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用語集 / 刑事訴訟法 / 被告人質問

被告人質問(311条)とは

ひこくにんしつもん

刑事訴訟法 公判手続と公判前整理手続

被告人質問とは、被告人が任意に供述する場合に、裁判長がいつでも、また陪席の裁判官・検察官・弁護人・共同被告人・その弁護人が裁判長に告げて、必要とする事項について被告人の供述を求める手続です(刑事訴訟法311条2項・3項)。被告人は終始沈黙し、個々の質問に対して供述を拒むことができます(同条1項)。

被告人は自分の裁判の当事者で、証人ではありません。宣誓もせず、黙っていてもよく、個々の質問に答えなくてもよい立場です。それでも被告人が任意に話すなら、裁判長や検察官、弁護人は法廷で質問して供述を聴くことができます。これが被告人質問です。証人尋問と違って証拠調べの請求や決定は要らず、いつ行うか、誰から質問するかも法律で決まっていません。被告人の黙秘権を前提に、話したい被告人の言い分を公判に出す仕組みだからです。

法廷の被告人質問の場面。先生が裁判長役(札「裁判長」)で法壇に座り、証言台の前に男性(札「被告人」)が立って腕を組み、口元に手を当てて黙っている。弁護人席の男性(札「弁護人」)が手を挙げて「裁判長、質問します」と小さな吹き出し。法壇の脇の掲

被告人は終始沈黙し個々の質問に供述を拒むことができ、拒む理由を明らかにする必要はありません

被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し供述を拒むことができます(刑事訴訟法311条1項)。証人は証言を拒むときにその事由を示さなければなりませんが、被告人の黙秘権は包括的なものなので、供述を拒む理由を明らかにする必要はありません。「被告人は,供述を拒む場合に,その理由を明らかにする必要はない」という肢は正しいです。被告人が任意に供述する場合には、裁判長はいつでも必要とする事項について被告人の供述を求めることができ(同条2項)、陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げてその供述を求めることができます(同条3項)。

被告人質問には証拠調べの請求や決定が要らず、時期も順序も法定されておらず、供述意思の事前確認も裁判長の質問も義務ではありません

被告人質問は証人尋問のような証拠調べではないので、実施するために証拠調べの請求や決定は要りません。「被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない」という肢は正しいです。裁判長は「何時でも」供述を求めることができるので、時期の制限はなく、検察官の立証が終わる前でも、証拠調べに入る前でも行えます。判例も、冒頭手続の終了後、証拠調べに入る前に被告人に質問した手続を違法ではないとしています(最大判昭和25年12月20日)。「検察官の立証が終了する前に被告人質問を実施することは許されない」という肢と、「他の証拠が全て取り調べられた後にこれを行わなければならない」という肢はいずれも誤りです。質問の順序を定めた規定もなく、証人尋問の順序を定める304条は被告人質問に準用されていません。弁護人、検察官、裁判所の順に質問するのは実務の慣行にすぎず、「まず弁護人が質問し,次いで検察官が質問をするという順番によらなければならない」という肢と、「まず裁判長が質問をしなければならず,弁護人がこれに先んじて質問をすることはできない」という肢はいずれも誤りです。黙秘権は冒頭手続で告知されているので、被告人質問を始めるに当たって改めて供述する意思の有無を確かめる定めはなく、「あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなければ違法な手続となる」という肢は誤りです。裁判長の質問は権限であって義務ではなく、判例も、裁判長が二、三の質問をしただけで詳細な質問をしなかったとしても、被告人は陳述の機会を十分に与えられているとして手続違反はないとしました(最判昭和25年7月25日)。「裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても,訴訟手続の法令違反の問題は生じない」という肢は正しいです。

  • 主体裁判長はいつでも(311条2項)。陪席裁判官・検察官・弁護人・共同被告人・共同被告人の弁護人は裁判長に告げて(同条3項)
  • 前提被告人が任意に供述する場合に限る。供述を拒む理由を示す必要はない(同条1項)
  • 手続証拠調べの請求・決定は不要。時期・順序の定めなし。供述意思の事前確認の定めなし。裁判長の質問は義務ではない
  • 制限訴訟関係人の供述を求める行為が重複するときや事件に関係のないときなどは裁判長が制限できる(295条1項)。公判前整理手続で明示しなかった主張に沿う質問は制限できることがある(最決平成27年5月25日)
大学の教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)が黒板の前に立つ場面。黒板を縦線で二分し、左の見出し「証人尋問」の下に札「宣誓あり」「証拠調べの請求と決定が要る」「順序は304条・交互尋問」「拒むには事由を示す」。右の見出し「被告人質問(311

共同被告人とその弁護人も裁判長に告げて質問でき、公判前整理手続で明示しなかった主張に沿う質問は制限されることがあります

311条3項は、供述を求めることができる者として共同被告人とその弁護人を明示しています。併合審理されている共同被告人は、相手の供述によって自分の刑責が左右されるからです。「被告人が任意に供述をする場合には,共同被告人の弁護人は,裁判長に告げて,被告人の供述を求めることができる」という肢と、「Aの弁護人だけでなく,Bの弁護人も,Aに対し,その供述を求めるための質問をすることができる」という肢は正しく、判例も共同被告人の弁護人による質問を認めています(最判昭和26年6月29日)。共同被告人本人も質問できるので、「甲が乙の供述を求めることはできない」という肢は誤りです。裁判長は、訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為が重複するときや事件に関係のない事項にわたるときなどは、本質的な権利を害しない限り制限できます(295条1項)。公判前整理手続に付された事件では、判例は、手続終了後の新たな主張を制限する規定はないので新たな主張に沿う被告人の供述を当然に制限できるわけではないとしつつ、予定主張の明示状況、新たな主張がされるに至った経緯、その内容などを総合考慮し、主張明示義務違反が認められ、かつその質問や供述を許すことが公判前整理手続を行った意味を失わせるときは、295条1項により質問を制限できるとしました(最決平成27年5月25日)。この判例の詳しい扱いは主張明示義務の語で扱います。被告人質問で得た供述は、公判廷の供述として事実認定に用いることができ、共同被告人の供述を他の被告人の証拠にする場面の扱いは弁論の併合と分離の語で扱います。

刑事訴訟法311条1項

被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。

刑事訴訟法311条2項

被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。

刑事訴訟法311条3項

陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。

論文ではこう使う

論文で被告人の公判供述を扱うときは、被告人質問が証拠調べの請求や決定を要しない任意の供述聴取であることと、黙秘権(311条1項・憲法38条1項)が前提にあることを一言置きます。公判前整理手続後の新主張に沿う被告人質問の制限が問われたら、平成27年決定の枠組みで、主張明示義務違反の有無と、質問を許すことが公判前整理手続の意味を失わせるかを、予定主張の明示状況・新主張に至った経緯・内容から当てはめます。

試験ではこう問われる

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