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用語集 / 刑事訴訟法 / 現行犯逮捕

現行犯逮捕(現行犯人の意義・現認の要否・軽微事件の特則217条)とは

げんこうはんたいほ

刑事訴訟法 逮捕・勾留

現行犯逮捕とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者(現行犯人)を、逮捕状なしに逮捕することです(刑事訴訟法212条1項・213条)。犯罪と犯人がその場で明白なので、裁判官の審査を経ずに誰でも逮捕できます。

目の前で自転車を盗んで走り出した人を、警察官が「裁判官の逮捕状を取ってくるまで待ってください」と言って見送るわけにはいきません。犯罪と犯人がその場で明らかなら、裁判官の審査を先に通さなくても誤って無関係の人を捕まえる危険が小さいので、逮捕状なしで、しかも誰でも逮捕できることにしています。これが現行犯逮捕です。令状主義の例外なので、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」と言えるかは、逮捕した人の思い込みではなく、その場の客観的な状況から判断します。

昼の住宅街の路上の場面。先生が警察官役(札「司法警察職員」)で、倒れた自転車のそばに立つ男性(札「現行犯人」)の腕を取っている。少し離れて自転車の持ち主の男性(札「被害者」)が指をさしている。被害者の吹き出し「今、目の前で私の自転車に乗って

現行犯人は、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者で、逮捕状なしに誰でも逮捕できます

現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人といい(刑事訴訟法212条1項)、現行犯人は何人でも逮捕状なくして逮捕することができます(213条)。憲法33条も現行犯として逮捕される場合を令状主義の例外として認めています。裁判官の審査を省けるのは、犯罪と犯人が誰の目にも明らかで、人違いの危険が小さいからです。したがって現行犯逮捕には、犯罪と犯人の明白性と、犯行との時間的な接着性が要ります。「私人でも,現行犯逮捕することができる」という肢は正しいです。これに対し、「罪を行い終わってから間がないと認められないときでも,罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があり,急速を要する場合には,現行犯逮捕することができる」という肢は誤りです。それは緊急逮捕の要件であり、現行犯逮捕とは別の制度です。

「現に罪を行い終わった者」に当たるには、実行行為の完了や既遂は要りません

「現に罪を行い終つた者」とは、実行行為を終えた直後の者をいい、行為を終えた瞬間かそれにきわめて接着した時間の段階にある者を指します。結果が発生したかどうかは関係なく、実行行為の全部を完了したことも要りません。実行に着手したところで取り押さえられた未遂の者も、現に罪を行っている者として逮捕できます。「犯罪の実行行為の全部を完了していることが必要である」という肢と、「犯罪が既遂に達していることが必要である」という肢はいずれも誤りです。「未遂犯の処罰規定のある犯罪の実行に着手した者については,その犯罪が既遂に達していなくとも,現行犯逮捕することができる」という肢は正しいです。

逮捕者が犯行を現認している必要はなく、明白性は逮捕時の客観的な状況から判断します

現に罪を行っている者の逮捕では逮捕者が犯行を見ているのが普通ですが、現に罪を行い終わった者の逮捕は、犯行の後に駆けつけた人がすることも多く、逮捕者が犯行を現認した場合に限られません。「現行犯逮捕が許されるためには,逮捕者が,少なくとも犯行の一部を現認していることが必要である」という肢は誤りです。明白性は、犯行からの時間と場所、通報の時期や内容、被害者や目撃者との接触の状況、犯人の様子など、逮捕時の諸般の事情を総合して客観的に判断します。判例は、住居侵入の直後に急報を受けて自転車で駆けつけた警察官が、現場から約30メートル離れた地点で犯人を逮捕した事案を「現に罪を行い終つた者」に当たるとしており、この逮捕者は犯行そのものを見ていません(最決昭和33年6月4日)。ただし、客観的な状況から明らかでなければ現行犯逮捕はできません。通報を受けて犯行の二十数分後に現場近くで人相や服装の似た者を見つけ、被害者を呼んで犯人に間違いないという供述を得てから逮捕した事案では、逮捕者自身が直接明白に覚知できる状況がなく、被害者の供述によって初めて犯人と認めたにすぎないとして、現行犯逮捕も準現行犯逮捕も要件を欠くとされました(京都地決昭和44年11月5日)。犯行から時間がたち、追呼や証跡などの事情から犯人と判断する場合は、準現行犯逮捕の語で扱います。

30万円以下の罰金・拘留・科料の罪の現行犯は、住居か氏名が明らかでないか逃亡のおそれがある場合に限って逮捕できます

30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については当分の間2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、現行犯逮捕の規定を適用します(217条)。軽い罪で身体の自由を奪うことは釣り合わないので、身元が分からず後で呼び出せないか、逃げそうなときだけ逮捕を許す趣旨です。したがって、現行犯逮捕の要件には法定刑の軽重による差異が設けられています。「現行犯人を逮捕することができる要件については,犯罪の法定刑の軽重による差異はない」という肢は誤りです。「30万円以下の罰金に当たる罪については,犯人の住居又は氏名が明らかでない場合に限り,現行犯逮捕することができる」という肢は、逃亡のおそれがある場合を落としているので誤りです。拘留又は科料に当たる軽犯罪法違反で、住居を一切答えない者を現行犯逮捕した事例問題は、この特則を満たしています。同じ法定刑の線引きは、通常逮捕の要件(199条1項但書)と勾留の要件(60条3項)にもあります。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に二段の表。上段の見出し「ふつうの罪の現行犯」、その右に「何人でも逮捕状なくして逮捕できる(213条)」。下段の見出し「30万円以下の罰金・拘留・科料の罪の現行犯(21

現行犯逮捕の後の手続は、逮捕状による逮捕と同じ規定が準用されます

現行犯人が逮捕された場合には、逮捕状により逮捕された場合に関する規定が準用されます(216条)。司法巡査が逮捕したときは直ちに司法警察員に引致し、司法警察員は犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告げて弁解の機会を与え、留置の必要があれば身体を拘束された時から48時間以内に検察官に送致します。送致の時間制限の起算点は、引致の時ではなく身体を拘束された時です。これらは逮捕後の手続と時間制限の語で扱います。また、現行犯逮捕の現場では、令状なしに捜索・差押えができますが(220条1項2号・3項)、これができるのは検察官、検察事務官又は司法警察職員であり、現行犯人を逮捕した私人にはできません。この点は逮捕に伴う捜索・差押えの語と私人による現行犯逮捕の語で扱います。被告人の段階には現行犯逮捕はなく、起訴後の身体拘束は裁判所の勾引・勾留によります。

刑事訴訟法212条1項

現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。

刑事訴訟法213条

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

刑事訴訟法217条

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。

論文ではこう使う

論文では、無令状の逮捕が適法かを問われたときに、まず212条1項の現行犯人に当たるかを、犯罪と犯人の明白性と時間的な接着性に分けて当てはめます。明白性は、逮捕者が何を見聞きしていたか、通報の内容、犯行からの時間と距離、被疑者の様子や所持品といった逮捕時の客観的な事情から認定し、被害者や目撃者の供述だけで犯人と判断した場合は明白性が弱いことを指摘します。犯行から時間がたっている事案では、212条2項各号の事由を検討して準現行犯逮捕に進みます。軽微な罪の事案では217条の特則を忘れずに当てはめます。現行犯逮捕にも逮捕の必要性が要るかは争いがあるので、必要性を欠く事情が問題文にあれば一言触れます。逮捕が違法なら、逮捕に伴う捜索・差押えの適法性や、その後の勾留請求の可否につなげます。

試験ではこう問われる

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