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用語集 / 刑事訴訟法 / 通常逮捕

通常逮捕(逮捕状の請求・発付・逮捕の必要性・緊急執行)とは

つうじょうたいほ

刑事訴訟法 逮捕・勾留

通常逮捕とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判官があらかじめ発する逮捕状によって被疑者を逮捕することです(刑事訴訟法199条1項)。

警察官が「この人が犯人だろう」と考えても、自分の判断だけで身体を拘束することはできません。あらかじめ裁判官に事情を説明し、逮捕状を出してもらってから逮捕します。これが通常逮捕です。逮捕は人の自由を大きく奪うので、捜査機関とは別の立場の裁判官が「本当に逮捕するだけの理由があるか」「逮捕しなくても済むのではないか」を先に点検する仕組みになっています。逮捕状は被疑者に示して執行するのが原則ですが、持ち合わせがなく急ぐときは、要旨を告げて先に逮捕することが認められています。

裁判官室で令状を審査する場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で机に座り、手元の「逮捕状請求書」と「疎明資料」を読んでいる。机の前に警察官の男性(札「司法警察員(警部)」)が立っている。机の端に「逮捕状」と書かれた紙が一枚置かれ、まだ判は押さ

逮捕状を請求できるのは検察官と指定司法警察員ですが、執行は司法巡査や検察事務官もできます

逮捕状により逮捕できるのは、検察官、検察事務官又は司法警察職員です(刑事訴訟法199条1項)。司法警察職員は司法警察員と司法巡査の両方を含むので、司法巡査も逮捕状による逮捕はできます。これに対し、逮捕状を裁判官に請求できるのは検察官又は司法警察員に限られ、警察官である司法警察員は国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限られます(199条2項)。請求の段階で主体を絞るのは、逮捕状の濫発を防ぐためです。執行の段階ではその心配がないので、広く認められています。「司法巡査は,通常逮捕の逮捕状を請求することはできないが,逮捕状により被疑者を逮捕することはできる」という肢は正しいです。捜査機関の行為の適法性を問う問題でも、「司法巡査が,裁判官が発付した逮捕状により,被疑者を逮捕した」は適法で、「司法巡査が,裁判官に対し被疑者の逮捕状の発付を請求した」は違法です。検察官と司法警察員のいずれもが行使できる権限として「逮捕状により被疑者を逮捕すること」が挙げられていれば、これは当たります。

  • 逮捕状の請求検察官、司法警察員(警察官は公安委員会が指定する警部以上の者)。司法巡査・検察事務官はできません(199条2項)
  • 逮捕状による逮捕(執行)検察官、検察事務官、司法警察職員(司法警察員・司法巡査)。司法巡査が逮捕したときは直ちに司法警察員に引致します(199条1項・202条)
  • 逮捕状の発付裁判官。相当な理由があっても、明らかに逮捕の必要がないときは発しません(199条2項但書)

裁判官は相当な理由があっても、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕状を発しません

逮捕状の要件は二つです。一つは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることで、これを逮捕の理由といいます。もう一つは逮捕の必要性で、裁判官は相当な理由があると認めるときでも、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕状を発しません(199条2項但書)。逮捕の必要性は、被疑者の年齢や境遇、犯罪の軽重や態様など諸般の事情に照らして、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあるかで判断します(刑事訴訟規則143条の3)。「明らかに」という限定を付けたのは、捜査の全体を知らない裁判官が必要性の判断に深入りして捜査を止めてしまわないようにしつつ、逮捕状の濫発は防ぐためです。「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは,常に逮捕状を発しなければならない」という肢は誤りです。身体の拘束がないまま警察から送致を受けた事件でも、検察官が罪証隠滅のおそれがあるとして自ら逮捕状の発付を受けて逮捕することは適法です。なお、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合か、正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合に限って逮捕状による逮捕ができます(199条1項但書)。

逮捕状は被疑者に示して執行するのが原則ですが、急速を要するときは要旨を告げて逮捕する緊急執行ができます

逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければなりません(201条1項)。被疑者が外国人であっても同じで、「同被疑者に逮捕状を示さなくても違法ではない」という肢は誤りです。ただし、逮捕状を所持しないため示すことができない場合で急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕することができます(201条2項・73条3項)。これを逮捕状の緊急執行といいます。指名手配中の被疑者を手元に逮捕状のない警察官が発見した場面がその例です。緊急執行をしたときも、逮捕状はできる限り速やかに示さなければなりません。「以後も被疑者に逮捕状を示す必要はない」という肢は誤りです。また、201条1項は示す時期を逮捕の着手前に限ってはいないので、「逮捕の着手に先立って必ず逮捕状を被疑者に示さなければならない」という肢も誤りです。逮捕状が発付されている事実について緊急逮捕ができるかという見解問題は、緊急逮捕の語で扱います。

夕方の駅前の路上の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で、上着のポケットを押さえながら男性(札「被疑者(指名手配中)」)に向き合っている。先生の手には何も持っていない。先生の吹き出し「あなたには窃盗の被疑事実で逮捕状が発せられている。逮

逮捕のときに弁護人へ通知する義務はなく、通知の規定があるのは勾留のときです

被告人を勾留したときは、直ちに弁護人に通知し、弁護人がないときは法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人に通知しなければなりません(79条)。この規定は被疑者の勾留にも準用されます(207条1項)。これに対し、逮捕の段階には同じ規定がありません。「司法警察員は,被疑者を逮捕したときは,直ちに,弁護人にその旨を通知しなければならず」という肢は誤りです。逮捕のときに被疑者本人に対してすべきことは、犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨の告知と弁解の機会の付与です(203条・204条)。この流れは逮捕後の手続と時間制限の語で扱います。

逮捕状を発付した裁判には準抗告できず、逮捕の違法は勾留の裁判で争います

裁判官の裁判に対する準抗告の対象は、429条1項に列挙された裁判に限られ、勾留に関する裁判は入っていますが、逮捕に関する裁判は入っていません。判例も、逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないとしています(最決昭和57年8月27日)。「被疑者又は弁護人は,逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができる」という肢は誤りです。準抗告の対象を問う問題で「裁判官がした,逮捕状を発付する裁判」が挙がっていれば、対象に当たりません。逮捕の違法は、これに続く勾留請求の審査で裁判官が判断し、勾留の裁判に対する準抗告の中で争うことになります。被告人の段階では、起訴後の身体拘束は裁判所の勾引・勾留によるので、逮捕状の制度はそもそもありません。

刑事訴訟法199条1項本文

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

刑事訴訟法199条2項

裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項及び第二百一条の二第一項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

刑事訴訟法73条3項(201条2項が逮捕状に準用)

勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。

最決昭和57年8月27日

逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれない

論文ではこう使う

論文では、逮捕の適法性を問われたときに、まず通常逮捕か現行犯逮捕か緊急逮捕かを確定し、通常逮捕なら199条1項の相当な理由と199条2項但書の逮捕の必要性を順に当てはめます。必要性は、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれを、被疑者の年齢や境遇、犯罪の軽重や態様から具体的に拾って書きます。出頭の求めに応じないことは必要性を基礎づける一事情になりますが、それだけで必要性が認められるわけではありません。逮捕状を示さずに逮捕した事案では、201条2項・73条3項の緊急執行の要件(所持しないため示せないこと、急速を要すること、要旨と令状発付の告知)を満たすか、事後に速やかに示したかを検討します。逮捕が違法と評価されるときは、それに続く勾留請求が却下されるかという論点につなげます。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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