抗告・即時抗告・準抗告とは
こうこくそくじこうこくじゅんこうこく
抗告とは、裁判所の決定に対する上訴で、特別の定めがある場合に3日以内にする即時抗告と、期間の定めの無い通常抗告があります。準抗告とは、裁判官の裁判や検察官・司法警察職員の一定の処分に対して、裁判所にその取消し・変更を求める不服申立てです。
判決を待たずに決まる途中の判断にも不服を言いたいことがあります。保釈を却下された、押収された物を返してもらえない、弁護人との接見を制限された、などです。しかし証拠を採用するかどうかのような判断にまでいちいち上級審の判断を仰いでいては裁判が進みません。そこで法律は、身体拘束や押収のように人に直接響く決定にだけ抗告を認め、それ以外の途中の決定は判決への上訴の中で争わせます。裁判官一人の裁判や捜査機関の処分には準抗告という別の窓口があります。
抗告には即時抗告と通常抗告があり、即時抗告は明文がある場合に限り3日以内にします
抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合のほか、裁判所のした決定に対してすることができます(刑事訴訟法419条)。即時抗告の提起期間は3日で(422条)、提起期間内と申立てがあったときは裁判の執行が停止されます(425条)。通常抗告はいつでもできますが、原決定を取り消しても実益が無くなったときはできず(421条)、執行停止の効力はありません(424条)。即時抗告は法が個別に認めた決定に限られ、公判前整理手続に付する請求を却下する決定や訴因変更を許可する決定に即時抗告を認める規定はありません。「訴因変更を許可する裁判所の決定に対し、適法に即時抗告をすることができる」という肢、公判前整理手続に付する請求の「却下決定に対して即時抗告をすることができる」という肢は誤りです。他方、公判前整理手続の証拠開示に関する裁定の決定(316条の26)や上訴権回復の請求についての決定(364条)には即時抗告が認められています。「この決定に対して即時抗告をすることができる」という証拠開示の裁定の肢は正しいです。抗告の申立書は原裁判所に差し出し(423条)、抗告裁判所の決定にはさらに抗告できません(427条)。高等裁判所の決定には抗告できず、代わりにその高等裁判所に異議の申立てをします(428条)。
判決前の訴訟手続に関する決定には抗告できませんが、勾留・保釈・押収・鑑定留置の決定にはできます
裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、即時抗告の規定がある場合を除いて抗告できません(420条1項)。証拠調べの決定、訴因変更の許可、被害者特定事項の秘匿決定などがこれに当たり、その当否は判決に対する控訴の中で争います。証拠調べに関する決定に不服があれば異議の申立て(309条)をするのであって、「検察官調書の証拠調べをする決定に不服がある場合には、直ちに抗告する必要がある」という肢は誤りです。ただし、勾留、保釈、押収、押収物の還付、電磁的記録提供命令に関する決定と鑑定留置の決定には抗告できます(420条2項)。身体拘束や財産への影響が直接で、判決まで待てないからです。検察官は保釈を許可する決定に抗告でき、「検察官は、保釈を許可する裁判所の決定に対し、適法に抗告をすることができる」という肢は正しいです。被告人も、第1回公判期日後に裁判所がした保釈却下決定や、判決宣告後にその裁判所がした保釈却下決定に対して高等裁判所に抗告できます。「宣告した裁判所のした被告人の保釈請求を却下する決定に対しては、被告人は高等裁判所に抗告をすることができる」という肢は正しいです。裁量保釈の決定に対する抗告審は、受訴裁判所の判断が裁量の範囲を逸脱していないか、すなわち不合理でないかを審査し、覆すには不合理であることを具体的に示す必要があります(最決平成26年11月18日)。勾留に対しては、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告することはできません(420条3項)。「被告人に犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることができる」という肢は誤りです。嫌疑の有無は本案で判断すべき事項だからです。検察官又は被告人以外の者で決定を受けた者も抗告できます(352条)。
準抗告の対象は裁判官の一定の裁判と捜査機関の接見指定・押収・押収物還付で、逮捕状の発付や写真撮影は対象外です
