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用語集 / 刑事訴訟法 / 証拠調べに関する異議と裁判長の処分に対する異議

証拠調べに関する異議と裁判長の処分に対する異議(309条)とは

しょうこしらべにかんするいぎとさいばんちょうのしょぶんにたいするいぎ

刑事訴訟法 公判手続と公判前整理手続

証拠調べに関する異議とは、検察官・被告人・弁護人が証拠調べに関する訴訟行為について裁判所に申し立てる不服で(刑事訴訟法309条1項)、裁判長の処分に対する異議とは、それ以外の裁判長の訴訟指揮や法廷警察の処分について申し立てる不服です(同条2項)。前者は法令違反と相当でないことを、後者は法令違反だけを理由にできます(刑事訴訟規則205条)。

公判の最中に「異議あり」と声が上がる場面は、法律上二つに分かれます。一つは証拠調べに関する異議で、相手方の尋問の仕方や証拠の採否のように証拠調べをめぐる行為に向けられます。もう一つは裁判長の処分に対する異議で、釈明を求めない、発言を禁じるといった訴訟指揮や法廷警察の措置に向けられます。どちらも裁判所が決定で判断しますが、理由にできる範囲が違います。証拠調べは流動的で不相当も争わせてよいのに対し、訴訟指揮は裁判長の裁量なので法令違反だけを争わせる、という線引きです。

法廷の証人尋問の場面。先生が弁護人役(札「弁護人」)で立ち上がり、片手を挙げている。検察官席の男性(札「検察官」)が証人に向かって質問している途中で、証言台に証人の男性(札「証人」)。法壇の裁判官は小さく遠景。先生の頭上の吹き出し「異議あり

証拠調べに関する異議は法令違反と相当でないことを理由にできますが、証拠調べに関する決定には法令違反しか理由にできません

検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べに関し異議を申し立てることができます(刑事訴訟法309条1項)。「証拠調べに関し」とは、冒頭陳述、証拠調べの請求、証拠調べの範囲・順序・方法の決定、証拠の採否の決定、証人尋問における相手方の尋問など、証拠調べに関するすべての訴訟行為を指し、不作為も含みます。この異議は、法令の違反があること又は相当でないことを理由にできますが、証拠調べに関する決定に対しては相当でないことを理由にすることができません(刑事訴訟規則205条1項)。検察官の尋問に対する異議は証拠調べに関する異議なので、「法令の違反があることを理由とする場合に限られる」という肢は誤りです。これに対して、証拠調べ請求を却下した決定に「相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる」という肢は誤りで、裁判所が証人尋問の実施場所を病院と定めた決定(158条1項)についても、相当でないことを理由とする異議はできません。証拠決定に対しては異議を申し立てることができ(「証拠調べの決定に対し,適法に異議を申し立てることができる」という肢は正しいです)、判決前の決定なので抗告はできません(420条1項)。

  • 309条1項 証拠調べに関する異議対象: 証拠調べに関するすべての訴訟行為(相手方の尋問・冒頭陳述・証拠調べ請求・証拠決定・証拠調べに関する裁判長の処分)。理由: 法令違反+相当でないこと。ただし証拠調べに関する決定には法令違反のみ(規則205条1項但書)
  • 309条2項 裁判長の処分に対する異議対象: 証拠調べに関するもの以外の裁判長の処分(求釈明の不行使・発言禁止・退廷命令などの訴訟指揮・法廷警察の処分)。理由: 法令違反のみ(規則205条2項)
  • 方式個々の行為・処分・決定ごとに、簡潔に理由を示して、直ちに(規則205条の2)
  • 判断裁判所が決定でする(309条3項)。合議体では合議を経る。判断された事項に重ねて異議はできない(規則206条)

裁判長の処分に対する異議は法令違反だけを理由にでき、証拠調べに関する裁判長の処分は1項の異議によります

証拠調べに関する場合のほか、検察官、被告人又は弁護人は裁判長の処分に対して異議を申し立てることができます(309条2項)。裁判長の処分とは、求釈明に関する処分などの訴訟指揮権に基づく処分(294条・295条・規則208条)と、発言禁止や退廷命令などの法廷警察権に基づく処分(288条2項)を指します。この異議は法令の違反があることを理由とする場合に限られ(規則205条2項)、「裁判長の訴訟指揮に基づく処分に対し,相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる」という肢は誤りです。弁護人が起訴状の記載について検察官への釈明を求めるよう申し立てたのに裁判長が釈明を求めなかった場合、その不作為は裁判長の処分に当たり、「異議申立ては,法令の違反があることを理由とする場合に限られる」という肢は正しいです。公判廷で勝手に発言した被告人への発言禁止の措置も裁判長の処分に対する異議の対象です。これに対して、証人尋問や被告人質問の最中に裁判長が重複する尋問を制限した処分(295条1項)は、裁判長の処分ではありますが証拠調べに関するものなので、相当でないことも理由にできる1項の異議によります。事例で下線部ごとに1項か2項かを判定させる問題では、求釈明の不行使と発言禁止は2項、相手方の誘導尋問・証拠調べ請求の却下決定・重複尋問の制限は1項に当たります。

大学の教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)が黒板の前に立つ場面。黒板に法廷のやり取りが五つ、札で並ぶ。「求釈明を求めない → 2項」「誘導尋問 → 1項」「被告人への発言禁止 → 2項」「証拠請求の却下決定 → 1項(法令違反のみ)」「重

異議は個々の行為ごとに理由を簡潔に示して直ちに申し立て、裁判所が合議を経て決定で判断し、判断された事項には重ねて申し立てられません

異議の申立ては、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければなりません(規則205条の2)。「その理由を示す必要はない」という肢は誤りです。裁判所は申立てについて決定をしなければなりません(309条3項)。判断の主体は裁判長ではなく裁判所なので、合議体で審理している事件では、証人尋問中の異議に対する判断も陪席裁判官との合議を経る必要があります。「陪席裁判官との合議を経る必要がある」という肢は正しく、「他の裁判官との合議を経る必要がない」という肢は誤りです。異議の申立てについて決定があったときは、その決定で判断された事項については重ねて異議を申し立てることができません(規則206条)。「重ねて異議を申し立てることはできない」という肢は正しいです。別の行為や処分に対する新たな異議は妨げられません。異議に対する決定への不服は、終局判決に対する控訴の中で訴訟手続の法令違反として主張することになります。

刑事訴訟法309条1項

検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。

刑事訴訟法309条2項

検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。

刑事訴訟法309条3項

裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。

論文ではこう使う

論文で訴訟手続の法令違反を控訴理由として構成するときは、公判で適時に異議を申し立てたかが問題になるので、問題の行為が証拠調べに関する異議(309条1項)の対象か裁判長の処分に対する異議(同条2項)の対象かを分け、理由として法令違反と相当でないことのどちらまで主張できたかを規則205条から書きます。証拠決定に対しては抗告ができず異議によること(420条1項)を添えると、不服申立ての経路が示せます。

試験ではこう問われる

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