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用語集 / 刑事訴訟法 / 証拠開示

証拠開示(検察官請求証拠・一覧表・類型証拠・主張関連証拠・弁護側の開示義務・裁定)とは

しょうこかいじ

刑事訴訟法 公判手続と公判前整理手続

証拠開示とは、公判前整理手続の中で、検察官が取調べを請求した証拠と、被告人側の防御に必要な手持ち証拠を被告人側に閲覧・謄写させ、被告人側も自分の請求証拠を検察官に見せる仕組みです(刑事訴訟法316条の14〜316条の20)。検察官請求証拠の開示、類型証拠の開示、主張関連証拠の開示の三段階で進み、争いがあれば裁判所が決定で裁定します(316条の25〜316条の27)。

捜査で集めた証拠は検察官の手元にあり、弁護人は公判で何が出てくるのか分かりません。公判前整理手続では、検察官がまず自分が請求する証拠を見せ、次に弁護人がその証拠の信用性を確かめるための証拠を求め、主張を明らかにした後はその主張に関係する証拠を求められます。段階を追って広げるのは、全部を一律に見せると証人への働きかけなどの弊害があり、何も見せないと防御が成り立たないからです。争いになれば裁判所が決め、その決定には双方が即時抗告できます。

検察庁の記録閲覧室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で、机をはさんで座る男性の弁護人(札「弁護人」)に、表紙に「検察官請求証拠」と書かれた記録と「証拠の一覧表」と書かれた紙を差し出している。弁護人の横には小さなコピー機。壁の掲示に「閲覧

検察官請求証拠は速やかに閲覧・謄写させ、請求があれば保管する証拠の一覧表を交付しなければなりません

検察官は、取調べを請求した証拠(検察官請求証拠)について、速やかに、被告人又は弁護人に開示をしなければなりません(刑事訴訟法316条の14第1項)。証拠書類又は証拠物は閲覧する機会を与え、弁護人に対しては閲覧し、かつ、謄写する機会を与える方法(同項1号)、証人・鑑定人・通訳人・翻訳人はその氏名及び住居を知る機会を与え、公判期日で供述すると思料する内容が明らかになる供述録取書等を閲覧させる方法(同項2号)によります。「検察官は,証明予定事実を証明するために取調べを請求した証拠については,速やかに,被告人又は弁護人に対し,開示をしなければならない」という肢と、「弁護人に対し,取調べ請求に係る証拠書類や証拠物を閲覧し,かつ,謄写する機会を与えなければならない」という肢は正しいです。平成28年改正で、検察官は検察官請求証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があったときは、速やかに、検察官が保管する証拠の一覧表を交付しなければならないことになりました(同条2項)。一覧表には証拠物の品名と数量、供述録取書の標目・作成年月日・供述者の氏名などを記載しますが(同条3項)、人の身体や財産への加害のおそれ、名誉や社会生活の平穏を著しく害するおそれ、犯罪の証明や捜査に支障を生ずるおそれがある事項は記載しないことができます(同条4項)。「弁護人は、検察官が取調べを請求した証拠の開示を受けた後、検察官に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付を請求する権利を有する」という肢と、「検察官請求証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があったときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない」という肢は正しいです。平成27年出題の「弁護人は,検察官請求証拠の開示を受けた後,検察官に対し,それ以外の証拠の標目を記載した一覧表の交付を請求する権利を有する」という肢は、出題当時はそのような権利が無く誤りでしたが、現行法では316条の14第2項により交付を請求できます。

類型証拠は、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要なものを、必要性と弊害を比べて相当と認めるときに開示し、請求に主張の明示は要りません

検察官は、検察官請求証拠として開示した証拠以外の証拠で、316条の15第1項各号の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があった場合に、その重要性の程度その他の防御の準備のために開示をすることの必要性の程度と、開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに開示しなければなりません(同項柱書)。必要と認めるときは開示の時期・方法を指定し条件を付けられます。要件は、類型該当性、証明力判断にとっての重要性、必要性と弊害の比較の三つです。だから、検察官が請求した被告人の検面調書に対し、司法警察員作成の被告人の供述録取書が「重要かつ必要であると認められ,その重要性及び必要性の程度が高いときには,検察官は,速やかに当該供述録取書を開示しなければならない」という肢は、弊害との比較を落としているので誤りです。被告人の供述録取書等は7号の類型に入り、検面調書の証明力判断に重要なら開示の対象になります。請求に当たって被告人側が明らかにするのは、類型と証拠を識別するに足りる事項、及びその証拠が検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であることその他開示が必要である理由です(同条3項)。自分の主張を明示する必要はなく、主張の明示(316条の17)は類型証拠の開示を受けた後にします。「類型証拠の開示請求をするに当たり,具体的に主張を明示しなければならない」という肢は誤りで、弁護人が類型証拠の開示請求を行うに際し「あらかじめ,下線部③に記載された主張を明らかにする必要はない」という肢は正しいです。

