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用語集 / 刑事訴訟法 / 公判前整理手続の進行

公判前整理手続の進行(証明予定事実・予定主張の明示・結果の顕出・冒頭陳述義務)とは

こうはんぜんせいりてつづきのしんこう

刑事訴訟法 公判手続と公判前整理手続

証明予定事実とは、検察官が公判期日において証拠により証明しようとする事実であり、公判前整理手続は、検察官がこれを記載した書面を裁判所に提出して被告人側に送付し、証拠調べを請求するところから始まります(刑事訴訟法316条の13)。被告人側は開示を受けた後に予定主張を明らかにし(316条の17)、裁判所は整理の結果を確認して公判期日で明らかにし、被告人側は検察官の冒頭陳述に引き続いて冒頭陳述をします(316条の24・316条の30・316条の31)。

公判前整理手続は、検察官が「公判でこういう事実を証明する」と書いた書面を出すところから動き出します。弁護側は、その書面と開示された証拠を読んでから、正当防衛やアリバイのような自分たちの主張を明らかにします。どちらも手の内を先に見せ合うので、公判では争点だけに集中できます。最後に裁判所が整理の結果を確かめ、公判の冒頭でその結果を明らかにし、弁護側も検察官に続いて冒頭陳述をします。順序が決まっているのは、検察官の主張の全体像が分からないうちに弁護側に主張を迫ると、防御の準備ができないからです。

裁判所の準備手続室の場面。先生が裁判長役(札「裁判長」)でテーブルの奥に座り、左の男性の検察官(札「検察官」)が「証明予定事実記載書面」と表紙に書かれた書類を裁判長と右の男性の弁護人(札「弁護人」)の両方に差し出している。弁護人の手元には「

検察官は証明予定事実を記載した書面を裁判所に提出し被告人側に送付して証拠調べを請求しなければならず、免除はありませんが追加・変更はできます

検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければなりません(刑事訴訟法316条の13第1項)。この書面には、証拠とすることができず又は取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができません(同項後段)。「検察官は,事件が公判前整理手続に付されたときは,公判期日において証拠により証明しようとする事実を記載した書面を,裁判所に提出し,及び被告人又は弁護人に送付しなければならない」という肢は正しいです。提出も送付も義務であり、免除する規定はありません。「検察官は,刑事訴訟法上,裁判所に対し,証明予定事実記載書面の提出をしなくてもよい」という肢、「弁護人に対し,証明予定事実記載書面の送付をしなくてもよい」という肢、「証明予定事実を記載した書面について,裁判所への提出を免除される場合がある」という肢はいずれも誤りです。検察官は、証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならず(同条2項)、この請求には299条1項の事前閲覧の規定を適用しません(同条3項)。証明予定事実と請求証拠は、一連の手続が終わった後でも追加・変更する必要があれば、速やかに書面を提出・送付し、証拠の取調べを追加請求できます(316条の21)。「検察官は,証明予定事実を記載した書面を提出した後,その内容を追加・変更することはできない」という肢は誤りです。被告人側の主張と請求証拠も同じく追加・変更できます(316条の22)。

被告人側は、証明予定事実記載書面の送付と証拠開示を受けた後に、証拠意見を明らかにし、予定主張を明らかにして自分の請求証拠を開示します

被告人又は弁護人は、証明予定事実記載書面の送付を受け、かつ、検察官請求証拠と類型証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について326条の同意をするかどうか、又は取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければなりません(316条の16第1項)。意見を明らかにする時期は類型証拠の開示を受けた後でよいので、「公判前整理手続中に刑事訴訟法第326条の同意をするかどうか、又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならないが、その時期は、下線部③の開示がされた後でよく、それよりも前に意見を明らかにする必要はない」という肢は正しいです。同じ前提のもとで、被告人又は弁護人は、証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対しこれを明らかにしなければなりません(316条の17第1項)。「公判前整理手続において、被告人又は弁護人は、証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない」という肢は正しく、被告人の行為が正当防衛に当たるという主張は法律上の主張なので、「公判前整理手続において、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにする必要がある」という肢も正しいです。明示の時期は開示を受けた後であって、公判で検察官請求証拠が取り調べられた後ではありません。「検察官請求証拠が取り調べられた後に,これを明らかにしなければならない」という肢は誤りです。被告人側は、証明予定事実があるときはそれを証明する証拠の取調べを請求しなければならず(同条2項)、請求した証拠を速やかに検察官に開示しなければなりません(316条の18)。検察官はその開示を受けて証拠意見を明らかにします(316条の19)。証人の取調べを請求するときは、その者の氏名及び住居を知る機会を与え、公判で供述すると思料する内容が明らかになる供述録取書等を閲覧させる方法で開示します。供述録取書等を裁判所に提出するのではありません。「検察官は、公判前整理手続において取調べを請求した証人について、被告人又は弁護人に対し、同証人が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになる書面等を閲覧する機会を与えなければならない」という肢は正しいです。

