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用語集 / 刑事訴訟法 / 私人による現行犯逮捕と引渡し

私人による現行犯逮捕と引渡し(213条〜215条)とは

しじんによるげんこうはんたいほとひきわたし

刑事訴訟法 逮捕・勾留

私人による現行犯逮捕とは、検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者が、現行犯人を逮捕状なしに逮捕することです(刑事訴訟法213条)。逮捕した私人は、直ちに検察官又は司法警察職員に引き渡さなければなりません(214条)。

コンビニで万引きした人を店員が取り押さえる、ひったくり犯を通行人が捕まえる、といった場面は珍しくありません。現行犯人は「何人でも」逮捕できるので、警察官でない私人にも逮捕が認められています。ただし私人には人を留め置く権限も捜査する権限もないので、逮捕したら直ちに検察官か司法警察職員に引き渡し、あとは捜査機関の手続に乗せます。私人が逮捕の現場で証拠を捜索したり差し押さえたりすることはできません。

交番の前の路上の場面。先生がコンビニ店員役(札「私人(店員)」)で、男性(札「現行犯人」)の腕を取って、交番から出てきた警察官の男性(札「司法巡査」)に引き渡そうとしている。店員役の先生の吹き出し「店で万引きした所を押さえました。私には留め

私人は、急速を要する場合に限らず、理由を告げなくても、犯行を見ていなくても現行犯人を逮捕できます

現行犯人は何人でも逮捕状なくして逮捕できます(刑事訴訟法213条)。私人の逮捕に特別の要件はなく、相手が212条の現行犯人か準現行犯人であれば足ります。「私人は、急速を要する場合に限り、その理由を告げた上で現行犯人を逮捕することができる」という肢は誤りで、急速を要することと理由の告知は緊急逮捕の要件です。緊急逮捕は捜査機関だけができ、私人にはできません。また、逮捕者が犯行を現に目撃していることも要りません。判例は、漁業監視船が密漁船を追跡したものの追い付けず、付近の漁船に事情を告げて追跡を依頼し、依頼を受けた漁船が約3時間追跡を続けた事案で、いずれも213条に基づく適法な現行犯逮捕の行為であるとしました(最判昭和50年4月3日)。「私人が現行犯逮捕する場合には、その私人が犯行を現に目撃していなければならない」という肢は誤りです。私人の現行犯逮捕には裁判官の裁判は要りません。

逮捕した私人は、直ちに地方検察庁・区検察庁の検察官か司法警察職員に引き渡さなければなりません

検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければなりません(214条)。「私人が現行犯人を逮捕したときは,直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない」という肢は正しいです。引渡しの相手の司法警察職員には司法巡査も含まれ、司法巡査は現行犯人を受け取ったときは速やかに司法警察員に引致し、逮捕者の氏名、住居及び逮捕の事由を聴き取らなければなりません(215条)。「司法巡査が、私人から現行犯人を受け取り、これを司法警察員に引致した」という行為は適法です。私人から現行犯人の引渡しを受けることは、検察官と司法警察員のいずれもができる権限に当たります。

  • 私人(捜査機関以外の者)現行犯人を逮捕できる(213条)。逮捕したら直ちに検察官か司法警察職員に引き渡す(214条)。逮捕の現場での捜索・差押えはできない
  • 司法巡査現行犯人を受け取ったら速やかに司法警察員に引致し、逮捕者の氏名・住居・逮捕の事由を聴き取る(215条)
  • 司法警察員・検察官引渡しを受けたら、犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げて弁解の機会を与え、釈放するか48時間以内に送致・勾留請求する(216条・203条・204条)。逮捕状を求める手続は要らない

引渡しを受けた司法警察員は、逮捕状を求める手続をする必要はなく、通常の逮捕後の手続に進みます

現行犯逮捕は憲法33条自身が認める令状主義の例外なので、事後に裁判官の逮捕状を求める必要はありません。「司法警察員は,私人から現行犯人の引渡しを受けた場合,直ちに逮捕状を求める手続をしなければならず,逮捕状が発せられないときは,直ちに釈放しなければならない」という肢は誤りです。事後に逮捕状を請求するのは緊急逮捕の場合です。引渡しを受けた司法警察員は、216条が準用する203条に従い、直ちに犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告げて弁解の機会を与え、留置の必要がなければ釈放し、必要があれば検察官に送致します。

警察署の取調室の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で机に座り、向かいに引き渡された男性(札「被疑者」)が座っている。机の上に「弁解録取書」と書かれた書類がある。壁の時計の横に札「48時間は私人が逮捕した時から」。先生の吹き出し「現行犯

送致の48時間は、私人が逮捕した時から数え、引渡しを受けた時からではありません

司法警察員が送致の手続をすべき時間制限は、「被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内」です(203条1項)。私人が現行犯逮捕した事案では、身体の拘束が始まったのは私人が取り押さえた時ですから、48時間はその時から進行します。引渡しまでにかかった時間の分だけ拘束できる時間が延びることになると、厳格な時間制限の趣旨に反するからです。「逮捕された時からではなく、その者を受け取った時から、48時間以内に検察官に送致する手続をしなければならない」という肢は誤りです。その後の検察官の24時間・72時間は、逮捕後の手続と時間制限の語で扱います。

現行犯人を逮捕した私人は、逮捕の現場で令状によらない捜索・差押えをすることはできません

逮捕の現場で令状なしに捜索・差押えができるのは、検察官、検察事務官又は司法警察職員が逮捕する場合です(220条1項)。私人はこの主体に含まれていません。私人に認められているのは逮捕と引渡しだけで、強制処分である捜索・差押えの権限はありません。「現行犯人を逮捕した私人は,逮捕の現場で令状によらずに差押えをすることができる」という肢は誤りです。被告人の段階には逮捕はなく、私人が関わる余地もありません。

刑事訴訟法213条

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

刑事訴訟法214条

検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

刑事訴訟法215条1項

司法巡査は、現行犯人を受け取つたときは、速やかにこれを司法警察員に引致しなければならない。

試験ではこう問われる

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