  • 1号〜4号証拠物/裁判所・裁判官の検証調書/捜査機関の検証調書等とこれに準ずる書面/鑑定書等とこれに準ずる書面
  • 5号検察官が証人尋問を請求した者、及び検察官請求の供述録取書等の供述者で不同意なら証人請求を予定している者の供述録取書等
  • 6号被告人以外の者の供述録取書等で、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの
  • 7号被告人の供述録取書等
  • 8号身体を拘束されている者の取調べ状況を記録した書面(取調べ状況記録書面)
  • 9号検察官請求証拠である証拠物の押収手続等記録書面
大学の教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ場面。黒板に階段状に並んだ三つの箱、下から「① 検察官請求証拠(316条の14)速やかに開示」「② 類型証拠(316条の15)特定の請求証拠の証明力判断に重要・必要性と弊害を比較」

6号の「直接証明しようとする事実の有無に関する供述」をどこまでと読むかで、署名押印の無い捜査報告書が類型に入るかが変わります

参考人から聴き取った内容を捜査官が書いた聴取捜査報告書に、参考人の署名も押印も無い場合、6号の類型に当たるかが見解問題で出ます。供述録取書等は「供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの」なので、この報告書を参考人の供述を録取した供述録取書と見るなら、参考人の署名又は押印が無い以上「供述録取書等」に当たらず、6号の類型に該当しません。見解Ⅰ(直接体験した事実に関する供述に限る)を採っても、見解Ⅱ(他者から伝聞した供述も含む)を採っても、この結論は同じです。「参考人の署名若しくは押印がない場合には『供述録取書等』に当たらないので,6号の証拠の類型に該当しない」という記述は見解Ⅰからの帰結として正しく、「捜査官の署名若しくは押印がある場合には『供述録取書等』に当たる」という記述は、録取書と見る以上必要なのは参考人の署名押印なので、見解Ⅰからの帰結として誤りです。見解Ⅱを採りつつ録取書と見る場合、参考人の供述は直接体験した事実の供述なので「直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえ、「といえず」とする記述は見解Ⅱからの帰結として誤りです。他方、この報告書を捜査官自身の供述書と見るなら、捜査官の署名押印で「供述録取書等」には当たりますが、中身は捜査官が参考人から伝え聞いた供述です。見解Ⅰからは直接体験した供述でないので6号に該当せず、「捜査官の供述書として『供述録取書等』に当たるから,6号の証拠の類型に該当する」という記述は見解Ⅰからの帰結として誤りです。見解Ⅱからは伝聞した供述も含むので6号に該当し、同じ記述は見解Ⅱからの帰結として正しいです。

主張関連証拠は予定主張に関連するものを「相当と認めるとき」に開示し、主張が相当であることは要件ではありません。被告人側も請求証拠を検察官に開示します

検察官は、既に開示した証拠以外の証拠で、被告人側が316条の17第1項により明らかにした主張に関連すると認められるものについて、開示の請求があった場合に、関連性の程度その他の防御の準備のために開示をすることの必要性の程度と、開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに開示しなければなりません(316条の20第1項)。「相当と認めるとき」は開示の必要性と弊害を比べた判断であって、被告人側の主張そのものが相当であることは要件ではありません。「当該主張が相当であると認められるときは,検察官から当該主張に関連する証拠の開示を受けることができる」という肢は誤りです。開示は一方通行ではありません。被告人又は弁護人は、316条の17第2項により取調べを請求した証拠を、速やかに検察官に開示しなければならず(316条の18)、検察官の請求を待つ必要はありません。「被告人又は弁護人は,公判前整理手続において取調べを請求した証拠については,検察官から開示の請求がなくても,検察官に対して,開示をしなければならない」という肢は正しく、「取調べを請求した証拠について,検察官に対し,開示する必要がない」という肢は誤りです。

