論告・弁論と意見陳述の機会とは
ろんこくべんろんといけんちんじゅつのきかい
論告とは、証拠調べが終わった後に検察官が事実及び法律の適用について陳述する意見で、求刑を含みます(刑事訴訟法293条1項)。弁論とは、これに続いて被告人及び弁護人が陳述する意見です(同条2項)。裁判所は被告人又は弁護人に最終に陳述する機会を与えなければなりません。
証拠調べが終わると、検察官が「証拠からこの事実が認められ、この法律が適用され、刑はこれくらいが相当です」と意見を述べます。これが論告と求刑です。続いて弁護人が反論の意見を述べ(弁論)、最後に被告人が言いたいことを述べて、弁論が終結します。検察官の意見は義務で、被告人側の意見は権利ですが、被告人側に最後に述べる機会を与えないまま終結することはできません。言い渡す前に双方の最終的な言い分を聴き終える、という当事者主義の締めくくりです。
検察官は証拠調べの後に事実と法律の適用について意見を陳述しなければならず、求刑も無罪の論告もできます
証拠調べが終わった後、検察官は事実及び法律の適用について意見を陳述しなければなりません(刑事訴訟法293条1項)。これが論告で、通常はその中で具体的な刑の種類と量について意見を述べる求刑を行います。判例は、検察官が具体的な刑罰の種類と分量に関する意見を陳述するのは当然であるとして、求刑に違法はないとしています(最判昭和24年3月17日)。求刑は意見にすぎず、裁判所を拘束しません。条文は意見の内容を有罪の主張に限っておらず、検察官は公益の代表者なので、証拠調べの結果、犯罪の証明がないと判断すれば無罪の意見を述べることもできます。「被告人が無罪である旨の陳述をしてはならない」という肢と、「量刑についての意見を述べることはできるが、無罪である旨の意見を述べることはできない」という肢はいずれも誤りです。
被告人と弁護人は意見を陳述することができ、具体的な刑の意見も述べられ、最終に陳述する機会を与えずに弁論を終結すると違法になります
被告人及び弁護人は、証拠調べの後に意見を陳述することができます(293条2項)。弁護人の意見陳述が弁論で、内容に制限はなく、検察官の意見に対応する範囲で量刑についても意見を述べられるので、執行猶予が相当であるとか罰金刑にとどめるべきであるといった具体的な刑の内容を述べることもできます。「被告人の量刑について,具体的な刑の内容を陳述してはならない」という肢は誤りです。被告人側の陳述は「できる」ですが、裁判所は被告人又は弁護人に最終に陳述する機会を与えなければならず(刑事訴訟規則211条)、その機会を与えないまま弁論を終結すれば違法です。「裁判所がその機会を与えることなく弁論を終結することは違法となる」という肢は正しいです。弁論が終結した後でも、裁判所は請求により又は職権で、決定で弁論を再開することができます(313条1項)。「終結した弁論を再開することはできない」という肢は誤りです。
- 検察官の論告・求刑事実及び法律の適用について意見を陳述「しなければならない」(293条1項)。求刑を含む。無罪の論告もできる。裁判所を拘束しない
- 被害者参加人の意見陳述検察官の論告の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、事実又は法律の適用について意見を述べることを裁判所が許す(316条の38)。証拠にはならない
- 被告人・弁護人の弁論意見を陳述「することができる」(293条2項)。具体的な刑の意見も可。最終に陳述する機会を与えなければならない(規則211条)
- 弁論の再開終結した弁論は請求又は職権で決定により再開できる(313条1項)
被害者参加人の意見陳述は検察官の論告の後に訴因の範囲内で行い、被害者等の心情の意見陳述とともに証拠にはなりません
被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、裁判所が相当と認めるときに、検察官の論告の後、訴因として特定された事実の範囲内で、事実又は法律の適用について意見を陳述することを許されます(316条の38第1項)。これとは別に、被害者等は被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を公判期日で陳述でき(292条の2)、こちらは罪名による制限がありません。どちらの陳述も犯罪事実の認定のための証拠にはなりませんが、量刑の資料にはなり得ます。被害者参加と意見陳述の要件は被害者参加の語で扱い、ここでは論告の後に置かれる手続であることだけ押さえます。
刑事訴訟法293条1項
証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
刑事訴訟法293条2項
被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。
刑事訴訟法313条1項
裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。
論文ではこう使う
論文で弁護人の弁論が正面から問われることは少なく、手続の流れを示す場面で、論告は義務で求刑は意見にすぎないこと、被告人側には最終に陳述する機会を保障しなければならないことを一文で押さえれば足ります。弁論終結後に新たな証拠や主張が出た事案では、313条1項の弁論再開の可否を、裁判所の裁量と被告人の防御の利益から論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。