裁判官が、忌避の申立てを却下する裁判、勾留・保釈・押収・押収物の還付・電磁的記録提供命令に関する裁判、鑑定留置を命ずる裁判、証人・鑑定人等に対する過料・費用賠償の裁判、身体の検査を受ける者に対する過料・費用賠償の裁判をした場合に、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所に、取消し又は変更を請求できます(429条1項)。これが裁判官の裁判に対する準抗告で、請求を受けた地方裁判所は合議体で決定します(同条4項)。申立先は所属の裁判所であって高等裁判所ではなく、「地方裁判所の裁判官がした勾留請求を却下する裁判に対して高等裁判所に準抗告をすることができる」という肢は誤りです。検察官は勾留請求却下の裁判に準抗告でき、弁護人は勾留期間を延長する裁判に対してやむを得ない事由が無いことを理由に準抗告でき、勾留場所の変更を求める準抗告もできます。逮捕状の発付は429条1項の裁判に含まれず、判例も逮捕に関する裁判とこれに基づく処分は準抗告の対象にならないとしています(最決昭和57年8月27日)。「逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができる」という肢は誤りです。429条の裁判官は、受命・受託裁判官や起訴前・第1回公判期日前に処分をする裁判官を指すので、第1回公判期日後に裁判所がした保釈却下の決定は裁判所の決定として抗告の対象であり、「第1回公判期日後の保釈請求を却下する裁判に対して準抗告をすることができる」という肢は誤りです。勾留に対する準抗告でも、犯罪の嫌疑がないことを理由とすることはできません(同条2項)。
捜査機関の処分に対する準抗告は接見指定・押収・押収物還付に限られ、供述調書の署名や捜索時の写真撮影は対象外です
検察官又は検察事務官のした接見指定の処分(39条3項)、押収、押収物の還付、電磁的記録提供命令、複写に関する処分に不服がある者は、その検察官等が所属する検察庁の対応する裁判所に取消し又は変更を請求でき(430条1項)、司法警察職員のした同じ処分に不服がある者は、職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に請求できます(同条2項)。対象はこれらの処分に限られます。「検察官の接見指定に対する準抗告」はできます。被疑者が供述録取書に署名したことの取消しを求める準抗告はできず、「これに被疑者が署名したことの取消しを求める準抗告をすることができる」という肢は誤りです。捜索差押許可状の執行に際して差し押さえるべき物に当たらない印鑑などを写真撮影した行為について、判例は、それ自体としては検証としての性質を有するので430条2項の押収に関する処分には当たらないとして、ネガと写真の廃棄又は引渡しを求める準抗告を不適法としました(最決平成2年6月27日)。「ネガ及び写真の廃棄又は引渡しを求める準抗告をすることができない」という肢は正しいです。準抗告の請求には行政事件訴訟の法令は適用されず(430条3項)、請求書を管轄裁判所に差し出します(431条)。抗告裁判所や高等裁判所の決定、準抗告についての決定に対しては、憲法違反や判例違反を理由とする場合に限り最高裁判所に特別抗告ができます(433条)。
- 即時抗告明文がある決定だけ(例=証拠開示の裁定、上訴権回復の決定、執行猶予取消しの決定)。3日以内(422条)。執行停止あり(425条)
- 通常抗告(419条・420条)裁判所の決定。判決前の訴訟手続に関する決定は不可(420条1項)。勾留・保釈・押収・押収物還付・鑑定留置は可(2項)。勾留に嫌疑なしを理由にはできない(3項)。いつでも可、執行停止なし
- 異議の申立て(428条)高裁の決定には抗告できず、その高裁に異議。証拠調べに関する決定への不服は309条の異議
- 準抗告(429条)裁判官の裁判(忌避却下・勾留・保釈・押収・押収物還付・鑑定留置・過料等)。所属裁判所(簡裁裁判官は管轄地裁)へ。逮捕状の発付は対象外。第1回公判期日後の裁判所の決定は抗告
- 準抗告(430条)検察官・検察事務官・司法警察職員の接見指定・押収・押収物還付等の処分。供述調書の署名、捜索時の写真撮影は対象外
- 特別抗告(433条)憲法違反・判例違反だけ。最高裁へ
刑事訴訟法420条1項
裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。
刑事訴訟法420条3項
勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。
刑事訴訟法422条
即時抗告の提起期間は、三日とする。
刑事訴訟法428条1項
高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。
刑事訴訟法430条2項
司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。
論文ではこう使う
論文で不服申立ての経路を問われたときは、不服の対象が裁判所の決定か(抗告・即時抗告、高裁なら異議)、裁判官の裁判か(429条の準抗告、所属裁判所へ)、捜査機関の処分か(430条の準抗告、対象は接見指定・押収・押収物還付等に限る)を先に分け、次に対象が条文に列挙されているか(判決前の訴訟手続の決定は不可、逮捕状の発付は不可)と、理由の制限(勾留に嫌疑なしは不可)を当てはめます。捜査機関の処分が押収に当たるかが争点なら、写真撮影は検証の性質で押収ではないとした判例を規範に、物の外形の撮影か内容の逐一の撮影かで当てはめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。