから24時間以内かつ拘束から72時間以内かを計算し、超えていれば206条のやむを得ない事由があるかを検討します。時間制限に違反した逮捕に続く勾留請求は却下されるべきだという流れにつなげ、違法の程度が重大なら、その間に得られた自白や証拠の証拠能力にも触れます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。