大学の教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ場面。黒板に上から下へ番号付きの札「① 検察官 証明予定事実の提出・送付と証拠調べ請求」「② 検察官 請求証拠の開示」「③ 弁護側 類型証拠の開示請求」「④ 弁護側 証拠意見と予定
  • ① 検察官証明予定事実記載書面の提出・送付と証拠調べ請求(316条の13)
  • ② 検察官検察官請求証拠の開示(316条の14第1項)。請求があれば証拠の一覧表の交付(同条2項)
  • ③ 被告人側類型証拠の開示請求(316条の15)
  • ④ 被告人側証拠意見(316条の16)と予定主張の明示(316条の17)。請求証拠の開示(316条の18)
  • ⑤ 被告人側主張関連証拠の開示請求(316条の20)
  • ⑥ 裁判所争点及び証拠の整理の結果の確認(316条の24)
  • 公判期日起訴状朗読・黙秘権等の告知・被告事件についての陳述 → 検察官の冒頭陳述 → 被告人側の冒頭陳述(316条の30)→ 公判前整理手続の結果の顕出(316条の31)→ 証拠調べ

裁判所は終了に当たって整理の結果を確認し、公判では検察官の冒頭陳述に引き続く被告人側の冒頭陳述の後に、結果を明らかにしなければなりません

裁判所は、公判前整理手続を終了するに当たり、検察官及び被告人又は弁護人との間で、事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければなりません(316条の24)。公判期日では、まず検察官が証拠調べのはじめに冒頭陳述をし(296条)、公判前整理手続に付された事件では、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、検察官の冒頭陳述に引き続いてこれを明らかにしなければなりません(316条の30)。通常の事件では弁護側の冒頭陳述は裁判長の許可があってする任意のものですが、整理手続を経た事件では義務になります。「被告人又は弁護人は,証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは,検察官の冒頭陳述に引き続き,必ず冒頭陳述をしなければならない」という肢と、「証拠調べのはじめに行われる検察官の冒頭陳述に引き続き,これを明らかにしなければならない」という肢は正しく、正当防衛を主張する弁護人について「下線部④の冒頭陳述に引き続き,正当防衛の主張を明らかにしなければならない」という肢も正しいです。その後、裁判所は公判期日において公判前整理手続の結果を明らかにしなければなりません(316条の31第1項)。「公判前整理手続に付された事件については,裁判所は,公判期日において,公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない」という肢は正しいです。順序は、冒頭手続(起訴状朗読・黙秘権等の告知・被告事件についての陳述)、検察官の冒頭陳述、被告人側の冒頭陳述、結果の顕出、証拠調べの順です。

請求された証拠の採否は終結までに全部決めなくてよく、整理手続の中で決めた証拠から公判で取り調べます

公判前整理手続では、証拠調べをする決定又は請求を却下する決定をすることができますが(316条の5第8号)、終結までに請求のすべてについて決定しなければならないわけではありません。被告人質問や他の証人の結果で必要性が左右される証拠の採否を留保したまま手続を終え、公判で決めてもかまいません。「公判前整理手続において検察官及び弁護人が行った証拠調べの請求の全てについて、同手続終結までに、証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をしなければならない」という肢は誤りです。整理手続を終えた後に当事者が新たに証拠調べを請求できるかは、316条の32の問題として「公判前整理手続後の証拠調べ請求の制限」で扱います。

刑事訴訟法316条の13第1項

検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない。

刑事訴訟法316条の17第1項

被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。

刑事訴訟法316条の24

裁判所は、公判前整理手続を終了するに当たり、検察官及び被告人又は弁護人との間で、事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければならない。

刑事訴訟法316条の30

公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。

刑事訴訟法316条の31第1項

公判前整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、前条の手続が終わつた後、公判期日において、当該公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない。

論文ではこう使う

論文で公判前整理手続の進行が問われたら、条文の順序をそのまま答案の骨にします。検察官の証明予定事実の明示と請求証拠の開示が先にあり(316条の13・316条の14)、被告人側の類型証拠開示請求(316条の15)、証拠意見と予定主張の明示(316条の16・316条の17)、主張関連証拠の開示請求(316条の20)が続き、裁判所が結果を確認して(316条の24)公判で顕出する(316条の31)という流れです。弁護側の主張明示が「開示を受けた場合において」と条件づけられていることを指摘すると、検察官の手の内を先に見せる構造が被告人の防御権への配慮であることを示せます。整理手続後の新主張や新証拠の扱いは、この流れを前提に316条の32と判例へつなげます。

試験ではこう問われる

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