開示をめぐる争いは裁判所が決定で裁定し、開示命令は「命じなければならない」で、双方が即時抗告できます

裁判所は、開示の必要性の程度と弊害を考慮して必要と認めるときは、検察官請求証拠については検察官の請求により、被告人側の請求証拠については被告人又は弁護人の請求により、決定で、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができます(316条の25第1項)。検察官が開示すべき証拠を開示していないと認めるとき、又は被告人側が316条の18の開示をしていないと認めるときは、相手方の請求により、決定で、その証拠の開示を命じなければなりません(316条の26第1項)。「裁判所は,被告人又は弁護人が開示をすべき証拠を開示していないと認めるときは,検察官の請求により,決定で,当該証拠の開示を命じなければならない」という肢は正しいです。これらの決定に対しては即時抗告をすることができ(316条の25第3項・316条の26第3項)、検察官も不服申立てができます。「証拠開示をめぐる当事者間の争いが生じた場合には,これを裁判所が決定で裁定し,不服のある当事者は,この決定に対して即時抗告をすることができる」という肢は正しく、「検察官は,証拠開示に関する裁判所の決定に対して,不服申立てをすることができない」という肢は誤りです。裁定に当たって必要があるときは、裁判所は証拠の提示を命ずることができ、提示を受けた証拠を何人にも閲覧・謄写させることはできません(316条の27第1項)。第1回公判期日前に受訴裁判所が証拠の提示を受けることになりますが、争点整理のために両当事者の関与のもとで行う裁定であり、心証形成のための提出ではないので起訴状一本主義に反しません。「証拠開示に関する裁定のためであっても、第1回公判期日前には証拠の提示を求めることはできない」という肢は誤りです。開示命令の対象になる証拠について、判例は、取調べに当たった警察官が職務の執行のために作成し職務上保管しているメモは、公務員が職務上現に保管し検察官において入手が容易なものとして開示命令の対象に含まれるとし、供述の信用性を争う主張との関連性と開示の必要性を認め、特段の弊害も無いとして開示命令を是認しました(最決平成20年9月30日)。

裁判官室の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で机に向かい、机の上に封のされた「取調べメモ(警察官作成)」と書かれた封筒と、「開示命令」と書かれた決定書。机の前に男性の検察官(札「検察官」)と男性の弁護人(札「弁護人」)が向かい合って立って

公判前整理手続によらない事件では、裁判所が訴訟指揮権に基づいて個別に開示を命じることができます

公判前整理手続に付されていない事件には316条の14以下の開示の規定が適用されません。それでも判例は、証拠調べの段階に入った後、弁護人から具体的な必要性を示して一定の証拠を閲覧させるよう検察官に命じてほしいとの申出があった場合、事案の性質、審理の状況、証拠の種類及び内容、閲覧の時期・程度・方法その他諸般の事情を勘案し、その閲覧が被告人の防御のため特に重要であり、かつ罪証隠滅、証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく相当と認めるときは、裁判所は訴訟指揮権に基づき開示を命ずることができるとしました(最決昭和44年4月25日)。公判前整理手続の証拠開示は、この個別の訴訟指揮に委ねられていた開示を、要件と手続を定めた制度に改めたものです。

刑事訴訟法316条の14第2項

検察官は、前項の規定による証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があつたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない。

刑事訴訟法316条の20第1項

検察官は、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一項第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

刑事訴訟法316条の18

被告人又は弁護人は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。

刑事訴訟法316条の26第3項

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

論文ではこう使う

論文で弁護人の開示請求の可否が問われたら、まず事件が公判前整理手続に付されているかを確かめ、付されていれば三段階のどれに当たるかを特定します。類型証拠なら、316条の15第1項の類型該当性、特定の検察官請求証拠の証明力判断にとっての重要性、必要性と弊害の比較の順に当てはめ、主張の明示が要らないことを添えます。主張関連証拠なら、316条の17で明示した主張との関連性、必要性と弊害の比較を書き、主張の相当性が要件でないことを指摘します。取調べメモのような捜査機関の内部文書は、平成20年決定の「公務員が職務上現に保管し、検察官において入手が容易なもの」という枠で開示命令の対象性を論じます。付されていない事件なら、昭和44年決定の訴訟指揮権の規範に当てはめます。

試験ではこう問われる

「証拠開示」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型9件と関係する過去問の肢24本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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